どけ!!!俺は(姫様の)お兄ちゃんだぞ!!!   作:ジャギィ

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今回のお話は最終盤に汚い(物理)描写があります。最悪読み飛ばしてもらっても構わないのでご注意ください


第12話

月夜が眩い城塞高地

 

かつての栄華が見る影もない“城塞エリア”、沼地や毒液滴る樹木がある“森林エリア”

 

そして今、標高の高さ故に氷と雪で包まれた“氷山エリア”で…ハンター2人と王国騎士1人が、王域三公(城塞高地の各エリアを縄張りとする3体のモンスターの総称)と呼ばれるモンスターの1体“氷狼竜ルナガロン”と戦っていた

 

「はあ!」

 

太刀の大振りな一撃がルナガロンに当たる。しかしそれは体に覆われた氷が先に当たる事で威力が減衰し、氷以上に硬い氷狼竜の厚鱗や重殻を切ることが出来なかった

 

さっきまで肉まで切り裂けた厚鱗や重殻が、氷1枚に阻まれた途端鉄壁の硬さになる。ガランゴルムより圧倒的に速いのに、そのガランゴルムより硬くなるなどインチキだろうとシキは思った

 

「これもダメか!」

『クオォォン!』

「かは…っ!!」

 

思案している隙を縫ってルナガロンの体当たりがシキに命中する。大きさ、硬さ、何より尋常ではない速さが合わさった突撃を受けて、肺の中の空気を無理やり絞り出される

 

氷上をある程度転がってから止まるシキ。酸素を急いで取り込んで動こうとする彼に、ルナガロンが深みのある朱色の爪を包んだ氷爪を突き立てようと前脚を突き出す

 

ガガガッ! ガガガッ! ガガガッ!

 

『アォン!?』

 

しかし、そんなルナガロンの体を覆った氷に、針のように細い弾が貫く。しかもその弾は着弾時に火炎を弾けさせ、氷の装甲を溶かしながらさらに貫通していく

 

今のは貫通火炎弾…ボウガンの弾を撃ち込めるのは、ヘビィボウガンを背負ってきたハンターしかいない

 

「ししょ…ゲッホ!」

「このバカッ!予想外の事が起きても体は動かせ!あと初見の敵はしっかり動きを観察しろって何度も言ってるだろっ!」

「す、すみません…!」

 

ガガガッ! ガガガッ!

 

叱責しつつも的確なアドバイスを飛ばし、同時並行で貫通火炎弾をルナガロンの氷を纏った部位に当てて、確実に部位破壊をしていく

 

『アオォォォォン!!』

 

ヘビィボウガンを構えるハンター、テッカを厄介な敵だと判断したルナガロンは、即座に氷を纏い直し四足歩行で一気に彼我との距離を詰める

 

このまま喉笛を噛み切る…そう考えるルナガロンだが、テッカに噛み付けるあと一歩のところで何か(シビレ罠)を踏みつけ、瞬間ルナガロンの筋肉に強い痺れが襲う

 

「今だフィーネ!」

「ハァァ!!」

 

タイミングを見計らって近づいたフィオレーネが、ルナガロンの頭部に近づき“昇竜撃”のアッパーを勢いよくぶち込む

 

フィオレーネが空中で盾を構えた瞬間、テッカは徹甲榴弾Lv2を2発ルナガロンの頭に撃ち、直後盾を使った打ち下ろしがルナガロンの頭部位の破壊。そしてフィオレーネが即座にその場から離れると…

 

ドォン!ドォン!

 

『キャィン!?』

 

頭に食い込んでいた徹甲榴弾が爆裂。超至近距離で起きた爆発は氷狼竜の脳を揺すり、平衡感覚を失った蒼い体躯が横転する

 

「チャンスだ!!」

「この期を逃すな!!」

 

己を鼓舞する叫びと共に一斉にルナガロンを攻撃する狩人と騎士。ルナガロンはすぐに起き上がり反撃しようとするが

 

『キャゥン!?』

 

起き上がった瞬間体が麻痺し硬直。倒れている時にテッカが事前に装填していた麻痺弾による効果だ。当然動けないルナガロンはそのまま太刀と片手剣による攻撃で袋にされる

 

それを遠くから見ていたテッカは2人に当たらぬよう貫通火炎弾を撃とうとするが、麻痺するルナガロンの真横から当てては貫通系の弾は最大限の火力を発揮しない

 

(立ち位置が悪い……)

 

そう判断したテッカはもう少し右に寄ってからヘビィボウガンを構え…

 

「ふんっ!!」

 

ドカッ!

