どけ!!!俺は(姫様の)お兄ちゃんだぞ!!!   作:ジャギィ

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第20話

どうも皆さん、初めましてッス!!自分は王国騎士のジェイッ!!シュミは筋トレ、ソンケーする人はガレアス提督ッス!まあ、騎士といってもなりたての新米なんスけどね

 

実は自分、騎士になって間もない頃にチッチェ姫に頼まれてクエストに連れて行ってしまったことがあったんッス。そこでイビルジョーってめちゃくちゃヤバいモンスターと出会ってしまって、大怪我も負って危うく絶体絶命のところを、テッカ王子に助けられたんスよね

 

エルガドに戻ったらアルロー教官にもガレアス提督にもめちゃくちゃ怒られたッス。自分のせいでチッチェ姫が危険な目に遭ったのだから、当然と言えば当然ッス。でもチッチェ姫や、特にテッカ王子が女王陛下やアルロー教官に口添えしてでも庇ってくれたらしく、申し訳ない気持ちでいっぱいだったッス

 

お二人の気持ちに応える為、怪我の治癒後、リハビリと並行してチャージアックスの練習をしていたんスけど、なかなか上手くいかないんスよね…。テッカ王子の動きを真似したら自分も強くなれるのではと思ったんスけど、頭の良くない自分には難しいことだったッス…

 

でもそんな時、見舞いに来てくれたテッカ王子が自分に修行をつけてくれると言ってくれたんッス!王子はかのカムラの英雄の師匠と聞くッス!王子の修行を頑張れば、きっと強くなれるッス

 

そんな決意を抱いて城塞高地に向かった自分は今…

 

 

「ゴァアアアアアァッ!!」

 

「うわあああああああああっ!!?」

 

 

──絶賛ティガレックスに追いかけ回されてる途中ッス

 

…出掛ける前にシキさんが「やめろっ!!全裸のハチミツ漬けでアオアシラに突貫するようなもんだぞ!!悪いことは言わないから師匠の修行だけは絶対にやめとけッ!!」って必死に引き止めてた意味をよく考えるべきだったッス…

 

 

 

まず、ジェイは根本的に地力が足りてない(※テッカの基準です)。しかもシキの時と違って、時間も全然ない。だから最初の1週間はひたすら体を酷使する修行をやらせた。特に戦闘においてもっとも重要な重心の為の基礎…即ち下半身の超強化だ。下半身ひいては足腰を鍛えるには走り込みが1番だ

 

ただし、ただ走らせるだけじゃ時間がもったいないからティガレックスに追い掛けさせる。これで心肺機能と危機察知能力も鍛えられて一石三鳥だ。…流石に死ぬんじゃないかって?大丈夫、ちゃんと気配消しながら監視してるから。ヤバいと判断したら翔蟲でひとっ飛びして拐うまでよ

 

途中で力尽きてリタイア、もしくは指定の時間まで逃げ切ったらその日の訓練は終了。本来なら超回復(破壊された筋肉がより強靭に再生する現象)にはハンターでも2、3日時間を必要とするのだが、この世界には不思議な効能のアイテムがたくさんある

 

活力剤、こんがり焼き魚、秘薬、いにしえの秘薬、そして上からかくれんぼ笹だんご、秘薬湯蒸しだんごを跳び竹串で刺したうさ団子を、必ず修行が終わった後に食わせる。そう、“狂化”スキルを使った事がある者なら誰もが世話になったであろう「おだんご超回復Lv4」と「おだんご医療術Lv3」の団子スキルだ。この団子スキルとアイテムを使い、酷使しまくった肉体を丸一日掛けて回復させる

 

大量の団子を用意してくれたヨモには感謝の念しかない。ちなみにゲームと違い、団子スキルは食えば必ず効果が出る仕様になっているぞ

 

当然、回復に使う1日も無駄には過ごさせない。と言ってもやるのは肉体を動かすものではなく、座学にあたるものだ。ジェイの奴、頭が悪いからと今まで勉強を避けてきたみたいだがそうはさせん。生物的に格上のモンスターを人間が狩る為には知識が必須だ。とりあえずは狩りにおける観察の重要さと生存の為のあらゆる知識、これを2週間掛けて最低限(※繰り返しますがテッカの基準です)叩き込む

 

そして何より、ある意味過酷な訓練…肉体的にも精神的にも完全に疲弊し切ったところで誘惑するのだ。「無理に今鍛えなくても大丈夫」「辛いなら止めてもいいんだぞ」「お詫びにエルガドで焼肉奢ってやる」と言った甘言をなるたけ優しく呟くのだ。気遣うように背中をポンポン叩くことも忘れない

 

狩りでもそうだが、こいつの職業である王国騎士をやる上でどれだけ厳しい状況にも屈しない精神力…根性は何より大事だ。何せ自分の命を懸けて民や王族を守るのだから、ここで簡単に心が折れてしまうようなら諦めさせるのも必要な事だ。命には替えられないし、俺が憎まれる程度でこいつの命が助かるなら安いもんだ

 

しかし、同じ事を3回繰り返してもジェイは首を縦に振らなかった。むしろ回数を重ねる毎に動揺は少なくなり、4回目に至っては

 

