お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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かぐや様、黄光さんの視点を短く二つ書いてみました。


アソート1

かぐや様は……穴があったら入りたい

 

 会長と連れ立って校内の見回りを少しの間する。この短い時間だけでもちょっとしたデートの様で、心が躍る。少し浮ついた気持ちで会長を見ると、なにやら心の内に欲望が湧き上がってくる。

 

 会長をオトしたらあんな事やこんな事を……。

 

 あら、会長の目も私を見つめて何かを考えている様子。一体何を考えているのやら。

 

 

 そんなに熱く見つめられると、少し恥ずかしいですね。

 

 

 そんな事を考えていたら、校長から呼び止められ、会長に雑誌を手渡して何やら話している。

 

 「と、いう訳で~、私は少し忙しいので、あなた方にこの本の処分をしていただきたいのです。これも秀知院生徒を導くあなた方の仕事の一つ!

 

 この本は教育上よろしくありませんからねぇ。

 

 で、任せましたよ~?

 

 私はこれから行かなくてはいけない場所があるので!」

 

 

 そう言うと、スマホ片手にどこかにいってしまった。

 

 

 生徒会室で藤原さんに会長が雑誌についての経緯を説明してたら、藤原さんが興味を持ったのか、雑誌を開き、直後に動揺して声を上げた。

 

 

 なにか怖い写真でも乗っていたのかしら?

 

 

 「乱れ……いや(みだ)れてます!

 

 この国は(みだ)れてます!」

 

 

 生徒会に藤原さんの悲鳴の様な言葉が響く。少し内容に興味があるわね。テーブルに放り投げられた雑誌に手を取り、中身を確認する。

 

 丁度藤原さんが読んでいた部分が開いたままテーブル面の方に落ちていたので、何処を読んでいたのかは直ぐに分かる。

 

 

 

 ……初体験はいつだったアンケート……。つい声に出して読んでしまったけど、これが藤原さんがそんなに騒ぐような内容かしら。「高校生までに」が34%……うん、別におかしなところはありませんが。

 

 

 私の始めては、多分記憶にある限りはまだ自分でも動く事が出来なかった頃、奈央さんにしていただいたのが最初だったはず。

 

 あんまり思い出したくはないのだけれども、そのしばらくあとお酒に酔った黄光兄様が何かのはずみで私にしてきたのが二回目。そのあと兄さまが消毒してやるとかおっしゃってしてくれたのが三回目だった記憶があるわね。

 

 

 私からしたのは……そう言えばまだ幼稚園に通う前の頃。奈央さんにキッスをしてもらった私は嬉しくなって奈央さんの手に軽く、掠る様なキッスをした事があったわね。

 

 奈央さんはキッスされたと思っていなかったでしょうけど、あれが私からの初体験かしら。

 

 懐かしいわね……。

 

 

 

 なにやら会長と藤原さんがアンケートの内容に対して否定的な見解をし始めましたけど。

 

 

 「そうですか? 私は適切な割合だと思います。むしろ少ないんじゃ。」

 

 

 と、言ってしまった。そう、言ってしまったのよ。

 

 二人の、特に会長の慌てた様子を見て、私はここがチャンスだと思った。だからここぞとばかりに攻め立てたわ。

 

 会長が慌てふためき、青くなる姿はそれはもう、私に作戦成功の確信を持たせるほどに。

 

 

 作戦は順調にいっていたはずなのだけれども、ふと何かに気が付いた様子の会長が初体験とは何かを知っているのか?と

 

 

 その後の事はちょっと思い出したくないわ。だって、男の人が、その、あんなで、そうなって……女の人が、こうなっちゃって、そうなって。

 

 でね、こう、けだものの様な男の人がね、その……でね、女の人がこう、色々ね。うん、そんな事を私、経験済みだって会長や藤原さんの前で知ったかぶって言ってしまったのよ。

 

 

 だって、そう言う事は普通結婚してからって法律で……、え、決まってない?いや、でも……だって早坂……。

 

 私、暫く学校に行きたくないかも。早坂……どうしよう。

 

 

 「はぁ、そんな事で登校拒否なんかできる訳ないでしょうに。大丈夫ですよ、そんな所もかぐや様のお可愛い所だと、生徒会の皆様も解っていただけている筈です。」

 

 

 会長にそう思われたかもしれないから、恥ずかしいんじゃないの……早坂の馬鹿。

 

 

 

 

黄光の苦悩

 

 

 

 手を一切付けられていないツマミや料理。二度だけ交わした盃と残った酒。それらを軽く見渡して、一つため息が漏れる。

 

 

 ふと気が付くと背中が汗で少々湿っぽい。

 

 雲鷹が出て行って、暫くは座ったまま少し気が抜けていた。気を取り直して、畳に落としてしまった盃、とは言ってもこれはぐい飲みって奴だが、それを拾い手酌で一息に呷る。

 

 結構いいぐい飲みでな、好事家からしたら100万くらいポンと出す代物だ。

 

 

 自然と肺から出てくる酒精の混じった吐息に、漸く人心地が付く。

 

 

 雲鷹を待たせちまったのは、心の準備をする時間が必要だったからだ。そんな自分の弱い部分を酒で誤魔化さなかったのは、ここが一つの正念場だと思ったから。酔った頭であいつの前にでて、やらかしたら、下手をすれば四宮の中でやり合う事になる。

