どけ!!!俺は(姫様の)お兄ちゃんだぞ!!!   作:ジャギィ

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第2話

マイリトルシスターの元を離れて早1年

 

王国騎士に捕捉されぬよう色んな国を旅している中俺はカムラの里に行き着いた

 

 

最初はカムラの里に向かうべきかかなり迷ったが、右目が見えないというハンデを背負ってる以上、他の面で補強させる必要がある。具体的には今使える鉄蟲糸技をさらに洗練して使えるようにしたい。その為にはカムラの里のウツシ教官に教えを乞う必要がある

 

それに、前世の記憶が正しければ王国がカムラの里に本格的に接触するのは百竜夜行が収束してからだ。ロンディーネこと()()()が交易を装ったスパイ、を装った親善大使としてカムラの里にやっては来るが、彼女1人だけなら丸め込めば十分隠し通せるだろう

 

里長“フゲン”殿とギルドマネージャー“ゴコク”殿には既に素性と事情を説明済み、その上で他の里の者には素性を隠して滞在する旨を伝えている。2人は快く承諾してくれたのだが、1つの条件を加えられた

 

それは、今現在ウツシ教官が指導している()()()()()()()()()()()()の教導を手伝ってほしい、というものだった

 

うん、どう考えても将来の“猛き焔”ですね。横から出たぽっと出が師匠役になるとか、ウツシ教官が怒ったりしないだろうか?不安だ…なんて考えていたが、事情を説明されたウツシ教官は怒るどころか「一緒に頑張って愛弟子を最高のハンターにしよう!」って喜ばれたくらいだ

 

聖人か?仏様か?こんな人格者でありながら全部の武器種を一通り扱えて、鉄蟲糸技も独自に開発しておまけに諜報もこなせるとかマジで完璧超人だな。それだけに愛弟子への変態性が残念過ぎる…

 

あ、鉄蟲糸技に関してだが、流石のウツシ教官もまだ実験段階で、狩りに運用出来るレベルではないらしい。俺が使った水月の構えや桜花鉄蟲気刃斬には甚く感銘を受けていたが、すみません、それ未来のあなたのパクリなんです

 

しかし、俺の鉄蟲糸技を見てインスピレーションが働いたのか、2週間は姿を見せない時期があって、次に姿を見せた時には、なんと全ての武器種の鉄蟲糸技を実用で使えるレベルまで完成させてきたのだった

 

ええ…パクリの鉄蟲糸技を見ただけで全部完成させるとか変態かよ…変態だったわ(確信)

 

そうそう、肝心の“猛き焔”君ですが男の子でした。名前は“シキ”と言うらしい。よろしくね、シキ

 

他には“ヒノエ”“ミノト”の竜人姉妹と仲良くなったりもした。特にミノトとは互いに妹、姉の事を熱く語らう同志として意外も意外と仲良くなれた

 

そして妹と言えば、カムラの里にて新たな妹が出来た。正確には妹分だが

 

それこそがカムラの里のアイドルにして、“茶屋のヨモギ”の看板娘、みんなの“ヨモギ”ちゃんなのだー!ワーパチパチ

 

ぶっちゃけ最初はチッチェの方が数段可愛いと思っていた。見た目的な意味ではどっこいどっこい、ジャンル違いで意見が分かれるといったところだろうか?

 

しかし里に滞在し、ウツシ教官に頼んで教えてもらったヘビィボウガンの操作にも大分慣れてきた頃だった。うさ団子を頬張る俺を見ながら彼女はこう言ったのだ

 

 

「おいしい?お兄ちゃん」と──

 

 

まさしくライゼクス(落雷)級の衝撃だった

 

思えばチッチェは家柄や王族としての礼儀作法もあって、お兄ちゃんと呼んでくれたことは1度もなかった。子供の頃、舌っ足らずに「おにいたま」と初めて呼ばれた時は鼻血すら出るレベルの可愛さだったが、そんな妖精の如き無邪気さも時が経つにつれなりを潜めて、お母さんのような真面目でぽやぽやした雰囲気になっていった。嬉しいのやら悲しいのやら…

 

とにかく、ヨモギにそう呼ばれたことで彼女のことはチッチェと同程度の優先度と化し、妹二大権力が脳内で設立されたのであった。今では“ヨモ”と愛称で呼んでいる

 

しかし、確か前世の知識だとNewリトルシスターはかつて古龍によって滅ぼされた亡国のやんごとなき身分の御方…王国でも古龍襲来後に大きな世話になった薬師(くすし)の“タドリ”や里にちょくちょくやってくる雑貨屋の“カゲロウ”には『姫みこ様』と呼ばれるほどの地位の子らしいが、考えてみると俺の妹ってどっちもお姫様なんだよな。妹スゲェ

 

何にせよ、この1年の旅で不足気味だったシスターパワーの供給の目処が経ったのはいい事だ。何よりこの里は自由で穏やかだ。王城の暮らしやお母さん、チッチェを思い出してはホームシックになる事もあるが、新しい家族も出来た

 

