廃棄寸前の砂糖水   作:とくめ一

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アッ

 

 

 そうしてカイドウに呼び出されて以来、私は食事を摂るときと地下の掃除の時は必ず外に出るようになった。

 皆私のことを気にしてくれていたようだったが、キングに聞いていた通り、話すことの多かった厨房係は特に心配してくれていたらしい。

 久々に私とカイドウの分の食事を受け取りに行ったときには「鬼姫様がお元気になられたようで良かった」と涙ぐみながら食事を手渡されたので即座に謝ったけど……今度何かお詫びのプレゼントでも渡そうかな。

 

 因みにカイドウは、あれから過保護度が増した……というか、これまでより私のことを呼びつけるようになった。

 

 カイドウは私を大切にこそ思ってくれているらしいが、それでも私を呼ぶようなことは少なかったのだ。遠征やワノ国統治の諸々について色々と忙しかったようだし。

 けれどあの呼び出しからはことあるごとに私を呼び、あろうことか頻繁に外国に連れて行くようにすらなった。

 

 ……カイドウなりに私を元気づけようとしてくれているらしい。

 

 侍たちとの別れからおよそ半年。

 未だことあるごとに彼らのことを思い出してはしまうけれど、周囲のお陰もあり段々と懐古に苦しむことは減ってきた。

 

 ──しかし気にかけてくれるカイドウには申し訳ないが、今の状態ではどうにも動きづらい。

 

 今は私に優しくしてくれるカイドウともいつかは袂を分かつ運命にある以上、カイドウの部下の監視無しでも動ける状況を作っておかなければならないし、独自のネットワークを築いておくに越したことはない。

 となると、カイドウに通じていない直属の護衛が必要になるが……カイドウに認められる程度の実力の持ち主かつ社会的孤立状態にある人物…………いや難易度高いなぁ。

 

 王下七武海でさえなければ鷹の目(該当する人)はいるにはいるが……うん。……うん、まぁ、ゴリ押しパワータイプとか作戦無視常習犯とか、手綱を握れなさそうな人はやめよう。

 仮に、もし万が一唐突かつ軽率に「ちょっと東の海まで暇潰ししてくるわ☆」とか「カイドウと手合わせしたいな♡」とかされたら私の胃が鼻空想砲(ノーズファンシーキャノン)されてしまう。怖い。

 

 となるとヒューマンショップか何かで奴隷を買うのが妥当だろうか。いや、そもそも今現在人身売買が存在することは確定しているとして、ヒューマンショップは存在しているのかというのも問題だ。

 

 原作にも出てきたシャボンディ諸島のヒューマンショップについては、恐らくドフラミンゴが七武海になってから作ったものだろうからまだ無い可能性の方が高いし……そもそもカイドウが認めるような実力を持った人自体が稀有なので、捕獲の必要がある出品となれば殊更だ。

 ……となると、規模の大きいヒューマンショップの方が都合が良いから、ドフラミンゴが人身売買業を始めるのを待つのも選択肢の一つだろう。

 

 えぇと、私が今十四になって半年くらいで、ワノ国編時点でのヤマトが二十八歳だったから……つまり今は原作の十三年と数ヶ月前。

 ドフラミンゴは原作で四十一歳だから、今は二十八歳くらいか。

 それで原作十年と少し前くらいに七武海になったっぽかったから、ヒューマンショップが私の予想通りドフラミンゴが七武海になってから出来たものなら────と、そこまで考えて、私は気が付いた。

 

 ……ドフラミンゴが、今二十八歳? 

 

 どういう巡り合せだと私は思わず頭を抱えた。

 

 ちょうどいるじゃないか。腕が立ち、かつ社会的孤立状態に──つまり死んだことにすることの出来る、都合の良い人材が。

 

「パパ、私ちょっと行ってみたい場所があるんだけど……」

 

 ……間に合うといいな。

 

 

 □■□

 

 

 大きな船に揺られてどんぶらこ。

 私は今、カイドウたちと共に北の海(ノースブルー)に来ていた。

 

 まぁカイドウなら了承してくれるだろうというある種の信頼と、流石のカイドウでも断るかもしれないという心配の両方を抱えながらおねだりしたわけだが……驚くほど簡単に通った。

 カイドウによると「北の海なら近い」そうだ。は? 

 と思ってたら海軍と同じ仕様の船──つまり船底に海楼石を敷き詰めた船で凪の帯(カームベルト)を突っ切り即座に北の海に到着した。そうだね凪の帯を挟んだ横の海は北の海だったね。は?? 

