お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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前回、敵対表明ともとられる形で黄光と別れましたが、けんか別れ、袂を別った訳ではありません。

事が起きたら各々己の信ずる道を進もうって確認しあった感じですね。


お兄様は告らせたい、白銀に

 京都の本邸を出て八雲ーズに運転を任せて車をのんびり東京に向かわせる。下道を国道一号通ってのんびりと。

 

 

 途中、何処か適当なビジネスホテルに一泊。八雲ーズが本邸に一泊する案を提案してきたけど、あの流れで黄光兄さんと別れてきたのにそれはねぇよな。

 

 結局酒は盃2杯しか飲まなかったけれど、久しぶりの飲酒に心が少し踊っている。

 

 

 

 前世の頃は好きだったんだよ。ブラック勤めだったから、それだけが楽しみな時期もあった。でも今はねぇ、いくら飲んでも酔わんのよ。

 

 まず間違いなく不老不死辺りの何らかの機能が酔うという現象を阻害しているみたいだな。

 

 

 お陰で酒を呑んでも詰まらん。その代わり今世では女子の様に甘いものが好きになった。酒か菓子か、か。少し笑えるな。

 

 そんなにグルメって性質じゃねぇ。コンビニスイーツで十分楽しめる。我ながら手軽なもんだ。最近では八雲ーズがその辺りを弁えていて、俺の好みの菓子を常に用意してくれている。ちょっと気恥ずかしいけど、有難く恩恵にあずかっている所だ。

 

 

 

 高校生になったかぐやに会う。少しは大人になったのかな。氷姫の時と比べると時を経たにもかかわらずリボンを付けたかぐやは少しだけ幼く見える。早坂にはまた年齢ネタで弄られるかな。四宮邸で暮らしていた時は、結構遠慮なくズバズバ物を言っていたからな。

 

 時折八雲ーズが過剰反応しそうになっていたけれど、最後の方では「またやってら」って感じで慣れていた。いや、早坂の影響で八雲ーズが少し変わったのかもしれない。

 

 

 このペースでのんびり下道をいっても、休憩を挟んで大体明後日の昼には四宮邸に着くだろう。

 

 途中、うまいもんでも食って気分転換をするのもありだな。

 

 

 ま、八雲ーズは早めにお屋敷に帰って疲れを癒してくださいと文句を言っていたから、明日は高速を使う事になるだろうが。

 

 こういう車でゆったり旅も嫌いじゃないんだけどな。育ちのいい奴らにはわからんらしい。

 

 

 

 ふらりと入ったビジネスホテルなのに、気が付けばホテルの周囲は何処からともなく黒服が集まってきている。ご苦労なこって。久しぶりの日本だから気が抜けていたな。

 

 

 

 ふぅ……。この先どういう流れになるにせよ、一度四宮の内部は荒れる事になる。四条の手打ちの条件は帝が主体になるのなら、原作通りの流れになるな。四条家にトロフィーをってな。方便なのは解るがかぐやをトロフィー扱いするのは好きになれん。それでもおそらく、この世界観的にも他の流れは無いだろう。

 

 

 四条が動いた時こちらの策が奇麗に嵌れば、物語終了後、四条家の影響は世界市場からある程度排除されることになる。四条帝と眞妃の兄妹には申し訳ないが、かぐやが四条帝を選ばないのであれば、四条家は将来の四宮家の禍根となる可能性があるからな。帝が跡を継ぐのであれば問題はなさそうだが。

 

 

 実際の所、そんなに奇麗にいくかどうかは運次第って所だな。未来は、先になればなるほど予知の難度が上がる。

 

 

 

 四宮内部でのかぐやの立場は可能な限り守るつもりだ。内部抗争で血みどろの結末を迎える事になってもだ。黄光兄さんには万が一かぐやに望まぬ結婚を強いるなら覚悟しておくように伝えてある。

 

 なら、最初からかぐやを守れば何事もなく白銀とスタンフォードに行けるだろう、というのも正論だが、可能なら原作通り白銀御行からの告白をかぐやに、と考えればこういう危険な橋も渡らざるを得ない。

 

 どのみち四条の攻撃は起きてしまうのだから。

 

 

