あまねく奇跡の召喚録 作:熱核戦争先生
D.U.横府航空基地
ヴァルキューレ警察学校とエイギル沿岸警備大学校が共同で運用している航空基地。
ここにはヴァルキューレのヘリコプター部隊やエイギルの哨戒部隊所属機が多数駐機している。
普段はヴァルキューレのヘリがD.U.市内へ出動したり、エイギルの哨戒機が定期哨戒で出動しているが、この日は違った。
大量のヴァルキューレ・エイギル両校の生徒やカイザーPMCのオートマタが基地内を巡回していた。
基地正門は対戦車用のバリゲードが敷かれ、至る所にヴァルキューレの装甲戦闘警備車、ドローンなどが配置に付いていた。
これほどの警備態勢が敷かれているのかと言うと、日本の国家元首である内閣総理大臣がキヴォトスに来訪するからだ。
今日から2週間の間、連邦生徒会との会談をはじめ、3大学園トップとの会合、キヴォトス各地への視察を予定しており、D.U.をはじめキヴォトス各地では各学園の風紀委員会も動員しており、厳重な警備態勢が敷かれている。
風紀委員会の大半は各学園自治区に拠点を構えていたヴァルキューレがD.U.警備や日本首脳部警護の為に割かれており、その穴埋めの為に動員している面が大きいが。
基地体育館
基地の要員が訓練やレクリエーションなどで使用する体育館は特別警備本部が設置されていた
『こちらタンゴ1、基地裏門に向けてトラック2台が接近中。車内には武装したヘルメット団を確認。これより制圧する』
『第2小隊、武装したヘルメット団と交戦中』
『こちら第6小隊、基地付近にてヘルメット団とスケバンの抗争が勃発。制圧したいので応援をお願いします』
「…キヴォトスでも類見ない警備を前に、近づくとは良い度胸してるな」
様子を見守っていた公安局のカンナは、静かに関心していた。
そんな彼女の横に情報通信局局長の報﨑ユキヨが近づく。
「奴らが使ってると思われるネット掲示板を見たところ、この基地はある種のチキンレースの舞台になってるらしいですよ」
「チキンレース?」
ユキヨは自身のタブレットをカンナに見せる。
「なるほど、私達はこいつらの紙以下のプライドの為に弄ばれてるわけか」
カンナは一旦目を閉じる。
目をカッと開き机に置いてあったマイクを手に取る。
「現場の各員に告ぐ。この基地に近づき害を成す輩は容赦するな。ヴァルキューレの意地を奴らに思い知らせてやれ!」
カンナの激励を受けたヴァルキューレの生徒の士気は高揚し、チキレースで基地に近づくヘルメット団やスケバンを次々と撃破・捕縛していく。
キヴォトスから300km地点の上空
機体側面に赤のラインと垂直尾翼に日の丸が入った輸送機が悠々自適に飛行していた。
日本国航宙自衛隊が保有する特別輸送機B747−8IC“ライジンサン・エアフォース1”だった。
ボーニング社のB747の最終モデルをベースに、敵味方識別装置やミサイル警報装置をはじめとした軍用機器を搭載し、チャフ・フレア、EMP防御が施されている。
総理大臣などの政府要人から天皇などの皇族関係者の輸送、在外邦人保護などを任務としている。
ライジングサン・エアフォース1は任務である総理大臣をキヴォトスまで輸送している所だ。
「キヴォトスまで後300kmか…ワクワクするな」
機内の総理執務室では村角栄一が心を躍らせていた。
「今までむさ苦しいおじさんか妙齢な御婦人達を相手にしてたが、今回の会談相手は女子高生だし刺激的だな」
総理補佐官がゴミを見るような目で村角を見ていた。
「総理、遊びで来たわけじゃないですよ。あと、その発言下手すれば週刊誌の格好の餌になりますよ」
「おっと、これは危ない」
「室内からは盗聴器は確認されなかったので大丈夫ですよ」
村角は補佐官に弄ばられてる事に気づき気を取り直した。
「にしても、今やアメリカがやっていた事を我が国が真似る事になるとは、誰が予想した事やら」
