【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(2)思わぬ顔合わせ

「……」

 

「………」

 

「…………」

 

「……………」

 

「………………」

 

「…………………」

 

「……………………」

 

 今、七人の作家志望者、私が担当している方々が顔を揃えている。エルフのルーシーさん、獣人のアンジェラさん、スライムのマルガリータさん、人魚のヨハンナさん、サキュバスのヘレンさん、騎士のザビーネさん、魔族のクラウディアさんだ。しかし、皆黙っている。私は沈黙に耐え切れず、口を開く。

 

「え、えっと……」

 

「モリ殿」

 

「は、はい?」

 

「これはどういうことか?」

 

 ザビーネさんが刺すような口調で尋ねてくる。

 

「えっと……いわゆる一つのダブル……どころではないですね、セプタプルブッキングをしてしまいまして……」

 

 私はハンカチを取り出して汗を拭う。

 

「何故にしてこうなった?」

 

「ついうっかりと言いますか……」

 

「ついうっかりというレベルか?」

 

 ザビーネさんの眼光が鋭いものになる。

 

「お、おっしゃる通りでございます……」

 

 私は頭を下げる。

 

「ひどいわ! アタシの他にも女がいたなんて……!」

 

「ヘレン殿、くだらない冗談は慎んで頂きたい……」

 

「あらま、場を和まそうと思ったのだけれど……」

 

 ヘレンさんがペロっと舌を出す。

 

「別に他に担当する者がいてもなにも不思議ではない……だが!」

 

「は、はい……!」

 

「この扱いはあまりにも雑なのではないだろうか?」

 

「ま、まったくもって、おっしゃる通りでございます……申し訳ございません……」

 

 私は頭を下げる。

 

「まあまあ、モリさんも色々とお疲れだったのですよ」

 

「ル、ルーシーさん……」

 

 ルーシーさんが助け舟を出してくれる。なんて優しい……ひょっとしてこれが女神という存在だろうか?

 

「ニッポンジンは異世界でも人一倍責任感の強い国民だと聞いたことがあります」

 

 ルーシーさんは自分の尖った耳に手を当てる。ザビーネさんが腕を組んで頷く。

 

「ふむ……」

 

「ここはニッポンジンらしいケジメをつけてくれると思います」

 

「……ん?」

 

 流れが変わったな。

 

「……というわけでモリさんには『セップク』をしてもらいましょう!」

 

「ええっ⁉」

 

「それは自分も聞いたことがある……」

 

 ザビーネさんが頷く。ルーシーさんが優しい笑顔を浮かべる。

 

「では、それで手打ちということで……」

 

「……方々、異存はないか?」

 

 ザビーネさんが皆を見回す。

 

「よく分かんないけど、オレはそれで良いっすよ」

 

「ボクも異議なしです」

 

「ワタクシもそれで構いません」

 

 アンジェラさん、マルガリータさん、ヨハンナさんが頷く。

 

「アタシもそれで良くってよ」

 

 ヘレンさんがウインクする。

 

「どちらでも良い……」

 

 クラウディアさんが頬杖を突きながら答える。ザビーネさんが頷く。

 

「……賛成多数だな、では……」

 

「モリさん、そこんとこよろしくお願いします♪」

 

 ルーシーさんが右手の親指をグッと立てる。私は慌てて立ち上がる。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

「え?」

 

「流石に命だけは勘弁して下さい!」

 

「ええ?」

 

「本当にこの度は私の不手際でございました! 申し訳ございません!」

 

 私は頭を下げる。

 

「優しくしているようで脅すとは……ルーシーさん、綺麗な顔して怖いっすね……」

 

「いやいや、アンジェラさん、ワタシはそのようなつもりでは……」

 

 ルーシーさんが手を左右に振る。

 

「これもエルフ千年の叡智ってやつですか……」

 

「マルガリータさん、ワタシはそんなに生きておりませんよ!」

 

 ルーシーさんが声を上げる。

 

「セップクって何なのかしら?」

 

「……さあ?」

 

 ヨハンナさんの問いにルーシーさんが首を傾げる。

 

「分かっていないことやらせようとしたの? 恐ろしい娘……」

 

「いや、恐ろしいって!」

 

 ヘレンさんの言葉にルーシーさんが不服そうにする。

 

「……とにかく、申し訳ございませんでした!」

 

 私は再度頭を下げる。ザビーネさんが口を開く。

 

「まあ、よく分からんが、それほど反省しているようならば許してやってもいいと思うのだが……方々、いかがだろうか?」

 

「待った」

 

「……なにか?」

 

 ザビーネさんがクラウディアさんに視線を向ける。

 

「貴様が何故この場を仕切っている?」

 

「……仕切っているつもりは毛頭ないが」

 

「そういう態度が気に食わん」

 

「なんだと?」

 

 ザビーネさんがややムッとする。

 

「虫だかなんだか知らんが……」

 

「騎士だ」

 

「どうでもいい」

 

「ふん、魔族はロクに発音も出来んのか?」

 

「なに?」

 

 今度はクラウディアさんがムッとする。

 

「やるか?」

 

 ザビーネさんが鞘に手をかける。クラウディアさんがそれを見て呟く。

 

「……ほう、覚悟があるのか?」

 

「ああ」

 

「おおっ! 騎士対魔族っすね! これは熱い!」

 

「ア、アンジェラさん、無邪気に煽らないで……」

 

 ルーシーさんが慌てる。私も慌てる。

 

「止めてください、なんでもしますから!」

 

「……ほう?」

 

 クラウディアさんが悪そうな笑みを浮かべる。魔族の面目躍如だ。

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