【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第9話(1)気の早い前祝い

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「さあ、今日は飲みましょう!」

 

 七人同時の打ち合わせを終えた私は皆を連れて、馴染みの酒場へと連れていった。打ち合わせはなんだかんだ上手くいったとはいえ、不手際だったことは事実。おわびも兼ねて、皆で飲もうと思ったのだ。

 

「酒か……」

 

 ザビーネさんが顎に手を当てて呟く。

 

「あ、ザビーネさん、お酒は苦手ですか?」

 

「いや、そういうわけではないが、あまり酒臭い状態で宿舎に戻ると、他の者に示しがつかんと思ってな……」

 

「ああ、そうですか……」

 

「言い訳は結構……」

 

 クラウディアさんの呟きに対し、ザビーネさんがムッとする。

 

「なんだと?」

 

「お子ちゃまはミルクでも飲んでいると良い……」

 

「馬鹿にするな、おい、果実酒を樽ごと持ってきてくれ」

 

「こいつより大きいサイズの樽を頼む」

 

「! 樽をもう一個だ!」

 

「お、お二方とも、張り合わないで下さい……」

 

 ルーシーさんがハラハラした顔でクラウディアさんとザビーネさんを見比べる。

 

「ハハッ! 騎士と魔族の飲み比べだ、面白いっすねえ~」

 

「ア、アンジェラさん、あまり煽らないで……」

 

「いやいや、ケンカを肴に飲むお酒が美味いんすよ、知らないっすか?」

 

「悪趣味ですよ!」

 

「冗談っすよ、エルフさんってば真面目っすね~」

 

 アンジェラさんはニヤリと笑う。

 

「アタシらは気にせず飲みましょう」

 

「そうですね……」

 

「なんか食べる? あ、サラダとかの方が良いかしら?」

 

「いえ、お魚さん以外でしたら、この特上お肉を頂きます」

 

「ガッツリ肉食なのね……」

 

 ヨハンナさんの発言にヘレンさんは驚く。

 

「あ、ボクもお肉をいただきます」

 

「マルガリータちゃん」

 

「マルちゃんでいいです」

 

「マルちゃん、お酒は苦手?」

 

「いえ、そんなことはありません。大好物です」

 

「それなら頼んだら良いじゃないの」

 

「いやあ、あんまり飲み過ぎると、体色がそのお酒の色になっちゃうんですよね。ちょっとそれが恥ずかしくて……」

 

「そ、そういうものなのね……」

 

 マルガリータさんの言葉にヘレンさんは少し困惑する。

 

「モリさん」

 

「なんですか、アンジェラさん?」

 

「一応確認なんすけど……今日は奢りっすよね?」

 

「え?」

 

「違うっすか?」

 

「い、いえ! どうぞいくらでも食べて飲んで下さい! 今日は私の奢りです!」

 

「聞いたっすか⁉ 皆さん⁉」

 

「バッチリ聞いたわ~」

 

 ヘレンさんが笑みを浮かべる。

 

「じゃんじゃん頼みましょう! 皆さん、何を注文しますか⁉」

 

「ル、ルーシーさん⁉」

 

 私はルーシーさんの態度の変化に驚く。ヨハンナさんも驚いた顔で呟く。

 

「ルーシーさん、急にノリノリになりましたね……」

 

「ヨハンナさん、この世界で一番美味しいお酒はなんだと思いますか⁉」

 

「え、なんでしょう……?」

 

「ズバリ、よそ様のお金で飲むお酒です!」

 

「ははっ、それはそうかもね~」

 

 ヘレンさんが笑う。

 

「ふっ、他でもない寿命の長いエルフ様のお言葉だ、間違いない」

 

 クラウディアさんもニヤッと笑う。

 

「や、やっぱりボクも飲もうかな……」

 

「どんどん飲みましょう! マルさん!」

 

「はははっ……」

 

 私は苦笑する。ルーシーさんがストッパーになってくれるだろうと思ったのだが、こういう展開になるとは……しかし、このお店はリーズナブルだ。多少飲み過ぎ、食べすぎてもたかが知れている。大丈夫だろう……きっと。

 

「……あ~ちょっと食べ過ぎたっすかね?」

 

 アンジェラさんがポッコリ膨れたお腹をポンポンと叩く。

 

「おい、騎士! 情けないな、もうギブアップか? ん?」

 

 クラウディアさんが店に置いてある人形に話しかけている。

 

「ふははっ……びゃかめ、しょれは残像だ……」

 

 ザビーネさんは顔を真っ赤にしながらよく分からないことを言う。

 

「ぷはっ! もう一杯!」

 

「わたくしも……」

 

「ボクも~」

 

「ルーシーちゃんも飲むけど、ヨハンナちゃんもマルちゃんもイケるわね~」

 

 ヘレンさんが感心する。

 

「なんだったらこのお店ごとイケますよ? 良いですか?」

 

「それはストップよ、マルちゃん」

 

「ヘレンさんは随分と控えめなのですね?」

 

「ん? アタシが飲み過ぎちゃうと……なんかこう、フェロモンが大量にまき散らされちゃって大変なことになるから自重しているのよ」

 

 ヨハンナさんの問いにヘレンさんはウインクしながら答える。

 

「よろしいのですか? わたくしたちだけ楽しんでいるみたいで……」

 

「大丈夫、大丈夫♪ 皆の楽しそうな様子を見るのが楽しいから……あら?」

 

「ははっ、ははは……」

 

「モリちゃん、大丈夫?」

 

「え?」

 

「顔が引きつっているようだけど……」

 

「い、いや、お酒は強い方なんで大丈夫ですよ!」

 

「いや、懐の方よ」

 

「う……」

 

 懐が痛むところの話ではない。馴染みのある店だからツケがきくが、これは明日、編集長に頭を下げるしかない。給料って何か月先まで前借り出来るのだろう……。

 

「……皆~そろそろお開きにしましょう~」

 

 ヘレンさんが皆に声をかけてくれる。

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「いえいえ。それじゃあ〆の一言を……」

 

「え~皆さん、絶対にそれぞれの小説をヒットさせましょう!」

 

「……ヒットしますかね?」

 

 ルーシーが首を傾げる。

 

「します! 数ヶ月後には皆さん、超ベストセラー作家です!」

 

 私は力強く断言する。皆の顔に笑顔が浮かぶ。

 

「……」

 

「………」

 

 私はその時、自分たちの様子をうかがっている視線に全く気が付かなかった……。

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