【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第8話(4)合同打ち合わせ

「合同だと?」

 

「何を馬鹿な……」

 

 クラウディアさんとザビーネさんが揃って呆れる。

 

「しかし、時間が足りないというのなら、そういう方法しかないんではないでしょうか?」

 

「誰か何人かが遠慮すれば良いことだろう」

 

「皆さんは今日の為に時間を作ってきたんです。他の日にするというのはそんなに簡単なことではありません」

 

 ルーシーさんがクラウディアさんに反論する。

 

「だからと言って合同などとは……」

 

「モリさん……」

 

 ルーシーさんが私を見つめてくる。元はと言えば、私のスケジューリングミスでこうなってしまったのだ。どうにかしなければならない。

 

「えっと……ん?」

 

 その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。またまたまたまたまたこの感覚だ。私は頭を軽く抑える。

 

「どうかされましたか?」

 

「いえ、大丈夫です……合同の打ち合わせにもメリットがあります」

 

「メリットだと?」

 

「はい……他人の作品を知ること、作風に触れることによって、視点や物の考え方が増えます。言い換えれば頭の中にある引き出しを増やすことが出来るということです」

 

「ほう……引き出しを増やす……」

 

 ザビーネさんがそれぞれ顎に手を当てる。

 

「己一人――編集である私もいますが――ではどうしても限界が生じます。今回はまたとない機会、皆で意見を出し合って、各々の作品の質を高めていきましょう」

 

「ふむ……」

 

「いかがでしょうか?」

 

「まあ、悪くないか……」

 

 クラウディアさんが頷く。私はザビーネさんの方に視線を向けて尋ねる。

 

「どうでしょうか?」

 

「モリ殿がそういうお考えであれば、それを尊重しよう」

 

「ありがとうございます。皆さんもよろしいでしょうか?」

 

「……」

 

 他の五人は無言で頷いてくれた。かくして、異例の『合同打ち合わせ』が始まった。

 

「美女のエルフ同士でキャッキャウフフ……それがワタシの作品のコンセプトです」

 

 ルーシーさんが説明する。クラウディアさんが目を細めて呟く。

 

「魔族の我が言うのもなんだが……世も末という感じだな」

 

「あらそう? アタシは結構良いと思うわよ?」

 

 ヘレンさんが口を開く。クラウディアさんが尋ねる。

 

「どういうところがだ?」

 

「数百年に渡ってのイチャイチャなんて、なんとも壮大でロマンチックじゃないの」

 

「いくらエルフは寿命が長いとはいえ、何年ガッコウとやらに通うつもりだ?」

 

「まあ、そこはいいじゃないの♪」

 

 ヘレンさんがウインクする。アンジェラさんが立ち上がる。

 

「次はオレっすね!」

 

「では、説明をよろしくお願いします」

 

 私が説明を促す。アンジェラさんが説明を始める。

 

「……というわけで、人を『擬モン化』したものっす!」

 

「擬モン化……?」

 

 ザビーネさんが腕を組んで首を傾げる。

 

「なにか疑問があるっすか?」

 

「ちょっとうまいことを言っているな……擬モン化して、結局何をするのだ?」

 

「レースっすね」

 

「レース?」

 

「バトルも考えたんすけど、ちょっと荒っぽいかなって……レースなら基本は正々堂々って雰囲気で爽やかな感じも出せると思ったっす!」

 

「爽やかな感じ……ワタクシは良いと思います」

 

「ありがとうっす!」

 

 アンジェラさんが満面の笑みを浮かべてヨハンナさんに礼を言う。マルガリータさんが立ち上がる。

 

「次はボクですね……」

 

「マルガリータさん、説明をお願いします」

 

「……『転移したらプロレスラーになった件』略して『転スラ』です」

 

「あらら、略称まで決めちゃっているのね」

 

 ヘレンさんが笑みを浮かべる。ザビーネさんが口を開く。

 

「転生・転移ものは正直食傷気味なのだが……しかし、ニッポンのプロレス史に切りこむというのはなかなか興味深いな……」

 

「ど、どうも……」

 

 マルガリータさんがザビーネさんに軽く頭を下げる。ヨハンナさんが立ち上がる。

 

「お次はワタクシですね……」

 

「はい。ヨハンナさん、お願いします」

 

「……ワタクシは異文化コミュニケーションを一つの軸として考えています」

 

「それは良いと思うのですが……」

 

「なんでしょうか、ルーシーさん?」

 

「サメさんの登場がちょっと唐突な気がするのですが……」

 

「いや、話の良いアクセントになっている……良いのではないか?」

 

 クラウディアさんが顎をさすりながら呟く。

 

「ア、アクセント……なるほど、そういう考え方もありますね」

 

 ルーシーさんが頷く。ヘレンさんが立ち上がる。

 

「お次はアタシね~」

 

「ヘレンさん、お願いします」

 

「……アタシは心温まるようなハートウォーミングな話を目指しているわ」

 

「えっと……エロ本ちっくな話?」

 

「絵本よ!」

 

 ヘレンさんがアンジェラさんに対し声を上げる。

 

「サキュバスの方ならではの心の交流……良さそうですね」

 

「そ、そう? ありがと」

 

 ヘレンさんがルーシーさんに礼を言う。ザビーネさんが立ち上がる。

 

「次は自分か」

 

「はい。ザビーネさん、よろしくお願いします」

 

「……自分は騎士団の青春模様を描こうと思っている」

 

「それは良いんですが……『歓迎系』というのは?」

 

「いわゆる『追放系』もののカウンターと考えてもらえばよろしい」

 

「は、はあ……」

 

「良いんじゃないっすか? 騎士団の内部事情は興味深いっす!」

 

 困惑するマルガリータさんとは対照的にアンジェラさんが笑顔を見せる。クラウディアさんがゆっくりと立ち上がる。

 

「我の番か……」

 

「クラウディアさん、お願いします」

 

「……我の話のコンセプトは、『魔族はつらいよ』だ」

 

「こういう裏話的なものは、身内受けにとどまってしまうのでは?」

 

「いや、ボクはとっても良いと思いますよ……大変なんですよ」

 

「そ、そうですか……」

 

 涙を流しそうになっているマルガリータさんを見て、ヨハンナさんが苦笑する。

 

「~~~」

 

「皆さん、お話中のところすみません。皆さんのご協力で思いのほか、実りのある打ち合わせになりました。それぞれの作品作りにもきっと良い影響があるかと思います。本日はありがとうございました。今後もよろしくお願いします!」

 

 私は頭を下げる。合同の打ち合わせはなんだかんだうまくいったようだ。

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