お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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少し時間が出来て書いていたらストック二つ書けました。
なので明日投下するつもりだった分を一つ投下しますね。

漸く原作突入です。

あれだけ四宮家の人員を使って同じ屋根の下に暮らしている雲鷹にばれない訳が無い訳で……w


お兄様は見守りたい

 「……こちらB地点対象が現れました。」

 

 

 「……対象はシネマ方面へ……」

 

 

 四宮の優秀な人材が結集しただ一人、主の為に総力をあげる。かぐやの初めての映画デート、ただそれだけの為に、何十人ものスタッフが。

 

 

 もちろん内心は馬鹿馬鹿しいと考えている奴もいるかもしれないけど、ま、顔に出すような愚かな事はしない。

 

 

 それにそんな不届きな事を考えるのは極一部である。

 

 皆、もしかしたら対象「白銀御行」が主の想い人であり、将来の自分たちの主人の伴侶になるかもしれない、その可能性まで当たり前の様に頭の中にある。

 

 

 本家から派遣された使用人達ではなく主に早坂が纏めている使用人達だ。俺や本家からの指示には当然従うが、忠誠の対象はもちろんかぐやだ。

 

 いずれかぐやが四宮家で栄達すれば、自分達もその下で働き命懸けで主を支えていくつもりの奴らだ。

 

 現在はカモフラージュの為に中立であったり、次男派閥の端っこでお茶を濁している者たちが将来、かぐや派閥に参集し、表立って四宮家に覇を唱える際には、自分たちが主の側を守るのだ、と意気込んでいる者たちが多い。また半数以上はそういう派閥から送り込まれた者で構成されている。

 

 そうなるように俺が仕向けた。

 

 

 だから大抵の奴らは、自分たちのやっている事が馬鹿馬鹿しくても、真剣だし、手は抜かない。

 

 原作で、四条との抗争の際、かぐやに縋った四宮に仕える家の者達も、そう言う家の人達だったのかもな。黄光兄さんの仕込みの可能性もあるけど。

 

 

 

 俺の子飼いの奴らも大抵同じ感じだ。この人を支えて自分も栄達する。この人を支えていつかは主をトップにしたい。そんな風に考えている奴も多い。

 

 

 

 「雲鷹様、私達はこういうのスパイ映画みたいで楽しいから良いんですけど、なんで雲鷹様迄参加されているんですか?四宮家の三男が使用人に交じって……。ご当主様が耳にされましたら嘆かれるかもしれませんよ。」

 

 

 「なに、その嘆く予定の親父が俺に妹を託したんだからな。兄としては妹の将来の相手かも知れない男は気になるもんだ。

 

 ここでかぐやが下手を打ってもらってもつまらん。まぁ、困る妹の姿を見るのもそれはそれで楽しくもあるが。」

 

 

 それにこの映画デートイベントは、学院内に干渉する術の無い俺が参加できる数少ないイベントの一つだからな。当然、万難を排して参加するに決まっている。

 

 つーか多分、生白銀、見るの初めてじゃね?あ、いや、でも今の配置場所じゃ、映画館遠くて、ちらりと見る機会もないな。

 

 

 変な動きして何か失敗したら目も当てられん。映画館に近づき過ぎてもかぐやにバレる可能性がある。自粛せんといかんな。

 

 

 

 「歪んでますねぇ。こんな事は八雲ーズである私達に任せて、雲鷹様はお屋敷でごゆっくりしていてほしい所ですが。」

 

 

 「ゆっくりと言われても、本格的にやる事がねぇ。妹が毎日学校に通っているのを横目に日がな一日ボーっとして一日何回か指示書をメールで出してそれで仕事が終わりだからな。これじゃ落ち着かん。」

 

 

 「普通はその指示書を書く為にそれなりの労力がかかる筈では?一度拝見した際は、その量と質に、正直お休みになられていないと思ってしまいましたよ。」

 

 

 「あのくらいならな、大した量でもない。」

 

 

 実際、神様からもらった情報処理速度と記憶力はこういう所では役に立つ。最近では睡眠時間に分身体を作って深夜から朝のうちに済ませてしまう様にしているから、俺自身はちゃんと眠れているし。

 

 

 その内、仕事が忙しくなったら活用できそうだな、これ。

 

 いずれ仙人カミングアウトでもして、堂々と使ってみるか。業務効率が跳ねあがるぞ!

