転生したら7m超の大男が父親だった。そしてその大男がどう見てもワンピのカイドウ。
何を言っているか分からないと思うけど私も分からない。
というか死んだと思ったら大宴会のどんちゃん騒ぎの中で一歳の誕生日おめでとう的なことを山ほど言われて、混乱しながら自分が座ってる場所を確認したらカイドウっぽい男の膝だったとかいう意味の分からない状況を瞬時に理解出来る人間がいるのかと切に問いたい。
お祝いされまくってても困惑から脱せないんだぞこっちは。
なんならでっかいソファだと思ってた物がカイドウの膝だったんだぞ。
私が暫く呆然とした表情でカイドウを見つめていると、それに気付いたらしいカイドウがこちらを向いた。いや顔こわ圧やば。
「どうかしたかヤマト」
「…………ぱぁ、ぱ……?」
ここで一つ説明をしておきたいのだが、私はこの時カイドウを呼んだわけではない。「あなたは私の父親ですか?」という意味で「パパ?」と言ったのである。正直本当に自分が転生していてカイドウが父親になったとか信じたくなかった。
もしカイドウが父親でないのなら本人が否定するなり周りが止めるなりするだろうと、混乱しながらも必死に頭を回して発言したつもりだったのだ。
……が。
途端にざわめきだすカイドウの部下たち。
アカンこれミスったのでは???
数秒が経ち絶望がこんにちはしかけているところで最初に口を開いたのは目の前のカイドウで。
「……最初に話す言葉でおれのことを呼ぶとは、こりゃあ大物になるな!ウォロロロロロロ!!」
声でっっっっっっっっっか。
図体に比例して声でっか。
というか父親確定じゃんうっそだろ。
困惑しすぎて一周回って冷静になってきた私は、どうやら自分が本当にあの“ヤマト”になっているらしいことをやっと飲み込んだ。
でも嫌だなぁ 、実の娘を自分の為に利用しようとして挙げ句の果てに意にそぐわないからって悪趣味なブレスレット()をプレゼントする毒親が保護者って。
この場に母親がいないことからしても現時点で頼れる(頼れない)唯一の肉親なんでしょ?
難易度ルナティック確定じゃん。いや28で確定救済されることを考えればイージーなのか?
この男が娘に優しい親だったらおでんもエースも死ななくて済んだかもしれないの、に────……?
あれ??
そこで、はた、と気がついた。
つまり私は今、その二人を救済できる可能性のある立場にいるのでは……?
私の前でウォロロロと愉快そうに笑うカイドウはどうやら私を『おもしれー娘』扱いしてくれてるみたいだし、原作でもカイドウは(多分)ヤマトが男を自称したことに対応して息子呼びになっていた。つまりワンチャンある。イケる。
人間という生き物は、あまりにも突飛な状況を叩きつけられると突飛な思考をするようになるらしい。
「……ぱぁぱ」
「どうした」
「しゅき!!」
「!」
回らない舌を全力で回して無邪気なスマイルで私は告げた。
唸れ私のベイビー力。カイドウの父性を呼び覚ませ。
「…………フン、肝っ玉のデカさは母親似か?」
どうやらしっかり効いてくれたらしい。
めっちゃ撫でてくる。手がでかいから撫でにくいだろうに指でめっちゃ撫でてくる。
そんなこんなで、私はその日からパパ、パパとカイドウに引っ付いて父親大好きカワイイベビーを懸命に演じ始めた。
……まぁ溺愛とまではいかないだろうけど、ちょっと甘やかしてくれたりするくらいまで頑張るか。
なんて思ってた頃が私にもありました。
「どうしたヤマト、今日は引っ付いて来ねェのか」
「……ぱぱ、いそがしそう……」
「一体誰に似たんだこんな可愛い娘に育っちまって」
最初の頃は満更でもなさそうな顔で邪魔だとか言ってたのに今やこう。
匠もびっくり劇的ビフォーアフターである。
僅か一年半でここまでなる???
「パパはお前が大好きだからお前はそんなこたァ気にしなくていい」
これを真顔で言う父親になっちまった。
どこでルート分岐入ったんですかね。
「えへへ、やまともぱぱだいすき!」
こんなこと言って抱きつく娘として方向性を定めちゃった辺りですか。はい。
□■□
三歳になった頃におでんの裸踊りが始まった。
彼はこれから五年間、ああして踊り続けるのだ。誰にも、何の理由も話さずに。
あー悪趣味悪趣味。
そう思いながらも、どうしても目を離せない。
彼の事情を知っているからか、どうしても彼に心を惹かれるのだ。
それは恋だとか愛だとかそういったものではなくて……情けないと罵倒される姿がどこまでもかっこよく見えたのだ。
……やはり、私が“ヤマト”だからだろう。
抵抗しようもなく湧いて出るおでんへの憧れを自覚しながら、私はおどけるおでんをただぼんやりと見ていた。
そう、見ていたのだ。
何もせず、ただ毎週彼を見ていた。
彼のこれが原作に必要な行為だと、理解していたから。
「ぱぱ」
「ん、どうしたヤマト」
「……ぎゅーして」
「ウォロロロロロロ!仕方のねェやつだ!」
私を優しく抱き締める“
……じゃあ、私は?