 

結果、背面にあった氷壁に“ジゾウ改”の銃床が激突

 

「しぇあ”ら壁えっ!!!」

 

王子は鬼の形相で氷壁をヘビィボウガンで殴りつけるという八つ当たりをするのだった

 

「アンタ狩猟中に何やってんの!?」

「狩りの時くらいは真面目にお願いします!!」

「あ、ゴメン、つい……」

 

弟子と家臣に注意されている間にルナガロンは麻痺が回復し、距離をとると殺意の籠った眼光で3人を睨む。手負いの獣は恐ろしい事を十全に理解しているテッカ達は、武器を構えながら警戒を続ける

 

『グルルルルル…ッ!!』

「気が立ってるな…」

「例の“キュリア”のせいか…?」

「何にせよもう瀕死だ。いつも通りやるぞ、捕獲の手筈を…」

『ウオォォォォン!!』

 

氷狼竜が唐突に吠える。いつ攻撃が来てもいいよう警戒していたが、予想に反してルナガロンは踵を返し、近くの穴から洞窟の中に向かって逃げていった

 

「逃げたか!」

「落ち着けフィオレーネ、巣の位置は凡そ予想がつく。慎重に追い掛けて、追い詰めた所を捕獲すればいい…シキ、フィオレーネ、シビレ罠はあるな?」

「大丈夫です」

「はい、あります」

「よし、行くぞ」

 

テッカの提案に2人も賛同し、3人は洞窟の中に入っていった

 

 

 

フクズクの誘導を頼りに、どのルートを通ったのかを確認しつつ洞窟内を進み、やがて大きな空間に辿り着いた

 

「いた……」

 

空間の隅にある窪みを覗き込んでいるルナガロンの姿が見えた。それをシキが不思議がる

 

「何をやってるんだ…?」

 

武器の切れ味の状態を見ながら小さく呟くシキだが…突如テッカが大きな足音を立てて前に出る。音に気づいたルナガロンが振り返った

 

唐突な行動に2人は驚くが、テッカは意に介さない

 

窪みを背に、まるで人間のように立ち塞がり最大限の殺意で威嚇する中、テッカは氷狼竜の目の前で“ジゾウ改”を見える位置に置き、ゆっくりと窪みに向かって近づき始める

 

『グルルルルルゥ!!』

「…………」

『ガウッ!!』

 

そのまま氷狼竜が今までの獲物の血で染め上げた朱爪をテッカに突きつけるが、最小の動きと篭手の頑丈さで受け流し、そのままルナガロンの手首を片手で掴んで動きを止める

 

『ガウッ!?』

「…………」

『ッ……グルルルルル…!!』

 

テッカの強烈な眼光に一瞬怯むルナガロンだが、飢えた恐暴竜すら逃げ出す()()()()()()()()、威嚇を止めずに唸り続ける

 

そんな光景を見て弟子がドン引きしたように一言

 

「…なんであの人、凶暴なマスターランクのモンスター相手に生身で抑えられてるの…?やっぱあの人人間じゃなくてモンスターだって…」

 

フィオレーネはそれを不敬であると咎められなかった。何故ならフィオレーネも同じ事を思ったからだ

 

主君がモンスター並に強いことを悩む騎士など我々しかいないだろうなと現実逃避するように考えていると、窪みから小さな何かが飛び出す

 

『ギャウ!』

『ガウッ、ガウッ!』

『キュゥーン…』

「あれは…あのルナガロンの子供か…?」

 

