お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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ワードで書く方が書きやすい感じがしますね。

サイトを利用して書くと作業部分が狭くて以前の部分を確認しながら書けなくて、作業効率が落ちる気が……。


お兄様は……同居……すんの?

 東京に滞在するときは大抵、手ごろなビジネスホテルを借りている。定宿は作らない。スパイ映画を見た影響でこんな事をやっている訳じゃないけど、何となく気分は工作員だな。誰も俺を捕捉することは出来ないだろうってちょっといきっていたりする。

 

 仕事はホテルの部屋から指示するか東京四宮邸から車で5分程度の距離に借りている事務所を使っている。無論、小さな事務所一つで処理できるような仕事量じゃない。メインの事務処理を行っている場所はアメリカに本拠地があって、定期的にそこにまとめて指示を出している。

 

 当然、現地に向かう必要が出てきたりするから、結局定期的に彼方此方を飛び回っている。

 

 

 側仕えの奴は何人かはアメリカに置いてきて、あちらの屋敷の管理を任せているが、一応二人だけ日本に連れてきて身の回りの世話をさせている。

 

 

 まぁ、手荒な仕事も任せられる、早坂家の下位互換の様な連中だが、命に係わる様な何かがあっても、大抵の事は俺一人で何とかなるから、その辺は気にしていない。

 

 むしろ何かがあった時は先に逃げる様に指示はしている。全然言う事を聞かないけど。

 

 目をキラキラさせて、雲鷹様の為なら死ねますって言われても怖いだけだよ。

 

 

 定宿は持たず、常に転々と気ままに移動を繰り返している上、偽名を使って宿泊しているから、そう簡単に俺の足は追えないだろうに、目の前の人物は何でもない事の様に俺の場所を特定して面会を申し込んできた。

 

 

 記憶力や情報処理速度は人外レベルでも、基本馬鹿で間が抜けている俺の事だ。多分、何か見落としているんだろうとは思うけど、考えない事にした。

 

 まぁ、此奴なら俺の動きを常に把握していてもおかしくないから。

 

 

 

 「聞いていますか?雲鷹様。」

 

 

 「ん、あぁ、聞いてるよ鼠ちゃん。どうやって俺の泊まっているホテルを特定したかは聞かんが、急に何の用だ。」

 

 

 「ホテルの特定はそんなに難しい事じゃないですよ。

 

 お泊りになるホテルはご身分に沿わず、大抵安価なビジネスホテルですけど、大体東京の四宮邸近辺のホテルに限られていますし、数も把握する事が困難、と言う程ではありません。

 

 それにこの辺りのホテルは大抵四宮の息がかかっていますから、偽名をご使用されても直ぐに私共に連絡がいくようになっています。

 

 雲鷹様はご存知無いでしょうけれど、この辺りの四宮の系列のホテルの受付業務を担当する者が最初に叩き込まれるのは雲鷹様の顔を覚える事ですよ。」

 

 

 あー……そこまでしているとは思わなかった。普通に引くわ。なに、俺はそんな事も知らずに、この世界のドラマの登場人物の名前や漫画のキャラクターの名前で部屋を取っていたって事?

 

 

 マジ鬱るな、これ。

 

 

 「そんなに落ち込まないでください。それだけ四宮家の皆様が雲鷹様に気を配っているという事ではないですか。」

 

 

 ま、な。良い意味でも悪い意味でもな。この所マジで黄光兄さんが俺を研究所送りにしようと躍起になっている。

 

 半分冗談を装ってはいるけど、対面した時なんか目を見ると、あれはマジだ。てっきり親父も不老の秘密に興味があるものと考えていたけど、親父は俺に病院で見てもらえとは言ったが、研究所云々は口にはしなかった。

 

 

 特に、長生きを望んでいる訳ではないんだろうな。

 

 

 あの時、かぐやを俺に預ける話をした時、名夜竹さんの所に行きたいってこぼしていたしな。

 

 

 今更そんな事に興味がある訳ないか。

 

 

 「まさかホテルのフロントマンがスパイやっていたなんて想像もしなかったよ。いくら四宮の系列だったとは言っても、ここまでする意味なんか無いだろうに。

 

 連絡を取ろうと思えば携帯でいくらでも連絡は取れる。」

 

 

