どけ!!!俺は(姫様の)お兄ちゃんだぞ!!!   作:ジャギィ

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1話に父親は他界してるって書きましたけど、そしたらどうやったら妹が生まれてきたんだよって事に気づいたので、本国を留守にすることが多い宰相という立場にしておきました

まあ勢いで書いた小説だし、ぶっちゃけその辺の細かい矛盾は無視してくれる方がありがたいです


第3話

私の名はフィオレーネ。王国に仕える王国騎士の1人であり、国を統治する女王陛下、宰相として他国にいる事が多い殿下…そして、ゆくゆくは王国を背負うことになるテッカ王子とチッチェ姫に忠誠を誓っている

 

今は船に乗って我が王国に航行している途中であり、船には妹のロンディーネとカムラの英雄シキ殿、そして6年前に王国を飛び出したテッカ王子が乗っている

 

ハンモックに寝そべっていびきをかく姿はとても一国の王子とは思えず、未だ大人になりきれぬ悪たれ坊にしか見えない。事実彼に振り回された多くの者は、彼をイタズラ好きの子供としか思っていないだろう

 

しかし女王陛下は、チッチェ姫は、多くの騎士達は、私は知っている

 

この者こそが誰よりも王国の為に戦ってきた、真に忠義を尽くすべき王足り得る者だと──

 

 

 

事の始まりは、きっとチッチェ姫が生まれたことなのだろう。それまでは王族の子供らしく何不自由なく生きてきたというのに、姫が生まれた年の内に王子はアルロー教官に懇願し、我々騎士達の訓練に混ざるようになってきた

 

無論、多くの訓練生や現役の、退役した騎士達が心配した。王子に怪我などさせては大変だし、教官も

 

「走り込みだけで音を上げるだろう」

 

と細心の注意を払いながら彼に訓練を受けさせた

 

だが、王子は走り込みどころか筋力や瞬発力を鍛えるトレーニングなどもこなしてみせた。たったの1度も弱音を吐かずに

 

1度だけ、トレーニングの時に無理をして王子の骨にヒビが入った事があった。この時は騎士達全員が慌てだし、教官も軽く青ざめていた。しかし、王子は我々を責めるどころか

 

「俺の未熟と増長が招いた結果だ。迷惑をかけて済まない」

 

とだけ言い、怪我を完治させると改めて訓練を再開した

 

この時から、騎士や騎士を目指す者達は王子の子供らしからぬ雰囲気の片鱗を見ていて、そこに王の資質を見出して彼を支持する者も出始めた。アルロー教官も王子の心意気と強い才能に感心し、徐々に彼に対する遠慮もなくなっていった

 

王子は大剣、太刀、双剣、狩猟笛、ガンランス、ヘビィボウガンを使うが、その中でも特に愛用していた太刀の練度は凄まじいものがあった。たまに翔蟲を使って妙な事をしている時期もあったが、思えばあれも、当時影も形もない鉄蟲糸技を独自に考案し生み出そうとしていたのだろう

 

そして訓練から5年が経過し、王子が10歳になった時、ある事件が起きた…

 

 

 

「王子がクエストに!?」

「そうだ。一刻を争う事態だ、早く王子を見つけ保護せねば」

 

そう言うガレアス提督の沈痛な面持ちが事態の深刻さを表していた

 

本来、クエストというものは密猟対策にハンターズギルドを仲介して受注される為、ハンターの資格を持っていない王子は受注する事が出来ない

 

しかし王子はクエストそのものにではなく、ハンターの資格試験そのものに権力を用いて無理やり入り込み、合格をもぎ取ったようなのだ。資格自体は己の実力で正々堂々勝ち取ったものなのだから、強く非難出来ないのが殊更タチが悪い

 

「それで、王子は何のクエストに?」

「…ナルガクルガの狩猟だ」

「バカな!?」

 

そう叫んだ私を責められる者はいないだろう

 

あの王子が大人しく採取クエストに行くとは思っていなかったが、よりによって“迅竜”の異名を持つ大型の飛竜に挑むなど!熟練のハンターですら危険が付き纏うナルガクルガ、間違っても新米ハンターが挑む相手ではない

 

こんな形で一国の王子が死ぬなど、他国に対する外聞は勿論だが、何より女王陛下やチッチェ姫がどれだけ嘆き悲しむか!

 

だからこそ、王子の身に何かが起こる前に、私はクエスト先の水没林にいち早く向かったのだが…

 

『グルォォォォォ!!』

「…シッ!」

 

ギィン! ザムッ!

 

『キュィィイイッ!?』

 

「…なんだ…これは……」

 

視線の先に広がっていたのは、新米ハンターを一方的に嬲るのではなく、逆に1度も狩りに出たことがないはずの王子に傷一つ付けられず蹂躙されるナルガクルガの姿があった

 

翼刃は所々欠け、尾は先程のカウンターで断ち切られ、左目には深い切創痕がつけられていた

 

翼刃を使った飛び掛かりは真下を転がって潜り抜け、尻尾の薙ぎ払いは翔蟲で宙を舞って避け、大地を砕く尾の叩きつけは糸と刀身のカウンターで防ぎ切る

 

(これは…本当に『狩り』なのか…?)

