お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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原作開始までたどり着きませんでした。

あと、誤字報告、ありがとうございます。
見直したつもりでも彼方此方綻びがあってお恥ずかしい限りです。

助かっております!


貴女は私の使用人

 日本にいる間は大抵、東京に滞在している。ここ最近また忙しくなってきたから、京都の本邸と東京を頻繁に往復することになっちまうが、出来るだけかぐやの近くにいてやりたいからな。

 

 

 かぐやにしてみれば、ウザいだけだろうが。

 

 

 ただ、俺は懐かしの我が家、東京の四宮邸に住んでいる訳じゃない。原作と同じように、この世界でもかぐやは東京四宮邸に早坂愛や使用人たちに傅かれて生活している。

 

 

 無論、そこに俺の居場所はない。俺が一緒に住んでしまったらかぐやは気の休まる時間が無くなってしまう。赤ん坊の頃の関係性のまま過ごしてきたのなら話は別なんだろうが。

 

 

 ま、たまに早坂の様子を見るためにこっそりと訪れることはあるがな。

 

 

 早坂に会うときは、出来るだけかぐやの様子なんかは聞かないようにしている。それは彼女の精神的な負担を考えての事だが、やはり仕事上の不満なんかを聞くときにはどうしてもかぐやの話が出てしまったりして、少々話辛そうにしている事が多い。

 

 

 そんな時は、仕事の話ではなく学校で何があったかとかを聞くようにしている。そうしてはいるけど、いつの間にかまた仕事の話に戻っていたりもするけどな。

 

 

 正直、早坂と話をしていると俺自身が辛い。本当なら兄としてかぐやと話しているはずの内容を早坂愛と話をしているのだから、もう罪悪感が凄い。

 

 

 

 そんなこんなで彼女たちが中学生の時、夏の長期休暇の際二人が京都で過ごしているときに例の、早坂愛家出事件が起きた。

 

 

 家出事件そのものは、早坂を心配したかぐやがすぐに彼女を追いかけて解決したのだけれど、その後しばらくの間、それはもう俺の胃に穴が開きそうなくらい、かぐやと早坂愛の関係がギクシャクした。

 

 

 

 原因は彼女を探し当てたかぐやが愛に掛けた言葉なのだが、かぐやは自分の言葉が彼女を傷つけてしまったことに気が付けなかった。

 

 

 

 「いえ、傷ついたとかそういう事じゃないんです。いや、傷ついていないと言えば違うのですが。」

 

 

 

 要領を得ない言葉に首をかしげる俺。

 

 

 

 「もういいです。私も多分、この件に関してはうまく説明できないと思いますから。」

 

 

 

 「心配してお前を探しに来てくれたはずのかぐやが私が主人であなたが使用人、それ以外に理由はないって言葉に傷ついたんだと思ったがな。

 

 お前さんはかぐやを妹の様に思っているってぇのにな。」

 

 

 

 「そういう雲鷹様は、本当に私のお兄様の様ですね。……外見も。もう私の同級生とそれほど年恰好が変わらないんじゃないですか?

 

 ちょっと大人びた先輩なんかだと、雲鷹様よりも年上に見えちゃうんですけど。

 

 

 ……雲鷹様っておいくつでしたっけ。」

 

 

 

 「いや、そこに触れてくれるな、早坂愛。そろそろ本気で冗談にならない年齢になったんでな。」

 

 

 「いや、誤魔化さないでくださいよ。本当に何歳なんですか。」

 

 

 「39歳、今年40だな。最近この手の話題は俺的にはセンシティブなんだよ、マジで。」

 

 

 そんな俺の言葉に少し笑いながら何かを呟く早坂。突込みでもしてたのかな。

 

 

 

 「この前本気で黄光兄さんに研究所に送られそうになったばかりなんだ。

 

 

 口先三寸で逃げ出したと思ったら正式に不老とかアンチエイジングやらの研究部門に出向要請が来ていたし。

 

 

 このままいくと数年後には解剖されてもおかしくない状況なんだよ、マジで。」

 

 

 

 

 そんな俺の悲鳴のような抗議を早坂はハハハと笑って流す。

 

