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次の更新はいつになる事やらw
「にぃに、にぃに」
いかに赤ん坊のころからの記憶を持っているという、常識外れの天才かぐやと言えども、人とのかかわりが少なければ言葉を覚えるのが遅くなる。天才と言えど彼女に話しかける親が居なければそうなるのは自明の理。
その辺りは、母親代わりの早坂ママがケアをしてくれていたようで彼女の最初の言葉は「まま」だったようだ。
ちょうどその頃仕事でアメリカに行っていたから、俺がそれを聞いたのはかぐやが三歳になってからだ。暫く日本を離れていたのは失敗だったかもしれない。
久しぶりに会うはずの俺をかぐやは覚えていた。そして舌足らずの言葉で教えた事もない呼び方で俺を「にぃに」と呼んだ。
くぅ。いやマジ天才。マジもう原作なんかどうでも良いから猫かわいがりをしたくなる自分を必死に抑えたよ。顔にはデレ顔が出ちまっていたけど。
妹じゃなければ俺が嫁にもらってやんよ、マジで。いや、白銀御行に転生したかったわ、本気で。神様、お願いします、もう一度チャンスをくださいと心の中で何度祈った事か。
だがこの後、秀知院幼等部に入る辺りから厳しい教育が彼女を待っている。そして俺は社交界で四宮家としての生き方をかぐやに教える事になる。妹に嫌われる道をまっしぐらだな。だけど、原作の雲鷹さんのようなアグレッシブな侮辱、そう言えば産まれてこの方した事無いんだけど。
あー、どうしよう。パーティーで出くわした四条家の当主に分家の鼠とか結構きつめな侮辱をかまさないといけないんだっけ。
たしかあれが切欠で四条眞妃ちゃんとの微妙な関係が出来上がる筈。いや、流石に鼠呼ばわり迄する必要は無いかもしれない。ちょっと挑発して怒らせれば何とかなるだろう。
挑発しなくても多分、四条の方から「あの子と仲良くするな」みたいな事を言われるはずだから、その辺は無理しなくても良いか。
少々、四宮家の一員になる為の教育の方針に自信を無くしてきた俺だが、その後はそれなりに順調に原作に沿う形でかぐやを養育する事が出来た。
月日を追い教育が進むにつれ少しずつ表情を無くしていくかぐや。段々と子供の顔には見えなくなっていく。報告を聞き、上がってくる写真を見るたびに胸が締め付けられる。
ちょっとこれ、想像以上にきついんだけど。
段々と兄として声を掛けてくれる回数も減ってきた。まぁ、俺が忙しくあちこち飛び回っているって言うのもあるけど、暇を見つけては何度かパーティーに連れ出して、大人の汚いやり取りを見せたり、同年代の子供達と交流を持たせたりしておいた。
因縁の四条家との対面も何とか原作に沿う形でクリアする事が出来たと思う。帝との約束も、眞妃との因縁も。
俺と言う異物が入り込んでいるせいでこの辺の時系列が狂って運命がおかしくなったらヤバいなとは思っていたけど、何某かの修正力でもあるのか、まぁ何とかなって何より。
最近では俺の事を無表情でお兄様と呼ぶようになった。凄く悲しいけど、仕方がないな。
暫くして、黄光兄さんから早坂愛がかぐやの側仕えとして送り込まれてきた。
「雲鷹様、愛はまだ至らぬ点が多く、お役に立てるか分かりませんがどうぞよろしくお引き立てのほどお願い申し上げます。」
かぐやが幼等部に入園してから暫くは、東京の四宮邸で教育係と世話係に囲まれて暮らしていたから、早坂ママが東京の四宮邸に顔を出すのは数年ぶりになる。
原作ではこの時期京都にいたのだろうか。確か名夜竹さんの七回忌に早坂愛との思い出イベントがあったはず。その前もその後も、結構京都でのイベントが多いよな。
ま、ちょこちょこ親父に呼び出されて京都には行っているみたいだから、俺の知らないところでイベントを熟していると信じよう。正直、四条との衝突に備えて欧州にも手を出し始めた影響で忙しすぎて日本にあんまりいられないんだよな。