後はいずれ来る災厄に備えて腕を磨くだけだ

 

故郷や新しい居場所の為、お母さんの為

 

何より、可愛い俺の妹達の為に…

 

 

そうだ──俺が、お前達のお兄ちゃんだ

 

 

 

百竜夜行は収束した

 

師から授かった教え、技、そして太刀を手に、百竜夜行の元凶である“百竜ノ淵源”の亡骸を見下ろしながら、俺は安堵の息を吐いた

 

思えば5年前、カムラの里にいきなり滞在し始めた、右目に傷を負った人が師匠に加わったのが事の始まりだった

 

2人の師の内の1人、ウツシ教官は凄い人だ。全ての武器種を満遍なく使え、鉄蟲糸技を開発し、よく褒めてくれる良い師匠だった。過保護なのとうるさいのが玉に瑕だけど…

 

そしてもう1人の師匠…テッカ師匠は、『滅茶苦茶』という言葉を体現したかのような人だった。俺が太刀を使うと知るや否や、水月の構えの練習を1ヶ月はぶっ通しでやらされたり、ヘビィボウガンの的にされてひたすら逃げ続けたり…

 

1番ヤバかったのは、ナルガクルガ相手に一撃も食らうことなく捕獲するという修行だった。あれは本当に酷かった。1回でも吹き飛ばされようものなら次の瞬間には翔蟲で飛竜の如く跳び回るテッカ師匠に拐われるものだから三半規管へのダメージが凄まじい

 

こればかりはウツシ教官とも凄く言い争いをしていて、でもウツシ教官が言った「じゃあ君は同じ事をやれと言われて出来るのかい!?」というセリフに対して見事に有言実行した時は、俺も教官も思わずモンスターを見る目でテッカ師匠を見てしまったほどだ

 

でもそんな目で見ても仕方ないと思う。だって師匠はナルガクルガどころか、古龍級生物に匹敵する危険度と戦闘能力を持つヌシジンオウガ相手にインナー一丁で討伐してしまったのだから。無傷で

 

しかし、右目が見えないハンデをものともしない太刀捌きは、俺の明確な目標の1つとなった。力強さと軽やかさ、恐ろしさと美しさ、相反する2つを見事に融和させたあの動きは、今でも脳裏に焼き付いている

 

「帰ろう、ナツ、ハル」

「ワウ!」

「はいニャ!」

 

オトモとして連れているガルクの“ナツ”とアイルーの“ハル”と一緒に、カムラの里に凱旋する

 

みんなが俺の勝利と帰りを信じて待ってくれていた。お祭り騒ぎの中、人混みの中から現れた師匠が俺を見つめ…肩に手を置いてから静かに言った

 

「よく生きて帰ってきた。よく…無事に帰ってきた」

「師匠…」

「ハンターの道に終わりはないが言わせてくれ…もうお前は一人前のハンターだ。お前に指南出来た事を、俺は誇りに思う」

「師匠…!」

 

師匠の背中はまだまだ遠いが、そう言って貰えるだけで全てが報われた気がした。普段はチャランポランだが、真面目な時は本当に不思議なオーラを放つ人だ…まるで物語の王様のような雰囲気を発している

 

百竜夜行は収束した

 

しかし、収束から1か月後に突如大社跡に現れたダイミョウザザミ、狩猟後に起こった謎の牙竜種の襲撃、そしてオトモ広場にいるロンディーネさんに瓜二つの騎士の登場

 

それらの出来事は、新たな狩りの序章に過ぎなかった…

 

 

 

「“王国”…それに“ルナガロン”…」

「そうだ。最近の王国、特に“城塞高地”ではモンスターの異常が頻繁に報告されている」

 

そう言う彼女の名はフィオレーネ。王国に仕える王国騎士の1人で、ロンディーネさんの姉らしい

 

「貴殿の武勇伝は王国まで轟いているぞ、カムラの英雄“猛き焔”殿。貴殿のその実力を見込んで、どうか我々に力を貸して欲しい」

「ええ、俺で良ければ喜んで」

「そうか…感謝する」

 

キリッとした雰囲気だが、しかし堅すぎるという訳ではないのはその微笑みを見ればよく分かる。師匠が「狩りの基本は観察」と口酸っぱく言っていたがこういう場面でも役に立つとは…

 

「さて…すまないが私の目的はもう1つある。この里にいるテッカという人物に用があるのだ」

「師匠?師匠に一体何の用が?」

「何?……そうか、あの御方から指南を…」

 

あの御方?

