どけ!!!俺は(姫様の)お兄ちゃんだぞ!!!   作:ジャギィ

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前の話の感想で色々言われたのでちょっと補足をば

王子としてはふざけてるつもりも余裕なつもりもなく、むしろ滅茶苦茶テンパってます。だって、ずっと信頼してた真面目な部下が右目の責任を感じてると思ってたら「嫉妬してました!憎んでました!お詫びに死にます!」とか急に言われたら混乱する事間違いなしです。だから咄嗟に自分の言葉が出てこなくて、ああなっちゃった訳です

セリフのチョイス?それはまあ…うん…あれだけど…王子も頑張ってたから許したげて…


第7話

6年ぶりの我が故郷だ

 

港に到着し、見てみればそこはエルガド。6年前はまだ技術も発展し切ってなくて中途半端な拠点だったが、今は1つの港として機能するほど発展していて、かつて画面越しに見た光景と遜色ない。と言っても、20年以上にもなる記憶なんてもう殆ど薄れてきてるけどね

 

愛しのマイシスターもここに居ると思うとちょっとドキドキしてきて、みんなと一緒にいざ下船…とは行かなかった。フィオレーネ曰く王子の俺は先に女王陛下に顔を合わせなければならないから、彼女と一緒に首都に行かなければならんらしい

 

それなら仕方ないか。女王陛下サマの命令だし、6年前急に王国を出た事で迷惑も掛けたし、何より久しぶりにお母さんに会えるのだ。チッチェとの再会は後に取っておこう。というわけでシキ、ロンディーネ、お前らもう船降りろ

 

今度は馬車での移動になるし…仕方ない。もう1回寝るか

 

 

 

かつてイヴェルカーナと死闘を繰り広げた王国首都

 

紅蓮地獄の如き様相を呈していた氷漬けの都市は見事に復興しており、見覚えのある建物が大きくなっていたり、逆に知っている店がなくなっていた時はちょっとノスタルジックになったりと、馬車から眺める景色だけでも相当楽しめた

 

そして城についた後、あの頃のままの自分の部屋で1晩休み…翌日、玉座の間にてフィオレーネをお供に、俺は女王陛下と対面した

 

「よく戻ってきましたね、テッカ王子」

「ただいま戻りました。まずは6年前に、唐突に城を出て、長年国を留守にしていたことを心より謝罪致します。…御壮健そうで何よりです、女王陛下」

 

そこには6年経って、少し歳をとった女王の姿があった。毅然とした表情でこちらをジッと見つめる女王陛下に頭を下げながら、女王と王子としての会話を続ける

 

「報告は聞いています。1年の旅の末にカムラの里に流れ着き、5年間そこに滞在していたそうですね」

「はい…とても良い里です。皆が家族として笑い合い、力を合わせ、50年ぶりにやってきた災厄にも一致団結で立ち向かい、そして英雄が元凶を見事打ち倒しました。彼の指南に助力した身としても、新たな里の一員としても、とても誇らしくあります」

「そうですか…」

「…しかし…」

 

カムラの里の話をすると少し顔に陰が掛かる女王陛下。俺は跪くのをやめ、女王陛下の前まで移動し、恐れ多くも玉座に座る女王を見下ろすように目線を向ける

 

「彼らを家族のように大切だと思ってはいますが…やはり、俺にとっての家族は、貴方達において他にいない」

「…………」

「急に家を出てってごめんなさい…ただいま、お母さん」

「……テッカ!!」

 

女王陛下は…いや、お母さんは立ち上がり、息子の俺をギュッと強く抱き締めてきた。顔も普段の天然そうで、とても優しい表情と目になって、それがとても懐かしい

 

「貴方って子は!!急に城から居なくなって、私やチッチェ、それにフィオレーネ達もどれだけ心配したと思って!!」

「うん、本当にゴメン…」

「貴方はいつもそう…自分の事を後回しにしてでも誰かの為に真っ先に動く優しい子…でも、貴方が傷つくことで悲しむ人もいるのよ。6年前のあの時も言ったでしょ?」

「うん…」

「おかえりなさい、テッカ…大きくなったわね。昔のように元気そうで私も嬉しいわ」

 

