何となく落ち着いてきたのかなと思いますので残りのストック二つを放出して暫くのんびり続きを書きますね。
そのうちストックが貯まったらまた更新を再開します。
書いている内に、しおりを付けていた作品がどんどん更新されていて読めないままですしw
つい先日、夕食後のコーヒータイムの際、かぐやから募金活動の話が出た。最初の内は、友人の相談に乗ったのは良いけど、中々力になれなかったとか、藤原のお嬢さんが何かある度に演劇部に走って行って、変な格好をしてくるのとか、話して笑っていた。
お話に夢中になっていても流石にかぐや、人の秘密を漏らすような下種な真似はしない。友人の相談に乗ったという話題は出ても相談内容や相談相手の情報は一切会話には入れてこない。
ただ、その相談に乗って、人の悩み事に答えるのは中々難しいものですね、と感想を語っていただけだが、お陰で、原作の大体どの部分に差し掛かっているのかは分かった。
本当に、何でもないようなことを話すことが楽しいようで、こういう所だけを見ていると、その辺の女の子と何も変わらない。
これが白銀を相手にすると、いかに相手を掌で転がし自分に告白させるかという一点で、頭を高速回転させ、傍から見ても頭がいいのかそうじゃないのかわからない結果を出す訳で。
……誰かを好きになるというのはそれだけ凄い事なんだろう。そういう形でフォローするしかできないな。
ボランティアの話と友人の相談、それに藤原千花が絡む、という事はもうすぐ相合傘イベントが始まるという事。ついこの間白銀のスマホがどうのこうのと言う話を聞いていたはずなのにあっという間にもう梅雨だ。
原作を読むとかなり長い時期の話のような印象を受けて、1年と少しという実は短い期間を28巻にわたって描いている事に、驚く。いや、ちゃんと時間の流れがあるタイプの学園ものであれば当然なのかもしれないけれど。
それだけ短い期間で、彼ら、彼女らはあっという間に成長し、恋をし結ばれた。
今回かぐやに相談した柏木さんなぞ……母親になってしまっている。いや、ご懐妊のところで終わってはいるか。一部未来の話を除いて。
もちろん、原作開始の最初の一学期にもびっしりと物語が詰まっている。彼らの青春に無駄な時間なぞ一瞬たりともないのだろう。
こっちは休養中だから、毎日のんびりしているせいで、少しでも気を抜くとあっという間において行かれるだろう。ましてや初老のおっさんだ。誰が何と言おうとおっさんだ。時がたつのが速く感じるよ。
とは言え生徒会メンバーを夕食に招待する話はかぐやにしているから、うっかりイベントをスキップしてもいずれ彼らと会う機会はあるはずだけど。
相合傘イベントが起きるのが丁度衣替えの日。学院の年間の行事予定を確認すればそれがいつなのかは、かぐやの話が無くてもまぁ、分かっただろう。ただそこまで頭が回らなかっただけだ。自慢して言う事じゃないな。
だから目の前で起きているこの光景は、まぁ必然な訳だ。
「で、お前さんは一体何をしているのかね?朝っぱらから、そんな物騒なものを持って」
「お〝、お兄さま!?あ、いえ、これは、ですね。その、違うんです!」
すごい声が出たな、おい。
手に千枚通しをもって車庫をうろつく姿を見て、何でもないと判断する奴にまともな奴はいない。
その言い訳を聞いて何事も無しと判断する奴もいないだろう。
観念したのか、千枚通しを俺に手渡すかぐや。
「お兄さま、てっきりまだお休みになっているものとばかり……。」
確かに休養中である俺は普段この時間は寝ている。
シュンとしたかぐやの脳内では今頃、作戦失敗の文字が浮かんでいるかもな。ただ、俺としてもちょっとした悪戯心で、かぐやの行動を見たかっただけで、なにも邪魔しようと考えた訳じゃない。
「まぁ、こういう悪戯がしたい年頃……なのかもしれんが、ちょっと物騒だな。車をパンクさせて何を企んでいるのやら。」
「それはですね。その、たまには自分の足で学校に通いたいと考えまして……。」
嘘をつくときのかぐやの目は、少なくとも俺にはわかりやすい。メタ視点で答えを知っているからかもしれないけど。
だがここで全てを打ち明ける訳にもいかないだろうな。そうすれば自ずと白銀御行との事も口にする事になる。
少し悔しそうにするかぐやに苦笑を浮かべる。
「それでタイヤをねぇ。ま、そう言う悪戯は俺も面白いから好きだが。タイヤのどの部分を刺すつもりだった?」
俺の言葉に耳をピクリとさせるかぐや。
「えっとですね……、良いんですかお兄さま。」
「悪巧みは俺も好きだ。それにお行儀のいいだけの奴じゃ、社会に出ても振り回されるだけだ。
ちょいとやる事が物騒だが、ま、真面目一辺倒な奴よりやらかす奴の方が面白いかもな。
