お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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とりあえず書けました。
次弾装填は3200文字程度、このまま出すか、もう一つエピソード咥えてアソートにするか考え中です><


会食を終えて

 一瞬凍結しかけた空気だが、恐らくは早坂の手配りか、足早にダイニングに入り込んできたコックの機転で流れが変わった。

 

 ばれたらバレたでそれで俺は構わんのだが。今更だし、俺の鉄板の持ちネタだからな。かぐやには今後禁止されたネタだが。自分から振るのでなければ問題は無かろう?

 

 

 とはいえ、もう俺がかぐやに対して壁や重荷でいる必要は無い。一々かぐやを悲しませるような行動を取る必要は……あぁ、ちょっとだけまだやらなきゃいけない事もあるが基本的には殆どない。

 

 気分的には孫娘の幸せを願う爺ちゃんの心境、といった所かな。

 

 前の人生では孤独のままだったから、親戚の子供達とも交流らしきものは全くなかった。

 

 

 だから、正確にはこれがどういう気持ちなのかが分からない。妹であると同時に精神的な年齢差から考えると曾孫とか玄孫、下手したら来孫、昆孫って所か。

 

 この場にいる誰であっても俺にとっては小さい子供の様なもの、なんだなと改めて考えると、ふとした寂しさが湧き上がる。

 

 

 原作の雲鷹は親の命令通り結婚した筈だよな。その辺はもしかしたら反発したのかもしれない。原作ではおそらく、だが少なくとも家族は持っていた、と思う。これも、明記はされていなかったけどな。

 

 

 原作の彼の様に俺も結婚していたら、一時でもこの寂しさから逃れることは出来ていたのかもしれない。その後の喪失に耐えられるかどうかは自分でも良く解らんが。

 

 

 俺のズルした手品に、目の前の子供達が年相応に驚愕の表情を浮かべ、笑っている。その笑顔を見てほんの少しだけ彼らとのつながりを感じて寂しさが薄まる。

 

 

 良い歳こいたじじぃが女々しいものだな。

 

 

 「これ、何度考えても種が分からないんですよね。

 

 お兄さんは一度もそのソファーから動いていませんし、お兄さんに近づいた人も誰も居ないのに、何でいつの間に私のポケットに紙切れが移動しているの?

 

 ねぇねぇかぐやさん、これ絶対手品じゃないですよね。ただの魔法とかかもしれませんよ!?」

 

 

 直感で正解に辿り着く藤原の嬢ちゃん……。恐ろしいな、と内心苦笑する。

 

 最初、雲鷹様と呼んできた藤原嬢に、もっとフランクで構わないと言ったらお兄さんと呼ばれるようになった。適度な距離感だろうな。

 

 

 「藤原さん、前にも言った通りお兄さまの手品は私も良く解らないんですよ。

 

 私、この手の手品の種を見破るのはそこそこ得意なんですけど、こればっかりは全然わからなくて。」

 

 

 

 既に場はダイニングからリビングに移り、各々楽な服に着替えてもらってくつろぎながら、それでも目だけは俺の手品に釘付けになっている状態だ。

 

 

 アイテムボックスを利用した手品は、マジモンの魔法だからな。常識にとらわれている内はどんな天才でも答えに辿り着けやしないだろう、が、やり過ぎは厳禁。

 

 相手の衣服に物を仕込むときは重さが殆どない物を選ばないと、感覚の鋭敏な者であればコイン一枚であってもポケットに移動させられた瞬間に気が付かれてしまう事がある。

 

 

 かぐやには一度感付かれて、面倒臭い事になった。それが種を見破るカギになると、一時期必死になって考察していたみたいだけど、ポケットが重くなったタイミングにどうやってコインを入れたのかが解らなかったようで、何とか事なきを得た。

 

 確実にそのタイミングでポケットにコインが入った、という事実がかぐやの思考をうまい具合にロックさせてしまったようだ。

 

 

 それ以来、他者の衣服に物体を移動させる際には、重さが殆どない一円玉か紙切れにするようにしている。

 

 

 「いや、本当にこれ何が起きたのか分からない位凄いですよ。え?藤原先輩に事前に仕込んでいたんじゃなければ説明つきませんよね、これ。

 

