お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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相も変わらずストック0症候群にかかっています。
充填率も0です。

もっと言うなら書きあがって直ぐにアップする感じですので後で手直ししないと駄目っぽいかも。


好きになれそうな夏休み

 お兄さまがアメリカに旅立ってから、急に家の中が寂しくなった。まるで火が消えたようにって例えがあるけど、本当のそのままね。

 

 いらしたとしても、火に例えられるような騒がしさみたいなものはありませんでしたけど、暖かさは確かにあったのですから。

 

 夏休み中にはお帰りになるという話ですから、もうそろそろお帰りになるとは思うのですけれど。

 

 明後日はお兄さまも楽しみにされていた花火大会ですし。

 

 

 旅立たれてたった数日で、何時もご一緒していた夕食が美味しく感じない。味気が無いように感じてしまう。また、いつもの一人の食事に戻ってしまってました。

 

 夏休みじゃなければ、学校で皆さんと昼食をご一緒出来るのですけれど。

 

 

 早坂も何処か元気が無くなった様で、いつもと違う様に見えるし。

 

 皆さんを招待してから数日の間、何か考え事をしているのか、話しかけても反応がない時があったけど、お兄さまが居なくなってからは少しの間、ボーっとする事が多くなって動きも少々緩慢に感じたわね。

 

 

 お兄さまとSNSなんかで連絡を取り始めてからは、少し元気が出てきたみたいだし、お帰りの予定が近づくにつれ元気になってきていますけど。

 

 

 狡いわね。私は会長と中々やり取りできないし、鍵垢もまだ見れないのに。

 

 まぁ?必要な情報は早坂が教えてくれるから、問題はないのですけれど。いえ、やっぱり自分でちゃんと会長の呟きを読みたいわね。

 

 

 「まだ諦めていなかったんですか?会長からかぐや様の鍵垢への承認要求、結局来なくて鍵かけるのも止めちゃいましたよね。

 

 多分、あんまりTwitterを見ていないんだと思いますよ。」

 

 

 「この件は、会長とは関係ありません。ただ、私もTwitterというものをやってみようと考えただけですから。」

 

 

 「だから、なんでその言い訳を一から十まで相談を受けていた私にするんですか。意味無いどころか、意味深な本心の露呈になっちゃっていますから。」

 

 

 ぐぅの根も出ないように封殺されてしまった。こういう話では早坂に勝てる気がしない、のはつい最近までの話。

 

 多分、その気になれば……、お兄さま関係で弄っていけばせめて相打ちにまで持っていけそうな気がするのよね。勘、ですけど。

 

 

 ……止めておきましょう。本人が何処まで自覚しているのかわかりませんし、間違えば取り返しがつかない事もあるのだから。

 

 もう少し、双方の状況がつかめないと動きようがありませんし。私自身、その件についてどう望んでいるのかも判りません。

 

 

 お兄さまの婚約者の方は、私が産まれる前にお亡くなりになったので私は写真でしかお会いした事がありません。どういう方だったのかもお兄さまは御話になった事がありませんから、良く知りませんが。

 

 その後どなたともお付き合いをしていないという話は聞いたことがあります。あくまで噂で、ですけれど。お兄さまが仕事が忙しくて、出会いが無いんだと仰っていたとか。

 

 

 言い訳、ですよね。

 

 

 お兄さまの内心を私が理解するには、まだ色々と足りないものがあります。私の為に心を鬼にして厳しく育てていただきましたけど、その実、お優しい人である事は厳しかった時期にも探ればチラホラと見えていました。

 

 

 ただ、こういう恋愛関係の、それも悲恋の話になってしまうとお兄さまの心が私には一切想像できなくなる。

 

 こういう言い方は良くないのかもしれないけど、それでももう二十年近く昔の話。お兄さまには振り切っていただいて、一度周りを見渡す心のゆとりを持っていただきたい。

 

 

 無論、自分の件すら碌にコントロールできていない私に、お兄さまにあーだこーだ言う資格はないのかもしれないけど。

 

 

 「かぐや様、可愛くお悩みの所申し訳ありませんが、そろそろ皆さんとのお出かけの準備を始めませんと。

 

 今の内からコーディネートしておかなければ、当日の朝、慌てる事になってしまいますよ?」

 

 

 あー、もう、誰の為に頭を悩ませていると思っているのよ。半分は貴方の為に悩んでいるって言うのに。もちろん私の予想が当たっていれば、の話ですけれども?