それは薄い蒼色と真っ白な毛に包まれた、ルナガロンの幼体だった。心なしかやせ細っている気がする。どうやら窪みの中は、あのルナガロンの巣だったらしい

 

『ガウッ!!』

 

ルナガロンが子供達の方に振り向きながら1回吠える。そして再び自身の腕を掴むテッカを睨み、殺意をさらに漲らせる

 

人間の母親を彷彿とさせる姿に、ようやくシキとフィオレーネは合点がいった

 

「そうか…王子は、あそこにルナガロンの子供がいることに気づいていたのか…」

「今の城塞高地は生態系に異常が出ている…山で餌が取れなかったから人里まで下りてきたのか…?」

 

しかし、ルナガロンは餌を確保する役目と巣を守る役目で分かれて子育てをする生態だったはず。だが、その片割れが見掛けないということは、まさか今回の異常に巻き込まれて…?

 

そこまで考えていると、さらにテッカはアイテムポーチから肉の束を取り出す。生肉だ

 

遭難時と耐久戦用にテッカがいつも持参している、携帯食料とは別の食べ物だ。焼けばジューシーこんがり肉に、野生のシビレダケや毒テングダケと組み合わせれば即興の罠肉にもなるスグレモノだぞ!

 

それをルナガロンの鼻先に持っていくテッカ。幼体達は美味しそうな生肉に目を輝かせるが、如何に飢えていようとルナガロンは決して生肉を口にしようとせず、警戒し続ける

 

「……ハァ」

 

テッカはルナガロンの強過ぎる警戒心にため息を吐くと…突き出した生肉を口元に持っていき、徐に齧り付いた

 

「「王子(師匠)!?」」

 

いつもの奇行に声を上げる2人を他所に、テッカは生肉を咀嚼し、飲み込む。そして再び肉をルナガロンに突き出す。毒は入ってないと言わんばかりに

 

『グルルルル……』

「…………」

 

長い沈黙が冷え切った洞窟内を支配する。やがて幼体達がご飯を求めるあまり、テッカの足元に近づいたところでルナガロンは口を開き……差し出された生肉の束を咥えた

 

手首を離すとテッカから大きく距離を取る。床に落とした肉をブレスで凍らせる母親を見て、子供達は一気に肉に齧り付いた。必死に肉に食らいつく姿から、どれだけ餌が枯渇していたか…いや、もしかしたら何日も食べていなかったのかもしれない

 

「フィーネ、シキ、キャンプにある俺のアイテムボックスから生肉を持ってこい。全部だ」

「……腐ってしまいますよ?」

 

こんな事していいのか?とは聞かなかった。フィオレーネもシキもテッカのこの行動は幾度となく見ているし、言って止めるならとっくの昔に止めている

 

それに、テッカが何故こういう事をするのかも2人は聞いている。その話に納得しているからこそ、テッカを非難することはしないし、止めようとも思わなかった

 

「大丈夫だ。ルナガロンは餌を凍らせて食う習性がある。それにこの巣自体が天然の冷、保存庫みたいなものだ。だから肉が腐ったりはしない」

「何故ルナガロンの習性を知って…いえ、深くは聞きません。今から取ってまいります。シキ殿」

「全く…師匠はホントにやりたい放題だよ…」

 

呆れたようで嬉しそうなシキの呟きを残して、2人は翔蟲でキャンプに飛んでいった

 

残ったテッカは、餌を食べる幼体達とジッとテッカを見張っているルナガロンを眺める。子供の飢えようからして自分も相当腹を空かせているだろうに、肉に一瞥もせず臨戦態勢でいる。この人間が子供達を狙った瞬間、真っ先に噛み殺せるように

 

余程お腹が空いていたのか、限界まで入れておいた生肉を全部平らげても、幼体達は名残惜しそうに骨を舐めたり齧ったりしている

 

そしてそこに、大量の生肉を引きずってきたシキとフィオレーネがガルクと一緒に到着する

 

「おう、ご苦労さん」

「王子…何故、これだけの生肉を保管して…?」

「非常食」

「多過ぎるわっ!!」

 

弟子のツッコミをスルーして、疲れている2人の代わりにルナガロン達の前に山盛りの生肉を置く

 

これには流石のルナガロンも唖然とし、逆に子供達は宝の山でも見たかのようにキャンキャン鳴きながら母親の周囲を駆け回る

 

それを満足気に眺めた後、王子は家臣と弟子を連れて巣を後にした

 

アオォォォォン……!

