お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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サブタイトルって考えるの難しいな


人を振るのは辛いな

 とは言え、俺もまだ10歳にならない年齢。原作での雲鷹(おれ)が初登場したのが何歳の頃かは分からんが、黄光兄さんが今大体30前、青龍兄さんがもう少しで成人って所だと思う。

 

 

 原作の頃の黄光兄さんって60歳位だよな?青龍兄さんも50代って感じかな。多分雲鷹が作品に登場したときってあの描き方から見て多分30代後半~40代前半って所だと思う。

 

 親父が清水名夜竹さんを見初めたのが60歳から70歳の間。原作時最大で90歳手前、恐らく80代だったろうな。

 

 

 つまりかぐや様が産まれるまであと15年から20年近くの幅があるって事だ。いや、いくら好きなキャラクターとは言えまだ生まれていない、しかも自分の妹を様をつけて呼ぶのはおかしいか。

 

 

 彼女が高校に入学する時には俺は中年を超えて初老になっているって塩梅だな。とは言え、どういう風に作用するかは分からないけど、俺は不老不死という事になっている。絵面的には原作の様なおっさんにはならないとは思うけど、それはそれで原作ブレイクしそうで困るのだが。

 

 

 改めて鏡で確認すると、顔つきが原作とかなりかけ離れている。魂に刷り込まれた知識から判断するに高魔力を持ち、尚且つそれのコントロール技術が未熟な場合、魔力が肉体に干渉し、自身を理想化(ハンサム化)してしまう現象があるようで。

 

 つまり今の顔が俺にとっての理想って事か?少々鬱だな。

 

 

 10歳にしてショタコンなオバサマ連中を虜にする美少年になってしまった。パーティーに参加するたび、オバサマに彼方此方に引っ張りだこだ。

 

 

 まぁ……、なるようになるだろうさ。

 

 

 

 

 現在アラサーの黄光を兄さんと呼ぶのにちょっと違和感がある。前は少なくとも認知症が発症するくらいには生きたからな。精神的には年下だし。ただ、まぁ肉体能力は魂や魔力に引き摺られ、精神年齢は肉体に引き摺られるらしい。

 

 お陰で子供っぽい仕草も違和感なく自然に出てくる。

 

 家族に不審がられる事なく何とか「兄さん、兄様、兄上」と呼べている。その時によって呼び方が違うあたりが、内心の動揺を表しているが。

 

 

 相変わらず非友好的な視線を投げかけてくる二人の兄を適度にいなして、幼いながらに身に着けさせられた帝王学、処世術に沿って自身を卑下しない程度に下手に出て友好関係を維持する。

 

 

 幾らチート持ちの化け物とはいっても、俺はまだ10歳そこそこのガキだからな。いずれ噛みつくにしても今から牙を見せる必要は無い、し……。ま、正直、後妻の子供に隔意を持つのは理解できる。

 

 

 後妻さんに前妻の子供が惚れてしまう話もそれなりにある話だ。朧げな記憶ではあるけど青龍はどうも俺の母に気が有ったらしい。

 

 

 原作ではどうだったかは分からんけど、ひょっとしたら、これが後日無責任に夜遊びを繰り返した原因かもな。そら、その子供に対して複雑な思いをもってもおかしくないわ。

 

 

 とは言え、いずれは黄光兄さんの様に家の為に結婚させられるのだろうから、可能なら家庭円満に暮らしてほしいものだけど。

 

 

 まぁ、今までも遠慮していたわけではないけど、折角神様からもらったチートだ。今更遠慮するのもおかしい話だし、神童も二十過ぎればただの人、という言葉もある。ここで多少無茶をしても原作開始前には、「雲鷹も昔は天才と呼ばれていたんだ」ですむだろう。原作に影響は無いはず。

 

 そう割り切って、勉学にスポーツに手加減なしに突っ走る事にした。四宮の本家は、二人の兄とも地元の京都の上流階級の通う学校に通っていたけど、俺は二人にやっかまれていたのと、親父にも何故か少々煙たがられているようで、小学校から秀知院学院の初等部に放り込まれた。

 

 かぐやが暮らす事になる東京の四宮邸はその時に建てられた物だな。

 

 

