忙しいはずなのに結構あっさり書けました。
今日は……わかりません、本当に><;
最近のかぐや様は雲鷹様と夕食をご一緒する機会が多い。最初の内は雲鷹様は遠慮しようとしていたのだけど。
「そうですか。残念ですわ。」
と、少し寂しそうな笑顔をかぐや様がしたら、急に気が変わったらしく、一緒に食事をする事になった。
ただ、朝はかぐや様も忙しいし、昼食は大抵学校にコックが食事を届けに行く。ご家族でご一緒出来るのは、夕食だけの様ね。
雲鷹様ものんびりと休養を取っているとか言いながら、なにやら夜中ゴソゴソ作業をなさっているようで、就寝時間が過ぎてもしばらくの間は部屋の明かりが消えることは無い。
おそらく夜のうちにご自分の会社からの報告を確認して指示書を作成されているのだろう。
こんなんでお休みは取れているのだろうかと思うのだが、八雲ーズ達の話だと夜中には電気が消えてるし、以前よりも顔色が良いという話だ。
お二人の夕食が始まる前に手早く自分の夕食を済ませ、お傍に着き。お食事が終わった頃に別の仕事に回る。正直宿題などやっている時間は限られているし、時間の余裕などほとんどない。
お食事中、ご兄妹としては拙いのであろうけど、それなりに話も弾んでいた。雲鷹様は普段、冷たい印象を受ける方だが、休養を取られている今は本当に、印象が変わられてしまった。
例えるなら、以前の雲鷹様は目付きが悪い背伸びをしているヤンキーだとしたら、今の雲鷹様は姉であるかぐやのいう事を素直に聞く可愛い弟、といった雰囲気だ。
おもわずかぐや様もおかわいいと口を漏らす程度には印象が変わっている。ついつい、色々としゃべりたくなる様で、時折、会長の事を話しそうになり会話が不自然に止まってしまう事もある。
みていてこっちはヒヤヒヤものですよ、かぐや様。
特に今日は映画デートが上手くいったことを、どうしても喋りたいらしく、いつもなら楽しんでいるお食事も、会話が中断するたびに私に視線がチラチラ飛んできて、正直どうすればいいのか戸惑う。
使用人風情が主人たちの会話に混ざる訳にもいかず、じっと耐えているけど。
あぁ、かぐやさまに言ってやりたい。その目の前で何も知らないふりをしている男は、今日、かぐや様の映画デート大作戦で監視役として配置されていた一人なんですよって。
そんな事を言ったら、かぐや様はどんな表情をするだろう。ちょっと楽しみだけど、雲鷹様から話を聞くまでは私は何も話せない。
そんな話が弾んだのかどうか微妙なお夕食を終えて、私も仕事を終え、かぐや様に呼び出され、今日の映画デートのお話を聞かされる。
かぐや様的には偶然映画館であって偶然席も隣り合わせになっただけで、デートではないとおっしゃっていましたが、そうですか、偶然ですか。
その言い訳を当日配置されていた私達にする必要はあるんでしょうか。
かぐや様が楽しそうに話される内容を聞いている内に、わたしも心が弾んでくる。一日の疲れが抜けていく気さえする。同時に私のお腹の中に黒いものが貯まっていく。この後これを上手く誤魔化して報告しなくてはならない。
かぐや様を裏切るのも、誤魔化すのも、もういやだ。報告したくない。かぐや様を裏切り嘘をつき、黄光様にも嘘をつかなきゃいけないのが辛い。
黄光様に申し訳ないとは欠片も思わない。ただ、嘘をつくのが辛くなる。
ただ、今日は雲鷹様にご相談に乗っていただける日。かぐや様はまだ興奮冷めやらぬみたいだけど、多分そろそろ……。
やっぱりウトウトされるかぐや様。今日は沢山興奮されて疲れたでしょうしね。
そのままベッドに横になる。
「おやしゅみなさい、早坂。」
「お休みなさいませ、かぐや様。」
かぐや様の就寝を確認してから手早くシャワーを浴び、身を清める。
少しドキドキしながら部屋の前に待機している八雲ーズたちに入室の許可を求める。
一応寝間着に上着を羽織った格好で、年頃の娘が男の部屋に入り込むときの姿としては駄目だろう。
けど、子供の頃の延長でその辺りは私も雲鷹様もルーズになってしまっている。八雲ーズも特に変な誤解はしていない。
「失礼します、雲鷹様。」
「おう、お疲れさん早坂。
さ、いつもの儀式でもしとくか。