 いや、でも僕も仕込まれた覚えは無いんですけど、ポッケにメモがいつの間にか入っていましたし。」

 

 

 「石上と俺のはここでお借りした服だからな。前もって仕込んであったと考えれば説明はつくが、問題は書いたメモ書きの内容が全く俺の筆跡のままで、文面も同じという事だな。

 

 しかも雲鷹さんは一度もメモにも、それを入れた箱にも手を触れるどころか近づいてすらいない。

 

 ……わからん。」

 

 

 メモが置かれたテーブルに何か仕掛けがあるのかと会長さんやかぐやたちが調べて頭を悩ませている。いくら調べても、単なる超常現象であって手品としてはズルだから種が解る訳も無いんだけどな。

 

 どうやら会長さん達にも好評の様で何より。

 

 

 何度かのアンコールを受けた後、かぐやの睡眠時間が近づいてきた為にお開きになった。

 

 何気にかぐやが会長さんの横をキープし続けているあたり、少しほっこりした。俺の目があるせいか、会長の方からはかぐやに近づきにくかったのかもしれない。

 

 

 今日は藤原嬢が泊まっていく予定だったのと、時間も遅くなった事から、暗い夜道を帰らせるわけにもいかないと、会長さん達も泊っていくように勧めた。

 

 

 「お疲れさまでした、かぐや様、雲鷹様。」

 

 

 皆が自室に戻って息を抜いている合間を縫って、早坂が声を掛けてくる。

 

 

 「ごめんなさいね、早坂。折角お兄さまが八雲ーズを貸し出してくれてお休みがとれたのに、中途半端になっちゃって。」

 

 

 「いえ、問題はありません。私自身は裏方で結構ゆっくりできましたし、美味しいお料理もいただけましたから。

 

 それよりも、本当に雲鷹様の手品って不思議ですよね。私も子供の頃から何度か見せていただいていますけど、未だに種が分からないんですから。」 

 

 

 話を逸らして、主の精神的負担を軽くする。うん、従者の鏡だな。その代わり俺が矢面に立たされる訳だが。

 

 まぁ、嬉しそうな顔をしているから、別にいいか。あと、手品の種はこのままじゃ100年経っても分からんだろうから、考えるだけ無駄だぞ。

 

 

 「ふん、今後は年齢ネタが使用禁止だと可愛い妹様に申し付かったからな。何とかこの手品一本で場を持たせなくちゃならん。

 

 だから種は教えんぞ?」

 

 

 可愛いといった部分で嬉しそうな表情を見せるかぐやだが、種は教えんとの俺の言葉にかぐやと早坂の表情がしまったといった雰囲気になる。元々教えるつもりは無かったけど。二人が何か言っているが軽く手を振ってあしらう。

 

 

 「それよりも、白銀御行だったか?中々いい男じゃないか。」

 

 

 意味ありげに視線をやると、一気に挙動不審になるかぐや。え、とかあ、あのとか言葉にならない声が漏れる。

 

 悲しませるつもりは無くても揶揄うのは楽しいものだ。やり過ぎると意固地になって返って道を歪めてしまうだろうから、手早く切り上げるが。

 

 

 「落ち着け、俺は別にお前を揶揄うつもりは無いんだ。」

 

 

 嘘だけど。

 

 

 「俺個人の感想としては、白銀御行という人間を俺は気に入った。それをかぐやに伝えておきたかっただけだ。

 

 お前がどう思っているかはわからんが、な。」

 

 

 顔を真っ赤にして「私は別に」とか「お兄さま、勘違いなさらないで」とか漏らしている。この時点では確か、早坂に突っ込まれても会長さんに対しての気持ちは否定していた時期だな。

 

 早坂も少し責めるような目で俺を見る。まだ早いですよ、とハンドサインで伝えてきた。いや、特に今までハンドサインなんか使ったことは無いんだが、何となくジェスチャーでわかる。

 

 

 「まぁ、俺が勝手に良い奴だなと思ったという話だ。変に勘違いしなくていい。

 

 四宮の家として、しがらみもあれば色々な考え方もあるだろう。親父や兄貴がどう考えているかもな。

 