 親父は、まぁ、後妻とは言え早くに亡くした事と、母親の面影を持つ俺を見る度に辛かったのかもしれないけど。意外とあの親父、か弱いところあるよな。

 

 それと、俺が後妻の子だからか意外と四宮の親戚連中も圧が強い。

 

 何せ原作では四宮のカリスマであり独裁者でもある親父が最後に愛した女、名夜竹さんを排除しようと騒ぐくらいだからな。甘いはずがない。

 

 まぁ腹の子が誰の種だかはっきりとは分からない、と言うのがその理由だけれども。

 

 

 そんな事を考えながらも、順調に小学、中学、高校と主席を維持しついでに中等部で二年、高等部で二年、生徒会長を務めて秀知院に輝かしき伝説を作り上げておいた。あぁ、この時点では秀知院の理事長は親父だからな。周囲も納得、というか投票時にある程度の忖度も働いたんだと思う。

 

 普通に原作に影響を与えそうだけど、大した影響は無いはずだ。

 

 

 

 高等部からの進路には少々迷った。このまま国内の大学に通うか、原作の白銀宜しくスタンフォードへ行くか。いや、スタンフォードに拘る必要は無いんだけどさ。

 

 早いうちから国内で根を張り、四宮に影響力を持つべきだという考えもあるが、将来の四条家との抗争、その後のかぐやの手打ちに備えて海外で強い影響力を持つ四条に対抗するために海外に行く手もある。

 

 

 原作の四条家の四宮家への攻撃は一部過激派の暴走、って事だったからそれが真実なら、どんな手を打っても暴走する時は暴走するだろうけどね。カウンターを撃てるなら撃っておいた方が良いよな。

 

 

 いや、やり過ぎてかぐやの和平交渉に影響を与える可能性もあるか。その時に然るべき人物に相談すべきだな。

 

 俺は人間離れをした優秀な頭脳を持っている事は間違いないんだけど、基本、馬鹿だからな。矛盾しているようだけど、間違っていない。中身は三流文系大学をやっとの事で出て、ブラックな三流会社に入って一生をひーこらしながら生きてきた人間だ。

 

 

 例えるなら普通車の免許証を取ったばかりの人間が、大型ダンプカーを運転したりF1カーを動かしている様なもんで、我ながら危なっかしくてしょうがない。

 

 

 

 自覚ないままお馬鹿な結論に全能力をつぎ込んで突進しそうで、たまに怖くなる。

 

 ただまぁ、単純に勉強をしてテストに回答するという単純な作業に関してなら、こんなんでも無類の結果をだせるからな。

 

 スタンフォード入学に際して成績その他には特に問題ない。

 

 

 

 四宮内部への影響力に関しては、学生の内から既に親父から幾つか経営を任されている会社もある。そこを足掛かりにすれば、数年のロス程度なら原作に大した影響は与えないだろう。むしろ、このまま四宮内部を侵食して行くと黄光兄さんを差し置いて俺が後継者に推される可能性もある。

 

 単純に人間離れした才能は、時に血統の序列を超える事もある、って事だな。

 

 

 才能と血筋だけじゃない。既に個人資産は10ケタの後半に迫っている。この資産は初期資金として幾らかは親父から借りたが、後は自分で増やしたものだ。

 

 融資された資金もとうに利息を付けて返済済みだ。

 

 

 

 

 うん、占星術を基本とした2択の未来を、9割以上の確率で正答できる未来予知の魔法は投資においてはまさしくチートだな。同じ未来を繰り返し占う事で予知の正確性を限りなく100%に近づけることも出来るし、その上でリスク分散すればほぼノーリスクでハイリターンの投資が行えた。

 

 ポンド為替うめぇ。いや、人によっては殺人通貨とも言われているポンドの為替取引も、ほぼ100%動きが分かっていれば、単なる狩場と化すからね。正しく「チート(ずる)」だよな、これ。俺が稼いだ分、どこかで誰かが首を括っているかもしれないって思うと、ちょっと心にクる物がある。

 

 

 当然、為替だけで資産を築いた訳じゃないけどさ。

 

 

 それにしても黄光兄さんを差し置いて、四宮の後継者に、かぁ……。俺なら出来なくは無いだろうけどね。

 

 

 ただ、それだと乙女的に……、ではなく原作的にOUT。

 

