お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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まだかぐや様は出てきません。


黄光の呼び出し

 友人はそれなりに作れた。ジャンルを限らずあらゆる業界に人間関係を構築し、アメリカの財界では何十人か友人をつくった。友人、といっても顔見知りからビジネスでの付き合いがある者程度で、正直一般的な「友達」と言うものではないけど。

 

 時折パーティーで集まって酒を呑み情報交換をする、程度は出来る友達だ。

 

 10ケタ後半だった資産は在学中には11ケタに増え、それなりに充実した大学生活だったと自負している。

 

 

 ちょいと誤解しがちなのが、アメリカの大学は実は入学するのはそれほど大変じゃないという事。とは言ってもスタンフォードともなると、それなりに大変ではあるのだけれども、日本の大学と違ってアメリカの大学は入学よりも卒業する方が遥かにハードルが高いのだ。

 

 

 日本の大学の様に一度入ってしまえば、後はそこそこ出席して単位を取得していけば何となく卒業できる、と言う訳には行かない。いや、日本の大学も理系はそれなりに大変らしいけど。

 

 

 

 前世の時は、普通に三流の文系大学で学校に通うよりも雀荘に通った日数が多かった俺としては、普通にチートな頭脳が無ければとてもじゃないが熟せない大学生活だったと今更ながらに振り返っている。

 

 

 

 うん、そうだ。結局原作白銀と同じようにスタンフォードに行く事に決めた。全く同じようにまねしてアーリー受けて、当然の様に合格して、気まずくなった副会長から逃げる様に日本を出てきてしまった。

 

 

 あれ以来、手紙も電話も彼女とはしていない。この時代はまだSNSやらは主流じゃないからな。電子メールも友人や恋人と使う連絡手段としては一般的じゃない。ましてや振った相手に連絡を取るなぞ敷居が高い。

 

 

 大学卒業後も、せっかく作った人間関係を仕事に活かす為にアメリカに残っていた。四宮は四条とは違い海外が本拠地と言う訳では無いけど、それでも世界的な企業だからな。

 

 当然アメリカにも四宮の関連企業はある。卒業後はそのままアメリカで活動するようになっていった訳だけど、これって下手したらこのままずっとアメリカ暮らしになって原作クラッシュすんじゃね?ってくらいに日本に帰る切っ掛けを無くして焦っていたりもした。

 

 

 

 なにせアメリカで築いた資産もまたそれなりに莫大な額になっていたし、新たに自分で始めたビジネスも軌道に乗って、卒業後、俺の個人資産がちょっとエグイ事になってきたりしたせいもある。

 

 このまま行けば原作開始までには流動資産、不動産合わせて12ケタに手が届きそうな感じだな。親父は13ケタだから文字通り桁違いだけど。

 

 

 これもう日本じゃなくアメリカが俺にとっての本拠地になっているんじゃね?って思ってきているし、現地で雇った俺の新しい側仕えは日本人なんだが、アメリカに移住する希望があるらしく、俺にも今度グリーンカードを申請しましょうとか提案してきた。

 

 

 却下したけど。日本じゃ二重国籍を認めていないし、俺はまだ日本人でありたいと思っているからな。

 

 

 

 あぁ、そう言えば大学卒業後結婚するって話だったが、スタンフォードに入ってから暫くして婚約者が決まったのだけれども、卒業を数か月後に控えた時期、日本で交通事故に遭い、あっさりと他界してしまった。

 

 

 在学中に何度かアメリカに会いに来てくれたし、俺も夏休みを利用して何度か相手方のご家族に挨拶をしに行ったりしていたのだけれどもな。

 

 

 正直、好きだったかはまだ分からなかったけど、この人と生きて行くんだと覚悟を決めていたし、そうなるのならば浮気などせずに一筋に生きようとも思ったんだ。

 

 まだキスの一つもしていなかったよ。

 

 彼女、真顔がちょっと真面目過ぎて怖い感じだったけど、笑うと笑窪が出来て可愛い人だった。

 

 

 ショックではあったけど、俺は冷たい人間なのかそれともあんまり彼女の側に居なかったせいか。現実感がないまま、あんまり長くショックは引きずらなかった。

 

 

 ……いや、やっぱりそれなりにショックがあったのかもしれない。

 

 

 時期的にそろそろ親父の前に名夜竹さんが現れてもおかしくない時期なのに、日本に帰る気力がわかないんだ。

 

 いや、その時期に合わせて俺が日本に帰ってもどうなるってもんでもないから、どうでも良いんだろうけどさ。

 

 

 

 神様がくれたチートの魔法の中には死者を蘇生する魔法がある。習得難度もたいしたものじゃないし、今から数十年、もしかしたら十数年も魔法の訓練をすれば彼女を黄泉の国から取り戻すことも出来るかもしれない。死亡してからの時間はあんまり問題じゃないみたいだからな。この蘇生魔法。

 

 

 ただ、蘇生には時間以外の別の要因が成否に影響するし、その条件を俺が現時点で満たしているとはとても思えない。大前提として魂の海に還る前に魂を保管しておく必要がある。それが出来なければ本人そのものではなく、本人そのものの別人を作り出す事になる、らしい。意味がよく分からんな。

 

 何気にとんでもない魔法だとは思うけど、目的を果たせなければ意味がない。

 

 

 まぁ、難しく考える事もなく、手詰まりってやつだ。第一世間的にも死者を蘇らせるなんて、大騒ぎになり過ぎる。やらかしにしても特級品のやらかしって事になる。

 

