元暗殺者、宮益坂女子学園へ赴任する 作:俺っちは勝者の味方ー!
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宮益坂女子学園 文化祭。
油断した…。あれよあれよと生徒たちにされるがまま、文化祭のコスプレショーに参加させられた僕は今になってすごく後悔している。……もう皆まで言わずともわかるだろう。
「どうしてこうなったぁ!?///」
現在進行形で例のアレ――
しかも、飛び入り参加の癖にちゃっかり最カワイイ賞を掻っ攫ってしまったし、ほんとに解せない。(というか最カワイイ賞って何?)
…さらなる追い打ちとして、最カワイイ賞受賞者は残りの文化祭をずっとこの格好で過ごさなければならないというのだから迷惑な話だ。ショーは午前に行われたので、この拷問があと半半日続くと思うと胃が痛くなる。
(このあとも仕事が残ってるっていうのに…)
憂鬱な気持ちが一際大きいのにも理由がある。それは、担任として自分のクラスが運営する催しを常時確認していなければならないから。
宝探しのカギとなる謎解き。それらが出題されるポイントを巡回するのが僕の役目なのだが、それはつまり…
そうなれば周囲の反応の良い悪いに関係なく、僕のメンタルがどんどんすり減っていくのは確実だ。カルマと中村さんに
――けれど、既に賽は投げられた。
こんな中途半端なところで逃げ出してしまうのは生徒の手本として相応しくない。多少注目を浴びることになるのも覚悟の上だ。
ものすごく…ものすっっっっごく不服ではあるが――
「やるしかない…!」
教師としての務めと羞恥心をかけた僕の秤は、前者の方に大きく傾いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
宮益坂女子学園 中庭。
「すきあり! 絵名のギョウザもーらい!」
「ちょっ、ずるいわよ瑞希! 私まだ一個しか食べてないのにっ!」
「待って…二人とも。人混みに酔って気持ち悪く―――う゛っ…」
「「奏ぇ!?」」
やっば…奏がグロッキーになっちゃった。急いで木陰に連れて行って休ませないと。
ええとええと……あっ。あそこならベンチもあって丁度良さそう。
「よいしょ、っと。奏大丈夫?」
「うん。なんとか…」
「やっぱり人混みと直射日光のダブルパンチは奏にはキツかったみたいね。落ち着くまでゆっくり休ませてあげましょう」
「そだね」
参ったな…。愛莉ちゃんたちのそっくりスイーツを筆頭に思わず目移りしちゃうような屋台がいっぱいあって、ボクも配慮が足りなかった。
生憎手持ちに水はないし、絵名も同じように水を切らしてしまっている。これじゃ奏に水分補給をさせてあげられない…。
「少し休憩すればまたすぐ歩けるようになるよ。そんなに気を遣わなくても…」
「ダメよ! 夏じゃなくても熱中症になり得るケースだってあるんだから」
「そうそう。だからここは大人しく絵名の言う通りにしといたほうがいいよ、奏。意地でも立ちあがろうとしたら、きっとすごい剣幕で取り押さえられちゃうだろうしね」
「流石にそこまではしないわよ」
普通に会話に混ざってくる様子からして本当に大したことないのかもしれないけど、奏の虚弱さは舐めちゃいけない。またふとした拍子に倒れて怪我でもしたら大惨事だ。
「ボク自販機で水買ってくるから、絵名は奏のことお願いね!」
「うん、わかっ…――――ちょ瑞希! 前見なさい前!」
「へ?」
と、二人のほうを振り向きながら走り出したのが良くなかった。絵名の注意が聞こえた瞬間には時すでに遅く…ボクは真横から歩いてくる人影と思いっきりぶつかってしまった。視界に入った水色のシルエットが揺れ、ボク達は同時に尻餅をつく。
「いたたぁ…。ごめん、大丈夫――!!」
相手の姿を捉えると、骨の髄まで
「こ、こちらこそごめんね。全然前を見てなくて…」
――
ミドル丈に青藍色のワンピース、丸を基調とした白いエプロン、ヘッドドレスを纏うその姿は一目でメイドの
「ホントに大丈夫? どこか痛むところはない?」
「ううん、平気だよ。こうやって普通に立てられるから。心配してくれてありがとう」
「ほっ…よかった」
いやヤバ。はにかんだ表情もカワイすぎでしょ。この大胆な格好に慣れていないながらも他人を思い遣る健気な姿は破壊力抜群だ。見る人が見れば思わず卒倒しちゃうね、これ。
……む? 何やら背後から怒りを孕んだ物騒な足音が。
「ほら言わんこっちゃない! きちんと前見なきゃダメで…しょ……」
どすどすと音を立て、怒りを隠そうともしなかった絵名の動きが目の前にいるメイドさんを見た瞬間に停止する。
絵名の周りに小さな宇宙が生まれ、彼女はその中心をぐるぐると回り続けている。…なかなか呆然とした状態から戻らないので思い切って声をかけた。
「おーい絵名〜、戻ってこーい」
「――――ハッ!」
あれ? もしかして気絶してた?