 ラスボスは俺じゃなくて兄さんに担当してもらいたいものだ。かぐやに、好きなキャラクターにはあんまり嫌われたくはないじゃないか。途中嫌われるにしても最後にはちゃんと和解したい。

 

 そうするとやはり一度外に出るべきか。親父や兄を説得するネタならいくらでもある。四条家を出汁にすればいくらでも、どうとでもなるだろうな。

 

 

 四条家、か。原作の雲鷹さんは四条家と早坂家に強い憎しみを持っているとか言われていたよね。早坂家の方の恨みはわかる。現在進行形で早坂ママさんが俺の側仕えをしながらスパイしているし。いや今はまだママさんじゃなくて奈央さんって呼ぶべきかもしれないけど俺的にはママさんかな。

 

 原作の雲鷹ちゃんは、純粋な人だったのだろうね。人に付けられた側仕えを信じて色々と情報を漏らしちゃったのかな。もしかしたらママさんに惚れちゃったりもしたのかもしれないし、早坂ママも女を匂わせる事で雲鷹ちゃんから情報を抜いていたのかもしれない。

 

 あれだけ憎むという事は裏を返せばそれだけ信用し、心を預けていたという事だから。最初から信用一つしていない人間が裏切ったところで、心には波一つ立たんもんだよ。俺みたいに。

 

 ただ、四条家に対しての恨みと言うのがよくわからん。少なくとも現時点で雲鷹である俺に四条家を強く恨むような事件は発生していない。関りもそれほど深くないし、単に自家の敵ってだけの関係性でしかない。

 

 既に本来の雲鷹ちゃんルートから外れてしまったのか、それともこの後それなりに恨む切欠が発生するのか。

 

 

 原作、かぐやが四条眞妃と初めて会ったのが17歳から数えて十数年前。十年じゃないって事は母親の七回忌より前って事だ。4歳から6歳って所か。いや、小学校入学前、5歳位だな、恐らく。十数年、だからな。

 

 その時には既に雲鷹ちゃんは四条家に強い恨みを持っていた。パーティーで出くわした四条家の、恐らく党首を分家の鼠呼ばわりして侮辱していた。女でも寝取られたか、それとも早坂家とも何か関りがあるのか。

 

 早坂家に関しても裏切り者のドブネズミって表現を使っていたからな。鼠繋がりではてさて、何があったのやら。

 

 中身も外見も原作の雲鷹とは別人になってしまった今、それを知るすべは俺にはない。

 

 溜息を一つつく。考え事をすると、ため息が漏れるよね。

 

 

 

 アイテムボックスに入れておいたナッツを一袋取り出し、誰も居ない生徒会室でちょいと摘まむ。普段、手ぶらで過ごしても必要な物を直ぐに手にする事が出来るこの能力は本当に便利だが、現代社会に魔法とか異能力って、ほとんど必要ないんだよな。

 

 

 強力な攻撃魔法を取得しても、平和な日本で生きる分には、どれだけ破天荒に生きてもほとんど必要ない。最近になってからは投資の方も落ち着いたせいで未来予知の魔法も使用頻度は少なくなってきた。

 

 

 そうなると魔法なんて精々、情報収集の為の盗聴や盗撮をバレずにできるというくらいのもので、一歩間違えれば性犯罪者呼ばわりされてもおかしくない状況になってしまう。

 

 現代社会をまっとうに生きて行く分には、魔法は必要ない、という結論が出る。むしろ魔法がバレれば日常生活が脅かされることになるしな。

 

 

 転生してからここまで、基本的には優秀な頭脳、強靭な身体、アイテムボックスくらいしか活用する機会は無いし、そのアイテムボックスも滅多に使わない。

 

 必要になれば、側仕えに一声かければいいのだし、普段から常に側に誰かがいるから、かえってアイテムボックスを使う機会は少ない。

 

 

 たまにこうやって生徒会室で一人になった時に、思い出したように菓子を取り出して摘まむくらいが関の山だ。

 

 後はパーティーの時の余興で、ちょっとした手品の種にアイテムボックスを使うくらいだ。

 

 もちろん、ちゃんと手品の範疇を超えない程度に抑えているから、怪しまれた事は無い。

 

 

