シキとフィオレーネがエスピナスの狩猟を終えて帰ってきた。しかも五体満足で
ハッキリ言わせてもらうが嬉しい誤算だった。エスピナスはタフさだけは古龍以上だと思っていただけに、アイツを俺抜きで無事に狩れたのは2人が俺の想像以上に成長したからに他ならない
…不安ももちろんあった。あのモンスターを休み抜きで長時間狩り続けられるのは、エスピナスの行動パターンをある程度把握出来ている俺1人しかいないのだから。毒を完全に中和し切れるまで騎士達全員に止められてたから動けなかった。そして、もし2人が死にでもしていたら、俺はカムラの里に行って里のみんなやロンディーネに土下座して謝るつもりだった
しかしそれ以上に、俺は2人を信じる事にした。片や長年連れ添った俺の騎士、片や直々に鍛え上げた俺の弟子だ。主人公だとか主要キャラだとか関係ない。俺が知っているシキとフィオレーネならば帰ってくると思ったからだ
…でも、エスピナスの強さを身をもって実感していただけに、信じて待つっていうのも中々心が落ち着かなかった。思えば俺が常に最前線にいる時、お母さんやチッチェや騎士達もこんな気持ちだったのだろうか?…ちょっとだけ反省しよう…
2人が帰還した翌日、俺はチッチェに引っ張ってもらって騎士団指揮所の会議場所に辿り着いた。感覚と声でガレアス、シキ、フィオレーネ、バハリ、タドリ、その他大勢の騎士達が居ることが分かる
「さて…王子を蝕んだ毒が治り、シキ殿とフィオレーネも戻ってきたところで会議を行おうと思うのだが…」
言い淀むガレアス提督の言葉の後に、ほぼ全員の視線が俺に集中するのを感じ取る
それもそうだろう。今の俺は、顔が愛と勇気だけが友達なアンパンみたいに腫れ上がっていて、さらに目元がギャグ漫画みたいに陥没しているのだから
「前が見えねェ」
「…王子、大丈夫なのですか?」
「ああうん、話は聞こえてるから気にしないで続けてくれ」
(それは無理があります王子)
ちなみに俺の顔をこんな風にした下手人は不肖のバカ弟子なのだが、王子がこんな目に遭ったというのにお咎めなし、しかも女王陛下のお墨付きだ。多大な心配と迷惑を掛けたとはいえ、お前ら今回の俺に対する扱い雑くね?
「…ゴホン…今回、王子の毒を治す過程で判明したことがある。それを皆に共有する」
そんな俺の考えを無視するかの如く会議はスタートする
「…かつてこの国を襲った疫病の正体は、キュリアに噛まれることで発生する毒だということが分かった。そしてその毒は、以前と比べて強化されている事も」
「そしてキュリアは爵銀龍が従えている。…以上のことから、前回の疫病も今回の件も、同一の個体のメル・ゼナが引き起こしたものだと考えられる」
「あのメル・ゼナは強く…何より凶暴だ。もし国民があのキュリアの毒に倒れれば、一体どれだけの犠牲者が出るか」
フィオレーネの指摘はもっともだ。ゲームではキュリアによる被害がフィオレーネと城塞高地近辺のモンスターだけに留まっていたが、あれだってプレイヤーの描写範囲内で分かることだけで、実際は王国の民にも被害が出ていたかもしれない
今回のメル・ゼナ…いや、ガイアデルムが使役するキュリアの毒は凶悪だ。もし以前と同じ人数、否、それ以上の人間にキュリアの毒が蔓延すれば、シキが取ってきた“棘竜の濃毒血”だけでは全然足りない。確実に死人が出る
「うむ…これ以上の被害拡大を防ぐ為にも、即刻メル・ゼナの居場所を把握し、そして討伐せねばならぬ」
「こっちはキュリアに関してもう少し調べておくよ。タドリもいる事だし、毒の解析も進むと思う」
「頼む。シキ殿とフィオレーネは回復に専念してくれ」
「はい」
「分かりました」
「…それでは会議を終了とする。諸君らの健闘を祈る」
ガレアスの言葉を最後に、みんなが解散していく
さて、と…さっき言ったように、今のままでは確実にエスピナスの毒液が足りなくなる。ならば苦手な相手だと言って逃げてもいられん。それに、今の俺の実力が
「そろそろ狩るか…♠」
俺は立ち上がって歩き出し
ガッ!
