最終的にハッピーエンドになるFE風花雪月   作:嫁キャラが選べない

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コンセプトは「キャラ同士のしょうもない絡みが見たい」です


プロローグ(孤月の月)

 

私が思うに──────ヒトは誰しも生まれながらの野望を抱えている。

そのカタチが何であれ、ヒトはその至上命題の為に命をかけて挑み続けるものなのだ。

人々はそれを『運命』と呼ぶ。

 

それが、どんなに悍ましいものであったとしても。

 

私が自分の悍ましい野望を自覚したのは、私が3歳の頃だった。私の父ゴエティアの悪政により平民たちによる反乱が起こったのだ。

当然、平民が貴族に勝てるはずもない。反乱軍たちは無惨にも私の住まう屋敷に到達する事は無かった──────ただ一人を除いては。

 

「貴様…ゴエティアの一人娘、サテュロスだな!?その命貰い受ける!」

 

「危ない!お嬢様ああっ!」

 

何十本も身体から矢を生やした男の一撃は、私を庇ったメイドの命を奪うには充分過ぎた。

男は無念そうに崩れ落ち、メイドは私にもたれかかって最期のことばを遺そうとしていた。

 

「お……じょう…さ、ま……ご無事で…」

 

メイドの手が私に伸びる。そういえば、この女には娘が居て私と同じくらいの年齢だと常日頃言っていたのを思い出した。

そして、つい魔が差した。

 

「薄汚い平民が、私に触らないで。」

 

その言葉を放った瞬間、メイドの表情が失意と絶望に染まり上がる。私の下腹のところから何かが疼く気がした。

おそらく、その時に私は私の野望に気がついたのだろう。

 

私の野望は───「人に不幸を齎すこと」だ。

 

 

 ──────────○○○────────

 

-孤月の節・二十九日-

 

フォドラ歴1180年、私が17歳の頃に私はガルグ=マクの士官学校へ通う事になった。

なんでも、父親のゴエティア=パーネス曰く

「紋章持ちとして有力貴族に嫁ぐ為相手を探してこい」

との事だった。

 

正直、凄く嫌なのだがゴエティアの不幸な姿を見る為に思索を巡らせた結果、ガルグ=マクで婿探しをする事になった。

それに人と多く接する機会が増えるのは良い事だ。出会った分だけ不幸に出来るのだから。

 

私は他の生徒よりも割と早くガルグ=マクに到着したらしく、時間的にとても余裕があった。

折角なので、学校内を色々と見て回ることにした。

 

「やぁそこの可憐なお嬢さん、もし良ければ君の名前を教えて貰えるかな?」

 

中庭を歩いていると、オレンジ色の髪をした二枚目が声をかけてきた。身のこなしからして貴族だろう。

 

「私の名前はサテュロス=パーネス。あなたは?」

 

「オレ?オレはシルヴァン。君みたいな綺麗な人に覚えておいて貰えたら嬉しいな」

 

随分と軟派な男だ。しかし油断はならないのが貴族という生き物だ。よく見ればこの男、目の奥が笑っていない。

 

「パーネスの名を聞いてそんな言葉を返してくる人は初めてです。大体は嫌そうな顔をするものですが」

 

パーネス家は貴族間では悪い意味で有名だ。主な原因は私の父ゴエティアによるものが大きい。

ゴエティアは典型的な圧政貴族で、何度も反乱を起こされては首謀者を血祭りにあげている残酷な人だ。

当然、その娘である私も社交界では忌み嫌われてきた。特にグロスタール家からはそれはもう酷く嫌われていたものだ。

 

「シルヴァンさん、あなたもパーネスの汚名を知らないわけではないでしょう。私と話していると変な誤解を生みますよ」

 

「ああ。知ってるさ…だけど、サテュロス。君は君だ。そうだろ?むしろオレとしては誤解された方が……」

 

「私は…私………?」

 

サテュロス=パーネスは悪魔の娘だ。悪魔の娘は羅刹女に違いない。あんな親子、滅んでしまえばいい──────こう言われて育ってきた私にとって、その言葉は初めてのものだった。

 

「そうさ、君は君。親父さんの事は親父さんの事だ。それよりどうだい?これからオレと食事でも」

 

「………少し、気持ちを整理させてください。食事はまた後日でも?」

 

「…おお!良いとも、オレはいつまでだって待つぜ。他ならぬ君の頼みならね」

 

シルヴァンさんはやや驚いた顔をした。この様子では、何人かにアタックした後轟沈しているのだろう。

シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエ。覚えておこう。

 

 

-孤月の月・三十一日-

 

 

シルヴァンと食事に出かけた帰りに、ふと気になって訓練所へ向かうと、そこには一人の男の人が徒手空拳で仮想の敵を相手に戦っていた。

水色の髪をした彼は、その訓練を覗いている私に気づく素振りもなく一心不乱に特訓していた。

 

「ふっ!はっ!せええいっ!……ふう!」

 

仮想の敵にハイキックをお見舞いし、その男は一息ついた。良い機会なので、話しかけてみることにした。

 

「こんばんは。今の見てたけど凄かったよ」

 

「ん?ああ、悪い!気付かなかった!すまねえ、ありがとな!」

 

「汗かいてるでしょ。私のハンカチ貸すから、それで拭きなよ」

 

「おお!助かるぜ、アンタは?」

 

「私?私は…サテュロス。君は?」

 

「俺の名前か?カスパルってんだ!よろしくな!」

 

カスパルは良い笑顔で返事をしてくれる。そんな顔を私に向けないでほしい。不幸にしたくなっちゃうから。

私は慌てて垂れそうになる涎を抑えながら置いてあった訓練用剣を手に取る。

 

「おっ、サテュロスも訓練するのか?」

 