 

 四条とやり合う前に四宮が傾くな。そうすりゃ本家派閥の奴らが何人も巻き添えになる。

 

 

 幸いにも、あいつは俺に協力的で野心がない。

 

 

 ただ一つ、拘っている点を除いてあいつは譲歩する。

 

 たった一つの例外は……。もう一度酒を呷り、冷めるのを待つだけだった料理に手を付ける。

 

 たった一つの例外がかぐやだ。あいつは何でか一応妹であるかぐやに執着している。まぁ、十数年手元に置いたんだ、情もうつるかもしれんがな。

 

 

 一応、か。まぁ、ありゃ間違いなく四宮の血筋ではある。俺を見る時の笑顔の裏の、冷たい目付きが本当に雲鷹そっくりだ。多分、俺にも似ているんだろうな。自分では判らんが。

 

 

 

 四条のガキが青龍に持ってくるだろう提案。恐らくは以前から雲鷹が指摘していた、かぐやを嫁にという話だろう。

 

 最初は何を言っているのかと鼻で笑っていた。女一人にどんな価値があるってな。そんなもんで四条が矛を収めるのかって。雲鷹に理路整然と説教食らったが。

 

 

 まぁ、確かに外から見りゃ血筋って奴は馬鹿にならん。人が結集するには十分な理由だ。そのくせ、血の繋がりなんかあっさりと裏切られたりもする。身内からすれば厄介なものでもある。

 

 かぐやの産んだ子なら四宮に口をはさむのに、大義名分を得やすい。少なくとも他人よりはな。

 

 そう言う意味ではかぐやが四条にとってそれなりに価値を持つのはわかる。

 

 

 だけど、その手打ちの条件を持ち出すのは恐らく、四条のガキなんだろう?

 

 

 ……色恋か。

 

 判らなくもねぇ。昔は俺も、似た様な頃があった。

 

 

 ふんっ。そんなもん何にもなりゃしねぇのに、物好きなもんだ。そんなもん、何時かどうでもよくなっちまうんだよ。現実に追われて生きりゃな。

 

 

 そう言えばまだかぐやがガキの頃、四条のガキがかぐやと接触したという報告があったな。あれは何のパーティーだったか。まぁ、ガキ同士と言えど男女。年齢的に間違いは起きねぇだろうが、かぐやが懐いたりしたら面倒だから雲鷹に、四条のガキに近寄らせるなと話した覚えがある。

 

 

 そうか。

 

 もしかしたら、かぐやの方も憎からず想っているのかもな。

 

 

 四条とぶつかれば、被害は馬鹿にならない。戦争が長引けば、本当に命を落とす連中も出てくる。前線で汚れ仕事を抱えている下っ端なんかはあっさりと命を落とす事になる。

 

 上の奴らは責任を抱え込み、自ら首を括るだろう。

 

 

 俺も、いい加減、腹をくくらにゃならん。

 

 

 万が一、そうなるにしても、相手が四条のガキなら、かぐやもかわいそうな事には成らんだろう。惚れるより、慣れ。

 

 俺のとこに嫁に来た時に、あいつが漏らしていた言葉だ。

 

 あいつだって俺が好きで結婚した訳じゃねぇ……こういう世界に産まれたら、みんな似たり寄ったりなんだ。

 

 

 雲鷹を敵に回すわけにはいかねぇ。四宮を割る事になる。事が済んだら俺の首一つ、そんな時代じゃねぇがそんな覚悟でやるしかねぇ。

 

 

 第一、俺にはそんな沢山の人の命を背負えない。俺の失敗で、何百人が死ぬ事になるかを考えたら、恐ろしくなる。

 

 

 器じゃねぇんだよ。言われなくても解っている。

 

 

 だけどあの時は俺しかいなかった。今は雲鷹がいる。なのに、雲鷹は俺に遠慮して一歩引いている。有り難くはあるさ。お陰で十分虚栄心は満たされたよ。

 

 

 だけど、そろそろ覚悟を決めにゃならん。雲鷹を敵に回さぬように立ち回り、四条との戦争で出来るだけ犠牲者を少なくする。その為にかぐやが必要なら、人柱にする。

 

 

 俺のプライドなんざこの場面では邪魔にしかならんな。雲鷹を説得する。必要なら頭を下げる。代償に首を預ける。そして、かぐやを使う。

 

 四条のガキが出してくる提案で本当に戦争が終わるなら、その条件を飲まない選択肢は、ねぇな。

 

 

 これが俺の最後の仕事になるのかもしれん。

 

 

 勢いよく呷った酒の味が苦く感じた。

 

 

 

 




かぐや様は穴があったら入りたい

このお話は主人公の立ち位置だとどうしても関わる事が出来ない話だったので、ちょっとネタにし辛いなと思っていたのですが、主人公視点に拘る必要は無いとのご指摘に目が開きまして、使わせていただきました。



黄光の苦悩

どんなに不遜な人でも、常人であれば自分の決断で命を落とす人を思えば心に闇が落ちるもの。
段々と慣れて感じなくなる、みたいですが。全く何も感じないのは多分、尋常じゃ無い人でしょうね。

「重いんだよ、俺たちの決断は」

この言葉とあの時の表情から判断するに、黄光は少なくとも人の命の重さにそれなりに向き合う人だと思います。

どんなに横暴にみえても。擁護しすぎ?><;
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