お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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かぐや様はまず間違いなく四宮の血筋だよね。四条眞妃さんと色々とそっくりだしw


清水名夜竹さん

 「相変わらず気持ち悪い奴だな。おめぇは。ガキの頃から見た目が全然変わらねぇ。年齢も苦労も全然顔に出ていねぇ。

 

 昔から見ていなかったら、てめぇが24だなんてとても信じられんな。15~6のガキにしか見えん。」

 

 

 本家の離れに呼ばれて、顔を出したら出合頭にこれだよ。久しぶりの日本に羽を伸ばす暇もない。

 

 

 勧められもしないまま対面にどすんと座り込んで、黄光兄さんと向かい合う。俺の前にはお茶が無い。一息を突く間もなく兄さんから次の言葉が飛び出してきた。

 

 

 「遊び歩いて大した苦労一つしてねぇ青龍の野郎でもまだ顔に貫録が出てきてるぞ。まぁ、あれは遊び人の顔にしかなれんだろうがな。

 

 あれだけ稼いで、いくつもの事業を回して、何でそんなにガキのままでいられるんだか、わからねぇな。」

 

 

 アメリカに出てからほとんど顔を合わせていなかったとはいえ、親父や兄に届いている報告書には俺の最近の顔写真も送られていたはず。とは言え、まぁ、気持ちはわからんでもないけど。

 

 

 自分でも年を取らない自分の顔がちょっと気持ち悪い。せめて二十歳くらい、出来れば三十歳くらいまでは年相応に顔が変化してほしかったんだけど。

 

 ただまぁ、言われっぱなしは舐められる。同感ではあってもそれをそのまま受け入れる訳には行かん。

 

 

 「あぁ、まぁね。どうやら俺の母方の先祖には仙人でもいたらしくてね。隔世遺伝か何かかは分からないけど、どうも年を取らないらしい。

 

 もしかしたら不老不死かもね。」

 

 

 俺とはしては軽口を返しただけなんだけれど、一瞬兄さんの顔が硬直して、暫く真剣な思案顔に代わっていた。

 

 

 「お前……。」

 

 

 「やだな兄さん、何本気になっているのさ。俺はまだ24歳だよ。あとひと月で25歳。意外とこういうベビーフェイスの奴っているもんさ。あっちの大学にも似た様なベビーフェイスな人は何人か見かけたこともある。

 

 この世に不老不死の存在なんて本当にいる訳ないじゃないか。」

 

 

 「はん、一瞬冗談に思えなかっただけだ。おめぇは他者からの評価って奴をもう少し自覚しろ。ただでさえ親戚連中にも本当に人間かどうか疑われているってぇのに。」

 

 

 「ひどいな。人間以外の何だって言うのさ。昔から言うだろう?神童も二十過ぎればただの人って。

 

 俺はちょっとばかり中身の成熟が早かっただけさ。」

 

 

 黄光兄さんが胡散臭そうな顔を俺に向ける。一応、表面上は俺と黄光兄さんは対立していない。少なくとも俺の方からは対立する理由がない。原作の雲鷹さんとは違ってね。あちらの方はどう思っているかは本当の所は分からないけど。

 

 

 ただ、今回こうやって呼び出されて相談を持ち掛けてくるって事はそれなりに信用してくれている、のかもしれない。邪魔だとは確実に思われているだろうけど。

 

 

 「ちょっとばかりで済むようなモンでもないけどな。まぁ、無駄話はもういい。それよりも本題だ。」

 

 言いたい事をいくつも飲み込んだような顔をして無駄話を切り上げる黄光兄さん。

 

 

 「親父に女が出来た。」

 

 

 いきなりストレートな物言いに、漸く運命の歯車が回り始めたのを感じる。そうか、まだ確認はしていないけど漸く名夜竹さんと親父が出会ったか。

 

 

 「親父に女が出来るなんていつもの事だろう?俺の母親が死んだ後もちょこちょこ周りに女がいたじゃないか。」

 

 

 「あぁちげぇねぇがな。今回はいつもと違う。女が孕みやがった。」

 

 