 

 

 「まさか、流石にそんな事有るわけないじゃないですか(棒)。

 

 雲鷹様も冗談がお上手で。」

 

 

 

 「これが冗談で済むなら俺も笑っていられるけどな。親父からも正式に一度病院で診てもらえって連絡が来た。」

 

 

 

 「ご当主様がですか……。それはちょっと冗談じゃすみませんね。」

 

 

 

 「まぁ、俺の事はいい。それよりもお前さんは本当に大丈夫なのか。」

 

 

 「ええ、かぐや様の言葉にそれほど傷ついたわけじゃありませんから。あの子が私を心配してくれたのは事実ですし、あれ以外、私たちの関係を表す言葉が出なかったのは仕方ないと思っています。

 

 でも、だからこそ私はかぐや様に対して使用人でなければならないと決めたんです。」

 

 

 

 やっぱり拗れるか。意地になっているところもあるだろうし、かぐやも自分の言葉の何が悪かったのか、全然気が付いていない。ただ、早坂愛にも弱いところがあるんだと、それがわかった出来事としてしかとらえていない。

 

 

 原作では、藤原に白銀と付き合っている事を告白する際の回想のシーンで再度あの場面が出ていたから、おそらくはどこかの時点で気が付けたのだろう。

 

 

 気が付けたという事は、どうにかして関係改善が図れたという事。かぐやが謝ったのか、早坂が許したのか、それとも何か別の原因があったのかは謎だけど。

 

 

 

 

 だがあの日以来、早坂愛はかぐやの求める慣れ合いというか友人のような接し方は一切しなくなった。

 

 かぐやの言葉通り、ただの主人と使用人になったのだ。少なくとも早坂はそうあろうと決めた。

 

 ただ、救いがあるとしたら、少なくとも原作開始段階ではその状態は解消されていた。

 

 

 「大丈夫です。わかっています。かぐや様がそういうつもりだった訳じゃないのは。

 

 すみません雲鷹様。でも、私はこうするしかないんです。」

 

 

 

 本当に原作ではどうやってこの拗れが解消されたのか。かぐやの回想では中学生の一時期って話だったはず。

 

 

 ……藤原さんが関係改善に一役買っている可能性もあるな。

 

 

 かぐや曰く、あの頃は周りがすべて敵に見えたとの事。人生で一番すさんでいたから、初対面の藤原にピアノをやめろと暴言を吐いてしまった。

 

 

 

 ん、という事はこの件も彼女たち、この場合はかぐや、早坂、藤原だが、この三人にとって必要なイベントだった、という事になるか。

 

 

 この件があり、かぐやがすさんだから、藤原がかぐやの友人になった。藤原がかぐやの友人になったからかぐやは救われた。この辺りにかぐやと早坂の関係改善のきっかけがありそうだな。

 

 

 ……心配することはないかもしれないな。

 

 

 俺なんかが口を挟まんでも、彼女達は勝手に立ち直って強くなる、だろう。そもそも俺のやるべきことは余計な口を挟んでイベントを妨害する事じゃない。そんな事をしたら、原作を大きくゆがめることになる。

 

 もしかしたら、いや間違いなく俺という存在のせいで既にかなり原作が歪んでしまっているけどな。

 

 

 

 ただ、早坂ママとの約定もある。俺が約定を破るようでは、あいつをからかうネタがなくなるからな。つまり俺がやるべきことは早坂愛の心の負担を少しだけ軽くしてやること、位だな。

 

 

 

 いまだに鼠ネタは有効なんだよ。早坂ママには。

 

 

 

 一時、マジ泣きするんで控えていたんだけど、早坂愛が精神的に立ち直ってからはまたネタとして使えるようになった。

 

 

 黄光兄さんなんかは、鼠ネタでママさんからかっている俺を見て「鬼かお前は。」って突っ込んでいたけどな。

 

 

 

 あぁ、因みに黄光兄さんが早坂愛をかぐやの側使いとして派遣した理由は、どうも原作とはちょっと違うっポイ。はっきりは分からんけど。基本的に四宮家長女の弱みを掴む、という所はまぁ、変わっていないだろうけど、原作よりもほんの少しかぐやを思いやっている雰囲気がある。気のせい、もしくは誤差の範囲と言われればそれまで、ってくらいの話だが。