この部屋で行われた一切の会話は四宮雲鷹の名に置いて他者への他言は禁ずる。これは俺のお前に対する強制的な命令で、お前に選択権は無い。
お前が上司に報告する際、情報の秘匿を行い、罰せられた際にはこの件を上司に伝える事を許す。
お前に選択権は無い。ここで話した内容は上司に上げる必要は無い。」
「了解いたしました、雲鷹様。」
決まり事の文言を呪文のように唱える雲鷹様とそれを了承する私。
私達の会話はいつも、このステップを経てから始まる。これは雲鷹様が私の精神的負担を軽くするためのおまじないのようなモノ。
これがあろうがなかろうが、私はかぐや様の為に伝えてはいけない情報を取捨選択し、報告を誤魔化している。かぐや様を裏切って、禿も裏切って。禿は良いけど、報告相手って本家の人なのよね。結構鋭い人だから、誤魔化すのも一苦労なのよ。
本家に報告するまでの時間にして僅か10分か20分。時折もてるこの時間が私の癒しと救いの時間だ。
別にこの時間帯で、かぐや様の秘密を雲鷹様に漏らすわけじゃない。ただ、この先本家とのトラブルが起きた時、この件を理由に情報を秘匿する事が出来るというだけの話。
「この場で雲鷹様にそう脅されたので、雲鷹様には報告したけど本家には報告できなかったんだよー。私なんかが雲鷹様にさからえるわけないよー。文句があるなら雲鷹様にいってよ?雲鷹様が自分が本家に上げとくって言っていたから私はちゃんと報告したもん。」
本当ならこんな子供の言い訳は通じない。
ただ、雲鷹様が間に入っているから、四宮家では無理が通ってしまう。今の所そんな最終手段は発動したことは無いし、うまく本家を誤魔化せていると自負している。
雲鷹様を盾にしているようで狡いし申し訳ないんだけど、もともと雲鷹様は悪ガキの性質があるらしくて、こういう事は楽しんでやられているから、私もまぁいいか、と言う気になってしまう。
でも、この変な儀式のお陰でいくらかは私の気が軽くなる。実際に本家にバレた時は雲鷹様は私を全力で助けてくれるだろう。
そう、約束してくれたし。
この場で話す内容は、前から相談させていただいている私のいわば愚痴のようなものなんだけど先ほども言った通り主の秘密を漏らすつもりは無い。無いけど、今日の様にもうバレバレになってしまった事に関しては今更秘匿しても意味無いですし。
「で、珍しく作戦が上手くいって、デートできたようですよ。」
「ほぅ、チケットを上手く買えたのか?」
「いえ、そこは雲鷹様のご心配の通りでしたけど、販売員が白銀会長がチケットを購入するまでかぐや様を列に並ばせていたのが幸いしたみたいです。
恙なく会長の席を把握している販売員がかぐや様の応対を出来たみたいです。
会長はものすごく動揺していたみたいですけど、隣の席になったのを確認して露骨にほっとしていたらしいです。」
自分も、入り込ませた人員から報告は受けているんだろうけど、この場で重要な事は情報の確認じゃない。私のストレス解消だ。だから私が話したい事を話して良いと言ってくれた。
私が小学生の頃からずっとだ。常に時間を作れるわけじゃない忙しい雲鷹さまはそれでも月に一度くらいは電話してくれたりして私の話を聞いてくれた。
「やはり、屋敷の中に男の縁者がいるのは年頃の娘には暮らしにくいだろうな。どこか近くに家を買った方がかぐやものびのびできるんじゃないか?」
「そんなことは無いんじゃないでしょうか。かぐや様の表情も以前と比べてかなり明るくなりましたし、雲鷹様にお会いできるのが嬉しいみたいですよ。
お分かりになるかは分かりませんけど、かぐや様にとって唯一の近くにいる肉親ですから、雲鷹様は。」
そう私がいうと自覚が無かったのか、理解の色が顔に浮かんだ。うん、冷たい目をしていない雲鷹様は内面が解りやすい。
もしかしたら、仕事中は内面を読まれないためにあえてあの氷の表情をしているのかもしれない。
もう、お仕事をしなくても一生食べていける位に資産はあるんだから、楽なさってもいいのに。
……身の回りの世話は私達がかぐや様と纏めて面倒を見ればいいのだし、八雲ーズも多分私の意見に賛同するだろう。
「今日のお食事の際も本当に楽しそうで、時々会話が不自然に止まりましたよね。