なんて心配した束の間…
「ねえねえあなた! 私と一緒に写真撮りましょ! 絶対悪いようにはしないから、ね? この通り!」
うわぁ…めちゃくちゃ早口でツーショットの許可ねだり始めたよ、この陰険自撮り女。カワイイ子をダシに「いいね!」をいっぱい獲得したいって魂胆が見え見えだ。
ボクや奏はともかく、下心丸出しのゲスな事情にこんな穢れを知らなそうな子を巻き込まないでほしい。
「え…っと、写真撮影はOKしかねてるので、その…ごめんなさい///」
「はーい、チェキ会はNGだって。大人しく諦めるよ、絵名」
「ぐぬぬ…なら三千円からで!」
「「それもう別の商売だから!?」」
絵名、流石にその橋は渡っちゃいけないよ。
「というか、奏をちゃんと見てるって約束はどうしたの…」
「あ」
「おい」
完全に我忘れてたんかい。ポンコツか。
そんなボクたちのやりとりを聞いていたからか、メイドさんも木陰に座っている奏の姿に気づいたようだ。…こんな優しい子にこれ以上心配をかけさせるわけにはいかないな。
「しょうがないなあ。すぐに水買ってくるから今度こそ奏のこと頼んだよ、絵名!」
対して…奏のためとか、メイドさんに気を遣わせないようにとか、色々考えを詰め込みすぎていたボクにはその
悪寒を催す下卑た悪意と欲望が、ボクの背中にひっそりと纏わりついていることに。
◆◇◆◇◆◇◆◇
(水水っと。…よし)
中庭から程近い位置にあった唯一の自販機は人気の無い校舎裏に置かれていたものしかなく、ここにおいては文化祭の華やかさと隔絶されているような雰囲気を感じた。
…ここに長くはいたくない。お目当ての代物は手に入ったし、早く退散しよう。
そう思った矢先――
「ねえ、そこのお姉さん。ちょっといいかな?」
「! ………」
タイミングを合わせたかのように、ガラの悪い二人組の男がボクに迫ってくる。耳ピアスをこれでもかとつけていたり、ダボっとした締まりのない服を着ていたり、彼らは典型的なチャラ男だった。
…はあ、全く
「何、お兄さんたち? もしかして口説いてる? 悪いけど友達を待たせてるから、そんなに悠長にしてる暇無いんだよねぇ」
「くひひ…そうつれないこと言ってくれんなよ。ただ一緒に遊ぼうぜって誘ってるだけだろ?」
くどい。そして、ウザい。
おそらく、ボクが「YES」と頷かない限りしつこく粘着してくるタイプなんだろう。多少強引に押し通すか、走って逃げてやり過ごすかで悩むけど…後者は最終手段だ。今は話題をひたすら逸らしまくって、抜け出すチャンスを窺ってみる。
「そういうのは間に合ってるからさぁ、また出直して来てよ。今度はもっとスマートな格好で誘ってくれると嬉しいかな」
「まあ、そう言わずによお…」
「――――おい、ちょっと耳貸せ」
「ちっ。んだよ?」
初めて対面した時から口説きもせず、ボクをじろじろと見つめていたもう片方の男の表情が変わった。
得も言われぬ嫌悪感…それはかつて幾度となく経験したものと同じ匂いがした。
やめて、いやだ…。
「は? まじ? こいつ―――なのかよ」
「ちぃと肉付きがいいだけかと思ってたがよ…喉元とかみてみろ。ほら」
「……うわ、ガチじゃん。俺らみたいなバカ釣って愉悦に浸ってるとか趣味悪すぎ。キモいの域越えてるわ」
うるさい…。
キミたちなんかに言われなくても、ボクが最低なやつだってことくらい自分が一番よくわかってる。
…けど、そんなボクの意思とは無関係に、彼らが振るう心無い言葉の
楽しいはずの文化祭に来てまでどうしてこんな辛い目に遭わなくちゃいけないのか、まるでわからなかった。この拷問に等しい時間が早く終わってくれと、心の底から願い続ける。
(誰か、助けて……)
「感心しないなあ」
「「「 ! 」」」
「寄って集って
酷く冷めた声が聞こえた先には、ボクがついさっきぶつかったばかりのメイドさんの姿があった。その突然の登場に、ボクはもちろんチャラ男の二人組も唖然となってその場に立ち尽くした。
「あ? いきなりしゃしゃり出てきて何なのお前」
「関係ないやつは引っ込んでろよ。俺たち別に悪いことしてるわけじゃねえんだぜ」
「……」
衝撃から再起した二人は横槍を入れられたことに機嫌を悪くし、ボクからメイドさんへと
「へえ…じゃあ君たちは、そちらの彼女に辛そうな
「それ、は――」
「ふざけるな」
刹那、一点に凝縮された怒気が瞬く間に解き放たれる。
…脚が凍って動けない。ボクですらこんな有様なのだから当然、直接もろに受けたチャラ男たちはこの世の終わりみたいな顔に変形し、玉のような脂汗を滴らせていた。
「相手の気持ちを
…それとも」
「「っ…!」」
「そのふざけきった容姿と態度を、余すことなく