 ただ、お前には好きなように生きてほしいとは思っているよ。お前は強くなった、だろう?」

 

 

 スッと氷のかぐや姫の表情に戻るかぐや。冷たい目で俺を見つめながら、少し考えている。やがて何か覚悟を決めた様な真剣な瞳を向けてきた。

 

 

 

 「それが、四宮を。お父様やお兄様方を裏切る様な生き方でも、ですか。」

 

 

 先ほどまでの暖かい、柔らかい雰囲気が吹き飛ぶ。早坂も僅かに顔を青くして、心配そうに俺を見ている。

 

 冷たいままのかぐやの頭を軽く撫でる。吃驚したのか、身を竦める氷かぐや。

 

 

 ここが俺にとっての最初の山場って奴かな。

 

 

 「いいんじゃないか?それでも。女の子一人の人生を生贄にするような生き方は、出来れば俺はしたくないからな。

 

 その為に、それなりに力を付けたつもりだ。」

 

 

 かぐやの表情が緩む。リボンが似合うあの表情に少しずつ戻ってきた。

 

 

 

 「とは言え、しがらみと言うものは中々に厄介だからな。そう簡単に人情って奴は切り離せるもんじゃねぇ。親も肉親もな。」

 

 

 俺の言葉をかみしめるようなかぐや。

 

 

 「切り離す、ですか。」

 

 

 「そうなっちまうこともあれば、そう見えてしまう事もあるって事だ。簡単に結論が出る話でもねぇ。ま、今は深刻に考えるな。

 

 悩み事があったら相談しろ。俺で良ければ、だけど。

 

 あぁ、知っての通り俺は独身で浮いた話一つない男だからな。

 

 恋愛相談は苦手だが、たっての願いと言うならば受け付けなくもないぞ。」

 

 

 途端に慌てた顔になるかぐや。女の子だな、コロコロと表情が変わる。

 

 

 「れ、恋愛相談って、私はまだ誰も好きになったりしていませんって。ねぇ早坂!?」

 

 

 テンプレートの様な反応を返すかぐやをあやす様に早坂が動く。

 

 

 「かぐや様、あんまり藤原さまをお待たせしてはいけませんよ、ささ、お部屋に戻りましょうね。」

 

 「ちょっと、早坂、まだお兄さまの誤解を解いていません。」

 

 

 「ここで変に誤解を主張する方が余計に疑われちゃいますよー。いいから早くいきましょうね。」

 

 

 早坂に少々強引に連れていかれるかぐやを横目に、おやすみ、と一声告げて自室へ戻る。

 

 

 

 

 ……さて今回、場を少し動かした。この程度では原作の流れが変わるような事にはならないかもしれない。ただ、要所要所でのかぐやの精神的負担が少しは軽くなるかもしれん。

 

 

 原作の再現には出来れば拘りたいが最低限、あの二人が幸せになれればそれで目的は達成されると判断しても良いだろう。

 

 出来ればその先も拘りたいものだが。

 

 

 先を何度か占う。半年先、その先。占う未来が遠ければ遠いほど、占いの精度は落ち、未来は揺蕩い始める。

 

 だが試行回数を増やしていけば、段々と確度を増していく。

 

 

 もう直ぐ親父が倒れる。原作通りなら一度立ち直るが、今回はどう転ぶか……。

 

 

 占いを続ける。

 

 

 親父が倒れるタイミングで、四条との抗争が水面下で活発化するだろう。此方が四条を刺すタイミングは、四条が四宮を刺した時。資金はその時の為に、少々過剰なほど用意できている。

 

 投資や投機は元金が大きければ大きいほど、リスクもリターンもでかくなるからな。

 

 

 アザーセルフを起動して作業を再開する。アメリカの本社に戻ってから少々忙しくなる。日本で遊んでいる間に、どんどん案件が貯まってきている。もう一人の俺がPCに向かうのを横目に……。

 

 占いを繰り返す。……ッ……チャ。

 

 

 揺蕩う未来のその先にかぐやと白銀の笑顔がある事を願って……。

 

 

 




感想欄で頂いたアイディアを少々組み入れさせていただきました。

前書きの通り、次弾充填率50%OR100%状態です。

のんびりお待ちください><;
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