 

やけに謙った言い方に疑問を抱いていると、オトモ広場の桟橋を通って、件のテッカ師匠とロンディーネさんがやってきた。彼女も王国騎士らしいが、まるで師匠に付き従うように付いてきてるような…

 

師匠がフィオレーネさんの前に立つ。長い沈黙が続く中、唐突にフィオレーネさんが師匠に跪き、荘厳な口調で言う

 

「お迎えに上がりました」

「久しぶり、フィーネ。お母さんやチッチェは元気?」

「はい。しかし、6年前の騒動の際は本当に大変だったと記憶しております」

「痛いとこ突くねお前…あれは俺も悪かったと反省してるとこもあるんだから許してくれよ」

「許す許さないは女王陛下や姫の裁量次第と思われます。それに、チッチェ姫は寂しくて泣いておられましたよ」

「…良かれと思ってやった事があの子を悲しませたか」

「王国を揺るがす大事件の後だったのです。特に本来ならば療養してなければならない身なのに一人旅に出るなど…もう少し御自身が()()()()()()()()()自覚を持ってください」

「………え?」

 

ちょっと待って。今とんでもない言葉が聞こえた気が…次期国王?

 

「…もはや隠す必要はないか」

 

隣でロンディーネさんがそう言うと、彼女もフィオレーネさんと同じように師匠に付き従い、言い放つ

 

「この御方こそが、我が王国の王位第一継承者にして次期国王でもあられる、テッカ王子その人である」

 

…………

 

「ええええええええええッ!!?」

 

王子!?師匠が!?あのチャランポランでいい加減でぐ〜たらしてて、この前ガンランスで遊んだ結果加工屋の“ハモン”さんに正座でしこたま怒られてた人が王子!?嘘でしょ…嘘だっ!!

 

「ロンディーネ、シキ殿が酷く混乱している様子なのだが」

「普段の王子の姿とで激しいギャップを感じているのかと…」

「…ここでもやりたい放題やっているのか…」

 

ハッ!? おれは しょうきに もどった!

 

「な、なんでそんな人がカムラの里に!?」

「詳細は省くが、王子は己の力不足を感じた故に女王陛下にも無断で武者修行の旅に出たのだ。カムラの里には偶然行き着いたのだと聞いている」

 

ち、力不足…?右目のハンデがあって尚、古龍級生物を無傷で倒す人が力不足を感じるってどんなモンスターだよ…?それこそ御伽噺の“黒龍伝説”くらいしか思いつかないぞ

 

「でも、師匠…ああいや、王子様が見つかって良かったですね。偶然このカムラの里に滞在してなければ…」

「いや、王子がカムラの里にいたのはとっくの昔に把握していたぞ」

「……え?」

 

そんなフィオレーネさんの答えに愕然とした顔を浮かべるのは師匠だ。彼は壊れたカラクリのような不気味な挙動で蠢き、ブツブツ呟く

 

「とっくの昔…じゃあなんで今まで接触してこなくて…監視?そう言えばさっき「カムラの里には偶然行き着いたのだと聞いている」って…」

 

グリン!

 

そんな擬音が聞こえてきそうな速さで首を回し、ロンディーネさんを血走った眼光で見つめながら…師匠は叫んだ

 

「ロンディーネェェエエエ!!裏切ったのかぁ!?俺を、売ったのかぁ!?」

「え!?いや、私は何も…」

「ロンディーネェェエエエ!!この裏切り者ぉぉぉおおおおおおおッ!!」

 

それはまさしく怨嗟の叫びだった。そう言えば初めてロンディーネさんがカムラの里に来た時、師匠とやたら話し込んでいたが、もしかして口止めでもしていたのか?

 

王子からの裏切り者発言にシュンと落ち込むロンディーネさんだが、それを見かねたフィオレーネさんが師匠に言う

 

「貴方様の事を教えてくれたのはフゲン殿です」

「…え?」

「正確には自力で王子の正体に辿り着いたウツシ殿です。フゲン殿自身は貴方様との約束で誰にも王子のことは公言しないが、自力で答えを見つけた者を縛る約束はしていないと言っておられました。後はガレアス提督と交流のあるフゲン殿のツテで、王国に来たウツシ殿から王子の居場所を聞いたのです」

 

そう言えば一時期、鉄蟲糸技開発の為に2週間ほど姿が見かけない時があったが、もしかしてあの時にウツシ教官は王国に行っていたのか?

 

だが、そんな事を考えていると師匠が突如動き出す

 

背負っていた『金獅子砲【重雷】』を下ろし、徐に『ヴァイクSメイル』を外すと、アイテムポーチから剥ぎ取り用のハンターナイフを取り出し…正座したまま刃を腹に向けた

 

「王子!?」

「ちょ、師匠!?」

「おいは恥ずかしか!生きておられんごっ!」

 

そのまま切腹すべく腕を動かそうとし、しかし寸前でフィオレーネさんに止められた

 

「お止めくださいテッカ王子!!」

「ええい離せフィオレーネぃ!部下の忠誠を疑った罪は命で贖わなければならんばいっ!!」

「かつて私に説いた教えとまるで違うではありませんか!?あとその妙な喋り方も止めていただきたい!何をしているロンディーネ、早く王子を止めるのを手伝ってくれ!!貴殿も!!」

「しょ、承知!」

「は、はい!」

「介錯をっ!!介錯をぉぉおおおっ!!」

 

チクショウ!やっぱこの人滅茶苦茶だぁ!

 

 

今日も今日とて、師匠(王子)平常運転(ご乱心)だった

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