しばらく気まぐれにストックが貯まったら更新するかもしれません。
考え中ー。
「それで、なんで雲鷹様がここにいるんですか?」
深夜の秀知院学院、生徒会室へつながる通路にわずかに響くささやき声。急にかぐやからミッションを受けたらしい早坂の後を追って隠密ミッションのノリでついて行ったんだが、どうやら途中からばれていたようで、どうにも間抜けな話である。
因みに自分でも忘れがちだが、神様からもらった強靭な肉体のおかげか、早坂の高性能な肉体能力に負けずにここ迄ついてこれたのは、我ながら流石と言わざるを得ない。
当然夜中の潜入で、警備システムが稼働しているから、正々堂々と正門や裏門は通れるはずがない。一部警備システムを無効化したのか、生徒会室に一番近い壁からサササッとアニメの様に登って行った時には目を疑った。
早坂家の連中っていうのは、俺の子飼いの奴らのような常識レベルの奴らと違って、本当に忍者のような動きをする。青龍兄さんの所の奴が早坂家に関して忍者か?と言及していた部分に関しては、同感だとしか言えんな。
「かぐやのミッションだろう?妹の無茶ぶりのせいで、女の子を一人で夜中に危ない事をさせる訳にはいかないからな。早坂が心配だったというのもある。それにこういう事には興味がある。
久しぶりに生徒会室を見てみたかったし、暇だったから丁度良い。」
「丁度良いじゃないですよ。」
それにしても何故ばれた。それなりに音は立てずに動けたと思うんだけど。俺の顔から疑問を読み取ったのか、早坂が半笑いの表情で答える。
「雲鷹様がお気づきかは判りませんが、今秀知院の周りに黒服の人たちが集まってきていると思いますよ。既に何台か車が周りに止まっているみたいですし。
まったく、急に夜に黙って屋敷を出ていけば、八雲ーズたちも慌てているでしょうに。」
なるほど、それでばれたか。
「まぁ、確かにこれでたとえ今から雲鷹様がお帰りになっても、女の子一人とは言えない状態になるかもしれませんが、却って危険な状況になりつつあるんですけど……。
心配していただいたその気持ちは、……正直に嬉しいのですが。これ、ばれちゃったらどうするんですか。黒服たちが警備システムに反応しちゃったらかぐや様のオーダーを果たせませんが……。」
「あいつらだって馬鹿じゃない。状況位判断して、軽々に学院内にまでは入ってこないだろうが……。まぁ、バレない内に事を済ませるしかないだろうな。目的は何だかわからんが、生徒会室に忍び込むのだろう?さ、急ぐか。」
「何、当然の様に自分も参加するつもりなんですか。」
そうはいっても、もうここ迄ついてきちゃったし。今更引いてもあんまり意味はない。
「意味はありますよ。赤外線センサーを感知するためのゴーグルは一つしかないんですし、雲鷹様はここで待っていてください。」
「まぁ、まて。すぐに返すから一度ゴーグルを貸してみてくれ。」
一瞬眉をひそめてから、素直にゴーグルを渡してくれる。装備を確認してからゴーグルをつけセンサーの位置を確認した。よし、覚えた。
「覚えたから返す。」
「え!?」
早坂にゴーグルを手渡し、まだきょとんとしている早坂を置いて原作の様に壁を蹴り、赤外線センサーを躱して生徒会室の扉迄たどり着く。
「ええ!?嘘!雲鷹様ってそんな事も出来たんですか?」
小声ながらもそれなりに驚いた声を出す早坂。
「昔から、結構運動は得意でな。特に訓練はしなくても、何となく動けるんだよ。」
「そんなのずるいですよ。私は小さい頃から必死で訓練を受けていたのに……。」
やっぱり、それなりの訓練を受けていたのか。素であれだとしたら、何か特殊な遺伝子でも受け継いでいるんじゃないかと疑うレベルで動けるからな、彼女等は。
考えている内に早坂も同じようにして赤外線を躱して生徒会室にたどり着いた。今更遅いが、無言で二人静かに生徒会室に潜り込む。
そして早坂が手早くインスタントコーヒーの瓶をカフェインレスとすり替える。これも思うんだが、こんな大げさなことをしなくても、なんとかすり替えできると思うんだけどな。
本当に良心的なすり替えだし。瓶にはちゃんとカフェインレスってプリントしてあるから、白銀が何かの偶然で棚の中を見たらそれまで、の可能性もある。
……やるとしたら中身をすり替えたインスタントコーヒーの瓶を、予備品として事前に持ち込んでおいて、隙を見てすり替えたほうがスマートのような気がするのだが。
