モンスターさん、生きていく   作:語部創太

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2.モンスターさん、よく眠る

 

 上のほうがうるさいなぁ。

 

 バタバタ、ギャーギャー、ガチャガチャ

 

 高いところに住んでる羽根つきがさいきん、元気でうるさい。

 うるさくて、あんまりねむれない。

 むかつくなぁ。

 

 木についてる丸くて甘いのを食べても、あんまり楽しくない。

 こんなにうるさいのは、たまにある。

 でも、こんなに長くうるさいのは、はじめてだ。

 今はまだ大丈夫だけど、もっと長くなるようなら、ちがうところに行ったほうがいいかもしれない。

 

 しずかでよくねむれるからココに住んでるのに、うるさくなるならココに住まなくてもいいもんね。

 おや、毛なしだ。めずらしい。

 

 あま~いの、もってない?

 もってないか。じゃあしかたない。

 いただきます。

 

 ゴォォォッ……

 

 ………………毛なしが、火にやかれてなくなっちゃったんだけど?

 上からやってきた火が、わたしのごはんをだいなしにした。

 

 上を見ると、羽根つきがこっちを見てる。

 

 わたしを、みくだしてる。

 

 わたしのごちそうをけして、わたしをバカにした目で見てやがる。

 

 ゆるさない。

 

 かわりにおまえを、食べてやる。

 

 わたし、かしこいから知ってるよ。

 羽根つき、おまえもおいしいんだ。

 

 

 

---

 

 

 

 【龍王】は激怒した。

 

 大陸中央部を横断する大山脈。その北部を根城とするヒト族がドラゴン狩りと称して、各地の同族を殺害するという暴挙に出たのだ。

 ドラゴンたちは、大山脈だけではなく大陸各地の自然あふれる場所に点在して暮らしている。

 その強大な力から生態系の頂点に君臨するドラゴンの巨躯を満たすには、大山脈近辺だけでは食料は足りないからだ。

 

 そうして単独、あるいは少数の家族のみでつつましく暮らす同胞たちを、ヒト族は徒党を組んで討伐しに来たのだ。

 最強の種であるドラゴンが一方的に蹂躙されるほどの武器・魔法・戦略。

 また、仲間の死骸を荒らして新たな道具を作り出し、それを用いてまたドラゴンを殺しに来るという生命に対する冒涜、侮辱。

 

 ここまで魔族とヒト族の中立を保ってきた【龍王】は、ヒト族と敵対することを宣言した。

 

 すぐさま世界に散らばる同胞たちが、大山脈に住まう【龍王】の元へと馳せ参じた。

 【龍王】は【魔王】に協力を要請した。

 仲間たちに戦争の準備を命じた。

 

 ただ北部の愚かなヒト族を滅ぼすだけでは足りない。

 大陸全土のヒトを全滅するまで殺戮する。

 

 いくらドラゴンが最強と言えど、知恵と数に優るヒトすべてを根絶やしにするには時間がかかる。

 余分な食糧の備蓄と、爪を研ぎ牙を磨く準備にドラゴンたちは東奔西走した。

 

 そうして大戦争の準備が整った時、ヒト族から和睦の使者がやってきた。

 

 北部のヒト族を束ねる帝王とその一族の首を手土産にやってきた使者は、ドラゴン狩りはこの愚かな権力者が独善的にやったことであり、ヒト族の本意ではないと頭を下げた。

 どうかこの首に免じて手打ちにしてはくれまいか。

 許しを請うヒト族に対して、集ったドラゴンたちは怒りに震えた。

 

 さんざん好き勝手しておいて、こちらが反撃しようとした時に謝ってはいおしまい。

 そんな道理があってたまるか。

 いきり立ち使者を食い殺そうとするドラゴンたちをしかし【龍王】は制止した。

 

