【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第10話(1)壮大、感動

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「それでは打ち合わせの方を始めさせていただきます。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 街の中でもひときわ立派な建物の中のある一室でスーツ姿の男女とルーシーが向かい合って座り、挨拶をかわす。ルーシーは緊張を隠せない。

 

「早速ですが、内容についてお話をさせてもらってもよろしいでしょうか?」

 

「は、はい、どうぞ……」

 

 男性の問いにルーシーが頷く。

 

「原稿の方を拝見させていただきました。えっと……」

 

「はい?」

 

「……この作品のコンセプトは何になるのでしょうか?」

 

「コンセプトですか?」

 

「はい」

 

「う、う~ん、難しいですね……」

 

 腕を組んで首を傾げるルーシーに対し、女性が口を開く。

 

「キャッチフレーズみたいなものでも構いませんよ」

 

「ああ、それなら……」

 

「なんでしょうか?」

 

「『美女のエルフ同士による数百年間に及ぶキャッキャウフフ』です!」

 

 ルーシーが力強く答える。

 

「……」

 

 黙る男性に代わり女性が尋ねる。

 

「……えっと……それはなんでしょうか?」

 

「ええっ⁉」

 

 ルーシーが驚く。

 

「ちょっとなにをおっしゃっているのかが分からないんです……」

 

「いや、エルフがいますよね?」

 

「ええ、ルーシーさんのような」

 

「二人いるんです」

 

「ええ」

 

「どちらも美女なんです」

 

「はい、エルフの方は美形が多いですからね」

 

「その美女エルフ同士が……」

 

「同士が」

 

「キャッキャウフフするんです!」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい、ですからそれが分からないんです……」

 

 女性が頭を片手で軽く抑え、もう片方の手を前に突き出す。

 

「キャッキャがですか? ウフフがですか?」

 

「いや……」

 

「この場合、キャッキャは嬌声、ウフフは笑い声だと考えてもらえば……」

 

「そ、それはなんとなく分かります。いえ、そういうことではなくてですね……」

 

 女性は頷きながら手を左右に振る。

 

「それではどういうことでしょうか?」

 

「何故、キャッキャウフフなのです?」

 

「何故……?」

 

「はい、何故なのでしょうか?」

 

「……カッカグヘヘだとオジサンっぽくなるからですかね?」

 

「いや、そういうことではなくてですね……」

 

「ど、どういうことでしょうか?」

 

「……エルフという種族は悠久の時を生きられますよね?」

 

 黙っていた男性が口を開く。

 

「ま、まあ、そうですね……悠久というと大げさですが、人間の方よりは長生きかなと……」

 

 ルーシーが戸惑い気味に頷く。

 

「ファンタジーですよ」

 

「え?」

 

「エルフを主役に据えるならば壮大なファンタジーです! これしかない!」

 

「そ、壮大なファンタジー? そ、それは具体的にどういうことですか?」

 

「そこは先生にお好きなように書いていただければと思っています!」

 

「え、ええ? お好きなようにって……」

 

「取材などが必要ならばご相談下さい。費用はある程度は負担出来ますので」

 

「い、いや、取材もなにも……」

 

「……今日のところはこんなところですかね。お疲れ様でした」

 

「ええ……」

 

 男女が揃って頭を下げる。ルーシーが困惑する。

 

                  ♢

 

「アンジェラ先生、どうぞよろしくお願いします」

 

「どうぞよろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いするっす……いやあ、先生だなんて照れるっすね~」

 

 アンジェラは照れくさそうに鼻の頭をこする。

 

「早速打ち合わせを始めさせて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「あ、はい、どうぞどうぞ!」

 

「え~原稿を読ませて頂いたのですが……」

 

「はいっす」

 

「人を『擬モン化』……ですか?」

 

「ああ、そうっすね」

 

「これはどういうことでしょうか?」

 

「人をモンスターにするんすよ」

 

「……例えば?」

 

「例えば? 雄々しい男性はドラゴンに、凛々しい女性はペガサスになるっす」

 

「はい、それは読みましたが……」

 

 男性が隣に座る女性に目配りする。女性が口を開く。

 

「そのモンスターたちがレースをするんですよね?」

 

「は、はい、そうっす……」

 

「何故、レースなんですか?」

 

「な、何故? そ、それは、汗と涙のスポ根的要素のあるお話を書きたかったからで……」

 

「……古いですね」

 

「ふ、古い?」

 

 男性の言葉にアンジェラが面喰らう。男性が続ける。

 

「根性というものを前面に押し出すと、今の読者は拒否反応を示します」

 

「そ、そうなんすか?」

 

「そうなんです。君はどうだい?」

 

「……とにかく楽して儲けたいですね」

 

 男性の問いかけに女性が答える。男性が視線をアンジェラに戻す。

 

「……こんな具合です」

 

「そ、そうは言っても……じゃあどうすればいいんすか?」

 

「……感動ですね」

 

「は、はい?」

 

「涙、涙の感動巨編です。獣と人の心温まるハートウォーミングなストーリー! 獣人でいらっしゃるアンジェラ先生ならではのお話がきっと書けるはずです!」

 

「まあ、大体の獣とも話せるっすけど……そ、それでもオレは汗と涙のスポ根ストーリーを書きたいんすよ!」

 

「汗なんかいりません! 君はどうだい?」

 

「女性読者受けが悪いと思います」

 

「いや、あんまり女性を意識しすぎるのもどうかと思うんすけど……」

 

「今日はこの辺で……ありがとうございました」

 

「え、ええ……」

 

 揃って頭を下げてくる男女に対し、アンジェラは戸惑う。

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