どけ!!!俺は(姫様の)お兄ちゃんだぞ!!!   作:ジャギィ

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第1話

吾輩は転生者である。名前はテッカ

 

父は宰相として他国を転々としており、母は(名は伏せるが)王国の女王陛下、そして俺は王国における王位第一継承者…つまり王子なのである

 

最初は最近衰退気味の追放ものや異世界チートとばかり思っていたのだが、この世界で生活して驚くべき事実が判明した。なんとこの世界、かの有名なハンティングゲーム“モンスターハンター”の世界だったのだ。そして我が国はあの『サンブレイク』の観測拠点“エルガド”などにおける“王国”であった

 

その証拠に王城内の書物を調べれば、数百年前に王国領域内で巨大な大穴“サン”が開き、その時に“メル・ゼナ”と呼ばれる古龍が出現、暴れたという文献が記されていた。おそらく大穴の元凶“冥淵龍ガイアデルム”がメル・ゼナと縄張り争いをした時の記録だろう。他の文献も調べてみたら、30年ほど前に王国沿岸部でも大穴が開いて、今はそこに“エルガド”が建設されてるらしいから間違いない

 

でもぶっちゃけた話、それを知ったからってどうだって話だ。それらの問題は王国の遥か向こうにある“カムラの里”、そこでいずれ台頭するハンターであり英雄“猛き焔”と我が国の騎士達によって解決する。せっかくこんな世界に生まれ直したのだからハンター稼業をやってみたくない事もないが、王族に生まれたのだ。面白可笑しく生きて偶に狩りをやってみる程度の人生でいいだろう…

 

そんな気持ちは俺が5歳の時、“チッチェ”という名の妹が産まれたことで完全に霧散した

 

可愛いのだ(食い気味)

 

無邪気に笑う姿も、懸命に乳を飲む姿も、大声で泣く姿も、全てが愛おしい。ひとりっ子だった前世も相まって、まさにバルファルク(隕石)級のショック

 

俺の指を握ってキャッキャと笑うチッチェを見て…俺は理解した

 

俺は、この笑顔を守る為に産まれてきたのだと──

 

 

 

それからの行動は早かった。当時から王国騎士達の教導係を勤めていた“アルロー教官”に頭を下げ、無理を言って騎士達に混ざって俺はハンターとしての基礎能力、技術を磨き続け、メキメキと力を付けていった。もっとも、最初は筋トレや走り込みばっかだったが

 

凄まじいのはこの肉体の才能だ。ゲーム内の動きを忠実に再現出来るほど卓越した筋力、瞬発力、反射神経。アルロー教官もお墨付きの才能だったが、技術だけはどうにもならない。基礎も技術も積み重ねが大事だ

 

特に“鉄蟲糸技”はまだ開発されていない技。前世で愛用していた太刀では鉄蟲糸技の“水月の構え”や“桜花鉄蟲気刃斬”がスムーズに狩りを行う上で必須な技だった

 

野生の翔蟲で何度も練習したが、これらの独自開発ばかりは本当に難航して、まるまる5年掛けてようやく最低限のモノが出来上がったのだ。…これをまるで夕食のメニューを決めるみたいにあっさり思い付き完成させるとは、やはりウツシ教官は才能の塊だな。うるさい変態だけど

 

5年も訓練に明け暮れれば肉体は最低限完成された。アルロー教官はまだまだ要訓練と言っていたが俺は王子としての権力をフル活用してハンター資格を取得、みんなに黙ってクエストを受けて達成、ハンターとしての実力を証明した

 

なお、勝手にクエストを受けたことに関してはお母さん(女王陛下)やガレアス提督、アルロー教官にこっぴどく叱られた。やはり最初は小型モンスターにしとくべきだったか。いきなりナルガクルガはやり過ぎた

 

何にせよ、1度証明してしまえばこっちのもの。その後は正式なハンターとして破竹の勢いでクエストを解決していき、3年も経った時には初の最年少G級ハンターとして名を馳せていた

 

この頃になってくるとクエストの護衛として“フィオレーネ”と“ロンディーネ”の姉妹が付いてくる事が多くなった

 

ロンディーネは結構気さくだったのですぐに打ち解けて仲良くなったが、フィオレーネは…なんというか事務的な対応ばかりだった。やっぱり根が真面目だから結構好き勝手やってる俺が好きになれないのだろうか?愛称を付けてみても拒否されるし