 態々黄光兄さんに伝えたのは兄さんが内心反発するのを期待して、という理由もあるけど、ある程度事態をコントロールできればと考えての事だ。

 

 

 この望まぬ結婚という所がミソだな。

 

 

 本人が四宮家の為に自ら望んで四条帝との結婚を受け入れる、そんな原作の流れになるのなら俺は実力行使はしない、という事になる。

 

 

 

 まぁ、あれは白銀を人質に取った脅迫交渉だけどな。別に兄さんが脅迫しなくても、未来予想を話してやればいい。事実を積み重ねていって、少しだけ過程を曲げて最悪の未来を話してやるだけで。

 

 

 かぐやが四条と結婚しない理由である、「白銀御行」を恨んだ四宮家の親戚連中が暴走して、彼を害するなんて事もありうる。親父と名夜竹さんの時も親戚連中は結構厄介だった。ましてや黄光兄さんでは事実として抑えきれるかどうかわからん。

 

 

 事実として原作でも四宮家は黄光の本家派閥以外にも派閥があって、それぞれに思惑がある。

 

 雲鷹の派閥もあれば、かぐやに期待している派閥もある。青龍……はちと判らんが、四宮家以外、つまり血筋を否定する派閥もあるかもしれない。

 

 これ、多分原作でも、四条との手打ちができなかったら親戚連中が暴発していた可能性あるんじゃないかな。

 

 

 これは普通に事実だから、頭のいいかぐやならすぐに理解できる。そして、自分から結婚を受け入れると言い出すだろう。白銀たちに一縷の望みをかけて。

 

 

 黄光兄さんはプライドさえ捨てることが出来るならこう言えば良い。「俺じゃ親戚連中を押さえきれん」って

 

 この時点で黄光がかぐやを信じて、話し合いでの手打ちに賭ける可能性は、原作ではゼロだ。この世界でも黄光は多少ましにはなっているけど、それでも妹を信じられるような人間にはなっていない。哀れだとは思ってくれているみたいだけど。

 

 

 それだけでもすごい進歩ではある。全然足りないけどな。

 

 

 俺が黄光に受け入れられて、それなりに仲良くやれているのは、俺が政略結婚から逃げなかった事と、今までの実績を彼なりに評価しているからだろう。一目置いてくれている訳だ。

 

 

 

 結局は、白銀たちを信じて道を用意していたかぐやが賭けに勝ち、白銀と結ばれる訳だが、そこに至る道は一歩間違えればバッドエンド確実の細い糸だったからな。

 

 

 藤原と伊井野が言っていたな。女の子だって一度は助けられるお姫様をやってみたいって。かぐやにもそんな気持ちがあったのかもな。

 

 

 

 今の四宮家は親父が倒れたタイミングで仕掛けられても、壊滅的な打撃を受ける所まではいかない。が、やはり食い破られたら痛い腹はいくらでもある。

 

 元々身内だった奴等がその気になれば致命傷とまではいかなくても、それなりにダメージを四宮に与えることは出来る。

 

 

 今のでかくなった四宮家相手でもな。

 

 短期的に見れば、四宮家は結局追いつめられるだろうし、手打ちはどうしても必要になる。

 

 

 

 手打ちができなければ四条は潰れ、四宮も瀕死になって他の三大財閥に食われるだけになる。敵は四条、四宮共お互いだけではないのだから。

 

 結局は落としどころなんだよな。

 

 

 

 事が起こる前に何とかできる可能性……。いや、原作を守りたいというのもあるけど実際の所そりゃ無理だ。

 

 話し合いで決着がつくなら、やり合う前にかぐやを連れて頭を下げれば済むはず。だが、実際にやってみても上手くはいかないだろう。かぐやの説得が功を奏したのは眞妃の助けがあったれば、ではあるけど、四条自身もこれ以上意地を張れる状況に無かったって事が一番の要因だ。

 

 かぐやはおそらくそのあたりの、引き時の空気、感覚が解っていたんだろう。

 

 

 暴走した過激派はあの事件以降急速に力を落としたはずだ。

 

 

 

 

 遺言書は……どうなるんだろうな。かぐやも親父が残した遺言状が決め手の一つだと認識して、道を用意した筈だ。

 