 何粒かアーモンドを口に運び、考える。後少しすれば副会長も所用から戻ってくるはず。考える時間はそれほどないけど、人外の思考速度を持つ俺にしてみれば、十分な時間がある。

 

 考えるべきは、進学先だけではない。四宮の内部に根を伸ばすのはそれほど難しい事じゃないしな。能力的にも血筋的にも。何も四宮家全体を支配する必要は無いのだから。

 

 だから、問題はそこではない。いずれ俺が育てる事になるかぐやの教育方針が一番の難題なのだ。可能ならば、かぐやに家族の愛情を味わわせてやりたいし、兄として頼られたい。

 

 幸せになってほしいし、白銀御行の元へちゃんと嫁がせてやりたい。

 

 

 だが残念ながら、これら全てを満たす事は難しい。

 

 一番に達成したいのは原作の再現、かぐやを白銀御行に嫁がせたい、のだ。そこに集中すべきだろう?

 

 

 原作通りの教育を施し、かぐやを氷の姫にしなくては白銀御行と結ばれることは無いだろう。下手をすれば四宮家の言いなりに四条家との争いの果てに四条帝に嫁ぐことになるかもしれない。

 

 

 いや、四条帝は悪い男ではない。むしろ一途でかぐやを幸せにするためなら何でもする男である、と信じることは出来る。白銀御行が存在しないのであれば、彼と添い遂げる事がこの物語のハッピーエンドで間違いないだろう。

 

 

 だが、それでは違うのだ。俺的には原作のCPを変えるなんて耐えられんのだ。あの素晴らしい結末を変える気にはならない。だからこそ、かぐやは氷のかぐや姫にならなくてはならない。

 

 

 単純に俺のエゴだ。この件一つで俺はかぐやに兄として尊敬されることも好かれる資格もなくしてしまう訳だが。

 

 

 それはそれで、この世界に紛れ込んでしまった異物である俺の最低限、果たすべき責任と使命だとは思う。

 

 

 「考え事ですか?会長。」

 

 

 いつの間にか生徒会室に戻ってきていた副会長が、私も一つ戴きますね、と皿にあけたアーモンドを一つまみして口に放りこむ。

 

 アニメ世界にありがちな、ピンク色の髪をした副会長にちらりと視線を向けて「まぁな。」と素っ気なく返す。

 

 

 この副会長(おんな)は俺に気があるらしく、分かりにくいモノから分かりやすいモノまで様々なアピールを仕掛けられて、さながら原作の白銀とかぐやの様な頭脳戦が展開されてきたが、原作と違うのは俺がこの女に惚れていないという点だ。

 

 

 いや、惚れていないというのは嘘だな。前世を通じてずっと独り身で、恋人は右手で浮気相手は左手だった俺にとっては、ここまで露骨に好意をアピールしてくる女は初めてだ。意識しない何て事は無い訳で。

 

 

 ただ、黄光兄さんや青龍兄さんがそうだったように、俺達に恋愛の自由はあっても結婚の自由はない。既に何人か婚約者の候補が上がっていて、俺が大学を卒業した段階で結婚する事が決まっている。

 

 本来ならこの時期ならもう顔合わせ位していてもおかしくは無いんだけど、予想外に俺の価値が上がってしまった為に、未だに婚約者が確定していないらしい。だが、いずれは他の誰かと結婚する事になる。破局が前提の交際など、女性に対して不誠実だし、彼女の人生を傷付ける事にもなる。

 

 

 親父とはそれほど話す機会がある訳では無いが、婚約者候補が何人かいる事を告げられた際に、「変に歪まれても困るからな、結婚まで節度を守る必要もない。適当に遊んでおくのだな。ただ、相手は選べよ。」と言われたよ。

 

 

 

 だからこの子に手を出したとしても四宮家的には問題はない。けれど自分の欲望を果たす為にこの子を傷付ける事はしたくない、と思うくらいにはこの子に惚れているのだろう。ただ少なくとも、「家族を捨ててでも一緒になりたい。」と思いきれる程強く、彼女へ好意を持つことは出来なかった。

 

 

 ただそれだけなのだろう。

 

 

 親父の前にまだかぐやの母になる清水名夜竹さんは現れない。年齢から考えて今はまだ学生の筈。京都のどこかにいるのだろうか。探そうとすれば探せるだろうけど、その気になれない。俺が彼女を探したという事実が、未来をゆがめる可能性もある。

