お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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本当はこの回で会食まで行くつもりでしたけど、いつの間にか夏休み前だけで一本になっていました。

やっぱり主人公以外の視点は書きやすいですね。

かぐや視点です。


夏休み寸前

 

 「うぉら!生徒総会お疲れぇい!」

 

 

 会長が心の底から解放されたような声を出して、手に持っていた総会の書類を宙に放り投げる。

 

 あらあら。

 

 巻き散らかされた書類を回収すると、隣で自分でも書類を拾っている会長と目が合う。少しだけ、お疲れ様という気持ちで笑うと、会長も笑みを返してくれた。

 

 

 ここ数日、本当に忙しかったし、会長は恐らく自宅でもあんまり眠れていなかったんじゃないかと思う。目付きも、いつもよりも鋭くて目の下のクマも濃いわね。

 

 

 会長に気を取られている内に皆の話は明日の会食についてになっていた。

 

 

 「四宮先輩のお兄さんってどんな感じの人なんですか?僕、あんまり政財界の人達の話って詳しくなくて。

 

 藤原先輩はあった事あるんでしょ?」

 

 

 

 「そういう上流階級の人達の家族構成とかは中々表に出てこないですからねぇー。私も詳しくは知りませんけど、なんどかお会いした事はありますよ。

 

 眼光鋭い、怖い人って印象でしたけど、喋ってみたら優しくて、怖がっている私に手品を見せてくれました。

 

 それが本当にプロ顔負けの手品でしてね。すごく不思議で未だに種とか全然分からないんですよ。まぁ、他の人の手品の種も分かったことは無いんですけど。」

 

 

 

 藤原さんと石上君が、兄の話で盛り上がっている。ちゃんと約束を守ってくれて、兄の情報は最小限にとどめてくれている。それを横目に、会長はその話に入って行かない。

 

 

 心なしか、顔が引きつっているようにも見えるわね。少し緊張なさっているのかしら。自分に置き換えてみれば、気持ちは良く解るわね。

 

 私も明日急に会長のご家族と会食、という事になったらまず平静でいられる自信はありませんし。

 

 

 ……もしかして、私のお見舞いに来てくれたあの時、私が知らないだけで兄と何かあったのかもしれない。兄からも会長からも、そう言う話は聞いていないけど、示し合わせているという事なら、多分破局的な事には至っていない筈。

 

 

 もし、お兄さまが会長を認めてくれなかったら……どうしよう。そんな不安が私の中にずっとあるのは確か。だから、会長の事をお兄さまには相談できないでいる。

 

 お兄さまが会長とはお付き合いを許さないとおっしゃられたら。私はどうするの?会長の事が気になるようになってから、時々そんな事を考えるようになった。お兄さまが帰国なさってからはその回数が増えた。

 

 

 お兄さまは厳しい。小さい頃は理不尽な目にも何度もあってきた。でもそれにはちゃんと理由があって、ちゃんとお兄さまの表情を探れば……。

 

 不本意な本心が何となく透けて見える。私を心配している心が、どことなく冷たい表情、仕草の下から染み出ている。

 

 それはもしかしたら赤子の頃のあの言葉。厳しくしなくちゃいけないって、言葉が私にそう誤解させているのかもしれない。

 

 

 お兄様だった頃はずっと観察していた。私の考えは間違っていない、そう信じる事ができるくらいにはお兄様も、内心を消しきれていなかった。

 

 

 だけど、あのお祝いのカードを頂いたことで私の疑惑は確信へと変わった。後は答え合わせをするだけ。

 

 だからお兄さまが帰国する時は不安半分、期待半分だった。

 

 

 万が一、お兄さまが会長とのお付き合いを反対したら。そんな事は決してない、と言い切れるほど私には自信がない。

 

 お兄さまが現在独身なのは、お父様が決めた許嫁の方が結婚前にお亡くなりになったから。その後もお兄さまは一人でいる事を選び、お父様もそんなお兄さまに無理に別の縁談を持ってくることは無かったと話に聞きました。

 

 

 心の、冷静な部分が……、会長への気持ちをお兄さまには隠しておいた方が良いと警告してくる「お兄さまとは対立したくはないでしょ?」と。

 

 もう一人の私は「お兄さまを信じるべき。ちゃんと話せばわかってくれるわ」と主張する。そんな心の中でのやり取りを最近はずっと繰り返している。

 

 

 会長かお兄さま。どちらかしか選べないのなら、私はどちらを選ぶの?

