お兄様は嫁がせたい   作:たらこ40

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初の他者視点です。

早坂奈央さん、「私たちももう少しお互いを信じられたなら」


原作では早坂奈央は雲鷹を疑い、雲鷹は早坂を信じていたのでしょうかね。
何処かの時点で雲鷹は早坂を信じられなくなった。
それが破局につながった。

いくつかの情報をより集めて、主人公がいる分だけ少し変えて、私なりに書いてみました。


早坂奈央はわかりたい

 「あぁ、折角だ、下のコンビニで何か茶菓子買ってきてくれ。」

 

 

 「雲鷹様、お客様にそのような適当な物をお出しする訳にもいきません。側にお仕えする私達もその程度かと侮られてしまいます。本家にお仕えする方達に恥ずかしいところを見せる訳にもいきませんし。

 

 御命令くだされば、少々お時間はかかりますが、もう少しまともなものをご用意いたしますから。」

 

 

 「申し訳ありません。普段の準備ができておらず、お客様に対応できない事をお詫び申し上げます。」

 

 

 

 目の前で雲鷹様の側付きの者達が必死に頭を下げ、指示の撤回を懇願している。

 

 主人に恥をかかせたことを恥じているのだろう。ただ、そうあるよう指示したのも雲鷹様だろうけど。どうせホテル暮らしの自分の所に客なんか来るわけないから無駄なことはするな、とでも言ったのだと思う。

 

 

 ここで私が気を使わないでくださいなどと発言すれば、本家の使用人に侮られた、情けをかけられたとか、彼女たちが侮辱されたと感じて後が面倒になるでしょうね。ここはにっこり笑ってだんまりを決め込むべきかしら。

 

 

 彼女たちを無駄に敵に回したくは無いもの。

 

 

 

 天才ゆえの周囲への無関心なのか、雲鷹様は細かい所に拘らない。この者達もまだ雲鷹様に仕えて日が浅いのかもしれない。こういう時、ただ黙って了解の意を伝え、出来る範囲で主人に恥をかかせない物をさっと取り寄せるのが正解なのよね。

 

 

 コンビニのお菓子を買ってこいと命じたのに、高級菓子が出てきたとしても、雲鷹様は気が付かないし気にならないのだから。

 

 

 「あぁ?客だぁ?冗談云うんじゃねぇよ。この鼠は客なんかじゃねぇ。」

 

 

 一瞬だけど胸の奥に痛みが走る。だけど直ぐに続いた雲鷹様の言葉にその痛みは霧散する。

 

 

 「こいつは昔なじみのダチだ。ダチにそこまで気を使う必要はねぇだろ。親父の言伝は終わったって事は仕事は終わったんだろ?

 

 もう少し付き合えや。」

 

 

 私の様な裏切り者にはもったいない言葉をくれる。

 

 

 「あんまりゆっくりする時間はありませんけど、雲鷹様のご要望なら。」

 

 

 「おぅ、わるいな。正直、四宮邸で過ごさにゃならん明日以降の事を考えると、落ち着いていられなくてな。

 

 

 お前ら、わりぃが買い物頼む。」

 

 

 

 「一人は御側に残らせていただきます。」

 

 

 「そうだな、ま、女性と二人きりって訳にもいかんからな。わりぃがそうしてくれ。」

 

 

 そして存外紳士だ。

 

 

 

 「んで?それだけじゃないって部分を聞かせろよ。」

 

 

 そして変なところで気が回る。

 

 

 「大したことではありません。先日、愛が色々とご迷惑をおかけしたようで。その件でちょっと。」

 

 

 私がこう言えば。

 

 

 「あぁ気にすんな。愛のケアをするって約束したからな。おめぇとも本人とも。これも巡り巡ってかぐやの為になる。

 

 鼠共の為じゃねぇから安心しろ。」

 

 

 こう憎まれ口を叩きながら、言葉を返してくれる。

 

 

 言葉遣いは以前より大分悪くなってしまったけど、心根は私が仕えていた頃と全く変わらない。

 

 

 

 確か、かぐや様を引き取って育て始めたころからおそらく意識的に言葉遣いを変えられたはず。ここ最近は更に乱暴な口調になってきていると報告を受けている。

 

 まるで何かを演じるように。

 

 

 雲鷹様なりに、それがかぐや様の教育に必要だと考えた結果なのかもしれないわね。……悪影響しかないように思えるんだけど、天才の考えることは分からないわ。

 

 反面教師とか?