「久しぶりじゃないか、裏切りモンの鼠ちゃん。旦那は息災かい?」
「相変わらずですね、雲鷹様。もうあの件は水に流していただけたのでは?」
「ははっ、揶揄いのネタを自ら手放す気にはなれないね。それに実際、そうだとは気が付いてはいたけど、裏切られたと判った時にはそれなりに傷ついたのだし。」
わざとらしく胸に手を当てて体をひねる。そんな俺を見て呆れた様な溜息をもらす早坂奈央。
以前の俺の側仕えだった早坂奈央が原作と同じように俺を裏切り、情報を流していた事を、原作の大ファンである俺は当然の様に知っていた。
いや、正確にはそう言う事があったと原作に明記されてはいなかったけど、少なくともこの世界では親父に俺の情報を流していたのは事実だ。
俺としては、流されて困る情報は無かったし、裏切られるものだと理解していた。そもそもそんなに人間に期待もしちゃいない。前の人生の時もそれなりに辛酸を舐めてきたのだから人に付けられた側仕えを心から信用する程子供でもない。
自分で見出した人材に裏切られることも間々あるのだから、この程度、特に気にする事ではない。
が、折角手に入れた弄りポイントは存分に活用させてもらわなくてはもったいない。
「それでまたぞろ今度はかぐやのスパイを自分の娘にやらせるってか。正気とは思えねぇな。
娘さんも辛かろうに。」
「少なくとも私が望んだわけではありません。我々早坂家は黄光様の指示に従うよう雁庵様に申し付けられておりますので。」
「それを俺に言っちゃっていいの?」
「雁庵様が雲鷹様には情報秘匿の必要はないとおっしゃいましたので。」
「親父も脆くなっちまったのかね。ま、年相応ではあるけど。」
「雲鷹様はいつまでたっても子供にしか見えませんね。今年で何歳におなりでしたっけ?」
「ちっ、そこを弄ってくるかよ。もう三十路に突入した筈なんだけどな。不老不死はつれぇわ。」
「雲鷹様がおっしゃると本当に冗談には聞こえませんので、止めていただけますか。」
そんな間の抜けた会話を交わした後暫く、この仕事が早坂愛の精神にかなりの負担を掛ける可能性がある事を一応老婆心ながら指摘しておいた。
早坂のママさんは「それを乗り越えるのも仕事の内ですから。私の娘なら大丈夫です。」と何を根拠にしているのか分からない言葉を平然と口にする。
かぐやが小学校に入る頃になると漸く仕事も落ち着いて、俺も日本に居る事が多くなったけど、既にかぐやの俺を見る目が原作同様の冷たい目になっていて、ちょっとゾクゾクした。
名夜竹さんの七回忌を過ぎて、4年生になる頃には早坂ママさんが無根拠な「私の娘なら大丈夫」発言を撤回してきた。
自身も仕事が忙しく、中々娘に会う機会が持てないママさんがさりげなく俺にフォローを入れてほしいとお願いしてきたから、また裏切り鼠ネタで揶揄ったらマジで泣かれて焦った。
仕方なしに謝罪してその頃から少しずつ、早坂愛をフォローするようになった。いや、ゆうても小学生だからな。側仕えの使用人であろうと、プロであろうと自分を律するにしてもかなり辛いはず。
周りの友達は普通に小学生として遊んでいるのだから。それに加えて、自分の主人を、いや友達を裏切っているという罪悪感。そりゃ半端ないな。
雇用者側として早坂愛を呼び出し、話しかけるが、最初はかなり警戒をしていた。止むを得ず、早坂ママからのメッセージを見せて、一応の信頼を勝ち取ることに成功した。
とは言っても最終的にちゃんとした信用を得るには、それなりの時間をかけることになったけどな。
それにつけても我が身の信頼の無さよ。悪役はつれぇなぁ思わず涙がちょちょぎれる。
かぐやに隠れて、時間を見て早坂に声をかけ、辛いことはないか仕事はきつくないか聞いて何かあったら相談しろ、早坂ママに頼まれているんでな、みたいなことを伝え続けて、ようやくだよ。