「ちょっとね」

 

幼少期から人を傷つける術を模索してきた私は、当然のように剣を扱う事が出来る。

その腕前は剣を教えにやってきた兵士上がりの家庭教師を一方的に叩きのめす程だ…と言っても、叩きのめせるようになるまで死ぬ気で訓練したというのもあるが。

 

「おおお!俺、剣は専門じゃねぇんだけど分かるぜ。サテュロスの剣、めっちゃ綺麗だな!」

 

「そう?ありがとうカスパル。カスパルの拳も凄く鋭かったよ」

 

「へへっ!ありがとな、そうだ。ちょっと手合わせしねえか?俺の拳とサテュロスの剣、どっちが強いか勝負だ!」

 

私が了承する暇もなく、カスパルが私の対面に立つ。しぶしぶと言ったふうに私も剣を構え、カスパルを見据える。

風が吹き、木の葉が一枚訓練所に落ちる。その瞬間に火蓋は切って落とされた。

 

「はああっ!」

 

「効かないよ!せいっ!」

 

カスパルの拳による二連撃を回避し一撃斬り返す。しかしそれは躱され、すぐさま裏拳が飛んでくる。剣の腹で拳を打ち払い、蹴りを入れるももう片方の拳で守られる。

何ども応酬を続けている内に、二人の息が合ってくる。それは正に戦闘舞踊。戦いの中での睦言。浮かべる表情は互いに恍惚としていて、一瞬が永遠のように感じられた。

 

「これで────最後だ!」

 

「応とも!」

 

二人の剣と拳がぶつかり合い、そこで戦いは終わりを告げた。互いに健闘を認め合い、握手をするといつの間にか湧いていたギャラリーから歓声が上がった。

 

「うおっ!?何だ何だ!」

 

「夢中になり過ぎて気づけなかったな…」

 

その後、私たちはギャラリーを押し除けて自分の部屋へと戻ったのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

-とある日-

 

ガルグ=マクには浴場が存在する。

基本的には身を清める以外の用途は無いのだが、この場所は時折、秘密の会話をする時に役に立つ事がある──────特に、異性に聞かれたくない事などを話す時だ。

 

「………………なあ、カスパル。サテュロスについて何だが…」

 

「おう、俺もお前と喋りたい事があったんだ」

 

シルヴァンとカスパル、二人が目線を合わせる。二人が言わんとしている事は互いに同じである事を理解していた。

 

「「距離感が近過ぎる!」」

 

これは、サテュロスの悪どい計画の一つであるのだが、サテュロスは人が最も不幸な瞬間は「死別」にあると考えている。

故に、より多くの人間と絆を結びその全てを不幸にするという計画を立てたのだ。

 

その甲斐もあってか、サテュロスは非常に老若男女問わず気軽に接してきて好意を隠さない人間として人々の目には映るのだ。

 

「ほら…アイツ、顔だけじゃなくて性格もイイだろ?悪い奴に騙されちまうんじゃねえかって心配でな」

 

「シルヴァンもそう思うよな!?つうか、サテュロスに微笑まれた奴の顔見たことあるか?屈強な騎士がデロデロになってたぞ!凄えよアイツは…」

 

「まあ…男があの翠緑の瞳に微笑まれたらイチコロだろうよ。サテュロスの燃えるような赤い髪も、なんか良い香りがするって噂だぜ?」

 

「そういえば、俺がサテュロスと手合わせしてからアイツとの関係についてしつこく聞かれたな…」

 

「何?詳しく聞かせてくれよ、その話」

 

「ああ。実は──────」

 

カスパルがサテュロスと戦った時の事を話していく内に、シルヴァンの顔は好奇から驚きへと変わっていた。

 

「お前とは何回か手合わせしたから分かるが…お前に肉薄する程の剣の使い手なのか?サテュロスは…」

 

「おう、しかも戦ってて凄え楽しかったし。シルヴァンはなんか無いのか?」

 

「オレは…そうだな、アイツと飯を食いに行った時なんだが──────」

 

・・・・・

 

オレはサテュロスとの約束の日に、予定調整をしくじって他の女の子との約束と被っちまったんだ。

仕方ないから、他の女の子とサテュロスの二人に同時に会うことにした。約束の時間に来たサテュロスはオレとの食事を心の底から楽しみにしているように見えた。

 

そして、他の女の子も間髪を容れずに来た。当然、問い詰められたさ。

「私とこの女、どっちを選ぶの〜」ってな。

するとサテュロスの奴、驚いたことに「二人で楽しんできて」なんて言い出したんだ。

 

さらには「ここで終わるまで待ってるから」とも言った。渡りに船だったオレは、その言葉に乗ることにした。

女の子とのデートを終わらせたオレは一応サテュロスが居ると言っていた場所まで行った。七時間も経っていたのだから、もう帰ったとも思った。

 

だが、サテュロスは居た。

オレが来るなりニコリと微笑んで「待ってたよ」と言うもんだから、あまりの健気さに驚きを隠せなかったな。

そのあとはまあ、約束通り食事をして別れたよ。にしたって、七時間も待たせたのにサテュロスは始終嬉しそうにニコニコしていたもんだから、こっちが申し訳なさで一杯だったよ。

 

・・・・・

 

「──────とまあ、こんな感じだ」

 

「シルヴァン…見損なったぜ……」

 

「待て待て待て!オレもまさか居るとは…!」

 

その夜、男たちの熾烈な舌戦が浴場にて繰り広げられたという。

 




主人公の紹介
名前 サテュロス・パーネス
赤い髪に緑の目をした容姿端麗、才気煥発、品行方正な少女…の仮面を被った性悪。親が親なので野望抜きにしても性格は悪い。ただし、社交性はあるので内面を誤魔化せている。
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