「“ツクヨミ”の事ですね」
「そうだ、ツクヨミだ」
ツクヨミと呼ばれたそれは、ライジングサン・エアフォース1に随伴しているE−5国家空中指揮機“ツクヨミ”の事を指す。
航宙自衛隊のC−5J戦略輸送機をベースに、強力な指揮通信能力、長時間滞空可能な飛行能力を有し、有事の際の国家指揮能力の維持や古の魔法帝国による全面戦争により東京が消し飛ばされても残存する海上自衛隊SLBMや戦略ロケット自衛隊に対し打撃を与える事を前提とした航空機である。
E−5はアメリカのE−4空中指揮機ナイトウォッチの、“大統領が外遊する際に随伴する”と言う運用方法も参考にしており今回のキヴォトス来訪にも随伴している。
ちなみにE−5以外にもF−3A戦闘機“ソウクウ”4機が護衛で随伴している。
「あんな物を作ってまで魔帝に勝とうとするなんて、人間の執念は凄まじい物だな」
村角は人間の執念で作り上げられたと言っても良いE−5に軽く恐怖していた。
「あれをキヴォトスで使うような事が起きなければ良いが…」
「神に祈るしかないですね」
机に備え付けられている電話から、“ジリリリリリリン!”と言うベルの音が室内に響く
「俺だ」
『総理、間も無くキヴォトス領空です。準備をお願いします』
「さて、仕事の時間だ」
村角はそう言いクローゼットにかけていたスーツを羽織り仕事の時の顔に変わる。
D.U.横府航空基地
普段はエイギルの哨戒機が発着するのに使う滑走路に、村角を載せたライジングサン・エアフォース1が、ランディングギアから接地し、白い煙とタイヤ痕を残しながら着陸する。
しばらく滑走した後に、自走しながら誘導員の指示に従いローディングエプロンに進入する。
ローディングエプロンでは首席行政官兼連邦生徒会長代行のリンが、村角を迎え入れるため待機していた。
一国の首相を迎えるためか彼女は緊張していた。
「リンちゃん、顔怖いよ?もっと自然に笑って」
そんな彼女に先生が話しかける。
「だ、誰が、リ、リ、リ、リンちゃんですか。見ての通り私は緊張していませんので心配無用です」
(本当に大丈夫なのかな…)
先生の心配を他所に、どこからともなく現れたタラップカーがライジングサン・エアフォース1の機体前部のハッチに横付けする。
ライジングサン・エアフォース1のハッチの手前では村角が待っていた。
「このハッチの向こうには女子高生が待ち構えているのか」
「総理、くれぐれもエロ親父のような鼻の下を伸ばすような事はしないでください。総理のせいで我が国の品位が下がった時は腹切りでは足りませんよ」
総理補佐官が村角にキツいお灸を据える。
「君、相変わらず物騒だな」
総理だろうとその毒舌をお構いなしに振り続ける総理補佐官に村角は関心すら覚えていた。
そうこうしている内にハッチが開き光が漏れる。
村角は外に向け一歩踏み込む。
鼻の下を伸ばしたような顔ではなくキリッとした顔付きで一歩一歩と歩き出す。
「捧げ銃!」
リンと同じく待機していたヴァルキューレ儀仗隊リーダーの号令が響く。
儀仗隊はの格好は普段のラフな感じとは違い、ブラウス風の制服を羽織っており、ヴァルキューレ創設時に使われていた着剣付きスプリングヴァルキューレ銃と儀仗用ライオットシールドを捧げ銃の姿勢で構える。
ヴァルキューレの捧げ銃の姿勢は自衛隊式に儀仗用ライオットシールドを手首に装着している独自の方式を採っている。
村角はヴァルキューレ儀仗隊と言う花道を潜り抜けリンの元に辿り着く。
「ようこそ村角総理。首席行政兼連邦生徒会長代行の七神リンです。遠路はるばるキヴォトスの地へお越しいただきありがとうございます」
「第58代内閣総理大臣の村角栄一です。七神首席行政官、盛大な歓迎ありがとうございます」
村角とリンは互いに手を出し握手する。
To Be Continued......