シンデレラは遅れてやってくる 作:白雪(pixivでもやってる)
『おにいちゃんすごい!わたしもおにいちゃんみたいにはやくはしれるようになりたい!』
まだデビューしていない頃は、楽しかった。
全てがキラキラしていて、池上先生も優しい顔をしていて、優しい兄がいて……
『サンドリヨンなら、なれるさ』
そう笑ってくれた兄はいない。
池上先生も厳しい顔をしている。きっと私が勝てないせいだ。
本当に私はダメな子だ。
みんなの期待を裏切っている。
G1レースで必ず聞こえる落胆のため息。
「重賞を複数勝ってるのはすごいけど、G1がね……」
ジェンティルドンナ
ジャスタウェイ
ゴールドシップ
ホッコータルマエ
フェノーメノ
皆優秀で嫉妬すら湧かない。
同期は皆「サンドリヨンはまだそのときじゃない」って言ってたけど……もう六歳だし能力的にも衰えてきてると思うんだよね。
京都記念も手強い後輩ばっかだし……不安だよ。
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「馬群の内からハープスター!だが第80代ダービー馬が追ってきた!キズナ迫る!先頭はここでサンドリヨンだ!スズカデヴィアスとラブリーデイが二番手混戦だが…………ここは負けられないサンドリヨン!!!あとはG1を勝つだけ!」
なんとかキズナの猛追を退けスズカデヴィアスとラブリーデイを差した。
ハープスターは馬群に飲まれてたのに間を縫うすごい脚だった。
彼女の前が開けていたら結果は変わったかもしれない。
「先輩、次はどこ走るんですか?ジェンティルドンナ先輩みたいにドバイに行くんですか?」
「いや国内にとどまると思うよ」
どうやらヴィクトリアマイルに陣営は行かせたいみたい。
まあヴィルシーナちゃん引退のいま、ヴィクトリアマイルの女王は空席。
私にもチャンスがある。
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そう、思っていた。
「追い込んできたストレイトガール!ケイアイエレガントと並んでゴールイン!惜しくもサンドリヨンは三着か!?」
私と同じ六歳の牝馬、ストレイトガール。
走った路線こそ短距離マイル、王道路線と交わらないものの……私と同じG1未勝利馬だった。
私は今まで諦めていた。
年齢の壁を越えることを。
殆どの馬は四歳に全盛を迎える。
その時期に勝てなくて、衰え始める六歳でG1が勝てるのか……そう思ったのだ。
なのに、彼女は容易く越えた。
シンデレラのようにステップアップする彼女を見て、わたしもそうなりたいと思ってしまった。
「サンドリヨン……六歳牝馬だってやれるの。衰えなんて言わせない。後輩たちなんかに負けない」
そう力強く言い放ったストレイトガールは美しかった。
ドクン、ドクンと心臓が高鳴る。
まだ終わりじゃない……?
私の旅路は続いている……?
お兄ちゃんを……越えられる……?
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