 

 ……いや、、自ら人間の枠から外れていくスタイルはやっぱりやめとこう。万が一かぐやに化け物を見るような目でみられたら悲しいからな。

 

 

 

 「それより、なんで自分たちで八雲ーズなんて言い始めてんだか。」

 

 

 「雲鷹様が私達を呼ぶときにどちらでもいい時は八雲ーズって呼ぶからでしょう。段々慣れてきてもう以前から私達ペアの正式名称になってます。」

 

 

 

 「あぁ、そう言う流れか。お前ら色々流され過ぎだろう。」

 

 

 「今では私達の他、雲鷹様付の者6名全員八雲ーズの正式メンバーですよ。」

 

 

 ……四宮家の優秀な使用人とはとても思えない。が、その主人たる俺が根がふざけているせいで、俺に仕える者たちも調子を合わせてくれているんだろう。

 

 早坂が時折俺を弄るからな。それが八雲ーズに感染し、更に周りに感染したか。弄られても怒らない俺を見て、調子に乗ったのかな。

 

 

 ま、その方が俺は気楽でいい。こいつらと仕事をする分にはこの先も楽しめそうだ。

 

 

 「おら、仕事に集中しろ。望んで志願したんだろう?」

 

 

 「雲鷹様も今は配置されている人員の一人ですよね。お言葉をお返しします。これ、かぐや様は知っているんですか?」

 

 

 「あぁ、早坂は気が付くかもしれんが、かぐやは多分知らんだろうな。あいつが俺に惚れた男の情報を掴まれているなんて知った日にゃ、そりゃもう大変な事になると思うが。

 

 少なくとも四宮邸が一部損壊しても俺は不思議には思わん。」

 

 

 

 「雲鷹様じゃあるまいし、そんな事にはなりませんよ。

 

 それにしても、これだけ大騒ぎしていて雲鷹様にバレないと考える当りが、かぐや様のお可愛い所ですが、万が一かぐや様に気が付かれたらどうするんですか?」

 

 

 原作でもあれだけ人員を動かせば、雲鷹には気づかれていた可能性はあるな。配置されていた原作の使用人たちも何故こんな事をしているのか、分からないほど鈍感じゃなかろうし、そのルートから雲鷹にも情報は漏れている筈。

 

 

 解っていて、学生の頃の思い出作りを許容したか、そもそもかぐやに政略結婚をさせるつもりが無かったか。だから自分の身を守れるように育てたのか。

 

 やっぱりかぐやが幸せになれた要因に雲鷹は外せねぇな。

 

 

 

 そんなかぐやも感謝はしているとは言ったけど、その前に死ぬまで恨むとも言っている。

 

 この死ぬまで恨むという言葉も表面だけ取れば、誤解しそうだけど、裏を返せば死ぬまで忘れないという事。だから一生感謝する、って事になるよな。そうだとしたら、本当に分かりにくいツンデレだよな、兄妹そろって。

 

 

 

 「大丈夫だろ。今のかぐやはそれどころじゃないよ。全神経を白銀御行の動向に集中しているし、周りは見えてねぇ。

 

 自然な流れで白銀と合流する事だけを考えている。俺に気が付くはずがねぇ。

 

 

 それより、仕込みの方はどうなっている。」

 

 

 チケットの買い方を知らず、白銀と段違いの席を買ってしまう喜劇を何とかしてやりたかった。ギャグ落ちも悪くないけど折角うまく誘えたデートだしな。

 