 

 

 

 「出来れば、娘まで鼠呼ばわりするのはやめていただきたいのですが。」

 

 

 

 「あぁ、そうだな。あの子が悪いわけじゃねぇよな。わりぃ。」

 

 

 あの子は悪いわけじゃない。でも私は間違いなくこの方を裏切った裏切り者だ。

 

 

 本来ならこんな風に声をかけていただける立場にない。

 

 

 家出後の愛の様子や、かぐや様との確執、そして愛の気持ちを、本人に許可された範囲なら、という条件で話してくれる雲鷹様。

 

 

 あぁ、この子達ももしかしたら私と雲鷹様の様になってしまうのかしら、と不安が湧き上がってくる。

 

 

 

 「ま、大丈夫だろう。かぐやと早坂愛ならうまく乗り切るさ。そう信じて見守るしかねぇだろ?」

 

 

 気楽なセリフの中に、何か確かなものを感じた私は口を閉じ、そっと頷く。

 

 

 

 そう、私はこの方を裏切った。私は雁庵様に命じられ、この方の情報を雁庵様に流していた。それだけだったら、私も私自身を裏切り者だと断じることはなかったかもしれない。

 

 

 

 あれは雲鷹様が頭角を現しつつあった頃。まだ小学生の内から父、雁庵様を説得し投資の資金を得、それを元手にあっという間に財産を築き上げ始めた。

 

 

 当時、ほぼ四宮グループの後継者だと目されていた黄光様は、あっという間に四宮家での地位を確立していく雲鷹様の姿に恐怖した。

 

 

 「今更後妻のガキに全部かっさらわれる訳にはいかねぇんだよ。」

 

 

 この言葉を表面だけでとらえれば、四宮家の後継者としての地位、権力、財産を指して言う、欲深い言葉に聞こえるかもしれない。

 

 

 ただ、この時までは四宮家を継げるのは、将来、総従業員数90万を超えるグループを背負って守っていけるのは黄光様しかいなかった。青龍様は最初から能力、意欲が足りず、事実上後継者候補は一人だけだったのだ。

 

 

 だからこそ、逃げたくても逃げられなかった。話に聞いただけで、私も見てきたわけではないけど、黄光様だって若い頃は夢もあり、やりたいこともあり、恋人がいた。

 

 

 噂によると、彼女にべた惚れだったらしく、必死になって口説き落としたのだそう。

 

 

 ただ、この時点では四宮家を継げるのは彼しかいなかった。彼が好きになった女性は、家柄があまりよろしくなく、結婚したとしても四宮家に利益のある女性ではなかった。もちろん、黄光様の後ろ盾になんかとてもなれるはずもない。

 

 

 最初はひどく抵抗し、彼女と結婚できなければ家を出るとまで啖呵を切ったみたいだけど、ある日突然に彼女の方から黄光様に別れを切り出した。

 

 

 昔のドラマによくあるパターンよね。彼女の父親が務める会社や彼女の家族の生活を人質に取られれば、当時子供でしかなかった黄光様にはなす術はないわ。

 

 

 結局、黄光様は四宮家を継ぐ為に自分の大切なものを殆ど捨ててしまった。いや、捨てられてしまった。だからこそ、今更自分よりも優秀な後継者を認める訳にはいかなかったし、後継者の座に固執もする。

 

 

 自分の全てをなげうった代わりに手に入れるはずだった四宮家。それが後妻の当時10代の少年にすべて持っていかれるかもしれない。

 

 

 とても許容できる話ではない。だから、雲鷹様の側使いだった私と、当時すでに敵対状態にあった四条家に黄光様は目を付けた。

 

 

 よくある簡単な謀略ね。

 

 

 

 四宮家の切り崩しを狙っていた四条家の目が雲鷹様に向くように仕向け、取り込まれる、もしくは取り込まれたよう見せかけ証拠を捏造。それを雲鷹様の情報を当主様に流していた私に掴ませる。

 

 

 あわれ四宮家三男、四宮雲鷹様は後継者レースから脱落してしまうという寸法。

 

 

 四条家が雲鷹様を取り込もうとしている証拠は、あっさりと簡単に私の情報網に引っかかった。当り前よね。私がその情報を雁庵様に流さなければ、意味がないのだから。

 

 

 そのままただ、だまされただけならば、私も被害者。愚か者ではあっても裏切り者にはならずに済んだかもしれない。

 

 

 ただ、当時の私は、はっきりとした証拠があったわけではないけれど、タイミング的になんとなくこれが黄光様の罠だと気が付いていた。でも相手は次期当主の黄光様。当時の私はまだ子供でどうすればいいのか判断が付かなかった。