あれ、そのうちかぐや様からぽろっと会長の事を漏らしてしまうかもしれませんね。」
「そこまで間抜けじゃないだろうかぐやは。あ、いやぁ……。」
言葉に詰まる雲鷹様。
「それで、恋愛は自由という意味を教えていただけますか雲鷹様。」
「あぁ、察しはついているだろう。その言葉のままの意味だ。結婚の自由は、俺達にはないよ。かぐやにもな。」
「そんな……。」
想像はついていたけど、当たり前の結論だけど、それでもショックはうけてしまう。今はまだ会長が好きだと私にすら素直に言えないかぐや様だけど、本当に白銀会長が好きなのは見ていてわかる。
でも、最終的に破局する運命なんて……。
「まぁ、俺は好いた相手と一緒になってほしいと思っているけどな。だからこの件に関しては黄光兄さんと対立中だ。
……白銀御行はいい男か?早坂。」
「……。はい。雲鷹様と比べればまだまだ人間として足りない部分もありますけど、かぐや様にお似合いの方だと思います。
今の時点では考えすぎかもしれませんけど、いずれかぐや様を四宮家から連れ出してくれそうな人だと良いなと思っています。」
「そうか。俺なんかはただ腐れた人間が運よく上に上がっただけだが、まぁ彼が本物なら、かぐやを幸せにしてやれるかもな。
ふむ、かぐやが気兼ねなく俺に会長さんの事を話せるようにした方がいいかもな。」
「それはどうでしょう。普通の兄妹の中でも、好きな人の相手の事は秘するもの。それが公になる時は、かなり関係性が進んだ時ですね。」
「好きかどうかは置いといてさ。友人としてそう言う者がいるという世間話も気軽に出来ない様じゃ、かぐやもストレスがたまるだろうし、うっかり口を滑らせたときに言い訳もしやすいじゃないか。
なに、彼一人と接触を持つわけじゃない。」
「と、言いますと?」
「本当は正体を隠して色々やりたかったんだがな。どうもそう言う機会もなさそうだし。」
何を言っているのかちょっと分からないで少しオロオロしてしまう私。
「生徒会役員を纏めて夕食に招待するって言うのはどうだ?もちろん時期は見てからになるが。そうだな、期末テストがおわった夏休みの前あたりに一度、かぐやが世話になっているからと言う理由で。」
なるほど。白銀会長を一人招待するのでは、かぐやさまも反対するだろうし、雲鷹様にバレたかと心配もするだろう。でも普段かぐや様がお世話になって言うからという態で全員招待してしまえば、その心配もない。
「えっと、その場合年齢の件は……。」
「あぁ、藤原千花、というのがいるだろう?あれには俺が何者かバレている。だから最初に口裏を合わせるように此方から連絡しておく。
出来れば、単にかぐやの兄だと伝えるつもりだ。あんまり騒がれたり、変な誤解を受けたくないからな。
特に白銀御行が誤解したら、愉快な展開に発展しかねん。」
「それはそれで見てみたいですけれど。確かにそうすれば、かぐや様も了解するかもしれませんね。」
「あぁ、それに自分から誘うのでは変な意味を持たせてしまうかもしれんが、親族が招待するのであれば、仕方なくという態も取れる。っとそろそろ遅くなるだろう?睡眠時間が足りないと、碌な事にならんぞ?
俺はこの前身に染みた。」
貴方の場合はちょっと特殊です。5か月以上ほとんど寝ていなかったって聞いた時には、流石に焦りましたよ?今でも雲鷹様には無理はさせるなと本家からの指示が出ているんですから。
でも確かに、そろそろ時間もいい感じでしょう。
「解りました。えっと、今日話した内容は雲鷹様のご意向により、どなたにもお話ししません。本来の私の役目上、受け入れがたいお話ですが、止むをえません。でしたっけ。久しぶりでしたから。」
「ま、適当でいいさ。気持ちの問題を解決する為の呪文だからな。なんでもかんでも俺のせいって事にしちまえ。大丈夫、お前は悪くない。いや、マジでな。だから気にするな。
さ、さっさと自室に戻って捏造報告してさっさと寝ろ。身体が持たんぞ?」
「あははは、了解しましたー。……おやすみなさい、雲鷹様。」
「あぁ、お休み早坂。」
部屋の外に待機していた八雲ーズに軽く頭を下げて自室にもどる。
今日はぐっすり眠れそうね。
どんなもんでしょ?
各キャラクターの掘り下げ作業が必要になりますね、これ。