 ここは純粋に良い思い出をつくってもらいたい。

 

 

 映画館のチケット販売員全員に金を掴ませて、此方の人員を何人か潜り込ませた。白銀が買ったチケットの番号が解らずあたふたするかもしれないかぐやにさりげなく、白銀の席を伝えて正しい席へ誘導するようにしたんだ。

 

 かぐやは今回に限って言えば詰めが甘かった。

 

 

 ふっ、結構色々考えたんだけど、結局これが一番スマートだろうと思ってな。

 

 

 

 「ご指示の通りに。しかし、こんな事をしなくても早坂あたりに話を付けてチケットの買い方を事前にレクチャーさせれば済んだと思うのですけれども。」

 

 

 あぁ……そうか。

 

 

 「いや、そうかもしれんが、現時点で俺達がかぐやの惚れた男の情報を掴んでいる、と早坂にバレるのは不味かろう?」

 

 

 「いや、屋敷中大騒ぎだったし、早坂的には雲鷹さまにバレるのは覚悟の上だったのではないでしょうか。

 

 それに、もしそうじゃなかったとしても、私達八雲ーズが作戦の疑問点として早坂に質問するだけで解決したような気がするのですが。」

 

 

 あぁ、そうだな。うん、いやぁ、全く馬鹿げた話だなぁ。原作に関われると思ったら突然心が浮ついて、まともに頭が回らんかったわ。

 

 

 

 「こんな所で何をなさっているのですか?雲鷹様。

 

 まったく、かぐやさまったら、折角私が雲鷹様にも白銀会長の件を漏らさないよう気を付けていたのに。

 

 いくら、ご注意申し上げても、ばれないように気を付ければいいでしょう、お願い早坂って……。

 

 ばれない訳ないのに。っていうか、雲鷹様本人を監視人員に配置しちゃってるし!どおりで報告の声の中に若い男の子の声が混じっていると思ったら!」

 

 

 

 いきなり後ろから早坂愛に声を掛けられたが、最初から分かっていたよ風を装って、ゆっくりと振り返る。実際は口から心臓が飛び出すかと思ったよ。

 

 

 

 「まぁ、惚れた腫れたは人を愚か者にするからな。」

 

 

 「……え?雲鷹様ってそう言う経験あるんですか?」

 

 

 くぅ、煽り口調に素直に煽られそうになる。

 

 

 「ねぇよ、悪かったな。」

 

 

 「ですよねー。だって未だに独身ですもの♪」

 

 

 自分が愚かになるほど、誰かを好きになったことは無い。

 

 

 「あーぁ、これどうするんですか。まさかこんなバレ方するとは思わなかったですよ。第一、なんで雲鷹様がこんな事に参加なさっているんですか!」

 

 

 「いやー……。暇だったからな。やる事なかったし。なんか楽しそうな事やっていたから気になってな。八雲ーズもノリノリで参加するみたいだったから、俺も混ぜてもらおうかなって。」

 

 

 「馬鹿ですか貴方は。何処の世界に面白そうだからって妹の立てた作戦の監視員になるMIPがいるんですか。

 

 ミップですよミップ。もすと いんぽーたんと ぱーそん!最重要人物!!

 

 貴方はもっとちゃんと自分の立場を自覚してください。本来なら10人位で済んだ配置人員があなたの警護をする必要が出ちゃって、私の知らない間に30人近くに増えちゃってるじゃないですか。」

 

 

 ……あぁ、そうか。嫌にゾロゾロ黒服がいるなとは思っていたんだが。

 

 

 「あぁ、作戦の規模にしては嫌に人員が多いなと思ったら、これ、俺の護衛に回っている奴等もいたのか。」

 

 

 呆れ顔の早坂は軽く上を向きながら苦笑いを浮かべる。

 

 