 「へぇ、やるじゃん親父。今何歳だっけ?この歳で末っ子脱出、お兄ちゃんになるって事かい?老いてなお現役とは恐れ入るね。」

 

 

 「はん、飄々とまぁ口が動きやがる。一つも驚きやがらねぇ。もしかして知っていたか?」

 

 

 「残念ながら忙しくて日本の本家周りの情報は気を配っていなかったんでね。……正直、日本の話を聞くのもまだちょっと辛かったからね。」

 

 

 「あぁ、そうだな。すまねぇ。」

 

 

 ばつの悪そうな顔をして謝罪する黄光兄さん。この人原作を表面だけなぞって読むと旧態依然な石頭ってイメージがあるし、跡取りに拘って家族を家族と思わない非情な人って感じだけど、多少は愚かではあるけど完全な愚物ではないんだよね。

 

 

 信用できない人間に囲まれて生きてきただけ。だからああなる。

 

 

 でも根は悪い奴じゃない。だから原作ラストの辺り御都合主義に見える位にあっさりと折れてくれた。

 

 あれが本当に強欲で人を信じられなく、自分の事しか考えられないエゴイストな愚か者であったなら、かぐやを信じず、家族を信じず四条との手打ちも上手くいかずにバッドエンド一直線だったろう。

 

 かぐやが何を言おうが、親父はまだあの時には生きているのだ。時間制限が差し迫っている訳じゃ無し、その場を上手く取り繕って、口八丁で遺言書を破棄されないように保全。

 

 一度場を納めてから一同が会した席で改めて戦力を投入して鎮圧し遺言書を確保。さっさとかぐやを四条に差し出してしまえばその後は彼の好きなように出来ただろう。

 

 最悪、遺言書が破棄されたとしても、再度まだ意識の有る親父を説得しなおせばいい。

 

 残りの後継者を全員、拘束してから。

 

 

 まぁ、その場合はかぐやを手に入れた四条帝が四宮家と完全に敵対する可能性もあったけど。いや、その可能性は少ないかな。どの道四条も落とし所を探っていたのは事実。あのままだと共倒れになるっていうのも間違ってはいなかったし。

 

 

 あの時、彼、黄光は四宮家を、財閥を救う為にどうすればいいのか、誰が本当に信用できるのか、そんな心理状態で生き残るための方策を必死になって探っていた。本当は雲鷹やかぐやを信じたかったんじゃないかな。藁をもつかむ思いだったのだろう。

 

 

 そう思う事にしよう。今は。

 

 

 深いため息をつくと切り替えたのか話を続ける。

 

 

 「種がな、親父の種かどうかわからん。女は信用できねぇとかそう言う話じゃねぇ。

 

 その女は一度ここを出て行ったんだ。その後帰ってきて親父に妊娠を告げた。時期がな、微妙なんだよ。」

 

 

 

 「なるほどね。親父は何と?」

 

 

 「腹の子は自分の子だとよ。DNAを調べる事も許さねぇとさ。」

 

 

 また一つ深い溜息を吐く黄光兄さん。

 

 

 「親戚連中は大騒ぎだったが、親父の一喝で黙らせた。」

 

 

 「兄さんはどう思うんだい?」

 

 

 「ここで親子で対立して家を割る訳にはいかねぇ。四宮の実権はまだまだ親父が握っている。親子で対立しても得はねぇ。

 

 それに腹の中のガキも男であれ女であれ、年の差がでけぇからな。

 

 後継者で問題になる事はねぇだろう。そうである以上、俺は親父を支持する。」

 

 

 なるほど。確かに現時点で親父を敵に回す事は愚の骨頂。青龍兄さんは論外としても、俺がいる以上、ここで親父を敵に回して自分の評価を下げる事は後継者レースからの脱落を意味する。

 

 

 まさか産まれてくる子供が女だてら、天才で、カリスマ性にあふれ、四宮の将来を背負って立つ事を期待されるような人物になるとは考えもしないだろう。

 

 ましてやその彼氏、いや、旦那予定の者が彼女に寄り添い四宮を左右するような存在になるかもしれないとは欠片も想像している訳が無い。

 