 

助けに行くという発想すら思い浮かばないほど、私は目の前の光景に釘付けになっていた

 

本来、狩猟において回避は基本だ。何せ相手は人間より遥かに強靭で、中には山のように大きなモンスターもいるのだから

 

しかし、目の前で行われている狩りでは確かに回避こそしているが、その悉くが紙一重で、カウンターに関しても少しタイミングがズレただけで王子が大地のシミとなってしまうほどシビアなものばかり

 

だが、それを王子は1つのミスもせず実行している。まるで機械のように、まるで恐怖を感じてないように、まるで未来でも見えているかのように

 

『グルルゥォォォォォッ!!』

「……ッ!」

 

そして迅竜が咆哮した直後に飛び掛かると、それを見た王子は太刀を納刀して、その場で動かずに居合の構えを取る

 

「なっ!?お、王子!!」

 

あのままではあの巨体に押し潰されてしまう。そう思った私は声を上げるが、既にナルガクルガは王子の居た場所に着地していて…

 

否、王子はそこに居なかった。まるで足を動かさず真後ろにステップしたかのように、ナルガクルガの眼前に立ち

 

「チィィエェェェ…ッストォォォォォォッ!!」

 

一撃、二撃、三擊

 

流れるような連撃から最後に振り下ろされた一太刀がナルガクルガの頭部を深く切り裂く。血潮を吹いてもがき苦しむ迅竜は、起き上がろうとした途中で力尽き…最期に崩れ落ちて絶命した

 

「フゥー……!」

「ナルガクルガを…倒した…?」

 

初めて狩りに出た、齢10になって間もない小さな狩人が、暗殺者が如き飛竜を討伐した

 

「……? …フィオレーネ…?」

「あ、王子…」

「どう、だ…?やっ…た…ぞ…」

 

バシャリ!

 

王子は私を見つけると、安堵の顔を浮かべた後にフラリと揺れて…小さなせせらぎの上に倒れ込んだ

 

「王子!?王子!しっかりしてください、王子!」

 

心配の言葉を掛ける私だったが、その胸中には確かに…ほんの僅かにだが確かに

 

『嫉妬』の感情が渦巻いていた

 

 

 

ナルガクルガを討伐してしまった王子を連れて、私は王国に帰還した

 

王子は女王陛下には泣かれながら、ガレアス提督には問い詰められながら、アルロー教官には怒鳴られながら叱られた。見たところ、女王陛下の泣き落としが1番効いていたように見える

 

しかし、初めての狩猟で、それも10歳でありながらナルガクルガを討伐するという偉業をやってのけた王子は嫌でも周囲に実力を見せつけ、彼の熱意に押された女王陛下は、無傷であった事も相まって王子がハンターになることをお認めになられた

 

ただし、私と妹のロンディーネをクエストに同行させる事が条件だった。女王陛下直々の命令である以上、王国騎士として真面目に取り組まねばと私は私情を押し殺して任務の遂行に着手した

 

だが、生き急ぐようにハンターとしての才能を開花させ、急成長する王子の姿を間近で見れば見るほど私の中の醜い感情はどんどん膨れ上がっていった

 

大剣はヒットアンドアウェイを忠実に守り、チャンスがあれば重い一撃を必ず叩き込む

 

双剣は強走薬もないのに鬼人強化状態を切らした姿を見た事もなく、回避と同時に敵を切り刻む

 

狩猟笛は旋律を決して切らさず、それでいて我々の邪魔にならぬ立ち回りで徹底的にサポートする

 

ガンランスは基本的な動きを忠実に守り、かと思えばガンランスらしからぬ怒涛の動きでモンスターを追い込む

 

ヘビィボウガンは的確に弱点を撃ち抜き、まるで近接武器のように近づいて攻撃し、攻撃を受けても全く動じることがない

 

他の武器種は何だかんだ攻撃を食らうこともあったし、回避しきれぬ事も多々あった。それでも十分ベテランと言える老獪な立ち回り方だったが

 

しかしやはり…1番凄まじく、異質なのは太刀であった。モンスターにピッタリ張り付いて離れず、それでいてどんな攻撃も紙一重で回避し、躱しきれない攻撃は糸と刀身で対処する

 

これではどちらがモンスターか分かったものではない…そんな不敬なことも考えてしまうほど、私の王子への感情は歪なものに変化していく

 

同じように間近で見ている妹は、特にそんな様子も見せず純粋に王子を尊敬し、とても親しげに話をしている。そんな妹の当たり前な一面にも悪感情を抱いてしまうほど、私は嫉妬深くなってしまっていた

 

いつの日か、王子は言った

 

「なあなあ、フィオレーネ」

「…なんでしょうか?」

「お前達と共に狩りをしてもう3年も経つんだ。俺は将来の君主としても、狩り仲間としてもお前達ともっと仲良くなりたい。だから“フィーネ”って愛称を思いついたんだが、そう呼んでも構わないか?」

「…そのような必要はないと思われます」

「ダメか…?」

「我々は貴方様達王族に忠誠を誓った騎士、王国の矛であり盾であります。そのような親しみを向ける事は…」

「お前の事を家族の姉のように思っていたのは、俺だけか?」

「………私は………」

「…いや、ゴメン、無理強いをした。でも俺がみんなと仲良くなりたいと思っているのは俺個人の意思だ。それだけは覚えていてくれ」

「…………」

 

ああ、王子

 

強く、優しく、民や騎士に親しまれている王子

 

だが、貴方様の優しさが私には苦しい。私が真面目にコツコツと積み上げてきた、騎士としての価値観が崩れていくから

 

貴方様の強さが私には妬ましい。私達騎士が何の為に強くなろうとしているのか、分からなくなっていくから

 

ああ、ああ、王子…

 

私は貴方様の存在が許せなく、憎らしかった──

 

 

王国が滅びの危機に瀕した、あの時までは

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