 

 巻き起こる面倒も、今までの天才がどうとか言うものとはケタが違う。

 

そういう風に色々と「やれない理由」を考えてしまう時点で、彼女を真剣に愛していたわけではないのだろう。

 

 

 わかっていた事だけれど、それでもそういう自分に寂しさを覚える。

 

 

 傷心しているからと言って次の縁談を何時までも拒否できる立場ではないはずだし、数年もしないで本家から何か言って来ると思っていたけど、その後親父からも兄さんからも音沙汰が無い。

 

 

 

 不審に思って側仕えの者にそれとなく探らせたら、縁談がこない事情が見えてきた。縁談に関して一番の決定権を持つ親父は、出来れば俺には閨閥を形成する為にも良家と縁を結んでもらいたい。所謂四宮家に産まれた者の義務を果たせ、だ。

 

 だけど婚約者を亡くした俺と妻を亡くした自分とを重ねてしまったらしく、急いで次を探す気になれないといった様子らしい。差し迫った事情がある訳で無し、娘を亡くした相手方への配慮もある。家格に差があったとしても配慮した様に見せるのは必要な事だ。

 

 側近に、暫くは静観すると宣言したとか。

 

 

 んで、次に決定権を持つ黄光兄さんはもっと直接的に俺の縁談に関して否定的みたいだ。理由は俺がただでさえ目障りな上に、次代の四宮家の希望という声も四宮家財閥内部でチラホラ出てきたから。これで有力な家と結ばれれば更に自分の立場が弱くなる。

 

 

 どの道いずれは誰かと結婚させなくてはならないが、可能なら自分の脅威にならない家との縁談を選択したい。だがあんまりあからさまにやれば親父にも、周囲の人間にも反感を買い余計に自分の立場を悪くする。だから直ぐには動けない。

 

 

 因みに青龍兄さんが自分から積極的に動く訳もなく、今は奥さんをほおっておいて遊び歩いているらしい。この調子で彼方此方に種をまきまくっていたら、将来的に四宮家の眷属が一体何人産まれてくるんだろうか。ちょっと怖くなる。

 

 

 そんなこんなで幾つかの思惑が重なって、俺の縁談は延び延びになっているらしい。

 

 

 「まぁ兄さん達らしいな。折角追加されたモラトリアムだ。精々満喫させてもらうさ。」

 

 

 誰に伝えるまでもなく漏れた言葉に側近が頷く。

 

 とは言え、別に女と遊び歩いている訳じゃない。今も立派な独り身だ。大学生活の間も独り身を貫いた俺は、今では話しかけてくる女も滅多にいない。

 

 

 原因の一つは年齢相応に見えないこのベビーフェイスのせいもあるだろう。不老不死の影響か高魔力の影響なのか、15~6歳の頃から成長が止まったかのように顔立ちが幼いままなのだ。

 

 魔力のコントロールを訓練すればある程度外見年齢を弄れるみたいだけど、魔法必須のファンタジー世界なら兎も角、使い所が今一ない現代社会。

 

 最初の頃のワクワク感が大きい時期なら幾つかの魔法を必死になって練習もしたが、使う機会が限られている上に常に他者の目がある生活を送るうちに億劫になって、殆ど訓練なぞしなくなってしまった。

 

 例外は投資の際のズルだけだな。

 

 

 初対面の人に24歳だと相手に告げると大抵はちょっと引かれる。その代わりその筋の趣味の女性には大人気だったりする。不本意だが。二十代後半のマダムがリアルに舌なめずりした時には、身の危険を感じたよ。不老不死なのに。

 

 

 そういう方には先方からの接触は遠慮させてもらっている。怖いし。最近では側仕えの者達が俺の意を酌んで、そういう人が近寄らないように色々と手を回してくれている。

 

 

 まぁ、ベビーフェイスの件は兎も角、縁談が持ち込まれない以上、本家とは世間話をする仲でもないからな。しばらく接触は無いだろうと考えていた。

 

 

 だからその連絡を黄光兄さんからもらった時は、一瞬何かの間違いかと思った。

 

 

 

 「雲鷹。いい加減、一度日本に戻ってこい。」

 

 

 開口一番、挨拶もそこそこに告げる黄光兄さん。

 

 

 「いきなりだな。どうした風の吹き回しだい?兄さん。」

 

 

 「ふん、話さにゃならん事が出来た。こんな誰が聞いているか分からん電話じゃ話せん内容だ。

 

 そっちの方はしばらく人に任せても問題なかろう?こちらで受けている報告でも特に問題は起こっていないはずだしな。」

 

 

 今の側仕えが情報を漏らしている訳じゃない。今の奴は俺の子飼いだからな。現地職員の家族から若手の希望者を何人か募った。親父は兎も角兄さんの息がかかった奴はいない。

 

 だけどまぁ、特にこちらの情報を秘匿している訳でもないし、秘匿する理由もない。俺が関わっている事業関連の情報はある程度本家に報告している。

 

 

 それ自体が黄光兄さんの首を柔らかく締めていくのが分かっているから。

 

 

 しかし、この時期の急な呼び出し。そして他者には聞かせられない内容、という事は。

 

 

 「急な話だけど、兄さんがそう言うなら了解した。」

 

 

 長話するような間柄でもないし、余計な言葉を発してよそに情報を漏らす必要もない。手短に話を終えて直ぐに日本行きのチケットを手配した。

 

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