早坂愛が俺を信用して相談を持ち掛けるようになったのは、おそらく、原作でのかぐやとの主従の契りを結ぶイベント。かぐやにとってあんまりいい思い出ではなかったと言わしめた、二人の関係が始まったとある湖のほとりでのイベントを経た後だったのだろう。
その後、原作では早坂の家出イベントがあり、かぐやの言葉に内心傷ついたのか、中学生になった頃にはかぐやに対して頑なに使用人の態度を貫き、それがきっかけで一時期かぐやが荒れていた時期があった。はずだ。原作ではな。
それがどうやって納まったのかはよくわからん。
この世界でも少なくとも主従の誓いイベントは起きている、と思う。
「雲鷹様、私はかぐや様に嫌われるのが怖いんです。」
という原作の名セリフをこの段階でもう頂きましたよ。ただねぇ、小学生だから本当に唯々可哀そうなだけでね。あぁ、ここも原作なんかどうでも良いから助けてやりたいと一瞬思ってしまったポイントだった。
こんな子を将来、俺が修学旅行で追い詰めて誘拐しようとするわけだ。しかも彼女の裏切りを俺がかぐやに知らせてしまう。
……って、あぁ、そうか。その辺りもう駄目じゃね?原作完全崩壊じゃね?今更俺が早坂愛をさらって情報云々なんて意味無いし。
んー、つうか原作でも不思議だったのが四宮家の保護から外れた早坂愛の身柄を情報確保の為四宮雲鷹が狙ったのはわかる。側仕えを辞めるそのタイミングで攫いに行ったのも情報を掴みやすかったから、と言うのも分かる。
だけど雲鷹ちゃんが彼女の確保を断念した後、彼女は身を隠す事はせずに、かぐやの友人として普通に秀知院に通学していた。彼女の身を狙っているのは雲鷹だけでは無かったはずなのに。
あの修学旅行のタイミングでは確かに雲鷹だけだったかもしれないけど、その後四宮家の敵対組織がいくらでも早坂の身を攫うチャンスはあったはずなんだよね。四条家という敵もいるのだし。
それが原作では起きていないという事は、恐らく早坂愛と四宮家は完全には手切れになってはいない。雲鷹が言った、彼女には手を出さないという言葉は、単純に自分たちは手出しをしないという意味だけじゃないな。
ちっ、原作の雲鷹ちゃんもツンデレじゃねぇか。あれ、多分、四宮家からの雇用は無くなったけど雲鷹の名前で早坂愛を保護している筈。
ワンちゃん、早坂ママが保護を四宮家に願い出た可能性もあるけど、流れとしては雲鷹が動いた可能性の方が高いよな。
かぐやには四宮家を動かす力は、あの時点では無い訳だし。あーしかし、どうするか、修学旅行のイベント。あれは早坂愛とかぐやが本来あるべき関係性に戻る為に必須のイベント。
あぁ、やっぱり俺が嫌われ役をやるしかねぇよな。ま、既にかぐやにはかなり嫌われてるし恨まれているんだから、今更か。
「かぐやは裏切りを許さない、からな。そう仕込んだのは俺だし、お前だ。」
信用できる人だけ友達にするべき、名夜竹さんの七回忌の際にかぐやにそう進言したのは早坂愛、君だろう。
「ええ、ですから、私はいつか彼女に嫌われる前に私が何をしたのか知られる前に彼女の前から消えたいんです。」
まだ小学生だというのにこれだよ。こんな年頃からこうやって悩み続けていたわけか。こりゃ苦しいわな。
「まぁ、一先ず落ち着け。かぐやも人として成長すれば、いずれはお前を許す事もあるかもしれん。俺もお前の母親に同じことをされたが、一発どついて終わりにしたぞ?」
懐かしき思い出を語ると、愛は顔を埴輪の様にして驚いている。
「え!?ママも雲鷹様にそんな事をしたのですか?」
「まぁ、こういう家柄だからな。人から付けられた側仕えがスパイの役割をはたしているなんて昔からよくある事だ。
日本なら戦国時代の武将の奥さんの侍女さんとかな。大体奥さんの実家からついてきた侍女は情報を実家の為に抜いたりするだろ?