全部知ってて、分かってて、でも原作を壊して変に結末が変わるのが恐ろしいからと何もしない私も、きっとあの男と何も変わらない。
真っ黒な、悪人だ。
「っく、くふ…………!」
わきあがった笑いを無理矢理抑え込んだら軽い咳のようになってしまったけれど、今はそんなことは気にならない。
……そっか、そうだ、そうだよ!
どうして私は、無意識に自分は善側の人間だと思い込んでいたのだろう!
この世界の結末が変わるのを恐れて死に行く命を見捨ててきた私は、もうこんなにも穢れているのに!!
□■□
善性なんて下らないものへの執着を捨ててしまえば、この世界は生きやすいことこの上ない。
そう気がついた私は、好き勝手“幸せ”に生きることを決めた。
まず七歳になる前に、カイドウに頼んで原作のヤマトが食していたイヌイヌの実幻獣種モデル
幻獣種の自由度は異常だし、早めに食べて出来ることを模索していった方がいいと考えたのだ。
事実ニカと同様に神の名を冠するだけあって、発想の転換次第でこの能力は原作より更にとんでもないものになったのだが……まぁそのことは今はいいだろう。
因みにカイドウは「パパの守り神になるのがわたし以外なんていや!!!」と全力で駄々を捏ねたら折れてくれた。その辺に落ちてる木の棒より簡単に折れた。うーんパパはヤサシイナァ。
あれだけ原作が壊れることを恐れていたのに、と言われるかもしれないが、要は帳尻が合えば問題ないのだ。具体的に言うと、主人公たちがワノ国でする筈の成長を正しく行ってくれるのであれば、原作の流れを多少変えても問題はないと思っている。
そもそもおでんを名乗らないヤマトという時点で多少は崩れているワケだし……。
ということで八歳になって銃殺寸前のおでんを救いました(ぴーす)
処刑開始時はカイドウの髪と背中の間に隠れてたから、私が急に現れて侍皆ビックリしてたな。
突然駄々を捏ねたことには侍以外のみんなもビックリしてたけど。
等と下らないことを考えながら、今日も地下の、座敷牢にしてはかなり広いそこの中までおでんに会いに来た。
本当なら一人で会いに来るなんて危険すぎる行為だろうけど、今のボロボロのおでん相手なら
本当に、肉体は完全に死んでるまま意識だけで生きている感じだったからビックリしたよね。
それを理解して、どうせすぐに死ぬだろうと思ってたからカイドウもおでんの世話を許可してくれたんだろうけど。
……なんかこういう言い方するとおでんが縁日の日にすくってきた金魚みたいだな。家帰った時にはもうひっくり返った状態で泳いでる感じ。
それにしても、死への特急便に乗ってしまった縁日の金魚状態でもギリギリ救えるというのだから大口真神様々である。幻獣種っぉぃ。
いやいや大口真神にそんな逸話ねーだろ……と思ったそこの貴方。
私がピックアップしたのは『大口真神』ではなく『守り神』の概念なのです。
古来は病気や怪我を含む不幸の類いは全て悪神や悪魔、鬼などといった“魔”が原因であると考えられていた。
節分とか鬼はー外!とか言ってるけど無病息災を祈るイベントでしょ?そういうこと。
そういう理解で守り神パワーを一点集中させておでんの怪我を緩和させたのだ。
つまり拡大解釈だね!!
悪魔の実サイコー!!
本当は滅茶苦茶頑張れば完治させられないこともないのだが、それは原作と帳尻が合わなくなるので以下略。
何も出来ないおでんはさぞもどかしいだろうがそんなことは知らない。
だって私は私のためだけにおでんの命を繋げただけであって、おでん自身の幸不幸については一切考慮してないし。
寧ろ代わりにトキと面会できるようにしたんだから、幸不幸プラマイ収支ゼロに……はならないか。圧倒的にマイナスだ。
因みにトキはやっぱりカイドウに駄々捏ねて、ペイント弾と麻酔弾で殺したように見せかけた上で連れてきてもらいました。
未来に逃げられても困るから海楼石の首輪を常時つけてもらってるけど、それはどうしようもない。
だってブレスレットとかピアスとかにしたらその部分引きちぎって逃げそうなんだもん……侍怖い……。
そんなこんなで私とこの地下の座敷牢は、今日もあたたかく満たされている。
私にとっての不幸から隔絶された、ただただ穏やかで幸せなだけの箱庭。
「それで、パパが部下の人にね──」
──あぁ、なんて素敵なハッピーワノ国ライフ!!
そうして今日も、罪悪感から目を逸らすのです。
ハーメルンを最もよく開くのは大体何時頃ですか?(投稿時間の参考にするための質問です)
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夜中(23時〜5時)
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早朝(5時〜7時)
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朝頃(7時〜12時)
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昼頃(12時〜16時)
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夕方(16時〜19時)
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夜(19時〜23時)