朗らかに笑うお母さんはチッチェに似て、いや、チッチェがお母さんに似てるんだったな。とにかく、とても愛らしい仕草で笑っていて、この笑顔を見ただけでも王国に帰った甲斐があったというものだ

 

色々話をした。身分を隠しながら旅先で宿や食事のためにクエストを受けたり、色んな人と出会ったり。ある国に滞在した時は金払いが良かったからとサクッとラージャンを捕獲したのだが、そしたらそこの第三王女に目をつけられて、そのまま逃げるように国を出たりもしたなぁ

 

そして、カムラの里でシキを弟子にとって育てたこと、新しい妹分ヨモギのこと、ロンディーネと意図せず鉢合わせた時は誤魔化すのが大変だったこと、よく好き勝手やっては大人(主にハモンさん)に説教されたこと、百竜夜行のこと、シキが英雄になったこと…全部話した

 

喋るだけ喋っていたらもう昼になっていて、フィーネも誘ってお母さんとご飯を食べた。フィーネは「せっかくの家族団欒を邪魔するわけには」と断っていたが、何の問題もない。お前も家族だ

 

食事が終わった後、お母さんは女王陛下としての顔に切り替わると、俺にこう言ってきた

 

「王子、貴方にはこの6年間、王国が何があったのかを知る義務があります。フィオレーネ、持ってきなさい」

「はっ!」

「…城塞高地でモンスターの異常が起きていると…大社跡でもルナガロンと出会(でくわ)しました…メル・ゼナですか?」

「それもあります。しかし貴方が知るべきはもっと別のことです」

「別のこと…?」

 

何だろうかと考えていると、フィオレーネが戻ってきたのか後ろの扉からガチャリと開く音が聞こえ

 

ドン!

 

「…………え?」

 

俺の真ん前の机に、とんでもなく山積みな資料が置かれた

 

「何これ……?」

「法律、経済、流通、農業、漁業etcetc(エトセトラエトセトラ)……この王国で6年間あったあらゆる政治、経済、産業を纏めた資料になります。それでこちらが」

 

ドン!!

 

その隣にこれまた山のように積まれた本が置かれる。厚みがある分資料以上に高く、嫌な予感が警鐘を鳴らすには十分過ぎた

 

「貴方様が6年間()()()()()()勉学の本です。何、これでもチッチェ姫や大臣達が工夫して必要最低限な分まで抑えたので、心配要りません」

 

ガタッ ダッ!(俺が身を翻して全力逃走する音)

パシュ!(それを予測していたフィオレーネが左手の妙な篭手から翔蟲を射出する音)

グルグルグル ズテーン!(俺がそれに足を絡め取られて勢いよくすっ転ぶ音)

 

「謀ったなアアァァァァァァッ!?」

「何を言います、事前に説明すれば王子が逃げ隠れするのは火を見るより明らかです。先手を取らねば王子を捕らえる事など不可能なのですから、恨むなら御自身の才能をお恨みください」

「イヤミか貴様ッッ!!というか腕のそれ何!?」

「王子がどこからか持ってきた新大陸調査団の資料を元に開発された“スリンガー”です。まだまだ試作段階の域を出ず実用には程遠いですが…なるほど、これは色々と応用が利きそうですね」

「ああああ!!9年前の俺のバカァ!!」

 

確かにハンターになって1年した頃に伸び悩んでいたから色々なものに手を伸ばしていたが、それがこんな形で返ってくるなんて!ヤバい、お母さんに会うからって武器はおろかハンターナイフや糸やられ対策の隠しナイフも置いてきてしまっている!完全に油断してた!

 

しかしフィオレーネ、詰めが甘いな!この程度の拘束とお前1人だけでこの俺を止められるとでも…

 

「2人とも、王子の拘束を」

「うむ、心得た」

「りょうか〜い☆」

「嘘でしょ!?」

 

などとその気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。気がつけば特命隊隊長“セルバジーナ”と副長“ラパーチェ”が懐にいて捕獲されてしまった。騎士達の中でも飛びっきりエリートの特命騎士No.1とNo.2を駆り出すとか完ッ全に人材の無駄遣いじゃねえか!

