感情シンタイプ   作:小沼高希

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Q. 昨日の分の毎日執筆は?
A. 寝落ちてました 時差です



1月中旬、大学、一人で

気分はまあ悪くない。睡眠時間はしっかり取れた。電車は今から人身事故でも起こらない限りは間に合うはず。会場は一回だけ模試の時に行ったことがある。

 

電車を降り、道を歩いていく。僕と同じぐらいの年齢の人たちが、一緒に人の流れを作る。伸びを一つ。今日は隣に知っている人はいない。いや同じ高校の人がいるのかもしれないが僕は他の人の顔をあまり覚えないので。納倉の会場はここではない。

 

今の時間だと、地歴公民の一教科だけ受ける人達と一緒に行っていることになる。本当はもう少し早く出たかったが、睡眠を取ることを優先した。二度寝したとも言う。おかげで心は落ち着いた。

 

食べ物はコンビニで買った。休憩時間にちびちびと食べていけば、お腹が空くことも食べ過ぎで眠くなることもないはずだ。ちゃんとこういう準備はしてある。一応生物選択だし、冬休みを使って三回ほど実際の時間割で訓練した。

 

大丈夫。やれることは十分にやったはず。これが終わったら、明後日はめいいっぱい寝よう。遊んでもいい。休日じゃないから守森先生とは会えないけど。

 

写真つきの受験票を確認し、指定された席につく。来ている人はまだまばらと言っていいだろう。大丈夫。手元の倫理、政治・経済の参考書の暗記が怪しいページをざっと眺めておく。この本をちゃんと勉強した期間はあまり長くなかった気がしたけど、それでも紙が柔らかくなっているな。

 

ちょっとだけ孤独は感じる。まあでもどこかで納倉もこういう事考えているのかな、と思ったがいや思ってなさそうだな。この隙になにか別のもっとどうでもいいことをやっている気がする。メッセージを送ったら一瞬で返ってきそうだ。

 

ごきげんいかが

 

電車の中

 

アホか?

 

想像以上だった。今の時間だとかなりギリギリではないだろうか。納倉のほうの会場どこだか忘れたけど。

 

20分までは遅れていいと受験説明にも書かれている

 

違うと思うが

 

小さく笑ってしまう。ああもう、せっかく気合い入れていたのに気分が日常に戻ってしまった。まあでもいいか。こういう感じのも。

 

放送が聞こえる。そろそろ色々なものが配られる時間だ。マークシートと紙の冊子を確認。筆記用具も大丈夫。試験が始まるまで、頭の中で三権分立のメカニズムでも考えておこう。

 


 

あっけないと言ってもいいほど、本当にすぐ問題は解き終わった。もちろん怪しいものもあったけれども、出来は悪くないと言えるだろう。そうして時間が余ったわけだ。

 

何をしよう。見直しはしたけれども、ここであまり集中力を使いすぎてもいけない気がする。練習の時と違ってかなりハイペースで解いたことを考えると、そうとうアドレナリンとかが出ているのだろう。心拍とか呼吸とかのペースはあまり変わっていないけど、なんとなくそわそわした感じがある。

 

深呼吸が難しい、と言えばいいだろうか。息を吸っている最中にもどこか落ち着かない感じがする。まあ、寝ればいいか。

 

ちゃんと塗られたマークシートを裏返し、冊子をさらに重ねる。周囲の人をちらりと横目で見ても、何人かは解き終わっているようだ。これ一番前の人って全体が見えないから精神的に辛そうだな。

 

まあそんな馬鹿な事を考えながら上着を肩にかけて腕を枕に机に突っ伏す。大丈夫。別に悪夢を見たからといって寝ることが怖くなったりとかはしていない。残るは国語と英語。まあ別にそんな高い点を取る必要があるわけではないし、と思いながら呼吸をする。

 

いや明後日は学校で採点があるんだった、とどうでもいいことを思い出す。何だよ楽しくのんびりしようと思ったのに。まあ実際は二次試験の練習が始まるからそこまでゆっくりはできないんだけど。

 

第一志望以外の練習ができていないとか、滑り止めとはいえ普通に難しいし癖があるんだぞとか、そういう余計な情報が頭の中をぐるぐるしていく。まだ一教科目なんだけどな。この調子だと明日の夕方には色々と大変なことになっていそうだ。まあ受験とはそう言うものであるが。

 

これが毎日なら多少は手を抜くけど、年に一度となるとどこまで気合を入れていいかは少し悩みどころだな。いや本当は一生に一回にしたいけど。こんなつらい思いを来年もするとかやりたくない。大学入ったら似たような事やるのかもしれないけど、まあそれは今考えるべき問題じゃない。

 

眠くはならないけど、入力を閉じてゆっくりと色々考えるだけでも多分心は落ち着くはずだ。人間は一日中ずっと頑張れるようにはできていない。納倉みたいに素でできる人間ではないので、ちゃんとメリハリとか時間配分とかを考えて上げる必要がある。

 

本番はやっぱり色々と調子が予想とは違うけど、それでも想定の範囲内。大丈夫。僕ならなんとかなる。

 

目を上げて、机の上の腕時計にピントを合わせる。残り十分。見直しには十分な時間だ。上体を起こし、首を回し、問題用紙を後ろの方から開く。番号を一つ一つ確認しながら、怪しい問題についてちょっとやり直してみよう。

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