そう言って、ボクとチャラ男たちの間に彼女は立ち塞がる。
目の前にいるのは本当にあの
「んだよテメェ、先公気取りのつもりか…」
二人組のうち一人がそんなセリフを吐き捨てる。ようやっと絞り出せた言葉なのか、弱々しく震えていた。
「 “気取り” も何も、歴とした先生だもの。道を違えた
「「「……は?」」」
これには思わずボクも本音が漏れ出た。
この学園の演技派生徒が背伸びをしているだけなんじゃないかと何処かで思っていたけれど、言われてみれば確かに…あの怒り方は格が違った。実際、とても現役高校生に怒られている気がしなくて背筋がゾワっとしたし。
「嘘、だろ? こんなお肌ピッチピチの女教師がこの世に存在するのかよ…」
「メイド服がっつり着こなしてるから全くわからんかった…」
「――――」ピキッ
「ヒエッ…」
再び漏れ出る怒気はさっきよりも密度が増していた。心做しか周りの気温が2、3度下がったような…。
「僕のことはどうでもいいよ。それで? 彼女に何か言うことは?」
「「さ、さーせんした!」」
「あ、はい」
天罰が下って欲しいとは心の隅で望んでたけど、二人がした行為と応報は全然釣り合っていない気がする。メイド先生の圧倒的な気迫にビビりちらかすチャラ男たちは滑稽というより、むしろ気の毒に思えてしまった。
謝罪を済ませて逃げるように退散する彼らを見届けると、ふうっと大きなため息を吐く声が聞こえてきた。
「こういう日には羽目を外す輩が多くてね。目を光らせておいて正解だったよ」
「あ。そういえば…どうしてボクの居場所がわかったんですか」
「君の後をつける怪しい二人組を、さらに僕が追跡しただけさ。ただのナンパで済みそうな雰囲気じゃなかったから、後先考えず飛び込んじゃった」
「そう、だったんですね。ありがとうございます」
「ふふ。どういたしまして」
優しい人だ…。見ず知らずのボクなんかのために、あんなに怒ってくれるなんて思わなかった。全然煙たく扱われなくて、逆にどう反応していいのかちょっと困ってしまう。
けれど拷問から解放されたおかげか、今は心がとても軽く…そして暖かい。
「さあ、急いで友達のところへ戻ろうか。乗りかかった船だし最後まで付き合うよ」
「……それなら、お言葉に甘えさせてもらっていいですか?」
「もちろん」
悪い人じゃないのは確定してるし、先生を名乗るだけあってとても頼りがいがある。何より、打算もなければ裏表もない純粋な好意を受け取らないのは失礼極まりない。
そう考えて了承の意を示すと、この上ない笑顔が返される。あはは、ボクには眩しすぎるよ…。
「――さっきの会話」
「!」
「全部聞いていたわけじゃないけど、これだけは…どうか忘れないで欲しい。
それでも…どうしようもなく苦しい時は迷わず僕に相談して。どんな場所にいても必ずマッハで駆けつけるから」
両手を力強く握られ、気付くとボクの手の中には電話番号の書かれた紙切れが収まっていた。
もう……言ってることとやってることが無茶苦茶だよ、この人。可笑しくて涙出ちゃう。
―――でも、
「ぷっ、あはは。マッハで助けに来るとかかっこいいけど誇張しすぎでしょ〜」
「む。心外だなあ、それくらいの気持ちと覚悟を持ってるって意味なのに」
人の優しさに触れる暖かさが、五臓六腑に染み渡ってゆく。可笑しさで涙が出そうなんじゃない、嬉しくて涙が出そうなんだ。
…ダメだよ、ボク。ただの嬉し泣きで今日初めて出会ったばかりの人に心配かけさせちゃ。ましてやまだ名前だって知らない、のに……あ。
「名前」
「ん?」
「まだボクたち、お互いの名前知らないですよね?」
「そんなわけなi―――うん、あったね…」
すっかり自己紹介を済ませた気になっていたけど、思い返せばボクはこの人が宮女の先生ということしかわからない。それは向こうも同じようで、「面目ない…」と言いながら頭を掻いている。
「僕は宮益坂女子学園2年B組の担任、潮田 渚です。どうぞよろしく」
「暁山 瑞希っていいます。こちらこそよろしくお願いします、渚さん」
“ボク” をちゃんと見てくれる大人がいる…。その事実を噛み締めるだけで幸せな気持ちになれた。
彼はまさしく、お姉ちゃんたち家族だけしかいないんじゃないのかと、半ば諦めかけていた時に差し込んだ一筋の光明だった。
潮田 渚――ちょっと変わってるけど底抜けに優しい彼女にも、いつかボクの秘密を話せたらいいな…。
「潮田先生…?」
「朝比奈さん!? どうしてここに!?////」
「
「?」
「よくお似合いですよ」ニコッ
「……////」カァ〜〜!
「「「 What`s? 」」」
そのあと、まふゆのクラスの担任が渚さんという事実と彼の性別が
話の展開が雑でベタすぎたか…?