 

 

 でも、明日はいよいよ皆と初めてのお出かけ。会長の妹さん、圭さんと一緒にウィンドウショッピング!藤原さん達も着いてきますが、まぁ、いきなり二人きりと言うのも少々ハードルが高いかもしれませんし、一歩一歩ステップを進んでいくのも悪くはありません!

 

 

 そしてお出かけ当日の朝、いつもよりも早く起きて、昨日決めた筈のコーディネートを幾つか微修正しつつ早坂とウキウキした気持ちで衣装合わせをしていた時。

 

 本家の使用人の怖い方と強い方が揃って私の前に現れ、お父様に呼ばれたのでこれからすぐ京都に向かってほしいと言われてしまった。

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

 車で移動中に藤原さん達に、急用でいけなくなった旨と謝罪のメールをして早坂と共に京都を目指す。少ししたら、予定延期のメールが帰ってきた。

 

 申し訳ないとも思ったけど、嬉しかった。藤原さんが今まで何度か「私を除け者にして」とか言っていましたけど、確かに。

 

 皆が揃うのを待って予定を変えてくれるというのは、申し訳ない気持ちもあるけど有難いという気持ちが強いかもしれない。

 

 私は、まだ大丈夫。

 

 

 

 「あぁ、居たのか。」

 

 京都の本宅に着いて、通された部屋で待っているとお父様が部屋の外を通った際に、呼び掛けた私に返してくれた言葉。貴方が私を呼び出したのではないの?何故、顔も見てくれないの?

 

 

 「ご苦労。」

 

 

 振り返りもせず、顔を見るでもなくそのまま何もなかったかのように立ち去るお父様。

 

 ならば何故呼んだの?愛してもいない子供なら放っておけばいい。何故、こんな風に弄ぶの?

 

 「こんな場所に呼び出してそれだけですか。……くたばれクソ爺。」

 

 早坂の呟きが、私に寄り添おうとしてくれるその気持ちが私の心を支えてくれる。

 

 

 私は父に……愛情を与えられた記憶が殆どない。僅かな記憶もそれが愛情なのか私には分からない。

 

 私が持っている家族の愛は、殆どがお兄さまに頂いたものだ。

 

 

 ただ、父が、お父様が切なげな顔で私を抱き上げ、お母様を見ていたのは覚えている。それは私に対する愛ではなく、母に対しての愛だったのかもしれない。

 

 

 でも、少なくともその父の愛かもしれない記憶が今の私の一部を支えていたのも事実だ。

 

 

 大丈夫。今更父親の愛情を求めて苦しむような無様はしない。期待もしない。傷つきもしない。私はお兄さまに強くしてもらったから。

 

 

 お父様だけではない。お兄様方お二人はまだましな方。時折顔を合わせる親戚やその周囲の者達は私を腫物扱いする様に接する。人によっては居ない者かのように。

 

 

 

 別に問題は無いわ。私が欲しいものを貴方方は持っていないから。

 

 

 それに明日は、ずっと楽しみにしていた花火大会がある。会長も藤原さんも石上君も。私に色々な物をくれた生徒会の皆が、久しぶりに集まって皆で花火を見に行く。

 

 今までずっと嫌いだった夏が、多分、明日一日の出来事で大好きになれるかもしれない。

 

 初めて友達と、後輩と、そして会長と窓からの小さい花火ではない、大きな花火を見に行けるのだから。

 

 

 だから……。

 

 

 「なりません。」

 

 

 本家の怖い方の使用人がこんな事を言っても……。

 

 