 

 ワノ国が海楼石の産出国なのは知ってたけど、まさか凪の帯突っ切って北の海に行けるとは。

 というかジェルマやら七武海が海と海を割と楽々移動してたからカイドウも出来るだろうみたいな勝手なイメージでお願いしたけど、いざ正面から「楽勝です」みたいなこと言われるとびっくりするなぁ。

 

 それはとにかくとして、そんなこんなで私からの久々のおねだりでカイドウのテンションが有頂天になったらしく、船は物凄いスピードで進んでいる。乗ったことはないが海列車くらいの速度は出ているんじゃないだろうか。

 

 これ船壊れない? 四皇の乗ってる船だからこのくらい平気? そっか……。

 

 因みに私のおねだりを聞くついでに何か良いものや島があれば……ということでそこそこの数の船員がついてきている。つまり船も大きい。

 こんなのが平和な島に現れたら、島民たちはたとえ百獣海賊団のシンボルが見えなくとも裸足で逃げ出すことになると思う。

 

「ヤマト、寒くねェか」

「うん、平気だよ」

 

 そう返事をしたのだが、カイドウは少し黙りこくってから部下の一人にブランケットを持ってくるように命じた。

 

「……本当に大丈夫なのに」

「ウォロロロロロ! 何もお前の言うことを疑ってるワケじゃねェよ!」

 

 使いたい時に使えばいいと私の頭を撫でるカイドウの隣に立って「もう、パパってば心配性なんだから」と言いながら、私は心の中でカイドウに謝罪した。

 カイドウに優しくされる度にとんでもなく心が痛む。でも今回はこれしかやりようが無かったんだ、ごめんねカイドウ。 

 

 

 私が考えている計画はこうだ。

 

 まずカイドウにおねだりをしてミニオン島の二つ隣の島であるルーベック島に居座る。

 これについては「ツバメの形をした島があると前滞在した島で聞いたから本当にツバメの形なのかどうか遠くから見てみたい」とか言っておけば良いのでハードルは低かったし実際成功した。

 

 到着日が早すぎた場合どうやって滞在日数を引き伸ばすかは臨機応変におねだりするとして、原作通りに事が運べばミニオン島での諸々が起こる前にスワロー島に軍艦が現れる筈だ。

 

 なのでこれを合図に上手くカイドウをスワロー島に誘導し、カイドウと海軍とをぶつける。

 私の記憶が正しければスワロー島に配備される海軍たちにはつるも含まれる筈だし、恐らくカイドウが相手なら増援も呼ぶからすぐにやられたりはしないだろう。

 戦闘が激しくなったところで私はこっそりとカイドウたちの側を離れ、ミニオン島に移動。

 船はないが、海を凍らせての移動に問題がないことは実証済みだ。

 

 そこからは上手くロシナンテに契約(・・)をさせて……と、脳内でそこまで作戦を確認したその時だった。

 

 

「カイドウ様! 大変です! 

 我々の目的地の島の隣の島に──スワロー島に、海軍の軍艦が二隻見えます!」

「あァ? 海軍だと?」

「何かを警戒している様子なので、このままルーベック島に近付けばこちらに気が付くのも時間の問題かと……!」

 

 スワロー島に軍艦二隻、原作にあった情報通りだ。

 

 ………………エッ??? 

 

 あれ?? まっ、え、はい??? 

 ……もしかしてロシナンテの命日ってちょうど今日になる予定??? 

 

 …………ヤバい、完全に想定外だ。

 

 そもそもまさか事件当日に島に到着するとは思ってもみなかった私には、無意識の内に『間に合うならば数日以上は余裕があるだろう』という先入観があり、計画もその先入観込みで考えていたわけで。

 

 つまり、船上で戦闘が始まってしまった場合のことを全く考えていなかった。到着が間に合わなかったらという焦りもあったとはいえ酷いやらかしだ。

 流石に広さに限りのある船上で姿を消せばすぐにバレるだろうし、船で戦闘となれば海上移動中に見つかる可能性も当然高くなる。

 

 

 もし万が一、このままカイドウvs海軍のバトルが始まっちゃったりなんかしたら──!! 

 

 

「てめェまさか海軍なんぞにビビってんのかァ!? このまま突っ込め!!」

 

 

 アッ。

 

 

 

 

 

 

 

ハーメルンを最もよく開くのは大体何時頃ですか?(投稿時間の参考にするための質問です)

  • 夜中(23時〜5時)
  • 早朝(5時〜7時)
  • 朝頃(7時〜12時)
  • 昼頃(12時〜16時)
  • 夕方(16時〜19時)
  • 夜(19時〜23時)
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