 これ以上、同胞に危害を加えないのなら、ここで終わらせる事もやぶさかではない。

 ヒト族と全面戦争になれば、ドラゴン側も少なくない被害を出すことになる。

 同法の犠牲をこれ以上避けたい【龍王】にとっては願ってもない話だった。

 

 しかし、単純にヒト族側の提案を聞き入れては同胞の溜飲も下がらないだろう。

 【龍王】は使者に、条件を出した。

 

 単独で大樹海を踏破せよ。

 

 使者は、ヒト族の中でも最強と謳われる英雄だった。

 それほどの人物であれば、魔境と言われる大樹海の踏破も可能だろう。

 もちろん、決して容易いことではないが。

 

 そして、ヒト族が悶え苦しみながら試練を潜り抜ける様を余興とすることで、同胞の怒りを鎮めようと【龍王】は考えたのだった。

 

 ヒト族の使者は提案を飲み、大樹海に足を踏み入れた。

 もちろん大樹海にはドラゴンほどではないが凶悪なモンスターと、そしてなにより【禁忌】が存在する。

 

 【龍王】は腹心の部下を監視につけた。

 万が一が起こらないよう、ヒトが死にかけたのなら助けてやるように言いつけた。

 その腹心の部下が裏切るなど、思ってもみなかった。

 

 

 

 ドラゴンは【禁忌】の逆鱗に触れた。

 

 

 

 せっかくの御馳走を台無しにされた【禁忌】は怒り狂い、まずはヒトを殺したドラゴンを喰らった。

 そこで怒りは収まらない。

 大山脈を駆けあがり、大空へと飛び上がり、数多のドラゴンの羽根をもぎ取り、その喉笛を噛み千切った。

 

 そして同胞を守らんと重い腰を上げた【龍王】と百晩に及ぶ死闘を繰り広げ──

 

 

 

 【龍王】は【禁忌】の晩餐としてその腹を満たした。

 

 ドラゴンが絶滅する寸前まで暴れ回った【禁忌】は、満たされた腹に満足したのか大樹海へと帰っていった。

 大山脈には、数年ぶりの静寂が訪れた。

 

 3つの【厄災】のうち一角が沈んだ。

 その凶報は大陸全土を震撼させた。

 

 ドラゴンたちは、新たな【龍王】となるべく争いを始めた。

 ヒト族は、救われた命と【禁忌】に感謝と畏敬の念を抱き自らの傲慢を戒めた。

 

 そして魔族は、【魔王】の名の下にヒト族への大侵攻を画策した。

 【魔王】でさえ手出しできずにいた【龍王】が堕ちたことで、阻む者は何もなくなったように思えた。

 

 かくして。

 血で血を洗う人魔大戦争の火蓋が切って落とされることとなるのだった。

 

 

 

---

 

 

 

 いや~、いっぱい食べた!

 

 最後の大きい羽根つきは、ご飯のくせにたくさん暴れるしパサパサしておいしくなかったけど。

 お腹はいっぱいになったし、上の方も静かになったからまんぞく!

 

 さて、それじゃあひさしぶりにいっぱいねむっちゃおうかな。

 こんど起きるときは、またお腹がすいたらでいいや。

 

 それじゃあ、おやすみ~………………




登場人物紹介

・モンスターさん……たくさん食べて、たくさん眠る。邪魔されるのがだいきらい。
          ドラゴンのお肉はアッサリしていて淡泊な美味しさでした。

・使者さん   ……ヒト族の英雄さん。悪いことする王様を懲らしめた。
          ヒト族を守るためにドラゴンたちと交渉した。
          モンスターさんのご飯になれませんでした。残念。

・ドラゴンさん ……使者さんを殺したドラゴンさん。【龍王】を狙う野心家さん。
          偶然モンスターさんの前で殺しちゃったから、
          自分も殺されちゃいました。残念。

・【龍王】さん ……とってもえらいドラゴンさん。
          仲間の事を考えて色々頑張っていたけど、すべて無駄でした。
          残念。
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