 頭はまわっても記憶力はあっても基本馬鹿な俺じゃよくわからんな。頭がこんがらがってきた。

 

 

 原作とは違い俺がいる。黄光兄さんとは仕事の上では反発していないし、むしろ兄さんと阿吽の呼吸でやってきている。

 

 今更どちらが四宮を継いだとしても、この形は変わらないと思うんだよね。俺が日本の外、兄さんが国内。俺は当主を継ぐかどうかなんてどうでもいいし。

 

 ただ、反本家派閥は俺を支持はしないだろうな。基本的に黄光兄さんのやり方にそって四宮を動かしてきたから。

 

 

 彼らが俺を支持するとしたら、かぐやに禅譲する事を条件にした場合のみ、だな。

 

 

 人生は長い俺の場合は特に。

 

 

 俺が継ぐ事になっても適当に、かぐやの産む子に後を任せて、後は自由に生きるって選択肢もある。世捨て人ってのも憧れるな。

 

 それまでは身体に鞭打って働くさ。

 

 と、なると早めに白銀にプロポーズさせんとな。「かぐや様はプロポーズさせたい」まで始まったら、それを楽しみに見るのも良いけど、あんまりかぐやを待たせるのも良くないだろう。

 

 たしか、野球チームを作れるくらいに子供を作ってくれるはずだから、ミニかぐやとミニ白銀に期待しよう。

 

 今度こそ、ただの優しいおじさんでいられたら良いな……。直ぐに外見年齢で置いて行かれそうだけどな。

 

 

 

 

 かぐや救出作戦の大きな力になる藤原さんも考慮から外せない。四宮の後継とかぐやの身の保全、そこを藤原さんがどう読むか。黄光兄さんの四宮家内部でのポジションをどう読むかが鍵になるか?

 

 あぁ、頭の中が堂々巡りでおんなじことを繰り返しているようだ。グルグルしてくる。

 

 

 原作通り、俺を経由してかぐやに四宮を継がせる、と言うのであれば俺はそれでもいい。かぐやは好きな事をやって実務は俺と兄さんがやればいい。兄さんは物理的に俺が抑える。その内白銀も戦力になるだろう。そういう未来もありだな。

 

 かぐやが四宮を統べるなら俺は喜んで協力しよう。

 

 クライマックスには物足りないけど。

 

 

 

 そもそも黄光兄さんが親父に遺言書をどう書かせるか。いや、そもそも書かせるかも問題だな。

 

 

 兄さんは現状、無理に四宮家の権力を自分に集中させる必要性を感じていない。と言うか無理すれば四条の時と似たような形で、俺がまとめた海外勢が四宮から離脱する可能性を理解している。

 

 無理しなくても親父の希望通り普通に相続して、そのまま黄光兄さんが当主になれば今と変わらず外国を俺が担当して協力して運営していく形になるし、それで普通に四宮はまとまる。

 

 

 

 問題になるのは四条との手打ちの件であって、遺言書は黄光を話のテーブルに付ける為の手段なんだよな。そして遺言書は交渉の材料にならないかもしれない。

 

 

 

 親父は俺がちょこちょこ擦っておいたからな。もしかしたら罪悪感で藤原の最初の案が案外すんなり通る可能性もある。黄光兄さんが遺言状を親父に書かせなかったら、だけどな。その可能性は意外と高い。

 

 その場合はゴタゴタなしか?

 

 

 

 相続や主導権争い。

 

 

 四条と四宮の分裂の件、あれも原因が四宮家が非道がどうの言っているけど、根本的な所で言えば主導権争いと変わらんからな。それが証拠に四条グループの中にもそれなりに汚い事をやっている部門はある。身内に犠牲者だって出している。内側のいざこざでだ。海外が活動の主体なら、日本の比ではない位、そう言う事が必要になる。実体験から言えばな。

 

 

 大きな組織を束ねて、仕事をするって事は奇麗事だけじゃすまされないって事だよ。

 

 

 

 

 読みが外れて遺言書を親父に書かせたとしても問題ない。どうせ親父の資産がすべて兄さんの手元にいった処で俺の資産には遠く及ばない。四宮内部に浸透させている俺の資産は他人名義にしている分を含めるとかなりの範囲に及ぶ。

 

 