もちろんやられる方になると腹立たしいが、今回は自分の家の車で、自分が乗る予定の車。
何か深い訳があるんだろう?俺には説明できないような。」
何やら深刻そうな顔を作ってかぐやに千枚通しを返してみる。
まぁ、素直に相談してもらえれば、警護の人間を周りに配置するなどで、かぐやの希望をかなえてやれるのだが、原作では本家の目もあり不用心な真似はできなかっただろうし、この世界では責任をとれるだろう人物に、事情を詳しく説明することができない。
「えっとですね、こうやってタイヤの横をブスってやろうかと思っていまして。」
何やら共犯者を見るような目で、ちょっと悪い笑顔を見せるかぐや。
「あぁ、そのやり方じゃ駄目だな。タイヤの側面にそんな穴が開いていたら、すぐに人為的なものだと気が付かれる。今回は良くても次にやらかすときには警戒されるぞ。
ま、側面はゴムが比較的薄いから穴はあけやすいのは事実だが。」
「次って……。そんなに何回もこんなことしませんよ。いえ、そんな風に思われても仕方ないですけれど。
でも、それならどうすればいいのですか?」
少し困り顔のかぐや。俺もタイヤにいたずらをした経験はないが、前世の頃はよく車のタイヤがパンクして、難儀した経験はある。
「こう言うのはな、ま、俺もやった経験はないけど、こう、タイヤの溝にうまく、な。ここに穴が開けば、パッと見た分じゃわからないし、修理したとしても普通のパンクと見分けはつかないだろう。」
かぐやから再び千枚通しをヒョイッと取り上げて、力任せにバスッっとやらかす。一気に空気が抜けていくタイヤを見てかぐやの顔がキラキラ輝く。
「因みに、やる機会はないと思うが、トラックのタイヤなんかにはやろうと考えるなよ。普通車とは空気圧が違う。本当の話かは知らんが、ダンプのタイヤにいたずらした奴が大怪我をしたという話も聞いたことがある。」
そういうと、心外だというような顔をしてかぐやが頬を膨らませる。
「私だって、そう見境なくそんな事はしません。今日はかい……、いえ、その、今日は快晴にはならないとのお話でしたので、紫外線もそれほど気になる事もないでしょうし、少し街の中を歩いてみたかったものですから。」
流石に、「かい」で、止めたか。うんベタな展開だ。素直に噴き出してかぐやににらまれる。
「あ、お兄さま、ありがとうございます!他に準備することがありますので失礼しますね。」
はっとした表情で時間を確認したかぐやが口早に礼を言ってから車庫から走り去っていく。
「それで、学校が終わるころにはタイヤの修理も終わっているだろうが……。どうするつもりだと思う?」
車庫の陰から早坂がひょっこりと出てきた。
「気が付いていたんですか、雲鷹様。」
「こういう時に早坂がかぐやを一人にしないだろうなと思ってな。単なる勘だ。で、かぐやの狙いはわからんが、帰りの車は無い方が都合がよいのかな。」
「ええ、そうですね。今回の作戦の内容をお話しするわけにはいきませんが、メインは帰りになるみたいですから。」
知っているよ。さて、原作ではどうやったのかな。たとえ修理できない側面に穴をあけたとしても、ディーラーを呼んでタイヤを交換してしまえば、時間は一日かからない。
その辺早坂が何とかしたのか、それともタイヤに穴だけじゃなく、足回りに何か細工した可能性もあるな。そんな描写はされていなかったけど。
「早坂なら、主をどうフォローする。」
「あのまま雲鷹様が止めずにタイヤの横に穴をあけるようでしたら、他にもいたずらされているかもしれないから、と提案してディーラーで点検して貰いますかね。
一日預けていれば、目的も達成されるでしょうし。」
「この屋敷には俺の車があるが?」
「そこは色々理屈をこねるんじゃないですか?いつ必要になるかもわからないお兄さまの車を私の為には使えないとかなんとか。」
「徒歩での通学圏内の距離の登下校に貸し出すくらいなら、わずかな時間だから理由にはならんぞ?」
「そうですよね。」
苦笑しながらため息を堪える。本当に人を好きになるという事は偉大だな。
「パンクした車は万が一を考えて、俺の名前でディーラーに預けとけ。俺はこれから直ぐに出かけることにする。車でな。
おそらく今日は忙しくなりそうなんでな、夕食の時間まで帰ってこれないだろう。
かぐやにはよろしく言っておいてくれ。」
「本当にかぐや様にはお甘いのですね。了解いたしました。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」
笑みを浮かべた早坂の言葉を背に、八雲ーズに5分以内に車を用意しろと声をかける。
さて、どこで時間を潰すかな。
細かいネタを拾うとなると中々難しいですね。
更新再会する時はもう少しポンポン先に進めればと思っております。