あまねく奇跡の召喚録 作:熱核戦争先生
「おいおい、なんで不良が戦闘車両持ってるんだよ!」
装甲車から外の状況を双眼鏡で確認していた自衛官はスケバン集団の兵力に驚愕していた。
「しかもあれ、19式多銃身機関銃に似てますよ!てか、なんで私より小柄な子が軽々と使ってるの!?」
19式多銃身機関銃は“ミニガン”や“無痛ガン”と言う愛称で知られている在日米軍のM134をベースに開発した自衛隊の最新機関銃だ。
外見はM134だが、新規格である6.8mmx43mm
とはいえベースとなったM134より低反動や軽量化は実現しているが、それでも反動は強く重量は80kgなので到底1人で運用するような代物なのは変わりはない。
だが、目に映っているスケバンは自衛官の言う通り、自分達より小柄な上1人で扱うような代物ではない武器を軽々と使っている。
しかし、発射速度を意図的に落としているようには見えず、かといって装薬量を減らした弱装弾を使用しているようには思えなかった。
「隊長、艦隊からは!?」
「不足の事態に備えて“ほうしょう”にはオスプレイが待機しているからいつでも出撃可能だ。今は現地政府に許可を要請している途中だが、あっちにもメンツがあるだろうし、一般市民の不安を煽りたくないだろうから渋るだろうな」
「メンツを気にしてたり許可を要請している途中にやられたら元も子もありませんよ!」
「…今は待つしかない。今は俺たちだけで外交官を守るしかない」
自衛官達は不安になりながら今の状況を見守るしかなかった。
一瞬で戦場と化したオフィス街にヴァルキューレとスケバンの銃弾や擲弾が飛び交っていた。
「ヒャッホーウ!!」
「撃って撃って撃ちまくれぇ!」
スケバン達の銃火器からばら撒かれる7.62mm弾や9mm弾がヴァルキューレの生徒に吸い込まれていく。
近距離で5.56mm弾30発分を当てられても気を失うだけの頑丈さを持つ生徒だが、それでも痛いのは変わりない。
ヴァルキューレの生徒に吸い込まれず跳弾した銃弾が、歩道沿いの街路樹や建物の外壁を削り、ガラスが割れていく。
「狙撃班、位置に着き次第援護射撃しろ!」
「突撃班、射撃開始!」
ヴァルキューレ公安局もスケバンを制圧するため、K.S.P.Dの文字が書かれた黒色の防弾シールド越しに自動小銃で応戦する。
地面に三脚で設置された第806号ヴァルキューレ制式重機関銃に12.7mm弾の装填が完了し射撃を開始する。
ヴァルキューレの5.56mm弾や12.7mm弾がスケバンの方に吸い込まれていく。
「第1装甲班、後ろの外交官が乗っている装甲車を守れ!戦車を盾にしろ!」
カンナの指示で第10号ヴァルキューレ制式装甲戦闘警備車2両が道路を塞ぐように停車する。
『局長!撃ちますか!?』
「撃っても良いが、貴重な砲弾だ。よく狙って撃つんだ!戦車を優先的に狙え!」
年々凶悪化する不良に対抗するため予算は少しだけ増えるが、それでも財政状況が芳しくないヴァルキューレにとって戦車の砲弾は貴重である。
一発一発を有効的に使うためため、優先目標を決めて絶対に外さないように撃たなければならない。
装甲戦闘警備車に搭載されている
自動的に目標の位置が割り出され照準が定められる。
48口径105mmライフル砲がオレンジ色の発射炎で輝き、105mm
音速に近い速度で発射されたAPFSDSはCanon.C型戦車に着弾し爆発を起こす。
車内から操縦していたスケバン達が慌てて逃げ出す。
残ったCanon.C型戦車も負けじと反撃するが、装甲戦闘警備車の車体側面に付けられた爆発反応装甲に90mm高速徹甲弾が侵徹し内部の爆薬が起爆するだけで大したダメージが入らなかった。
装甲戦闘警備車は残りのCanon.C型戦車に照準を定め各個撃破していく。
『敵戦車全て撃破!』
「局長、相手が押されています」
「よし、グレネード班、催涙弾用意!」
自動小銃を公安局の生徒が、ピカティニー・レールに装着した第203号ヴァルキューレ制式40mm擲弾発射機に、催涙弾を装填し宙に向けて撃ち込む。
催涙弾はスケバン達の上で炸裂し催涙ガスが立ち込める。
「ぐぎゃあああああ!!」
「目がぁ、目があぁぁ!」
催涙弾の性能が発揮し、皮膚に痛みが走り、目をやられに涙する者が出てきた。
「敵、沈黙!」
「この気を逃すな!突撃班、突撃用意!」
カンナの指示で自動小銃や散弾銃を持った公安局生徒が、丸盾型の透明なライオットシールドに持ち替え突撃準備を整える。