 「もう……まったく。なんで貴方はご自分の保身に意識が行かないんですか。あ、不老不死だからはもう駄目ですからね。本気で冗談に聞こえないですから。」

 

 

 いい加減、仙人ネタは止めろと注意されてしまった。

 

 

 「いや、それよりも作戦はもういいのか?」

 

 

 「かぐや様から先ほど解散命令が出ました。今残っているのは警護の者だけ、悟られぬ距離で付いているだけです。

 

 それで。」

 

 

 早坂の目が少々きつく、冷たくなる。

 

 

 「何をしたんですか。」

 

 

 あぁ、何か勘違いをさせたかな。

 

 

 「いや、そのな。かぐやって映画館でのチケットの買い方わかっているのかなって。」

 

 

 一瞬ポカンとする早坂。

 

 

 「え、いや、まさかかぐや様に限ってそんなポカやらかす筈が……。」

 

 

 「多分、あいつ映画館初めてだろう?」

 

 

 「か、会長がいますし。」

 

 

 「あの意地っ張りが素直に男にくっついて受付いくか?システムが良く解っていないんだぞ?

 

 あれだろ?前から色々お前らでやっていた仕込みの件だろう?映画の前売り券仕込んでいた奴。かぐやの事だから、あの券だけで映画を見られると思ってるかもしれんし、席を決める必要がある事も知らんだろうからな。」

 

 

 「あ……あぁ、というかその辺りからバレていたんなら言ってくださいよ。いつ雲鷹様にバレるか私はヒヤヒヤしていたんですから。」

 

 

 「だからな、チケットの販売員にこちらの人員を潜り込ませた。」

 

 

 早坂が頭を抱えて呆れた声を出す。

 

 

 「なんでそこまでしちゃうんですか。解っているなら私に一言いうだけで良かったじゃないですか。」

 

 

 暫く動かなくなったと思ったら、少し真面目な顔になって俺と向き合う早坂。

 

 

 「というか、かぐや様が男性とお付き合いする事に、反対はなさらないので?」

 

 

 

 ……どう答えるか。今の時点でどういえば良いのか。

 

 

 「俺達も親父には、恋愛は自由にしても良いと言われた。俺個人としてはかぐやが幸せになるなら構わん。

 

 俺の口から兄さんや本家の者には伝わらんよ。八雲ーズ、おめぇらも解っているな?」

 

 

 「承知しております。」

 

 

 「命に代えても秘匿します。」

 

 

 「……と、いう事だ。」

 

 

 表情を緩めない早坂。

 

 

 「恋愛は自由、ですか。」

 

 

 「そう言う事だよ。この場ではこれ以上は言えんな。……上手く立ち回るんだろ。」

 

 

 とたんに理解の色を見せる。

 

 

 

 「では後ほど、また相談に乗っていただけますか?私の主がだんだんアホになってきてる件について、話を聞いてくださる方がいないので。」

 

 

 「アホってお前な……。」

 

 

 

 

 「それを言うなら私達の主も今回アホだったよな。」

 

 「結局この件でいったいいくら使ったんだ?」

 

 「いや、大した額じゃない筈、数百万程度だと思うが。」

 

 

 「たかが販売員を買収して人員潜り込ませるだけでそんなにかかったのか?」

 

 

 「いや万が一に備えて色々やっていたみたいだ。上映作品全ての中央辺りの席を終日押さえたりとか」

 

 

 「アホだな。」

 

 「アホだろ。」

 

 「アホですね。」

 

 

 アホだよな。




アホですな。

でも実際この作品の雲鷹って占いと情報処理速度、記憶力を活用して仕事はバリバリやりますけど、プライベートは気も抜けて空回りしてアホやらかす人って感じがします。


それと、いつも誤字報告ありがとうございます。

たまに、何でこんな間違いを!?ってな間違いをしてしまいますが
筆が乗っている時は勢いだけで書いてしまいますので、見直しても中々見きれていない様で……。

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