元暗殺者、宮益坂女子学園へ赴任する   作:俺っちは勝者の味方ー!

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まふゆ母のCV.豊口めぐみさんて、マ?



優等生の時間

 

 

 私のクラスの担任になったという先生は、この学校では珍しい男の先生だった。短く綺麗に切り揃えられた水色の髪に小さな体躯をしているから、私たちと同い年くらいの女の子だと言われても不思議に思わない。

 潮田 渚先生…クラスメイト曰く美形の男性教師だという彼が来たからか、周りはいつになく盛り上がっていた。HRの時間の半分が潮田先生への質問責めで失われるほどに。

 

 私も興奮している様子を装い、ただ時間が過ぎるのを待っていた。新しい担任がどんなに物珍しくとも、そんなことは()()()()()()()()()()

 

 浮き足立つクラスメイトの話に相槌を打ったり、先生の第一印象の良さに共感したり、私は優等生らしく振る舞った。一方の潮田先生は終始困ったような表情をしていたが、質問を無理やり切り上げようとはせず、その一つ一つを丁寧に返していて楽しそうだったと皆んなは言う。

 『困っているのに楽しい』。私には…その理由がよくわからなかった。

 

 

 それとHRの途中。ほんの一瞬だけ私の体を鋭い視線が貫いた気がしたけれど、あれは何だったんだろう…?

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 始業式の日から二週間が経った。

 あれから一つわかったことがある。それは、潮田先生の授業はこの上なく解りやすいということ。

 英語を担当科目とする先生は私たち二学年だけでなく、一・三学年の授業も請け負っているそうで、その全ての評判がとにかく高い。

 

 それにただ解りやすいだけでなく、『丁寧』『効率的』『覚えやすい』『楽しい』『優しい』の五拍子も揃った授業が大多数の生徒に大ウケし、学年問わず引っ張りだこなのだとか。

 加えて、授業の時だけでなく業間や昼休み、放課後にも生徒と積極的にコミュニケーションを試みる人柄の良さも相まって、その人気っぷりに拍車を掛けているそう。

 

 …と、クラスメイトが話してくれた。普通の『先生』とは一線を画したような担任、潮田先生のありのままを理解はしたけれど、やっぱり何も感じることはない。どうせ、あの人も同じ…。だから…

 

 

「朝比奈さん。これから朝予告した二者面談をしようと思うんだけど、今時間空いてるかな?」

 

「はい。大丈夫です」

 

 

 いつも通り優等生を演じ続けよう。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「名目上二者面談って堅い言い方をしてるけど、そんなに緊張しなくても大丈夫。肩の力を抜いて気楽にいこうか」

 

「わかりました。よろしくお願いします、潮田先生」

 

 

 新しいクラスに変わったこと、交友関係について不安に思うところはないかと…漠然とした、けれど私を気遣った質問から先生との面談は始まった。

 

 

「クラスの友達との仲は良好ですし、今のところ困ったことは特にありませんね」

 

「それは良かった。よく朝比奈さんが友達に勉強を教えている姿を見かけるから、少し心配してたんだ。根を詰め過ぎないよう程々にね」

 

 

 ? 去年からいつも通り過ごしているだけなのに、そんなに心配するものなの…?まるで自分のことのように安心したり、心配したりする潮田先生のことがますますよくわからない。

 

 

「? どうしたの、朝比奈さん?」

 

っ。ふふ…いいえ。潮田先生の反応があまりにも女の子らしくて」

 

「いや何度も言うけど僕男だからね!?」

 

 

 ……ツッコミのキレがやたら鋭いのはもっとわからない。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「ーーーーーーさて、そろそろ進路について話そうか。確か、朝比奈さんの第一志望校は私立東京医師大学…都内でもトップクラスの難関校だけど、君の学力なら受かるチャンスは十分にある大学だね」

 

「…はい」

 

 

 それから至って真剣に進んだ面談は進路の話題に移る。そして、開口一番に告げられたのはこれまで幾度となく聞いてきた言葉。潮田先生も成績を見て、お母さんやお父さんと同じように私に医者になってほしいと思っているのだろう。

 私は否定せずに、首を縦に振った。

 

 

「……そうだなあ。医大を目指しているなら、一度僕に聞かせてくれないかな?君が医者を目指すその理由(わけ)を」

 

 

 

 妙な間を空けてから先生にそう問いかけられ、私は固まった。このタイミングで質問されるのは初めてだったし、彼の視線が真っ直ぐ私を捉えて離そうとしない。

 何より医者になりたい理由なんて持っていないから。強いて挙げるなら、母からの薦めとしか言えず、それらしい理由は……ダメ。何も、無い…。

 

 

「ーーーーーーなんて、いきなりこんな意地悪なことを聞かれてもすぐには答えられないよね。本当にごめんなさい、朝比奈さん」

 

…あ。いえ、気にしないでください。うまく考えをまとめられなかった私の方に責任がありますから」

 

 

 『良い子』を装うための、なんとも都合のいい嘘。私にはそのまとめるべき考えの一つすら持っていない。

 …潮田先生が顔を上げると、そこには普段と変わらない柔らかい笑顔があって、思わず萎縮してしまうような視線の面影すら無かった。

 

 この先生の思惑が、わからない。

 

 

「うん。それなら朝比奈さんの意志がしっかりと固まったら今度こそ僕に教えてほしい。一番大事なのは君自身が君の意志をはっきり示すことだから」

 

「……」

 

「さあ、いい時間だしそろそろ終わろうか。次の順番の子に声をかけてきてくれるかな?」

 

「…わかりました。失礼します」

 

 

 なんとなく、この先生と顔を合わせているのが怖くなった…このまま話を続けると仮面越しに『本当の私』を見透かされてしまいそうで。急いで職員室から逃げたいと心音がうるさく脈動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「朝比奈さん」

 

「!」

 

 

 去り際にかかる声。思わず私は息を呑んだ。

 

 

「今日はありがとう。こうして君と話すことができて本当に良かった」

 

「…はい。こちらこそ、ありがとうございました」

 

 

 

 潮田 渚ーーーーまだよくわからないし油断の隙もない先生だけど、私と本気で向き合おうとしてくれた大人…な気がする。

 

 




渚先生は宮女の生徒たちの距離感が近すぎて、いつかセクハラで訴えられるんじゃないかと内心怯えてるらしい。
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