ワォォォォン……!

 

ちょうど洞窟から出た時、大きな1つの遠吠えと小さな3つの遠吠えが響いてきた気がした

 

 

 

「シキ殿は、王子のあれを知っていたのか」

「俺がハンターになりたての頃、同行していた師匠がよくやってたからね」

 

先に先に進む王子の後ろで、シキとフィオレーネが静かに話す

 

「最初は本当に驚いたよ。モンスターを狩るハンターがモンスターを助けてどうするんだ!?って」

「私の場合、王子がある日を境に唐突にやり始めたから、ロンディーネと一緒に王子を問い詰めたな」

 

とても、とても長い話になるので今は省略するが、2人が特に印象に残っていたのが次のセリフだ

 

 

『俺達はモンスターを狩猟するだけの『ハンター(狩人)』ではない…『モンスターハンター(怪物を狩る者)』だ。モンスターは機械でもプログラムでも、ましてや怪物でもない。ただ大自然の中で生きているだけの、人間より強いだけの生き物だ。無論、人間に害を与えたり、生きているだけで生態系を壊す化け物もいるだろう…だからこそ、そういったモンスターを狩り、人間とモンスターが大きく対立しないよう調和を齎すのがハンターの仕事なのだと……俺は思っている』

 

 

“ぷろぐらむ”とやらが何のことか2人には分からなかった。しかし、テッカの考えはまさに青天の霹靂だった

 

その話を聞いて、自分達(人間)が豊かになることばかり考えて、モンスターをただの脅威的な生き物だと信じ込んでいた自分が恥ずかしくて仕方なかった。フィオレーネの場合は嫉妬をさらに募らせる要因にもなったのだが、今では素晴らしい考えだと素直に賞賛していた

 

王子は「所詮俺1人のエゴでしかない」と自嘲していたが、そんな考えに至れるハンターが一体この世にどれだけいるのか…そう考えると、自分の主君が誇らしくて仕方なかった

 

そんないい気分に浸っている時だった。王子が突如ヘビィボウガンを構え出したのは

 

「……王子?」

「お前ら…周りを見てみろ…」

 

2人は周囲を見渡し……気づく

 

「これは…キュリア…?」

「なんでこんなに…」

 

木々を縫うようにかなりの数のキュリアが夜を赤く照らして漂っていた。2人はその景色に疑問を抱き

 

「…ッ! 上だ!!」

 

強い気配にフィオレーネが叫ぶ。直後、豪風を巻き起こして巨大な影がテッカとシキ、フィオレーネの間に着地する

 

薄く光沢を帯びた汚れなき白銀色の甲殻、脚と尾などの先端部は金属のような黒色の鱗に金の差し色が入っていて、頭部に生える硬くしなやかな角や口元の鋭い牙は豪奢で威徳的な雰囲気を漂わせる

 

そして鮮血の如き深紅の翼膜を広げ、月光によって妖しく不気味な輝きを放つ

 

『キィオォォォォン!!』

「メル・ゼナだと!?」

「こいつが、メル・ゼナ…!?」

 

初めてメル・ゼナを見たシキは動揺する。今まで見た古龍の風神龍と雷神龍は、まさしく異形の龍という怪物然としたイメージにピッタリの古龍だった

 

だがこの龍は、力強さと美しさを兼ね備えていながら、その内側から残虐性と凶暴性が滲み出ていた。こんなモンスターがこの世にいるのかと、シキは自分が知っていた世界の小ささに驚く

 

まるで配下のようにキュリアを悠然と従わせる爵銀龍は、その剛翼の先端をシキとフィオレーネに叩きつける。ギリギリ躱す2人だが、クッキーが割れたように簡単に砕けた地面を見てシキは1人ごちる

 

「なんて馬鹿力…!!」

 

