俺は異世界転生者だ。
とはいっても所謂現代知識無双とか、謎能力で俺ツエーとか、そういうお約束とは一切無縁の、であるが。
今より20年前……ド田舎の寒村の、よくある農家に転生したのがこの俺だ。俺が生まれた村はそりゃもう貧乏で貧乏で、俺と同時期に生まれた10人の赤子の内、10まで生き残れたのは俺と幼馴染の2人だけ。彼ら彼女ら哀れな子供たちの死因の内訳として一番多かったのは餓死。その次は病死で、その次は魔獣に攫われて死亡ときた。これで我が村がどれだけ困窮しているのかがわかるだろう。ある程度裕福な村ならば先ほどの死因は逆転して、一番多いのが魔獣に襲われてになるのだから相当である。
とまあ、そんな厳しく辛いこの世界を何とか20まで生き抜いてきた俺は、何故かその村の村長になっていた。
というのも俺以外のガキが幼馴染除いて全員死んだというのと、俺が魔法使いであるからだ。
この世界では魔法使いは神に等しい権力を持っているのが一般的だし、何より長生きで、死ににくくて、強い。民衆がそんな人外じみたスペックを持つ魔法使いの支配を受けたがるのは至極当然のことで、それは俺の村でも何一つ変わらなかったということだ。
それに生き残った我が幼馴染は村長の娘だったから、俺を婿として迎え入れれば済む話だったので、一切の軋轢もなく俺はこのポストに収まった。
ここまで聞いてふと疑問に思うだろう。
「転生者っぽい謎能力獲得してるジャンお前」と。
まぁ、傍から見ればそう映るのはごもっともだ。が、俺をそんじょそこらのチート主人公と一緒にしないでもらいたい……とイキれたらよかったんだが、実際はもっと単純な話だ。
実は誰でも魔法使いになれるんだよね。
魔法使いが魔法使いになるための知識を独占して外部に漏らさないから魔法使いが特権階級になっているだけで、ぶっちゃけきちんと学べば誰でも山一つ消し飛ばせるスーパー魔法使いに大変身できるのだ。
なので俺はたまたま魔法使いに師事する機会があっただけの、ラッキーボーイだったワケ。
師曰く俺の魔法力は凡人に劣るらしいし、そんな大したものでもない。
とはいえこんな辺境の村では俺みたいな凡俗魔法使いでも大変貴重らしく、有無を言わさず村長にさせられた。
あの、俺こんな村の村長やりたくないんですけど。
●
うちの弟子ヤッベー。
あ、俺ルイス・キャロライナ・ベクティム。家族からは魔抜けのルイスって呼ばれてたぜ。
まあ、あだ名から察せられると思うけど俺はとんでもねー落ちこぼれでよー。魔法使いのくせに空も飛べねーし山も削れねーしで身内連中からスゲーなじられて育ってきたワケ。だもんだから俺15のときに実家を飛び出して旅をしてたのよ。
そんでいつものように下級魔獣ぶっ殺してその肉食らってたらよ、ガキが一人俺の前まで来たワケ。これがまた小汚ねーガキでよお、「なんだお前」って聞いてみたのさ。そしたらソイツ「肉ください」って言うんだわ。いや、返事になってねーし(笑)。でも俺ってば優しいからさ、ソイツに魔獣肉たらふく食わせてやったわけ。魔獣の肉ってチョー不味いのにさ、もう必死になって食らいつくのよね。あー、ここらへんに貧しい村でもあったかなぁなんて思いながら葉巻に火を灯したらさ、さっきまで肉のことで頭いっぱいだっただろうガキが俺の指先見て叫ぶのよ。
「それなんですか!」
って。
俺が「魔法だよ」って言ってやるとさ、ガキは「マジスゲー!」って叫んではしゃぐわけ。それ見てたら俺何だか泣けてきちゃってよ。
あー、久々に誰かに褒められたわ……って。
今までこんな指先に火をともすだけの初級魔法、誰かに褒められたことなくてさ。親は出来て当然って顔するし、まあ実際出来て当然のことだったんだけど(笑)でも嬉しかったんだぜマジで。
それで気を良くした俺はさ、つい言っちまったんだ。
「魔法教えてやろうか」
って。
ほんとは魔法についての知識は門外不出で、平民に教えちまうってのは死罪相当のヤベー犯罪なワケ。でも俺ってアウトローだから。流浪の魔法使いだから。ぶっちゃけ法とか今更どうでもいいっていうかさ、まあ正直言うとその場のノリで言っただけなんだけど(笑)。
でガキは案の定食いついてきて、もうスゲー嬉しそうな顔すんだわ。「ウッス!お願いしまっす!」って。
そっからはもう早かったよね。
俺とガキは毎日のように魔獣の肉を一緒に食って、魔法の練習をした。
ガキはモノスゲー吸引力で俺の魔法知識をグングン吸収していって、一月も経たないうちに俺の魔法力を遥かに上回る実力を身に着けちゃった。使えもしないのに身に着けた魔法知識が役立つってなるとまた俺は嬉しくなっちゃってさ、そんで実家の禁書庫で盗み見た禁術とかについてもバンバン叩き込んでみた。
そしたらそれも一月も経たないうちに身に着けちゃった(笑)
いや俺の弟子凄くね?
そんじょそこらの宮廷魔導士とか軽く超えちゃってるんですけど、実力。
てかこれ育てた俺凄くね?
もしかして俺って魔法の才能はなかったけど、教育の実力はあったってこと?
これに自信を取り戻した俺は、才能のありそうなガキに魔法を教え込むことを思いついた。いやさ、このガキ以上の才能ある奴に俺の天才指導を与えたらどうなっちまうのかもう気になってたまんねー!
思いついたが吉日ってわけで俺はガキに「風が呼んでいる」とか意味深なことを呟いて才能あるガキ探しの旅に出ることにした。そしたらガキは「大いなる使命が」とか都合よく勘違いしてくれたので、俺は適当に「ああ」って返しておいた。
去り際に「お前の魔法力は凡人に劣る」とか意味わかんねーこと言って「故に驕るな」とか決め台詞を吐いてみた。才能あるガキを師匠特権で凡夫以下扱いするとか気持ち良すぎだろ!
それじゃグッバイ愛しの弟子よ!元気でいろよ!
続かない