 

 

 親父と名夜竹さんの間には、愛はあったのだろうか。全てを掛けても良いと思えるほどの。

 

 

 名夜竹さんは心臓が悪いのに命を賭けて子供を、かぐやを産んだ。親父は本当に自分の子供かどうかわからないのに、調べる事もせず親戚連中を黙らせて彼女と子供を受け入れた。

 

 原作では何度も調べようとして、結局できなかったと言っていた。違ったらそれまでじゃねぇか、と。

 

 結局は、それが棘になり、延々と親父を苛む事になったけど、親父はどうすればいいのか分からなかっただけでかぐやを愛していたはずだ。無論、名夜竹さんの事も。

 

 

 だからこそ、あの金庫のパスワードがかぐやの誕生日と名夜竹さんの命日な訳なのだから。

 

 

 もし、早い段階でかぐやが親父の実の娘である事を検査ではっきりさせてやれれば、親父もかぐやも救われたはずだ。親父も病気に負けずにもっと長生きしたかもしれん。ま、激怒した親父に勘当されるかもしないけどな。

 

 ただし、そのルートを選べば、原作ルートからは確実に遠ざかる事になる。恐らく親父はかぐやを俺に預ける事はせず、京都の本宅に置いて手放さないだろう。

 

 その場合は帝ルートをたどる事になりそうだな。

 

 

 前世通じて2期連続、ファーストシーズン、セカンドシーズン両方とも童貞である俺には少々、手に余る話だな。今はイケメンであるはずなのに、それなりにモテている筈なのに、未だに彼女の一人もいない理由。自分から動く事をしない理由。

 

 自分でもよくわからんけど、愛が怖いのかもな。いや、女が怖いだけかも。

 

 

 原作のかぐやよりも積極的に想いを伝えてくる副会長。直接言葉にしなくても「好きだ」という気持ちは明確に伝わっている。そしてそれに応えない俺の気持ちも彼女にはちゃんと伝わっている筈。

 

 時折する切なそうな表情が辛い。

 

 

 どの進路を選ぶにせよ、破局する運命しかない彼女へのけじめをつけてからでないと、俺は先には進めない。

 

 

 そう思い立ったが吉日とばかりに、邪魔者が入り込めないように副会長と二人きりの生徒会室の扉の鍵を閉める。今までこの手の話をしようとするたびに早坂が入り込んできていたからな。今回は先手を打っておく。

 

 

 いや、わかるんだ。あいつの言いたい事は。せめて恋愛くらいは自由にしてもいいのではないか、てのはな。だから邪魔してきたんだろう。俺の決断を。

 

 

 何故か俺とあいつの関係性がかぐやと早坂愛の関係性に似ていて少々笑みが漏れる。まぁ、母親である彼女も娘と似た様な苦労をする運命なのだろう。前述のとおり、この側仕えが俺を裏切って、俺についての情報を親父か黄光兄さんに流している事は、原作の俺とは違って承知している。

 

 だから、あそこまで俺が憎しみに歪むことは無い。が、歪まんと原作通りの教育をかぐやに施せないかもしれん。最低限、契約主義は仕込んでおかねぇと原作が崩壊する。後は人間不信な部分も仕込まんと。この辺は悩みどころだな。

 

 本当に、この一件だけで嫌われるし地獄に落ちるよな。

 

 

 

 ドアを閉めて鍵をかけるという突然の俺の行動に、吃驚しつつ「どうかしたんですか」。と少し震える声で聴いてくる副会長。

 

 期待と恐れ?いや、彼女は聡明だ。今までの俺の態度で先がどうなるかは理解している筈。

 

 

 あぁ、これで俺の自意識過剰であれば恥ずかしいし、この先一生勘違い野郎のレッテルを張られてしまうかもしれないけど。

 

 

 

 「近衛副会長、いや、二恵さん。少し話があるんだ。」

 

 

 

 夕暮れに赤く照らされた生徒会室にボツリとした俺の声が染みて消える。

 

 

 

 少しして涙をこらえた副会長が生徒会室から走り去っていった。

 




好きでもない相手と結婚して子供を作る。

男でも辛いのに女性だと余計辛いだろうな。
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