「突撃!」
カンナの号令と同時に公安局生徒は武器とライオットシールドを片手に走り出す。
「やあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「お縄につきやがれぇ!!」
未だに催涙ガスで苦しんでいるスケバンに、公安局生徒は2人ペアで彼女らを取り押さえていく。
「逮捕ぉ!」
スケバンの両手に手錠が掛けられていく。
どう言う訳か手錠をかけられた後に亀甲縛りや乳房縛りなどの緊縛をされ顔を赤くしているものもいた。
「て、テメェら、2人がかりなんてずるいぞ!」
「ズルもクソあるか!大人しく矯正所にぶち込まれとけ!」
「へっ、そんな所すぐに逃げ出してやるからな!」
強がっているスケバンの元にカンナが近寄る。
「はぁ、残念だが、お前らはアルファトラス矯正所行きだ」
アルファトラス矯正所は連邦矯正局が管理する矯正所の一つで、D.U.から20km離れた人工島にある矯正所でキヴォトスで1番脱走不可能な矯正所と言われていた。
矯正所は必要最低限の人員を残し、オートマタやセントリーガンが24時間365日体制で監視している。
矯正所は高さ50mの塀に囲まれ、塀の上には重機関銃が内側に向けられ、屋上や施設周辺には対空ミサイルシステムや沿岸砲が配置されている。
更に塀の外は道路以外の場所には2000個の地雷やトラップが仕掛けられおり、島の沖合には200個の系維機雷が敷設されている。
アルカトラズ刑務所や網走刑務所もびっくりな監視体制である。
「ちょ、おま、嘘だろ!あの“七囚人”がいた場所かよ!?」
「あんまりだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
彼女が言葉にした“七囚人”は、脱獄不可能なアルファトラスを脱脱走した代表的な囚人7人のを指す。
連邦生徒会長が失踪した時にサンクトゥムタワーの行政制御権が喪失した時に脱走したのだ。
「全く、クロノスの報道を信じるバカが居るとは呆れたものだ」
「うるせぇ!キヴォトスが終わるなら、“お腹壊すまでバニラアイスを食べたり”“シャーレの先生と一晩過ごしたい”とか何かド派手な事をしたいもんだろ!」
「…お前らが襲撃したのは一国家の外交官が乗って居る車列だ。襲撃して外交官に何かあれば重大な外交問題に発展しかねかった。それにキヴォトスが終わってるなら今頃攻撃されてる」
「それに、乗っていた外交官はシャーレの先生と同じ“大人”だ。銃弾を撃ちこもれても気絶するだけで済む私達とは違って1発で致命症になる」
「ぐぬぬぬ...」
スケバンは返す言葉もなく押し黙ってしまう。
「矯正所に行って自分のやった事を反省するんだ。それと、ドラマで見るようか牢屋じゃないから、そこは安心しろ」
矯正所の牢屋は相部屋ではあるが、快適さは日本以上ノルウェー未満なのでそれほど苦では無い。
矯正プログラムが過酷すぎるだけなのだ。
「あと、アルファトラスは入ったら、自分の“大切な物”を失うかもしれないから、そこは気をつけろ」
「た、大切な物?」
「大切な物は大切な物だ...」
カンナの意味深な発言にスケバン達の顔が強ばる。
「あとは任せる。護送車が到着したら、そいつらは乗せろ。後処理は任せる」
「了解しました」
カンナはその場を後にし、本来の自分のすべき任務に戻る。
「銃声が止んだ...」
「催涙弾みたいなのを撃ち込んでましたし、制圧したのでしょうか?」
ヴァルキューレの戦車で視界を塞がれ状況が掴めずにいた自衛官達は固唾を呑んで結果を待っていた。
すると、助手席側のドアが開きカンナが顔を出す。
「日本の皆様方、大変失礼しました。襲撃した不届き者達はヴァルキューレ警察学校が威信をかけて制圧しました」
「カンナ局長、頭に包帯を巻いていますが、大丈夫ですか?」
小原はカンナの頭に巻いている包帯を見て無事なのか確認する。
「小原さん、私のような者はお気になさらず。小原さん達こそお怪我は?」
「私達は大丈夫です」
「それは良かった...」
カンナの顔に見かけによらない安堵の表情が浮かぶのが分かる。
「隊長、ヤマトから外交官保護による自衛隊機の出動許可は下りなかったようです」
「…そう簡単に許可してくれんだろうな」
自衛官は無線で外交官の無事とヴァルキューレによるスケバンの制圧成功を報告する。
To Be Continued......