可能性としたら、夜に早坂といつもの話し合いをしていたら急に作戦を思いついた、とかかもな。俺も今回の作戦発動に気が付いたのは偶然だった。そろそろあるかなと思って外をぼんやりと眺めていたのが幸いしたな。
毎回毎回、本当に色々かぐやは作戦を考えるけど、天才ゆえの発想のせいか、たまにこんな風に大胆な手段を平気で使ってくる。
目的を終えると、早坂は漸く少し落ちついたのか、俺の方を振り返って前で両腕を組んで俺を見る。なんか姉に怒られる弟と思わなくもない。自分でも。
「本当に今更ですけど、なんでここまで来ちゃったんですか。」
早坂視点
雲鷹様がこの件を知ったら絶対についてくると思って、車も使わないで黙って夜の通学路を走って来たって言うのに、この有様。屋敷を出る際、深夜の街に響いていたのは間違いなく私の足音と息遣いだけだった。
本当にどうやってついてきたんでしょうか。まさか校舎の中に入るまで気が付けなかったなんて。雲鷹様、トレーニングを積めば家のママよりも凄い事が出来るようになるかもしれない。
雲鷹様は少し考えた後、声を殺して答えてくれる。
「早坂に一人で危険な事はさせられんだろう。ママさんとの約束もあるし、なによりお前が心配だからな。」
そういう事を平然と言う。私の様な小娘を口説いて……いるつもりは全くないんだろうけど、言われる方の身になっていただきたい。
ドギマギしそうになって、一度深呼吸をして落ち着こうとしたら、薄く開けておいた生徒会室の扉の向こうから、階下を歩く何者かの足音が僅かに聞こえた。
「不味いですね。見回りの時間の合間を縫ってきている筈なんですが、少し時間をかけ過ぎたかもしれません。」
生徒会室前の廊下は一本で他に姿を隠せるところはない。態々センサーを切って生徒会室内迄調べるかどうかは賭けだけど、ここは音を立てずにじっとしていた方が良いかもしれない。
「周りに集まりつつある黒服連中に何となく刺激されて、見回りの時間を早めたのかもな。これは俺の責任だな。」
「いえ、こういう任務にイレギュラーはいくらでもありますから。まぁ、雲鷹様が付いてきてしまうというイレギュラーは今まで経験した事がないですけど。」
少し考えた雲鷹様が窓を少し開け外を見る。段々と足音が大きくなってきて、トランシーバーで何かを話しているみたい。
ヤバイ、これセンサーを一時的に切って、生徒会室内に入ってこようとしている?
逃げ道は……そう言えば滅多に開けられることの無い隠し部屋がこの部屋にはあったはず。雲鷹様にそう進言しようと思った瞬間、私の体は少しだけ宙を舞い、雲鷹様の腕の中に落ちた。
何をされたのか一瞬理解が出来なくて、理解が及んだら大声を上げそうになって必死に口を両手で塞ぐ。なんでお姫様抱っこなんですか!?いきなり何をしやがりますか!盛大に混乱している内に雲鷹様が身軽に窓の外枠まで移動していく。
体幹が安定しているのか、それとも不思議な安心感のせいか、既に生徒会室の外側に身を乗り出しているというのに不安は感じない。
「え?ちょっと雲鷹様、何をなさっているんですか。」
「え?あぁ、お姫様抱っこ。いや、すまんな。逃げ道はここしかなさそうだし、おっさんに抱っこされるの嫌かもしれんが、少しの間だけ我慢してくれや。」
そういうと器用に外側から窓を閉めて、何のためらいも溜めもなくすっと宙に身を躍らせる。ちゃんと私の首にダメージが行かないように頸部から後頭部にかけて手でカバーをしてくれて。
衝撃は思ったほど無く、一瞬の浮遊感の後、まるで忍者アニメか何かの様に音も少なく着地した。
ただ、私はそれに気が付く事もなく、ずっと雲鷹様にしがみついていた。その……、首に手を回してさえいたかもしれない。
雲鷹様が何かを喋っているけど、なんかよく頭に入ってこない。
苦笑を浮かべる雲鷹様は私を抱えたまま、私がセンサーを無効化した壁を何でもないような顔をして乗り越えてしまう。
「おい、おい?大丈夫か早坂。流石に飛び降りるのはちょいと怖かったかもしれんな。
歩けるか?腰でも抜けたか?
……仕方がない、このまま家まで連れて行くか。」
気が付いたら、私は屋敷に戻ってシャワーを浴びていました。いつの間に私はここに?
……かぐや様には作戦は成功しましたとだけ伝えましょう。それにしても
「なんか、すごかった……。」
以前の御話で早坂のシュシュを小型PCと言っていましたが、もう一度ちゃんとチェックすると自作のシュシュ型スマホである事が判明しました。
自作スマホ……凄いな、早坂さん。ぱねぇっす。