 

 「で、それを俺に話す理由は?」

 

 

 少し睨む兄さん。

 

 

 「解らねぇほど馬鹿じゃねぇだろ、お前。」

 

 

 「だとしてもはっきり言葉で言ってくれないとね。言質を取る訳じゃないけど、気持ちの問題さ。」

 

 

 またまた一つ溜息をつく。幸せが逃げるぜ?兄さんよ。

 

 

 「お前も親父を支持しろ。ガキ同士で割れる訳にもいかねぇんだ。今の時点で家を割るのは良い事じゃねぇ。わかるだろう?

 

 俺らは既に四条を敵に回している。奴らはいずれ噛みついてくる。それが解っているからおめぇは外に出たんだろうが。」

 

 

 「アメリカの大学に行ったのはそれだけが理由じゃないけどね。だけどまぁ、それなりに楔は打てたと思うよ。」

 

 

 「あぁ、こっちに上がってきている報告書を読んでもそれはわかる。まぁ、何かを隠しているようにも見えるが、それはお互い様だ。

 

 欲を言えばヨーロッパも抑えに回ってほしかった所だが、無い物ねだりだな。」

 

 

 そう言うと漸くテーブルの上に置いてあった緑茶を一口すする。だからさ、俺の分ないんだけど?まぁ、この離れには使用人は誰も近づかないように厳命されているみたいだし、兄さんが淹れてくれるわけがない。喉も乾いていないし自分でやるのも面倒だから良いか。

 

 

 「現時点で、俺かお前が四宮を継ぐ事になる。お前にとっては面倒な重荷だろうがな。」

 

 

 

 意外な一言に虚を突かれた。

 

 

 「ガキの頃から見てりゃ判る。お前が生きるのに四宮は必要ない。自分の力だけであっという間に財を築いた。まぐれじゃねぇ。未だに資産を増やし続けている。

 

 才能もある。その気になれば、しがらみなんぞ簡単に捨てて自由にやれるだろう。

 

 だがお前は義務から逃げずに務めを果たしている。結婚もな、あんな事になったがお前は逃げなかった。」

 

 

 「いや、別に逃げなかった訳じゃ……。」

 

 

 「高校生の頃、惚れた女がいたろ。隠すな。俺と同じだ。俺は抵抗した。だが結局四宮家から離れる事は出来なかった。己一人の才覚で生きて行く自信は無かった。」

 

 

 

 なんだこれ、黄光兄さんが腹割って話しているのすごく気持ち悪い。いや、あんたはもっと悪役然としてかぐやの前に立ちふさがらんと。まだお前さんの役目は終わっていないんだよ?

 

 何が言いたかったのか自分でも分からなくなったのか黄光兄さんは自分の顔をひとしきり撫でまわしてからぼそりと続ける。

 

 

 「まぁ、なんだ。日本に帰ってこい雲鷹。どちらが継ぐにせよ、今は親父の周りを固める必要がある。

 

 女一人懐に入れる為に無理を押したんだ。親戚連中黙らせてな。いくらカリスマとは言え、絶対的な支配者とは言え必ずどこかに反発が出る。

 

 その分四条に対して隙が出来る。わからねぇわけねぇだろ、お前が。」

 

 

 意外とまともな事を言われて少々呆然とした。

 

 

 「アメリカの方は付きっ切りでなきゃ駄目だって訳でもねぇだろ。永遠にって訳じゃねぇ。子供が生まれて周りが落ち着くまででも良い。

 

 ……親父からはお前に頼めねぇだろうしな。

 

 お前が居れば四宮は落ち着く。それはお前が一番よくわかっている筈だ。」

 

 

 うーん、これ黄光兄さん、本当にラスボスの役目果たせるんかな。普通に良い人でワロタ。

 

 

 そんな事を考えながら、渋々頷いた。

 

 

 

 その後、雑談で高校生時代の副会長だった近衛二恵さんが結婚した事を聞いた……。今や2児の母だそうで。

 

 その晩、何となく涙を流したよ。人間って勝手なものだね。

 

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