 

とにもかくにも順風満帆なハンター生活で慢心とすら言える大きな自信もついてきてた

 

 

──だが、その自信は1年後に見事に粉砕されてしまった。王国首都の城下町に突如襲来した、メル・ゼナとは違う古龍によって

 

 

ゲームと違い、古龍のクエストというのは滅多に出てこない。出てきてもそれこそ歴戦のベテランハンターに斡旋されることが殆どで、ハンター歴3年程度しかない俺は当然古龍と相対した事すらなかった

 

しかし今回の出来事は事情が違い、ともすれば王国が滅亡することすら有り得る緊急事態だった。エルガドを含めた各地の王国騎士が集結し、ガレアス提督の指揮の下その古龍と戦闘を行った

 

恐るべきは古龍の強さだ。純然たる身体能力は勿論のこと、その古龍特有の能力が非常に厄介で、殆どの騎士が戦闘不能にさせられた上、俺も右目を失うという重傷を負った

 

しかしそこでなんと、城塞高地で陣取っていたはずのメル・ゼナが戦闘に介入してきたのだ。古龍同士の縄張り争いは俺達が挟まる余地もないほど凄まじく、もはや黙って王国が亡びるのを見ているだけかと思った

 

だが、古龍の攻撃でメル・ゼナが怯んで動きが止まった時…俺は無意識の内に翔蟲を使い、メル・ゼナの背に乗っていた。そう、モンハンRISEをやっていたものなら誰もが知ってるカムラの里の技能“操竜”だ

 

もはや一か八かの賭けに等しかったが、背後の城にお母さんが、チッチェがいると思うと不思議と恐怖はなかった。メル・ゼナの強烈な一撃、そして王国騎士の総攻撃でその古龍は大きく傷つき、なんとか撃退する事に成功した

 

残ったメル・ゼナが攻撃してくる可能性も大いにあったが、何故かメル・ゼナは俺達に何もせずにその場から飛んで消えた。何はともあれ、王国滅亡という危機は避けられたのであった

 

思えばあの時はまさに命を振り絞った大決戦だったが、帰還時にお母さんにもチッチェにも泣きつかれて、正直号泣してグズる2人をなだめる方が古龍との戦いよりもずっと大変だった

 

フィオレーネとの蟠りがなくなったのもこの大事件の後だった。俺を認めてくれたのは嬉しいのだが、必要以上に干渉してくるのは勘弁してもらいたい。あと忠誠がメタクソ重いのよ…

 

事件が終わったあとだが、右目の怪我もあって狩りに出ることはおろか、城の外を出ることも当分禁止にされた。しかも女王命令で

 

しかし療養してた分のリハビリも、左目だけの動きにも早く慣れたかった俺は、あるひとつの妙案を思いついた

 

 

 

「女王陛下!!女王陛下は居られるか!?」

 

玉座の間に大声で現れたのは、王国騎士にしてテッカの護衛であり、また付き人でもあるフィオレーネであった。焦燥した顔の彼女に玉座に座る女王と近くに立つチッチェが穏やかに声を掛ける

 

()()()()?」

「どうかしましたか?フィオレーネ」

 

疑問符を浮かべる2人にフィオレーネは近寄ると膝をついて1つの紙切れを渡した

 

「こちらが、テッカ王子の部屋に…!」

 

クシャクシャにして、その後にシワを伸ばしたような用紙を女王に手渡す。女王はそこに書かれた文字を読み…驚きのあまり立ち上がった

 

「フィ、フィオレーネ!!」

「既に全騎士に通達して王国中を捜索中です。しかし王子には翔蟲がある上にガルクのレッカも連れて行っています。おそらく既に国境を超えている事かと…」

「…ああ…あの子はまた…」

「お、お母様?フィーネ?何の話なのですか?その紙には一体何が書かれて…」

 

そうして、女王の手元から落ちた紙を拾い上げたチッチェはその内容を読み…

 

「えええ!?お、お兄様!?」

 

『武者修行の旅に出ます

 さよならだけが人生だ

ㅤㅤ    ㅤ ㅤ ㅤテッカより』

 

見直したのは間違いだったのかもしれない

 

フィオレーネがそう思い返すには仕方がないほど、今回も王国一のバカの奇行は絶好調だった

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