【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第4話(4)人魚の異文化交流

「どうかしましたか?」

 

「ヨハンナさん……」

 

「はい?」

 

「この際なのですが……」

 

「はあ……」

 

「ジャンルを変えてみてはいかがでしょうか?」

 

「ええっ⁉」

 

 私の提案にヨハンナさんが驚く。

 

「婚約破棄ものも一つのジャンルとして確立されてはいますが……読者層が限られます」

 

「限られる?」

 

「ええ、どうしても女性が主体になってしまいます」

 

「そ、それでもワタクシは別に構わないのですが……」

 

「それはもったいないです」

 

「もったいない?」

 

「ええ、せっかくのテンポの良い読みやすい文章をお書きになることが出来るのです。もっと幅広い読者を獲得出来るジャンルに挑戦してみるべきだと思います」

 

「そうは言いましても……」

 

 ヨハンナさんが困ったような表情になる。

 

「……ダメですか?」

 

「例えばどんなジャンルですか?」

 

「そうですね……」

 

 私は腕を組む。

 

「……」

 

「ひとつキーワードになりそうなのが……」

 

 私は右手の人差し指を立てる。

 

「キーワード?」

 

「ええ」

 

「なんですか?」

 

「『異文化コミュニケーション』です」

 

「!」

 

「異なる文化と触れあうことによって感じること……いわゆるカルチャーショックを書いてみると面白いのではないでしょうか」

 

「カルチャーショック……」

 

「そうです」

 

「そ、その場合、主役は人魚ということですか?」

 

「そうなります。ヨハンナさんにしか書けないものです」

 

「ワタクシにしか書けないこと……」

 

「いかがでしょうか?」

 

「興味は湧いてきました」

 

「そうですか」

 

「で、ですが……」

 

「はい?」

 

「カルチャーショックとは例えば何でしょうか?」

 

「まあ、分かりやすく言えば、『食』でしょうか」

 

「しょ、食ですか?」

 

「はい」

 

「ふむ……」

 

 ヨハンナさんが顎に手を当てて考え込む。私はハッとする。

 

「も、もしかして、ヨハンナさん……」

 

「え?」

 

「ベ、ベジタリアンだったりしますか?」

 

「いいえ?」

 

 ヨハンナさんは首を振る。

 

「あ、そ、そうですか……」

 

「お魚さんとかは食べませんが……」

 

「お肉は?」

 

「全然オッケーです」

 

 ヨハンナさんが右手の親指をグッと立てる。私は戸惑う。

 

「オ、オッケーですか……」

 

「はい、むしろウエルカムです」

 

「そ、そうですか……」

 

 何かイメージが違うな……。いや、こちらが勝手なイメージを抱いていただけだが。ヨハンナさんが首を傾げる。

 

「何か問題が?」

 

「い、いえ、大丈夫です」

 

「それで?」

 

「は、はい……例えば『人魚のグルメ』、これはインパクトあると思うのです」

 

「グルメですか……」

 

「ええ、幅広い層に訴求出来るはずです」

 

「なるほど……」

 

「もちろん、それはあくまでも一要素としておいて他の要素を押し出すことも出来るかなと思います」

 

「他の要素?」

 

「たとえば……『衣』ですね」

 

「衣……着るものですか?」

 

「はい、人魚の方が異なる種族の衣装を着てみるというのは、女性層に受けるかと」

 

「確かにファッション好きは多いですからね……」

 

 ヨハンナさんが頷く。私は畳みかける。

 

「衣食とくれば『住』もありですね」

 

「住ですか……」

 

「はい、人魚の方による物件探しというのもなかなか興味深いです」

 

「ふむ……」

 

 ヨハンナさんが腕を組む。

 

「ピンときませんか?」

 

「いや、面白そうではあると思います。ですが……」

 

「ですが?」

 

「お話にこう……起伏が足りないかなと」

 

「なるほど、起伏……」

 

「す、すみません、素人魚が知ったようなことを……」

 

 ヨハンナさんが恐縮する。

 

「いえ、おっしゃりたいことは分かります」

 

「そ、そうですか……」

 

「……起伏を作るポイント、ありますよ……」

 

「ほ、本当ですか⁉」

 

「……サメです」

 

「サ、サメ……?」

 

「おぼろげなのですが、私の元いた世界では、困ったらサメというような具合で多くの創作物にサメが出ていました」

 

「こ、困ったらサメ⁉」

 

「ええ、サメを出せばパニックものとしての要素も出せます」

 

「た、確かに、でも……」

 

「でも?」

 

「中には荒っぽい、手の付けられないサメさんもいますが、基本的にワタクシたちはサメさんたちとも仲良くやっているのですが……」

 

「……まあ、悪役というわけではなく、一つのアクセントとして用いるとか」

 

「アクセント……うん、とりあえず異文化交流を一つの軸に据えて書いてみます」

 

「よろしくお願いします」

 

 私は頭を下げる。打ち合わせはどうにかうまくいったようだ。

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