 

 当然、誰にも相談なんかできなかった。

 

 

 そしていつまでも情報を雁庵様に流さない私が、罠に気が付いたことを察したのか、黄光様は私に接触してきた。

 

 

 詳しい話は一切しなかった。ただ「家族が大切なら自分の義務を果たせ。俺の側も親父に情報を流していた。仕事をしろ、それだけだ。」と。

 

 

 私は、罠と知りつつ黄光様の圧力に屈するしかなかった。

 

 

 だから私は裏切り者。

 

 

 

 だけど実際はそうはならなかった。私の様子がおかしい事に気が付いた雲鷹様が、私が雁庵様に情報を漏らしていることに気が付いて、「このドブネズミが!」と一発ガツンと頭を叩いたのだ。

 

 

 

 「まったく、四宮家ってのはここまでするんかね。あぁ、いやだいやだ。拒否も出来ない子供にスパイの真似事を強要するなんて、まともな大人のすることじゃないね。

 

 奈央、後は俺が処理する。

 

 お前は全部忘れろ。」

 

 

 そう宣言すると、さっさと雁庵様に連絡を取り、話をつけてしまった。

 

 

 雲鷹様のゲンコツはものすごく痛かった。あの方、肉体能力も優れてらっしゃるから、軽くたたいたつもりでもものすごい力なのよね。

 

 

 でも、その痛みのせいで、雲鷹様への罪悪感がその時ばかりは吹っ飛んだわ。ほんっと痛かったんだから。死ぬかと思ったわ。

 

 

 

 多分、ね。その後の雲鷹様の言動を見ていれば分かるけど、黄光様がご自分を私と四条家を使って嵌めようとしたことには気が付いていないと思う。

 

 

 単に雲鷹様は私と雁庵様のラインを潰しただけ。黄光様もそれはわかっていたみたいで、もう私を罠に使うのは無理だと考えたみたい。すでに一度危ない橋を渡っているのですもの。私の口から何が飛び出すかわからないでしょうし。

 

 もちろんただの子供だった私がそれ以上の行動に出ることはできなかった。

 

 

 黄光様はしばらく様子を見ることにしたみたいだけど、その短期間でますます黄光様は雲鷹様に手出しができない状況になっていった。

 

 

 雲鷹様が高等部に進学して、2期連続生徒会長になって、副会長さんに恋をして。やっぱり黄光様の様に諦めて、アメリカに行くことになったとき、私と雲鷹様の主従関係は終わりを告げたわ。

 

 

 主従であった時の最後の雲鷹様の言葉が。

 

 

 「達者でな、裏切り者の鼠ちゃん。何かあったら連絡しろや。場合によっては相談にのってやる。」

 

 

 だった。私は裏切り者。契約主義者を標榜しているくせに約束を破った私を許してくれた。そして彼は約束を守ってくれる人。

 

 

 

 だから恥知らずにも私は雲鷹様のご厚意に甘えて、娘のことを相談している。そのうえ彼はこんな私を友人と言ってくれる。

 

 

 

 目の前で側仕えの者たちが買ってきたコンビニのバームクーヘンを素手で頬張りながら、美味しそうにコーヒーを飲む彼。私にはちゃんとお皿に切り分けてフォークを刺して差し出してくれたわ。

 

 

 軽く礼をして私もお菓子を一口。先ほどまで頭の中を絞めていた苦い思い出を、さっと甘いバームクーヘンが流してくれる。

 

 

 本当に美味しそうに食べるわね、雲鷹様。あぁ、コンビニのバームクーヘン、好きなのね?これ。なんだ、そういう事ね。

 

 

 私ね、側を離れてようやく貴方を少しずつ理解できてきたの。

 

 

 案外、天才と謳われる雲鷹様も難しい人じゃなく単純な人なのかもね。

 

 

 

 ……それはそれで置いといて、雲鷹様って本当に年を取らないわよね。肌もあの頃と全然変わらないじゃない。いつまでも子供っぽいままなのはお気の毒だけれども、そこだけは単純にうらやましいわ……。




原作で雲鷹が四条家や早坂家を恨んでいる理由って、黄光が両家を使って雲鷹を罠に嵌めたからって事みたいですけど、この両家を使って罠に嵌める、ってこのパターン以外になにが考えられるだろう……。


うーん、思いつかんのよ……。


とりあえず、今作はこれで行きますね。


追記
かぐや様の一人称、書いては見たものの、これはちょっと……難しいですね。

もしかしたら没ります。
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