次の一撃を与えようと予備動作に入るメル・ゼナだが、背後から幾つもの火を噴く弾が当たる感覚に、後ろを向く

 

「貫通火炎弾で罅が入る程度かよ…!一応2番目に効く弱点属性だぞこれ!」

 

視線の先にはテッカは苦虫を噛み潰したような顔で貫通火炎弾を装填していく。不粋な傷をつけた不届き者に怒りをぶつけるよう飛びかかるが、股下をスライディングで滑っていくことで回避して、すれ違いざまに何発か貫通火炎弾を撃ち込む

 

『グルルルルルゥ!!』

「お前ら逃げるぞ!!閃光玉は!?」

「あります!今すぐに…!」

『キュルオォォォォォンッ!!』

 

フィオレーネが閃光玉を取り出そうと目を離した時だった。メル・ゼナから飛び出した無数のキュリアがフィオレーネに襲い掛かる

 

「はっ!?」

 

アイテムポーチに手を突っ込んでいたフィオレーネは防御も回避も出来ず、ヒルのような口がフィオレーネの柔肌に咬み付いたかに見えた

 

しかし、テッカがボウガンのシールドでフィオレーネを守る。直進したキュリアはシールドに激突して落下していくが、別の角度からやってきたキュリアがテッカの首元にやってくる

 

「させん!」

 

これをフィオレーネが片手剣の盾だけで防ぐ。しかし、また別に角度からやってきたキュリアが、今度こそフィオレーネに咬み付こうとする。それをシキが咄嗟に庇った為、キュリアはシキの体に牙を突き立てる…はずだったが、そうはならなかった

 

「ぐっ…!?」

「王子!?」

 

テッカが腕で、結果としてシキを庇ったからだ

 

「いっ…てぇなぁ!」

 

咬み付いたキュリアを掴み、地面に叩き落とす。その程度では死ななかったキュリアは他のキュリアと共に爵銀龍の元に戻っていき、3人の人間を睥睨をする

 

そしてメル・ゼナは一声叫ぶと、赤い月夜の空に消えていった…

 

「いなくなった……」

「──王子っ!!大丈夫ですか!?」

 

フィオレーネの焦る叫びに振り返ると、キュリアに唯一咬まれたテッカが脂汗を流して蹲っていた

 

「師匠!?」

「先ほどキュリアに咬まれたからか…!?王子、しっかりしてください!!王子!!」

「う……おっ、お…」

「無理に喋らないでください!今急いで運びますから!」

 

フィオレーネの提案に首を振るテッカ。そして、絞り出すように彼は声を出した──

 

 

「……おなか……いたい……!」

「「………は?」」

 

 

あまりにトンチキな発言に、シキとフィオレーネは宇宙猫みたいな顔になる

 

「たぶん…さっきルナガロンのまえでくったなまにくが、あたったんだとおもっ、ぐおおおっ!?」

「こ…このバカ!!バカ王子!!アンタ何ややこしい事してんだよホントに!?」

「や、やばいっ!これはマジでやばいっ!おれちょっとそこのしげみでだしてくるから、ふたりともみみふさいでてぇ…!」

 

そう言って移動しようとするが、少し歩き出したあたりで電撃でも当たったかのように硬直する

 

「シキ…ちょっとだけたすけて…」

「…本気で言ってるんですか?」

「ししょうがもらしてもいいのかー!?はやくしろっ!まにあわなくなってもしらんぞ───っ!!」

 

脚をケルビの如くガタガタ震わせながらそう脅す師の姿に、シキの目は氷点下よりも冷たくなった

 

なんだこの、みっともない姿は……

王子(師匠)の姿か?これが…

腹を下し、体を震わせ、縮こませ、弟子を脅す醜さ

 

 

生 き 恥

 

 

弟子は虚無の表情で師匠を茂みに連れていき、フィオレーネに耳を塞ぐジェスチャーをしてから、その数秒後

 

 

あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)

 

 

美しい月夜の静寂を、汚い排泄音と情けない悲鳴が切り裂いたのであった

 

お労しや、兄上

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