あまねく奇跡の召喚録 作:熱核戦争先生
首脳会談会場 キヴォトス・セントラル・ホテル
日本の首脳陣とキヴォトスの首脳陣との会談会場として選ばれたキヴォトスの高級ホテル。
両首脳陣との会談は無事に終了し、安全保障条約の取り決め、双方の重要技術の導入と法整備、キヴォトスの異世界での活動に対する支援体制の構築で会談が進んだ。
今はホテルの大会場で、両首脳陣をはじめ連邦議会議員、大企業の重鎮などが出席する食事会が開催されている。
立ち食い式のビュッフェで日本で馴染みのある和洋折衷の料理で村角達は難なく受け入れていた。
「ふぅ、疲れたぜ」
村角は喉の渇きを潤すためコップに注がれていたオレンジジュースを飲み干す。
「まさか安全保障条約の取り決めがここまでスムーズに行くとは思いませんでしたよ」
友重国防大臣が皿に山盛りで盛り付けたチャーハンを頬張りながら村角に話しかける。
「そうだな。俺も正直困惑しかなかったが、自衛隊基地の建設候補地の要望まで呑んでくれるとは思わなかったよ」
「本土に持ち帰って国会での承認と部隊編成などしないとですね。早くても1年以内には全てを完了したいです」
「国会での承認は問題ないだろう。国内は古の魔法帝国復活に恐れて挙国一致状態だ。難なく承認されるはずだ」
村角と友重は話題を膨らませてる所に川野外務大臣や総理補佐官が集まり始める。
「おお、食事会は楽しんでるか?」
「ええ、楽しんでますよ。ただ、キヴォトスは未成年が多い事もあり酒が無いのが不満にありますが」
「ありぇ、酒なら頼めば飲めますよ?聞いてなかっらのれふか〜?」
総理補佐官は酒を飲みすぎたせいなのか、呂律が回らない状態で喋っていた。
「君、飲み過ぎじゃないのか?あと、だらしないぞ。酒に溺れても良いが、身なりは最低限整えてくれよ」
よく見ると彼女の丸メガネは少しズレており、ジャケットスーツは少しはだけていた。
「ふへへへ、良いじゃらないれすか〜こう言う時ぐらいは」
彼女は村角の腕に抱きつき上目遣いで見てくる。
(あ、あれ、普段は真面目で総理だろうと毒舌巻いてくる可愛くないやつだと思っていたが、意外と可愛いな)
村角はあの時の忠告を思い出し彼女を離そうとする。
「こ、こら、離れなさい!我が国の品位だとか言ってたのはどこの誰だったか思い出せ!」
「にゃへへへへ〜」
「ダメだ、こいつ出来上がっている!」と村角達は同じように思い始めた。
そんな彼女の事を置き別の話題で気を晴らそうとする。
「…連邦捜査部シャーレの先生の事についてだが、皆は彼をどう見る?」
村角はシャーレの先生の話題に切り替える。
出迎えから会談の終始まで連邦生徒会側の首脳陣として出席していた人物だ。
「そうですね…温厚そうな好青年と言う印象でしたよ。聞くところによると広大なキヴォトスのあちこちに出回っているほど多忙なようですし」
友重が先生の事を評する意見をする。
「食事会開催前に先生と話す機会があったのですが、「大人とは、子供のために責任を負うもの」と言う彼なりの信条の元、生徒のために動いてるようです。あそこまで真っ直ぐな人間は会った事もありませんよ」
今の所、先生に対する印象は好印象的になっている。
「その件の先生はどこへ行ったのかね?」
「急な呼び出しを受けて“キヴォトスヒカリ”と言う高速鉄道で百鬼夜行連合学院に出張するとか」
「会談が終わった後に出張だって?本当に多忙だな」
先生の人間離れした業務量に村角は目を丸くする。
「失礼、日本の首脳部の方々でしょうか?」
村角達は声のした方向に振り向く。
そこには、チャールトン自動小銃に似た銃にトリニティのティーパーティーメンバーが着ているような制服を着た生徒、StG45突撃小銃に似た銃にゲヘナのパンデモニウムメンバーが着ているような制服を着た生徒、FG42自動小銃に似た銃にミレニアムの制服と白衣を着た生徒が立っていた。
「えっと、貴女方は?」
「私達は連邦議会の議員です。ゲヘナ代表、連邦議会元老議員の西久世アリナと申します」
「同じく鷹司アクアです。トリニティ代表でフィリウス分派から参りました」
「万旗ニミコ。ミレニアムスクール新エネルギー開発部所属。よろしく」
彼女らは、会合を予定しているキヴォトス3大学園出身の連邦議会議員で直接村角達に会いに来たのである。
「貴女方がキヴォトス3大学園出身の生徒さんですか。お会いできて光栄です」
「いえ、こうして村角総理達に会えて、私達も大変嬉しく思っております」
村角と彼女らの社交辞令は早々に先生の話題に切り替わる。
先生に対する生徒の生の声を聞ける絶好のチャンスだ。
「先生ですか?前に些細な事で先生に相談したところ、親身になって寄り添ってくださいました。しかも、人口の3/1を占める生徒の名前をほぼ覚えてくれてますよ」
「え、ウチだと風紀委員の連中共に犬の首輪を付けたり、足舐めたりしてる噂を聞いたんだが…」
「先生は良き理解者。私の趣味に全肯定してくれる仲間」
肯定的に評価するアクア、ゴミを見るような目で評価するアトナ、同族と評価するミニコと先生に対する評価は千差万別。
その中でもアリナの評価は、それまでの好青年で自分の信条を貫き通す事に評価していた所に、冷水をぶっかけられたよう衝撃を受けた村角達であった。
一方その頃…
「なんだろう…また誰かに誤解されてるような気がした」
フランス国鉄のTGVに似た高速鉄道“キヴォトスヒカリ”の普通席で揺られながら、シッテムの箱でゲームに課金していた先生の背中に嫌な汗が流れる感覚を感じたのは別の話。
To Be Continued......