こんな今更の話で騒ぐのもみっともないし、そこまで人間を信用するほどお人好しでもないからな。
発覚した時点で一発どついてチャラにしてやった。今じゃママさんを揶揄うネタにしょっちゅう使わせてもらっている。」
そんな風に笑い飛ばしたら、早坂愛も少し笑ってくれた。
「かぐや様、許してくれますかね。もし、許していただけるなら何回殴ってもらっても構いません。」
幼いなりに真剣な顔をする早坂。別の意味で年相応には見えない。一瞬、高校生の時の早坂愛を幻視してしまった。
「まぁ、今は無理だろうな。だから、もう少し待て。あの子が年頃になって色々人生経験を積むまで耐えろ。」
「人生経験、ですか。」
「あぁ、人には色々事情があり、悩みを抱えていて、自分の都合だけではどうにもならない事を抱えている事もあるんだって理解できる日がいつか来るだろうさ。」
「それはいつ頃になるんでしょうか?」
「さぁな。そうだな……誰かを好きになって、苦しんだり思い悩んだり幸せになったり。心を強く揺さぶられるような恋を経験すればいずれは。」
原作ではそうだったからな。白銀に恋をして色々経験してかぐやは早坂愛を許す事が出来た。この世界でもそうなる事を願おう。
俺の言葉にやや頬を赤らめて「恋ですか」と呟く。
「まぁ、何時とは言えんがその時が来たら俺が何とかしてやる。一芝居打つなり、一騒動起こすなりして、お前さんがちゃんと謝れるきっかけを作ってやる。
四宮を辞めるのなら、その後でも良いだろう。なに、心配するな。ちゃんと許してもらえるように俺も協力するし、結果がどうなろうと俺が何とかしてやる。黄光兄さんが邪魔するようなら、物理的にきっちり方もつけておくしな。
お前の自身の身の保護が必要なら、俺の目が黒いうちは俺が守ってやるから、安心してかぐやに仕えてくれ。」
そんな俺の言葉に目を白黒させる早坂。
聞こえない位小さな声で「ありがとうございます。」と呟く。
あぁ、ただ、俺のこんな態度はかぐやにばれると嫌われ役を熟せなくなる。悲しいが、かなり悲しいが、ここは俺の印象をクソ野郎で固定しておくためにも彼女にも言い含めておかなくてはならないだろう。
「まぁ、こんな話がかぐやに漏れては事だからな。俺がこんな感じの人間だという事はかぐやには内緒にしておいてくれ。俺はあいつに嫌われているからな。くそったれな兄貴だと思われていた方があいつの為でもある。
それなりに残念な事ではあるけど、それでもこのまま嫌われていた方が色々と都合がいいんでな。」
「そんな……。実のご兄妹なのに。悲しい話ですね。」
子供のくせにそんな気の使い方が出来てしまう君の身の上の方が悲しいと思うよ?
久しぶりに出た溜息を噛み殺すことが出来ずに、思わず苦笑する。
しゃぁない。実の妹をヨシヨシできない身の上なのだから、せめて妹の姉の様な存在である早坂愛をヨシヨシして妹愛を満たす事にしようか。
このまま原作開始までに彼女が潰れても困るからな。
おっと、物理的にヨシヨシするわけじゃねぇぞ。そんな事したら早坂ママにマジで刺されるからな。
かぐや三歳から一気に小学生高学年まで飛びました。
そろそろいろいろ飛ばして高等部編、ですかね。
ストックゼロなので少し考えてから書きますね。