 

 

 まだ、そんな深刻な段階じゃない。そんな事になるかどうかも分からない。だけど、何となくだけどお兄さまは許してくれるような気がするのよね。

 

 そんな事を考えるとまた心の中で、「そんな油断をしていると足をすくわれるわよ。」って叱られてしまうけど。ただ、その私の冷静な部分もお兄さまを警戒はしていても、最終的には障害にならないと判断しているみたい。

 

 

 一番の障害は、お父様。そしてその意を受けた黄光お兄様。

 

 

 何としても今回の会食を成功させて、会長とお兄さま、お互いの第一印象を良い物にしなくてはならないわね。

 

 お見舞いの時に顔合わせをしている可能性はあるけど……。考えてみたらあの時、私は動転して会長を追い出したのよね。

 

 風邪で寝込んだ妹のベッドにもぐりこんできた会長……。それがたとえ寝ぼけて自分から引き込んでしまったとしても……。お兄さまから見たら会長の印象って最悪じゃないのかしら?

 

 

 え!?あぁ、その可能性を全然考えていなかったわ。

 

 ここはお兄さまがあの騒動に、気が付かないでいてくれたと信じるしかないわね。あの日珍しくお兄さまは仕事が忙しかったって早坂が言っていたし。

 

 

 まさか、この私が神様に祈りたくなるなんて考えた事も無かったわ。

 

 

 ふと皆を見ると、会話は既に夏休み中の予定の話になっていて藤原さんが会食の翌日にハワイに行くと皆に告げている。

 

 

 そうなのよね。この子は夏は色々と予定が詰まっているみたいで……。そう言えばお兄さまも八月前には一度アメリカに行くってお話だったはず。何時までもアッチを放っておく訳にもいかないって言っていたわね。今回は夏休み中には戻ってくるってお話だったから、お兄さまが居なくなってしまう訳では無いけど。

 

 何か考え事をしながら「調整が上手くいくか。」ってこぼしていたから、色々と予定が詰まっているみたいね。

 

 

 

 「行こうぜ石上。夏の終わりには大きな祭りがある。タコ焼き位なら奢ってやる。」

 

 

 いつの間にか皆の話が、夏祭りの話になっている。藤原さんも勢いよくお祭りの話に食いついてきた。夏祭り、いいわね。

 

 

 「良いですよね~。わたあめ!射的!打ち上げ花火!」

 

 

 花火っ!会長と花火!良い!

 

 

 一瞬で私の心配事は吹き飛んで、夏の一大イベントが私の頭の中を支配したわ。我ながら即物的に思わなくもないけど、チャンスの女神に後ろ髪は無いって言いますし、この機会を逃してはいけません。

 

 

 お祭りのある日は8月20日だと会長が確認してくれて、スケジュールを空けておくと言っている。

 

 

 「そうですね、私も……。」

 

 

 予定を空けておきますね、そう続けようとしたとき後ろから藤原さんの声が被ってきた。

 

 

 「あ!……あ、駄目です。そのあたりトマト祭りでスペインでした。あっちゃぁー。」

 

 

 しまった!考え事に気を取られていて、藤原さん対策の無の心を忘れてしまっていたわ。

 

 

 残念がっている私と会長を見て、藤原さんが自分を置いて行ってしまうのかと私達を責めてくる。私としては、正直初めての友達である藤原さん抜きで花火大会に行くのは、少々気が引けなくもないですけど。

 

 

 でも折角の会長と花火のチャンス、逃したくないのも事実。なんとかこの事態を乗り切る為に頭を巡らせる。私だけ除け者にして、なんておっしゃりますけど、そもそも予定が合わなかったから仕方がありませんねってお話ではないですか。

 

 でも、そんな冷たい事、藤原さんには言い難いわね。

 

 

 そんな私と、そしておそらくは会長の内心の葛藤を石上君が吹き飛ばしてくれた。

 

 

 「え!?普通に行きますけど。」

 

 

 その後石上君から飛び出した正論の刃は、コントロール不能のモンスター、藤原さんを滅多切りにして逃走させてしまった。

 

 暴言を吐きまくって生徒会室を飛び出す藤原さん、自覚のない刃で藤原さんを切りつけてしまった事を後悔する石上君。

 

 

 「僕も……、帰ります。」

 

 

 意気消沈して立ち上がる石上君。

 

 そんな石上君に、私と会長はあなたは正しいと自然に肩に手をやっていたわ。

 

 

 

 強くなったわよね、石上君って。これから先藤原さんは石上君に任せた方が良いかしら。

 




花火大会に関しては雲鷹さんはちょいと邪魔かなという結論が出ました。
このポイントに保護者がいるとかぐやたちの恋愛が強く羽ばたけない気がして。

作品内の雲鷹さん自身もそう考えているので、仕事を理由に身を隠します。

さて、どうしようかな……。


因みに次弾装填率60%約3000字で止まっています。時間取れないし、色々起きるし、創作以外の心理的ダメージデカくて、文章を書く方向に心が向かないw

次弾装填完了したら、後書きに追記で装填完了と書いておきますね、
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