 

 

 まぁ、将来一族を束ねていく必要のある黄光兄さんが、身内の弱みを知っておくことは必要な事なんだと言われれば反論は出来んが。世の中奇麗事じゃすまんのよ。

 

 

 ただ、だからこそ、親父も黄光兄さんも俺には遠慮する。俺は情報をほぼ包み隠さず流している。彼らは知りたくない事を知ってしまう事もあるだろう。親父は兎も角、黄光兄さんが段々と態度を軟化させてきているのはそう言う事だ。

 

 多分、俺が早坂愛に冗談で話した黄光兄さんを物理的にきっちり方をつけるって言葉も兄さんの耳に入っている筈だ。もちろん情報が洩れる事を前提で話したのだから問題はない。

 

 

 

 俺の今までの行動や実績が真綿の首輪の様に黄光兄さんの首に絡みつき優しく締めあげている。既に個人資産は12ケタ中盤に達し、親父の個人資産を覗ける位置に来ているからな。

 

 四宮家に関係している資産は別にカウントしていてこれだから、兄さんが俺に遠慮するのも不思議じゃない。

 

 俺を敵に回すって事は四条を敵に回すよりも厄介な事になる、そう認識している筈なんだよね。下手に四宮家の内側にいるだけ性質が悪い。俺は別に敵に回るつもりは無いんだけど。

 

 

 ま、黄光兄さんの本意が何処に在るにせよ、愛にはどのみち過酷な話だよ。

 

 

 

 「ま、あんまり思いつめるな。そう深刻にならんでもいい。かぐやがその言葉しか言えなかったのは分かるんだろう?

 

 そして、それ以外の言葉があの時出てきたら、愛は耐えられたのかい?」

 

 

 

 「それは!……。そうですよね。私は裏切り者ですし、かぐや様の友達になる資格なんて。」

 

 

 

 「前にも言ったろ?今はまだ、かぐやには事実を受け入れるのは難しいって。だけどあの子は内心、お前さんが友達でいてくれたらいいのに、って考えているはずだ。そこは愛も分かっているだろうに。

 

 

 しばらく、愛の気が済むまでは今のままでもいい。ただ、何かかぐやから切っ掛けがあったときは、あいつを許してやってほしい。」

 

 

 

 「そんな、許すだなんて。私の方こそ許されませんから。」

 

 

 

 「だから、そんな風に考えんでいいって話だよ。お前のママさんだって、しがらみから逃れられずに、俺を裏切った。

 

 人間なんて、自由にはならんもんだよ。現状もお前さんのせいじゃない。

 

 

 まぁ、極論しちまえば、多分、俺のせいだな。うん。

 

 

 だから恨むなら俺を恨んでくれや。」

 

 

 いやマジで。俺が原作沿いの流れを望んだからこそ、かぐやや親父、早坂愛が苦しんでいるという一面は確かにあるのだから。

 

 

 俺が原作をぶち壊すつもりで動けば、彼女の環境を救う事も出来る。できるが、それは俺的には受け入れる事ができない。である以上、彼女にはこの先も苦しんでもらうことになる。

 

 

 主に俺のわがままのせいで。

 

 

 いや、雲鷹になった俺がいなければ結局彼女は苦しむことにはなるんだが、それでも原作では彼女は救われることが約束されている。

 

 この世界では未来はまだ確定していない。未来予知の魔法でもそんな先の事は占えない。

 

 

 どこかで何か大きくミスをすれば、望まれるべきハピエンは訪れないかもしれないのだから。

 

 

 

 

 「そんな、雲鷹様を恨むなんてできません。」

 

 

 「遠慮するな、俺の中身も大概クソ野郎だからな。黄光兄さんや青龍兄さんとあんまり変わらん。」

 

 

 

 「大丈夫です、それは分かっていますから。」

 

 

 くすっと笑う笑顔を見て、多分早坂は大丈夫だなと確信できた。

 

 




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