 その気になれば主導権は取れる。ま、それを兄さんも知っている筈だから、火中の栗を拾う可能性は低いんだ。

 

 

 

 人間、欲深さにも限度があってね。一定以上のお金を持っているとそれ以上持ってもあんまり意味が無いんだよね。資産を増やす事が目的のゲームをしている感じになる事もある。

 

 兄さんも、原作兄さんならいざ知らず、少し俺が擦り過ぎたせいで、一寸すりへったうちの自慢(笑)の兄さんなら、遺言書には触れないかもな。

 

 

 

 うーん、そうなるとかぐや側は何を持って黄光兄さんとの交渉材料にすればいいんだろう。親父に「四宮かぐやに四宮家の権利を全て相続させる」と言う遺言状を書かせる以外だと……。

 

 無理に複雑に考えずに、かぐやが俺を使って兄さんの動きを封じて話の席に着かせるってパターンしか思いつかん。

 

 

 ただ、その場合でも原作のドタバタをする必要が無くなる。

 

 

 

 

 あの白銀が父の操縦するヘリでかぐやを救い出し、月夜の空で告白するという恐らくこれ以上にない、ウルトラロマンティックな一夜を見る事が出来なくなるな。

 

 

 

 数少ない、俺がほぼ確実に見る事が出来るであろう原作イベントなのに……。

 

 

 それに告らせたいというタイトルを回収した神回なのだから、無くては困る。かぐやだって告られたいだろうし。

 

 あれが無くても二人はくっつくだろうけど、あった方が綺麗だよな。

 

 

 それにしても、原作者様は本当に色々な所に伏線を忍ばせる。白銀の部屋の張り紙に打倒帝と書いてあるのも驚いたけれども、クライマックスの白銀と帝、そしてあの場面全体が竹取物語をモチーフにしている。

 

 

 帝から見れば白銀はかぐやを連れさる月、もしくは月の使者。黄光達はかぐや姫を月にやるまいとする護衛の兵。帝はもちろん「帝」、開封せずに燃やされた遺言書はおそらく、富士の山の上で燃やされた不死の薬。

 

 クライマックスの前は白銀が「帝」の立場で、かぐやは既に月に連れ戻されてしまっていて、不死の薬はもちろん現金10億。白銀はかぐや姫を取り返す為に不死の薬を飲んだんだ。

 

 

 クライマックス辺りの仕込みは、原作を読んだ時には最初は何となくしか気が付かなかったが読み返していく内にハッとして感動が巻き起こった事を今更ながらに思い出す。

 

 

 ……俺みたいな無能がいくら考えてもどうにもならんな。仕方がない、物語の完成度が下がるかもしれないけれど……。

 

 

 遺言書の部分は省いちゃって、単純にかぐやの身柄を本家から攫って、追われて行ってラスト、がベストかもな。ふむ……何か根本的に間違っている可能性もあるけど、仕方ない。

 

 

 燃やされる不死の薬の代わりになるモノ、か。

 

 

 まだもう少し時間はあるんだから、じっくりとどうするべきか考えよう。

 

 

 

 

 




セリフ無しの頭の中でグルグル回です。

書いている本人も頭ぐるぐるしています。



追記
この回もグルグルしていますがこの先を考えている私の頭もグルグルしています。
原作と絡む部分がちょいと難しいですね。

盗聴盗撮なしで登校潜入なしの上、潜入自体も無しだとこのままいくつか原作ネタを拾って一気に夏を超えてしまいそうな勢いです。


おそらくラストまでに拾える原作の要素がかなり減ってしまいます。


どうお話を持っていくか、さっぱりサクサク系で行くか少しの間、悩ませてください。

更新がもたつくと思うので、ストックを一つ放出しますね。

あと、アンケートのやり方がよくわかりませんが、出来るようでしたらアンケート取ってみます。アンケートの結果通りにするかはわかりませんが一応、参考にさせていただきたいです。

この先、お話の展開はどういうものが好みですか?

  • サッパリサクサク早早展開
  • 多少は学園内原作を絡めて行ってほしい
  • 盗聴盗撮どんとこい。
  • 今からでも遅くない、同級生か下級生
  • 生徒じゃなくて潜入 当初予定パターン
  • その他 もうちょっと考えてよ

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