「王子、俺だって強くなる為に覚悟を決めてここに居るッス!!あまり見くびらないでほしいッス!」

 

…と、逆に怒られてしまった

 

イビルジョーに襲われて大怪我を負ったにも関わらず、こいつは騎士の道を歩き続けている。よくよく考えれば根性がある事は既に証明済みだったのに…ダメだな、騎士も守るべき弱い者と時々見下してしまうのは俺の悪い癖だ

 

ジェイの覚悟は分かった

 

この1週間、ティガレックスとの鬼ごっこを繰り返したことでジェイの体は見違えるほど成長した。これなら次の修行を行う為の必要最低限な身体能力の基準値(※しつこいようですがテッカの基準です)は満たしたはずだ

 

さてと……ジェイ、この1週間でお前の肉体はかなり成長した。途中で根を上げるようならやらないつもりだったが、お前は必死に食らいついてきた。だからこそ、俺もその覚悟に敬意を表して、()()()()()()は終了することにする

 

…うん?…そうだぞ、あくまであの走り込みは短期間での基礎能力の底上げが目的で、本格的な戦闘訓練はこれから始まるんだぞ。言っとくけど程度の違いはあれど、あれは俺がスタミナ向上の為に実際にしてたやつだからな?シキにも似たようなのはやらせてたし

 

これからやるのはそのシキでさえ何度も根を上げた修行だからな。多少難易度は下がるが、その訓練でお前の体にも俺の技術をこれでもかというほど詰め込んでやる。どうだ、嬉しいだろ?…なんで楽しそうな顔してるんだって?

 

そりゃ楽しみだからな、()()()()()()

 

 

轟竜に追いかけ回され、その翌日は勉強をし、また轟竜に追いかけ回され…これらを6日間で3回繰り返したジェイ。そして、丸一日ご褒美としてジェイを休ませてあげ…

 

その翌日から、“猛き焔”シキですら幾度となく挫折しかけた、本当の地獄の修行が始まった

 

 

 

「ぐうううッ!!」

『グォオオン!!』

「うわああ!?」

 

城塞高地内の荒廃した城塞の中で、蒼白い稲妻が大地から飛び散る

 

ドカ!

 

「カハッ!」

 

その余波をモロに食らったジェイは壁に叩きつけられ、肺の中の空気を余すことなく絞り出される

 

「ハァ…!?」

 

一呼吸だけ酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出す。直後に迫り来る電撃を帯びた前脚

 

「ヤバッ」

 

咄嗟に出た言葉を言う時間すらも惜しむように、強く地を蹴って前転して回避、先程までジェイが転がっていた地面と背面の壁を抉る音が雷音と共に響く

 

敵を逃したと感触から感じ取ったそのモンスターは音のする方向に顔を振り返す。そこには全身傷だらけで息も絶え絶えな満身創痍のジェイがいた。普段、あらゆる戦闘を気合と根性と回復薬グレートのゴリ押しで乗り越えてきたジェイだったが、この修行中だけはそんな杜撰な狩りが一切許されない状況であり、故にジェイは頭にも体にも鞭打って、必死に考えて体を動かす

 

「アアッ!」

 

ギャリリィ!

 

剣モードのチャージアックスで太く、しかし柔らかい前脚を切りつける。王国の技術の結晶である最新武器“王国騎士盾斧エスプリ”の刃が雷毛と甲殻を切りつける度、その衝撃がエネルギーとして蓄積される。そして相手が怯んだ隙に薄らと光る盾の内部機構に剣に差し込み、エネルギーを変換してビンに溜めてゆく

 

後は剣と盾を合体させて斧モードに切り替えれば…そう考えたところでジェイは、右手に持っている盾がゆっくりと明暗していることに気づいた。盾強化状態が切れる兆候だった。それを見たジェイが焦って斧モードに即座に切り替える…が、それがいけなかった

 

バリバリバリ!

 

『アオオォーン…!』

 

モンスターは既に電気のチャージと予備動作の構えを完了していた

 

ドビャア!

 

ジェイが自分のミスに気づいた時には時すでに遅く…振り上げた前脚から迸る爪状の電撃を食らい、宙に打ち上げられてしまっていた。しかも“雷やられ”で気絶一歩手前の状態になっているため、翔蟲を使った受け身も取れない

 

「ッッア”…!」

 

そして打ち上げられた騎士にトドメを刺そうと竜は高く跳び上がり

 

ビュワン!

 

──突如空を高速で横切った()()がジェイを掴み、攻撃の圏外まで飛んでいってしまった

 

『アォン!?』

 

前触れもなく獲物が消え去ったことにその竜は驚くが、去っていった方向の空に見える影を見て、()()邪魔のされたのだと理解する。巨体の表面を走る雷の強さと量が、その竜の苛立ちを強く表していた

 

『グルルルルル…!』

 

次こそは逃がさない。必ず仕留めてみせる。そして、その次はお前だ

 

『アオオォォォォォンッ!!』

 

そう宣言するように、城塞高地全域に響き渡らせるほどの雄叫びを上げ……

 

 

影は…テッカは“雷狼竜ジンオウガ”の雄叫びを上げる姿を見ながら、翔蟲でメインキャンプまで飛翔するのであった──

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