「イイッ↑タイ↓スネガァァァ↑」
「ああ、お兄様!まだお顔が戻ってないのですから勝手に歩き回ったら危ないですよ!」
椅子に脛をぶつけてゴロゴロ転がり回るのであった
ちくしょう、締まらねえ
以下ダイジェスト…
「チィエェェストォォォォ!!」
『キュィゥゥゥ!?』
「フタエノキワミ、アッー!」
『キュィゥゥゥ!?』
「ウッキー!!今年は申年ィ!!」
『キュィゥゥゥ!?』
ダイジェスト終了…
はい!という訳でとりあえずパパっと3頭ほど捕獲してきました
緊急時故にエルサルカも使わせてもらったけど…いやぁ、やっぱ古龍武器強いわ。反則反則。氷弱点だったとはいえ以前3日も掛けたエスピナスが1体狩るのに6時間よ6時間、1/12も時短出来ちゃったよ。クエストの準備に時間が掛かった為、大量の“濃毒血”の確保に1週間掛かってしまったが、エスピナスの耐久力を考えれば十分早く終わった方だろう
シキの体もそろそろ完治する。フィーネはまだまだ治療に時間が掛かりそうだが、その場合メル・ゼナはエルサルカで狩りに行けばいいさ
そして今、俺が何をしているのかと言うと…
「…………」
正座していました
「テッカ殿…いえ、ここではテッカ王子殿下と呼ぶべきでしょうか?」
「アッハイ」
正確には、何故かエルガドにいた、大きな御札で顔を隠した和装の竜人族“カゲロウ”の前で。隣には困った顔のタドリもいた
凄まじい威圧感だ、練り上げられている。至高の領域だ。この前対峙したメル・ゼナ以上かもしれん。そしてこのカゲロウがそんな雰囲気を出す時は、決まってある『人物』関連なのだ
「それがしが聞きたいのは、ただ一点でございます。…一体、どのような思惑で『
そう、我がマイソウルシスターであるヨモ関連に他ならない
どうやら俺が一国の王子だと正体を隠していたことが裏目に出て、ヨモに接触したのには何か目的があるのではないかと疑っているらしい。何もないっての。強いて言うなら妹になったからだよ、この姫みこセコムbotめ
しかしカゲロウが警戒するのも仕方ないだろう。ヨモは今は亡きツキトの都を統治していたミカド(王や皇帝に当たる地位)唯一の遺児だ。己の主君に託された大切な子であり、長い間育ててきた孫のような存在なのだ。あの子の血筋を利用しようとする輩に見えても致し方なしか
「そんなものはない」
「貴方様はカムラの一員でもあります。貴方様の人格も、高潔さも、優しさも知っているつもりです。疑いたくありません。しかし、一国の王子である貴方様に無礼を承知で言わせていただきます。もし貴方様が姫みこ様を利用しようと考えているのならば、もう姫みこ様と会わないでいただきたい。この通りでございます」
傘を閉じ、頭を深く下げるカゲロウ
「カムラの里の一員としての貴方様でしたら、姫みこ様の
「何を言ってやがる、違わねぇよ!」
茶屋で働いてるヨモギを指さしながら
「ヨモギは妹分で」
親指で自分を指さしながら
「俺は兄貴分だ!」
そして大声で叫ぶ!
「そこになんの違いもありゃしねぇだろうが!」
「 違 う の だ !! 」
おのれはザ・ニンジャか!ニンジャソードのレシピくれるけど!
このままでは平行線だ。どうしたものか…
「カゲロウ、そこまでにしておきましょう」
そんな状況に待ったを掛けたのは、カゲロウの肩に手を置いて落ち着くよう促すタドリだった
「タドリ、しかし…」
「私はこの王国で、王子がどれだけ多くの人々に慕われているのかを見てきました。何より、王子のチッチェ姫や姫みこ様への溺愛ぶりは筋金入りです。そんな彼が、妹を裏切るような真似をすると思いますか?」
「う、む……」
長い、長い沈黙だった。顔を俯かせて考え込むカゲロウだったが、やがて頭を上げると俺の方を向き、頭を下げて言った
「…王子殿下。非礼と、無礼をお詫び申し上げます。如何様な処罰も受け入れる所存です」
「構わない。誓われる身ではあるが、忠義に報いようとする家臣や部下を俺は多く見てきているつもりだ。だから俺はカゲロウを咎める気は一切ない」
「…やはり、我々の正体を知っていたのですか」
「ああ」
もっとも、俺の場合は前世の知識によるカンニングみたいなものだから褒められるようなものではないが。しかし、理解されるかどうかも分からない不正行為で国一つが守れるなら安いものだ
「それとだ…カゲロウ、お前に1つ聞いておきたいことがある」
「…なんでしょうか?」
ヨモギには聞こえないよう、耳元に近づき出来る限り音量を下げてから口にする
「過去の傷口を抉るようで悪いが…ツキトの都を滅ぼした“古龍”に関してだ」
「っ!」
それを口にした途端、明らかにカゲロウの雰囲気が変わった。怒り、憎しみ…強い負の思念を感じる
まだハンターとして未熟だった頃、俺は調査隊員に命令してツキトの都に関しての情報を集めさせていた。それによれば「ツキトの都が滅びる前夜、その近辺でとてつもなく強い嵐が観測された」「建物は根こそぎ吹き飛ばされ、雷でボロクズにされた物体もあった」との事だ
そしてツキトの都とカムラの里は…モンハン3rdの舞台である“ユクモ村”と同じ地方だ。ここまで判断材料が転がっていれば、後は簡単に推測出来る
ツキトの都を滅ぼしたのは、かつてユクモ村の英雄によって討伐されたと文献に記されている、天候すらも自在に操る“嵐の化身”…
「単刀直入に聞くぞ?…お前とヨモの故郷を滅ぼしたのは、嵐を操る災禍の権化……」
「“嵐龍アマツマガツチ”だな?」