 「最近のお嬢様の振る舞いは目に余ります。人ごみのある……。」

 

 

 途中から聞く気も失せるわ。適当に残念な表情を浮かべてショックを受けたふりをする。大人しく会長たちに参加できなくなった旨、メールをする。怖い方の目の前で。

 

 納得したのか、そのまま頭を下げて退出する本家の使用人。ふんっ。お兄さまがいる間は八雲ーズの端っこでお兄さまの金魚の糞をしているだけの癖に、お兄さまがお出かけになったとたんしゃしゃり出てくるなんて。

 

 

 ……いや、でも確かに怖いんですけど。

 

 

 こんな程度では負けない。負けるつもりは無いわ。でも、心に全くダメージが無い訳でも無い。心にどうしても浮かんでくる弱音を、ベッドに横になって涙と一緒に吐き出す。

 

 

 大丈夫、本気じゃない。既に早坂には目で指示を出している。Twitterにも助けて、のサインを出した。「みんなと花火がみたい」と一言。

 

 もしかしたら会長が私を見つけてくれるかもしれない。

 

 涙と抑えきれぬ嗚咽が部屋から洩れる。彼女たちは私の涙を見て、私が本気で諦めたと信じるでしょう。

 

 嫌、何か駄目。

 

 演技のつもりの涙が、私の心の壁を内側から揺らし始める。涙が止まらない。ネガティブな思考が頭を支配する。もう一生誰にも会えなくなっちゃうんじゃないか、なんてありえない考えがつい口に出たりもした。

 

 結局、少しのつもりで流した涙は思いの外続いてしまって、時間を圧迫してしまう。

 

 

 何とか呼吸を整えて涙を止める。自分でも気が付かないうちに色々溜まっていたみたいね。時々、こうやって泣く事で心をリセットできるってお兄さまが教えてくれたことがあったっけ。

 

 お兄さまもこうやって泣いたことがあるのかしら。

 

 

 

 「かぐや様、時間がありません、そろそろ頃合いかと。」

 

 

 「ありがとう早坂。あぁ、ベッドで泣き崩れたままだと、あいつらが確認の為に側に寄ってくるかもしれないわね。」

 

 

 「かぐや様が花火を楽しみにしていたのは、この屋敷の全ての使用人が心得ています。私がかぐや様の振りをして、窓から外を見て誤魔化しますよ。

 

 もし、かぐや様がお望みなら、本家の使用人の数人、今後行方不明になっていただく事も可能ですし、一声かければ喜んで実行する者がこの屋敷には集められていますよ?」

 

 

 お兄さまが以前教えてくれた。この屋敷に集まっている使用人は、私を主として認めている者たちだけで構成されているって。本家の使用人は除くけど。

 

 

 だからこそ、迂闊な事は言えない。

 

 

 「そう言う怖い事を言うのは止めて。貴女にもそんな事をさせる訳にはいかないし、お兄さまにも軽蔑されたくはないもの。」

 

 

 クスッと早坂が笑ったような気がした。

 

 

 「さぁ、早くこの部屋から脱出してください。表には車を用意してあります。急だったので手配できたのは民間のタクシーですけど。本当に時間がギリギリなんですから、急いでください。」

 

 

 急かす早坂の声に背中を押され、急ごしらえのジップライン、といって良いのかしら?の滑車を使って緊急脱出よ!

 

 

 「早坂、ありがとう!」

 

 

 待っていてね、会長、皆!

 




いつも、感想とか評価とかここ好き、本当にありがとうございます!

ここ好きって後で確認すると色々と勉強になったりして良いですよね。
こういう表現だとOKなんだなぁとか考えさせられます。

感想もいただけるとすごく嬉しいです。お返事が中々書く時間が取れなかったりしますけど、全部ちゃんと読んでいます。

誤字報告も本当に助かります。

勢いで書いてしまうと何処かおかしい所が必ず出てしまいまして><;


月末、月初は書けるかどうかが解りませんので、続きはのんびりお待ちください。
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