廃棄寸前の砂糖水   作:とくめ一

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教えておでんさん

 

「で、お前は結局どうしたいんだよ」

 

 漸く涙のおさまってきた頃にかけられたおでんの言葉に首を傾げると、おでんは「その護衛たちとのことだよ」と言いながらジトリとこちらを見る。

 

「……それは……まぁ、向こうがしたいように──あだっ!」

 

 突然『ずびし』という擬音でもつきそうなチョップを食らわされた私は、そう滅茶苦茶に痛いわけでもないが、驚いて反射的に頭を押さえた。

 

「おれは“お前が”どうしてェか訊いてんだぞ」

「えっ…………そ、そりゃ、おさむらいさん好きだし、こんなじょうきょうじゃなかったら仲良くなりたいけど……」

「あのなぁ、さっきからなんなんだてめェは!悪人を名乗るならもっと自分勝手にやらねェか!」

「へっ!?いや今も十分自分勝手にやって」「ねェだろ」

「えぇ……」 

 

 父親の権限を利用して処刑予定の侍何人も助けて囲ってて自分勝手にやってないとは……??

 

「本当の悪人は、相手の気持ちなんざ一々考えやしねェんだよ。

 それに、このおれが一緒に罪を背負うんだぜ?お前二人分とは訳が違ェんだ、安心してもっと豪快に行け!」

「……おでんさん」

「なんだ」

「…………分かっててやってる??」

「何のことだ」

「トキさんにチクってやる」

「何のことだ!!?」

 

 軽率にイケメンパワー放出してきやがって……“(ヤマト)”が格好良いおでんに弱いの分かっててやってるとしか思えない……!!

 ……っていうか。

 

「……第一『ごうかいに行け』なんて、そんなこと言って私が本当におでんさんが困るくらいごうかいに行きだしたらどうするの……」

「そン時ァそン時だな。

 おれはお前がそういうことをしないと分かってるから豪快に行けっつったが……もしそうなった時はおれが見誤っただけだ。

 お前の背負ってる(もン)一緒に背負うってのは変わらねェから安心しろ」

「いやそういうもんだいじゃ……もういいや……」

 

 国を滅茶苦茶にされたら困るんじゃないかってことなのに、私がおでんに見捨てられないか心配して訊いたみたいになってる。なんか、なんだこれ、恥ずかしい。 

 

「っと、とにかく!わたしはおさむらいさんたちと仲良くする気はないから!」

「ふぅん…………だがよ、そっちの方が向こうにとってストレスなんじゃねェのか?」

「へっ」

 

 おでんの言葉に自分でも驚くほど間抜けな声が出た。

 いやどういうことなのか。

 

「いや、誰だって嫌いな相手守るよりは多少なりとも良く思ってる相手を守る方がよっぽど気が楽だろ。それに、護衛にする時は無理矢理だった相手が護衛になった瞬間よそよそしくなるなんざやり辛ェことこの上ねェと思うが」

「……………………う〜…………!」

 

 またも敗北である。見事な二連敗だ。

 おでん口喧嘩強すぎでは……??

 

「わはははは!!むくれんなむくれんな!

 精々仲良くなってこい!」

 

 愉快そうに笑うおでんの顔が今だけは憎たらしく感じる。

 私も一々重く考え過ぎなのかもしれないが、この男は被害者代表と言っても過言ではない存在であるにも関わらず軽すぎやしないだろうか。

 

 ……そもそも、そもそもだ。仲良くなってこいなどと軽率に言われても──。

 

 

 

「………………の」

「……ん?」

「…………仲良くって、どうやってなるの……」

 

 

 

 

 

 ──今世ぼっちの私に、どうしろと。

 

 

 

 □■□

 

 

 

 許さん。

 絶対に許さん。

 

 私は激怒した。必ず、かの邪智暴虐のおでんをぶん殴らねばならぬと決意した。

 私には友人がおらぬ。

 私は、極悪人の娘である。媚を売り、愛想を振りまいて暮らしてきた。

 けれども好ましい相手との交流となると、人一倍不慣れであった。

 

 メロスになっとる場合かって?

 私だって別になりたくてなっているわけではない。

 

 おでんあの野郎、恥を忍んで誰かとの仲良くなり方を訊いた私に「そりゃおめェ、自分のやり方でやらねェことにゃ始まらねぇだろ!」などと無責任に笑って答えやがった。

 

 前世ならいざ知らず、今世の私の友達はゼロ人だぞ。父以外の相手と碌に交流せず生きてきたんだぞ。

 しかも前世なら友人を作りたければ何かしら共通の話題を使えたというのに、護衛三人との共通の話題なんて存在しない。

 

 強いて言えばおでんの破天荒さや格好良さについてなら話せるのかもしれないが、私がそれらについて話し出すのは最早煽りでしかないだろう。

 

 私は懸命にそういうことを説明した。

 直訳すると「アドバイスくれ!!」という意味になる内容を十分(じゅっぷん)近い時間をかけて話し続けた。

 

 結果、おでんは答えてくれた。

 

 

「ごちゃごちゃと考えても仕方ねェだろ。

 お前らしく行けばいいんじゃねェのか」

 

 

 そう。そういえばこの男、自分のやりたいようにやりまくっていたら周りがどんどん魅了されていったという、スーパーウルトラカリスマ持ちだった。

 キューティベイビーの皮被って父親に気に入られに行ってた私とは対極の存在。助言を求めてまともな返答が返ってくると思っていたのがそもそもの間違いだったのだ。

 

 やっぱり、無難に侍たちの故郷の話とか聞くのが正解かな。

 

 なんて考えかけて、ふとおでんに言われた言葉が頭を過ぎった。

 

 

『……あー……他に助言できることはねェが、約束なら一つだけ出来るぜ』

 

『恐れずお前らしさを出していけば、ほぼ間違いなくそいつらとの距離は縮まるってな!』

 

 

「…………」

 

 …………はぁ〜〜〜……。

 …………………………まぁ一回くらいなら、やるだけやってみるか。

 

 

ハーメルンを最もよく開くのは大体何時頃ですか?(投稿時間の参考にするための質問です)

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