 「今回、面会を願い出たのはまさしく、今の雲鷹様の生活に関して、雁庵様からの苦言をお伝えする為です。

 

 まぁ、それだけではありませんが。」

 

 

 「親父が何か言うのは珍しいな。名夜竹さんが亡くなってからはしょぼくれちまって、顔を合わせても話が弾んだためしがない。

 

 まぁ、元気な時も話が弾んだ経験なぞ無いんだが。」

 

 

 「その辺で……。」

 

 

 柔らかく俺の親父に対する揶揄いを止めるママさん。流石忠臣だねぇ。

 

 

 「雁庵様はホテル暮らしを続ける雲鷹様をご心配しているご様子でした。出来ればかぐや様と共に東京の四宮邸に落ち着いて欲しいとのお言葉です。」

 

 

 まぁ、面倒見ろって申し付けた息子が妹を一人屋敷にほっぽって根無し草の様な生活をしているのだから、一言いいたくもなるわな。

 

 ただ、今の時点で俺がかぐやと同じ家に暮らすのは、かぐやのストレス要因にしかならんからな。

 

 

 「それはできない相談だって、ママも分かっているだろうに。ただでさえ今、あの子は精神的に限界なんだ。そこに俺が押しかけたら、どうなっちまうか分かったもんじゃない。」

 

 

 「そうとも限らないかと。というか、なんでそう貴方はときどき私をママ呼ばわりされるんですか。」

 

 

 「いや、だってママだろ?愛ちゃんの。」

 

 

 「外見だけで観たら雲鷹様の本当の母親だと周りに思われそうで困るんです。それにその顔でママなんて呼ばれたら……。

 

 変な趣味に目覚めたら雲鷹様に責任を取っていただきますからね。」

 

 

 急に女を感じさせる仕草をしてしなを作るママさんに思わず後ずさる。

 

 

 「あぁ、いや俺は永遠の童貞を目指しているんでな。そんなチェリーに子持ちの人妻は少々所か荷が重すぎる。」

 

 

 俺の突然の告白に目を白黒させて呆然とする早坂ママ。

 

 

 「え、あ、雲膺様ってそうだったんですか。あ、いえ、今までどなたともお付き合いはないとは報告を受けていましたが、まさかそんな状況だとは思いもしませんで。

 

 というかいきなりなんて事を言い出すんですか。時と場合を考えてほしいんですけど。」

 

 

 まぁ、確かにビジネスホテルの一室で、周囲には俺の側仕えと俺と早坂ママだけ。その側仕えも無言でそそくさと部屋の外に出ようとし始める。

 

 やめんか、変な気を使うな。

 

 俺の視線を受けた一人が、退室を断念し、代わりにコーヒーを入れ始める。こんなビジネスホテルの一室だからな、備え付けのインスタントしかないが、俺にはこれで十分だ。

 

 

 「いや、俺はてっきりいつもの年齢ネタで弄ってくるものと思っていたからな。野郎同士じゃあるまいし、すまんな、加減を間違えたか。」

 

 

 側仕えが淹れてくれた珈琲を二人で手に取り、一啜りしてから落ち着く。

 

 

 「その、最近、年齢で雲鷹様を弄るのは少々気が引けて来まして。」

 

 

 「なんでまた?俺なんざ今だに鼠ネタでお前さんを揶揄うのが楽しいが。」

 

 

 「そこは、まぁ、私が悪い所もありますから、甘んじてお受けいたします。本来、げんこつ一発で許されるような事ではありませんでしたし。

 

 だとしてもとても痛い一発でしたけど。」

 

 

 んー?なんかあったんか?

 

 

 「実は、今回の件に少し関係がありまして。雲鷹様がホテル暮らしをしている間、本家の者たちで周囲を警備しております。お気づきでは無かったかもしれませんが。」

 

 

 おおぅ、そう言う事かい。そりゃ場所なんてバレバレだわ。本当にこういう所が俺は抜けているな。物理的な保身に興味が薄い。理由は、不老不死だから。

 

 まさか本家に迷惑をかけていたなんて想像もしなかった。

 

 

 「それは色々と迷惑をかけたな。コストもそれなりにかかったろうに。あぁ、後で請求はこっちに回してくれ。」

 

 

