【第1章完】セブンでイレブン‼~現代に転移した魔王、サッカーで世界制覇を目指す~   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(3)船橋から世界へ

「ちょ、ちょっと待ってて!」

 

「?」

 

 しばらくして、ななみが持ってきたものを渡す。

 

「はい!」

 

「……なんじゃこれは?」

 

「ジャージよ」

 

「ジャージ?」

 

「服よ、服!」

 

「む……」

 

「いつまでも裸だとこっちが落ち着かないから、とりあえずこれを着て。うちのクラブのチームジャージよ。予備のやつだから気にしないでいいわ」

 

「クラブ?」

 

 レイブンが首を傾げる。

 

「とにかく早く着なさい! 話はそれからよ!」

 

「う、うむ……」

 

 レイブンはななみからジャージを受け取り、袖を通す。黒いジャージ姿になる。

 

「へえ、よく似合っているじゃない」

 

「当然じゃ、ワシに着こなせない服など存在しない」

 

「ど、どんな自信よ……」

 

 ななみが苦笑する。

 

「しかし……」

 

「え? サイズ合ってなかった?」

 

「いや、妙に落ち着かんなと思ってな……」

 

 レイブンが自らの股間に目をやる。

 

「あ~ご立派なものだからね~って、そうじゃなくて!」

 

「ん?」

 

「し、下着を穿いてないからでしょ! そこまではよく分からないから、後でコンビニとかで適当に買ってよ!」

 

「コンビニ?」

 

 レイブンが再び首を傾げる。ななみが頭を抱える。

 

「あ~そういう脳内設定なんだっけ……やっぱり病院に……」

 

「病院……医者のところか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「どこも悪くはないぞ」

 

「頭が悪いでしょ」

 

「なっ⁉ し、失礼なやつじゃな!」

 

「本当のことを言ったまでよ」

 

「本当に良い度胸をしとるな、貴様!」

 

 ななみはレイブンを無視して、端末をいじる。

 

「この時間でもやっている病院は……待てよ……ねえ、イレブン」

 

「レイブンじゃ! 間違えるな!」

 

「どっちでも良いわよ」

 

「どっちでも良くない!」

 

「あなた、身分を証明するものは?」

 

「は?」

 

「免許証とかないの?」

 

「……なんじゃそれは」

 

「……マジ?」

 

 ななみがかわいそうなものを見る表情でレイブンを見つめる。レイブンが憤慨する。

 

「そ、そんな、憐れみの目で見るな!」

 

「いや、身分証明書を持っていないとは……」

 

「身分証明書だと? そんなものは必要ないじゃろう」

 

「なんでよ?」

 

「ワシが魔王じゃからだ」

 

「はあ……妄想の話はもうおしまいにしましょう」

 

「だ、だれが妄想だ!」

 

「ブンレイ、あなた疲れているのよ」

 

「レイブンじゃ!」

 

「どうでも良いわよ」

 

「どうでも良くない!」

 

「まあ、ちょっと落ち着いて……」

 

 ななみが両手をかざして、レイブンをなだめる。

 

「貴様が怒らせているのじゃろうが!」

 

「しかし、参ったわね……まあ、よく考えれば、全裸で倒れていたんだから、何も持っていないのは当然か……加えて、頭を強く打って、記憶が混濁しているというか、妄想に取りつかれているというか……」

 

「おい待て、随分な言われようじゃな」

 

 レイブンの言葉を無視して、ななみが独り言を続ける。

 

「そもそも、お医者さんになんて説明すれば……? クラブハウス内で一人、勝手に倒れていました、全裸で……うん、十中八九通報案件ね」

 

「無視をするな」

 

「これ以上のスキャンダルは避けたい……これは……詰んだ?」

 

 今度はななみが両膝をつく。レイブンが戸惑う。

 

「お、おい、どうしたんじゃ?」

 

「ちょっと考えさせて……」

 

「ああ……」

 

「どうしよう……」

 

 ななみが椅子に腰かけて頭を抱える。レイブンが腕を組んでそれを見つめる。

 

「……」

 

「大事なクラブなのに……こんなことで終わらせたくないよ……」

 

 ななみの目に涙が浮かぶ。

 

「……おい」

 

「……なによ」

 

「『火を灯せ』」

 

「!」

 

 レイブンの指先からボッと火が出る。ななみが驚く。

 

「『物を浮かせ』」

 

 机の上にあった文房具がふわふわと空中を漂う。ななみが問う。

 

「な、なに? 手品? 超能力?」

 

「そのようなチャチなものではない……これは『魔法』じゃ」

 

「ま、魔法? ……っていうことはやっぱりあなた、魔王なの⁉」

 

「だから最初からそう言うておるじゃろう!」

 

「ま、魔王……マジか……」

 

 ななみが椅子の背もたれにもたれかかる。

 

「と言っても、この世界では、これくらいしか使えないようじゃな……」

 

 レイブンが苦笑する。

 

「それでも、動画サイトでバズりそうね……」

 

「……あの文字はなんと書いてある?」

 

 レイブンは壁に貼られた横断幕を指差す。

 

「え? ああ……『船橋から世界へ!』よ……このクラブの合言葉……」

 

「クラブ……組織や勢力のようなものか? それにしても世界を相手どるには大分心もとない気がするのじゃが……」

 

 レイブンが周囲を見回す。ななみが尋ねる。

 

「……なんの話をしているの?」

 

「世界征服の話じゃ」

 

「ぷっ、世界征服……そうね、私たちはサッカーで世界制覇を目指していたわ……⁉」

 

 レイブンがななみの前の椅子にドカッと座る。

 

「その話……詳しく聞かせてみろ」

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