異世界転生者、日々を漫然と過ごしたい。   作:邪骨

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 村長って何だろうな。前の村長、俺の義父なんかは村長らしいこと一つも出来てなかったぜ。いや状況が過酷すぎてそんなのやってる暇がなかったってのが正しいんだが、まぁこの土地では肩書なんていうのはクソの役にも立たねぇってことだ。とはいえ利用できることはあるにはあるようで、年貢の徴収のために小麦は全て村長宅に保管される決まりになっている。これを村長はちょいとばかし盗んで家族の糧にしていたらしい。どうりで貧弱な我が幼馴染……今では嫁だが、あいつがギリ餓死せずに済んでいたわけだぜ。俺も師匠から肉を分け与えられていなかったら正直危うかった。

 

 ぶっちゃけ我が村は壊滅寸前である。

 

 それは今も昔も変わらず、常に壊滅の危機に瀕している状態だ。あの野郎、俺と幼馴染をくっつけて満足死しやがってよぉ……逃げるなァ!と既に冷たい土の下に収まった義父に対して内心罵倒を浴びせてやるものの、死人に口も耳もないので意味はなし。腹も膨れないし疲れるだけで、一文の得にもなりゃしない。今は1文よりもまともな農地が欲しいけどね(笑)。

 

 いや笑い事じゃないんだが。

 

 我が村の土地は巨大な岩塩層の上にあるのだそうだ。故に湧き水は全て塩水であり、また地面に含まれる塩によって作物は碌に育たない。

 

 いや人の住む場所じゃないだろ。

 

 義父に何故こんなところに村があるのかと尋ねたことがある。どうやらこの村はお上様の開拓村なんだそうだ。住みにくい場所を開拓するのが開拓村の役目なのだから、暮らしにくくて当然だろうと。

 

 ふざけんなやクソが。

 

 これで近くに海でもあれば海産物で飢えをしのげるが、残念ここは山奥だ。塩水流れる川しかない。

 

 控えめに言って地獄である。

 

 もし俺が非力な一般村長だったとしたら、義父のようにコロッと死んでいたに違いない。だが幸運なことに俺は魔法使いである。この程度の理不尽は跳ね除けれて当然の人外だ。我が王国1000年の歴史を振り返れば、まず魔法使いが地を均し、そこに居を構えたのが始まりだとされている。そいつにやれて俺に出来ない道理はない。

 やってやんよ!塩害の一つや二つ、パパっと解決してみせるぜぇ!

 

 

 駄目ですわ。

 

 所詮俺なんか師匠に凡人以下認定された雑魚魔法使いですよ。いやね、解決方法なんて思いつくわけないじゃないですか。現代知識無双しようにも俺にそんな学はないし、土地改善の魔法だって知らないよ。俺そんな限定的な魔法教えられてねぇもん。

 

 というようなことを嫁に愚痴ってみたところ、「魔法で作物を無理やり育てたりは出来ないの?」とのご意見が飛んできた。

 

 うーん。出来るかできないかで言えば出来るんだけど、それって作物に24時間365日延々と回復魔法をかけ続けろって言ってるのと同義だぜ?いやーまず無理っていうか、そんなの出来る魔力*1お化けなんて都合よくいるわけないじゃんと。

 

 ままならない。とてもままならない。

 

 だから村長なんてやりたくなかったんだよ!

 俺の完璧な計画では今頃こんな村飛び出して、王都で冒険者やってるハズだったんだよ!それがなんでこんな寂れた村の経営に苦心しなくちゃならなくなってるんだよ!

 

 ……それもこれも嫁のせいだ!あのアマ俺が魔法を使えることを義父にチクりやがったんだ!畜生ふざけやがって!

 

 ということを嫁に叫ぶと尻を蹴られてしまった。曰く「男ならそんな弱音を吐くべからず」とのこと。なんだよお前、そーいう男らしくとか女らしくとか、俺の前世で言ったら炎上するんだからな!

 

 バーカバーカ!

 

 

 我が名はルイス・キャロライナ・ベクティム。流浪の魔法使いである。

 

 ……ってこれからは名乗ろうと思うんだけどさ、良くない?俺は良いと思うんだけどなぁ。

 

 俺が風に呼ばれてから早数年がたってしまった。様々な村を巡り、才能のありそうなガキを探し回ってみたものの、これがなかなか見つからない。どうやら我が愛弟子は相当すごい才能の持ち主だったらしい。流石は広域殲滅魔法を1日で使えるようになっただけのことはあるな!お前はホント()使()の天才だったよ!

 さしもの俺も理解したさ。あいつ以上の魔法の担い手なんていなかったって。でも諦めきれないんだよなコレが(笑)。俺ってば諦め悪いことに定評あったから、親兄弟に嗤われても魔法の探求を諦めなかった男だから。こんなところで諦めてなんていられないんだよね。

 

 てなわけで各地の才能ありげなガキどもに魔法を教えがてら探したよ。アイツを越える才能ってやつをね。

 

 その過程で魔法を使えるチンピラが大量発生したけど、まあどうでもいっか(笑)。

 

 いやさぁ、魔法を使えるようになったからって自制心なくして師匠を殺しにかかって来るのやめて欲しいんだよね。なまじ俺よりも魔法を使える才能はあったもんだから質が悪くて、俺全然反撃できねーでやんの(笑)。ったく一番弟子は天才なだけじゃなく師匠リスペクトもあってマジ最高の弟子だったんだね。大切なものは失ってはじめて気づくってよく言うけど、俺もそれを思い知ったぜ。何なの「師殺しによって僕は最強に至る」とか(笑)。頭おかしいんじゃねーの。

 

 誰かあのガキを殺してくれ!

 

 マジで!

*1
魔力とは魔法を使う上で必須の謎パワーである。個人によって肉体に内包できる魔力の総量には限りがあるんだ!

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