 「いえ、雁庵様はその件については特に何もおっしゃっておりません。ただ、こう彼方此方のホテルでお泊りされますと、警備計画が破綻しがちでして、可能ならちゃんと警備できる四宮邸で暮らしてほしいと。

 

 その方がかぐやさまの様子も分かるでしょうし、雁庵様も安心できますので。」

 

 

 「だがな、その……、かぐやのストレスの種にしかならんだろう、俺は。」

 

 

 「既にかぐや様の了解は得ています。「普段、お互い顔を合わせないようにしていただけるのなら問題ありません。」との事です。」

 

 

 

 あぁ、それはそうだろうよ。かぐやなら俺が学生の頃その屋敷に住んでいた事なんて分かっているだろうし、自分こそが邪魔者だと考えてもおかしくない。

 

 

 今はまだ、周りは全て敵モードの筈だしな。そんな中で、本家から四宮雲鷹がその屋敷に住む事になるが宜しいか?なんて聞かれたら「嫌です。」なんて言えないだろうに。

 

 

 あぁ、こんなことになるなら最初からどこか適当な戸建てかマンションを買っておけばよかったな。

 

 

 既にかぐやに話がいっている状態で「やっぱりやめた」なんて言い出したらかぐやはどう反応するだろう?ああそうか、と思うだけだろうか。それとも自分と一緒に居たくないからだと過剰反応するだろうか。傷つくだろうな……うん、傷つくな。

 

 案外、来なくなってラッキーとでも思うかもしれないな。

 

 

 ま、出来るだけ関わらないようにしていれば、負担を懸けずに済むだろう。

 

 

 「まぁ、そろそろ仕事が忙しくなる頃合いだからな。それほど屋敷にいられる訳じゃないだろうが、そこまで話を通しているのなら断るのも親父に悪い。了解した。

 

 んで?それが年齢ネタを避けるのとどういう関係があるんだ?」

 

 

 ママさんの顔が何となく愉快に歪む。

 

 

 「ええ、まずですね。雲鷹様がホテル暮らしを続けていらした関係で警備の手が足りなくなりましてね、人員を少々強化したのです。

 

 

 それで、新人の研修に私共も携わったのですが、その時の警備用の資料を見た時に、少し。」

 

 

 ん?警備員を育成する為の資料に何かあるのか?言いたい事が全然わからん。おかしいな、俺、一応天才の筈なんだが。チートのお陰だけど。

 

 

 「大前提として、私達警護の人間や周辺警備の人間は重要人物や護衛対象の人相を把握する為に、日々更新される情報に目を通します。咄嗟の際、間違った人物の盾になっても意味がありませんから。」

 

 

 おぅ、まぁそうだな。

 

 

 「資料は何かある度に更新されます。誕生日を過ぎたり、体形に変化があったり、容貌に変化が生じる何かがあった場合に。

 

 ですから毎年定期的に資料を見直して情報を共有してチェックするんです。ですが、その……雲鷹様のその資料に使われている写真が……。」

 

 

 

 「写真が?」

 

 

 「その、高校生の時、パーティーに参加された時の写真のまま更新されていませんでしたので。」

 

 

 高校生の時の写真をずっと使いまわしていたって事かい。

 

 

 「あぁ、そうか。」

 

 

 言葉が出ないよ。ん?最近気が付いたって事は?

 

 

 「うん、いや、今までずっと使いまわししていたんなら、ママさんも気が付いたはずだよな。毎年定期的にチェックするんだから。

 

 んで、今までは新しい写真を使っていたから、特に気にする事も無かったって事じゃないか?」

 

 

 「ええ、まぁ。ただ、警備関係の配置換えで一部手違いが発生したようで、資料作成の担当者が写真を取り違えたのに気が付かなかったとか。

 

 高校生の時の写真と、昨年送られてきた写真で、顔の違いが全く分からなかった為、問題ないだろうと、その写真を使ってしまったようで。」

 

 

 

 「なんだ、その愉快な奴。面白いな、今度挨拶に連れてこいや。」

 

 

 中指をおっ立てながらつい声が漏れた。

 

 だから、気の毒で年齢ネタで俺を弄る気になれなかったって事ね。




土曜日ですからお昼からお暇な方もいらっしゃるかなと思い、投稿しますね。
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