【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!   作:阿弥陀乃トンマージ

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第1話(3)ニッポンジンだ!

「ど、どうしましたか?」

 

「モ、モリさん……転生者なんですか?」

 

「いや、厳密に言うと、転移者らしいですね」

 

「転移者……」

 

「そんなに驚くことですか?」

 

「そ、そりゃあ、驚きますよ!」

 

「大して珍しい話でもないみたいですけどね……」

 

 私は首をすくめる。

 

「少なくともワタシは初めて見ました」

 

「そうですか」

 

「そうです」

 

「とりあえず、お座り下さい」

 

「は、はい、失礼しました……」

 

 ルーシーさんが席につく。私は小声で呟く。

 

「やっぱり珍しいんじゃないのか?」

 

「なるほど、それで……」

 

「え?」

 

「どことなく他の人間の方と雰囲気が違うなと思っていたんです」

 

「あ、ああ、そうですか……」

 

「スーツ姿だし……」

 

「え、服装から?」

 

 雰囲気以前の問題のような。

 

「あの……いくつかお尋ねしてもよろしいでしょうか?」

 

「え、ええ、構いませんよ」

 

「お名前は……」

 

「森天馬です」

 

「モリ=ペガサスさん……姓名が分かれているのですね」

 

「ええ、そうですね」

 

「モリというのが、いわゆるファーストネームですか?」

 

「いや、ファミリーネームだったような……」

 

「ファミリーネームの方が先にくるのですか?」

 

「そうですね」

 

「それって……」

 

 ルーシーさんが顎に手を当てて考え込む。

 

「あの……」

 

「あ、すみません……」

 

「はい」

 

「お家では靴を脱ぎますか?」

 

「ええ、脱ぎますね」

 

「ゴミは持ち帰ったりしますか?」

 

「ゴミ箱などが近くになければ」

 

「麺などをすする時、音を立てますか?」

 

「どうしても癖で……」

 

「パン派ですか? お米派ですか?」

 

「お米ですね」

 

「口癖は?」

 

「すいません」

 

「ニッポンジンだ!」

 

「ええっ⁉」

 

 ルーシーさんが私をビシっと指差してきたので、私は面食らう。

 

「あ、す、すみません、驚かせてしまって……」

 

「い、いえ……」

 

「でも、確信しました。モリさんは異世界のニッポンからやってきたのですね……」

 

「は、はあ……あ、そういえば……」

 

「え?」

 

「大事なことを忘れていました」

 

「?」

 

 私は立ち上がる。ルーシーさんもそれにつられて立ち上がる。私は内ポケットから、名前の書いた紙を取り出し、ルーシーさんに手渡す。

 

「わたくし、こういうものです……」

 

「カイシャインだ‼」

 

「えっ?」

 

「しかもこれ、メイシじゃないですか⁉」

 

 紙を受け取ったルーシーさんは小刻みに震えている。

 

「メイシ……ああ、それってそういう名前なんですか?」

 

「ん?」

 

「なんとなく、こういうことをしなくてはならないと思って……」

 

「ビジネスマナーが染みついている!」

 

「は、はあ……」

 

「驚くことばかりです……」

 

「と、とにかく座りましょう」

 

「は、はい……」

 

 私はルーシーさんに座るよう促す。

 

「えっと……なんの話をしていたのか……」

 

「モリさん!」

 

「あ、はい」

 

「ワタシからこういうことを言うのもなんなのですが……」

 

「なんでしょう?」

 

「モリさんの異世界転移の体験記を出版した方が良いのではないですか?」

 

「え? 体験記?」

 

「そうです。モリさんにしか書けない、モリさんならではの題材じゃないですか」

 

「私ならでは……」

 

「いかがでしょうか?」

 

「いや、そう言われるとそうしたくなるのは山々なのですが……」

 

「何か問題が?」

 

「……記憶が無いのですよ」

 

「えっ!」

 

「いわゆる前の世界にいた記憶というのがほとんど無いのです」

 

「は、はあ……」

 

「おぼろげというか……断片的なのですよね」

 

「そ、そうなのですか……」

 

「ですから、体験記というのはなかなか難しいですね……こっちの世界に来てからの話なら書けるかもしれませんが、それほど面白いものになるとは思えません……異なる二つの世界の文化を比較することが出来れば良いのですが、比較対象をほとんど忘れてしまっているのでね……」

 

「そうですか……すみませんでした、事情も知らず無神経なことを言ってしまって」

 

 ルーシーさんが頭を下げてくる。私は手を左右に振る。

 

「いえいえ、気にしないで下さい……ん⁉」

 

 その時、私は自分の頭に何かが閃いたような感覚を感じる。

 

「? どうかされました?」

 

「い、いや、そうか……」

 

「はい?」

 

「ルーシーさん!」

 

「は、はい!」

 

「貴女ならではの題材で書けば良いのですよ!」

 

「ワタシならでは?」

 

「そうです!」

 

 私はルーシーさんに向かって力強く頷く。

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