あまねく奇跡の召喚録 作:熱核戦争先生
日本国首都東京 首相官邸閣議室
丸テーブルを囲むように内閣総理大臣をはじめ各省庁の大臣が一堂に会していた。
「一部の技術は我が国を凌駕してるようじゃないかキヴォトスは」
そう口にしたのは第102代内閣総理大臣の村角栄一郎だ。
自由保守党の政治家で、僅か35歳で就任した歴代最年少の内閣総理大臣である。
「ええ、主に土木技術と重力制御技術とスパコンは目を見張るものばかりです。重力制御技術に関しては純粋な科学技術でできています」
ホログラム映像にサンクトゥムタワーやモーゼ・ゲート・ブリッジや要塞都市エリドゥが映し出される。
「このエリドゥは侵入者を撃退するためにビルの位置変える事ができるらしいです。オマケにエリドゥの有する機能を専用のパワードスーツとリンクさせて戦闘もできる、戦略や戦術が効かないのです」
「その演算性能は未来を予知して確定する事が可能。我が国の最新鋭スパコン“道真”はシュミレートを元にした高確率な未来予測が限界です」
友重国防大臣と長岡科学技術大臣がエリドゥの驚くべき性能を熱弁する。
「すごいのは分かったが…俺が不思議だと思うのはキヴォトスには“大人”と呼べる存在が皆無な事だ。しかも男もいない」
「確かに不思議ですね。男がいないのになぜ彼女らは存在してるのか」
人間は男性と女性による生殖行為をしないとできないのが常識である。
調査していく内にキヴォトスには幼少期と言う概念も存在する。
しかし、その前の乳児や胎児がいるはずなのだが、それに関しては不明である。
「まさか、彼女らは人口子宮で生を授かったのか」
「キヴォトスのどこかにそう言った施設があるって事か…なんとまぁ闇深い」
村角らは、女子校の幻想を打ち砕くような現実を知ってしまったような雰囲気になっていた。
「それはそうと、キヴォトスへの渡航に関してだが、現状はレベル2で良いよな?」
「はい、一般人の渡航人数は制限されていますが、渡航する際は各種審査や外務省主催の講習会を受けた上で担当する案内人の指示に従って行動するようにしています」
キヴォトスの超銃器社会を理由にクラークリアの多くの国はキヴォトスへの渡航を禁止している中、日本だけは制限はあるが一般人のキヴォトスへの渡航は許されている。
18歳以上60歳未満の健康な男女、キヴォトスへの渡航人数は1週間に6人まで、観光以外での渡航(政治活動・就労目的など)は禁止、外務省主催のキヴォトス観光の講習会(銃撃戦に巻き込まれた際の守り方など)に必須参加、担当する案内人の指示は絶対で必ず従う事など…
渡航する際の費用は外務省が5割負担するが、それでも気軽に観光できるとは言い難い。
「とは言え、キヴォトスの政情によっては一般人の渡航は禁止しないといけないからな。キヴォトスの政情は随時注視してくれ」
「わかりました」
「ところで、キヴォトス人DNA検査計画はどうなってるんだ?」
村角が言うキヴォトス人DNA検査計画は、キヴォトスの種族とクラークリアの種族の関連性を調査するための計画である。
エモール王国を中心にキヴォトスに対して抱いている疑念…キヴォトスの有翼人とアニュンリール皇国の有翼人との関連性を調査し疑念を払拭する事を目的としている。
もちろん、それ以外にもキヴォトス人のDNAサンプルが単純に欲しいということもあるが。
「主要学園とは現在交渉中です。交渉成立後は各学園の衛生部やカラカサ学園が協力してサンプルを採取します」
「だが、キヴォトスが魔帝の末裔と言うのは理解出来ん。アニュンリールならまだしもキヴォトスに魔帝の要素なんか皆無だろうに」
村角はエモールを中心に唱える“キヴォトスは魔帝の末裔であり警戒すべき”と言う主張に対し理解に苦しんでいた。
「“ヨアディアの悲劇”のような事件もを起こさなければ良いのですが…」
ヨアディアの悲劇
5年前に日本を含む第2次世界連合軍とアニュンリール皇国との間で勃発した大東洋大戦で、アニュンリールの地方都市ヨアディアにあったヨルディア学院の生徒と教職員1200名がエモールの青年騎士らによって虐殺された事件のことである。
この時のアニュンリールは敗戦色が濃厚で首都や主要軍事都市以外の都市での抵抗は皆無で、総司令である日本からは“抵抗の意思がない者には手を出してはならない”と要請されていた。
勿論エモール以外にも民間人を虐殺した国の軍隊は居るが、ヨアディアに関しては規模が大きすぎた。
青年騎士の行動は単なる暴走で、エモール王国全体の意思では無いのは留意するべきだが。
「エモールの動きも充分警戒してくれ」
「分かりました」
「総理、トリニティのティーパーティー、ゲヘナのパンデモニウム、ミレニアムのセミナーのトップとの会合についてですが...」
村角達の会議は続く。
To Be Continued......