 

このままでは愛しのチッチェに会えないまま缶詰め状態に…!そんな生殺し御免だっ!!

 

「うおおお放せえええええっ!!」

「王子!無駄な抵抗はやめていただこう!」

「どけ!!!俺はお兄ちゃんだぞ!!!」

「わわっ、力強い!王子サマ〜、もう暴れないでもらった方が私嬉しいな〜って」

「うるせぇぶりっ子!!お前が昔やさぐれてたのを俺知ってん「あ”ぁ”ん”?」ウッスすんません!自分チョーシくれてました!」

 

怖っわ!ラパーチェ怖っっわ!なんでそんなキャピキャピした雰囲気からドスの利いた声出せんの!?見てよフィオレーネとセルバジーナの顔!ちょっとドン引きしてんじゃんか!

 

「…では王子、諦めて行きましょう」

「ヤメロー!シニタクナーイ!シニタクナーイ!シニタクナーイ………!」

 

 

 

女王陛下の命の元、執務室に軟禁されたテッカ王子

 

最初の方こそ部屋の中から「助けてくれー!」「サンダーっ!!」「EDF!!EDF!!」「うわああああああ!!」などと叫び声が聞こえてきたが、3日もする頃には完全に沈黙

 

王子が地獄から完全に解放されるのは、そこからさらに1ヶ月経過した後であった

 

 

 

「はぁ…」

 

エルガドのクエスト受付窓口にて、チッチェ姫はため息を吐く

 

チッチェ姫には5つ歳上の兄が存在する。強く、賢く、厳しくも優しい。そして、6年前王国に襲来した空前絶後の危機を、龍に跨って跳ね除けた救国の王子にして英雄、自慢のテッカお兄様が

 

その大事件の後、己の力不足を憂いた王子は突然王国を飛び出して武者修行の旅に出た。唐突な別れにチッチェは悲しんだし、寂しかった夜はよく枕を涙で濡らしていた

 

しかし、同時にチッチェは思った。敬愛する兄が安心して帰って来られるように、国も自分も強くなろうと

 

流石にハンターになることは女王であるお母様や周囲の騎士達に止められたが、それならばと出来る限りの猛勉強をし、2ヵ月前にようやく規定の年齢になった事で受付嬢の試験を受験し、見事合格を果たした。姫のこの行動力に家臣達は「王子に似てきた」と戦々恐々とし、女王陛下は「あの子の妹ね」と姫の成長に涙し、快く彼女を送り出したのだった

 

準備に2週間掛かり、エルガドの受付嬢としてスタートしたチッチェは、さらに2週間後にある報告を聞く

 

──カムラの里に在住していたテッカ王子が、王国に帰国するという報告を

 

これを誰より喜んだのはもちろんチッチェ姫だった。大好きな兄が帰ってくる。何より兄はハンターで、自分は受付嬢。一緒にいる時間をたくさん過ごせると思うと、近くにいるアイルーと一緒に小躍りしてしまうくらい嬉しかった

 

だが、兄が帰ってきて1ヶ月。未だ兄の姿は影も形も見えず、チッチェは目に見えて落ち込んでいた

 

「お兄様…チッチェは寂しいです…はぁ…」

 

兄が缶詰め状態で地獄を味わってる真っ最中だったなどと知る由もなく、チッチェはただただ寂しさを紛らわすようにため息を吐く

 

「…いいえ、弱音を吐いちゃダメよチッチェ!お兄様だって頑張ってるもの、わたくしも頑張らないと!!」

 

そう言い聞かせて自分を奮い立たせるチッチェは、受付嬢として仕事に務めようとし…

 

「あら…?」

 

その時、船着き場にいるある女の子に気づいた

 

肩口まで伸びた茶髪のセミロングを、団子と兎を合わせたような髪飾りで後ろに纏めた髪型。明るく愛嬌があるがその表情は暗く、そして目立つ緑色の服は、かのカムラの里にあると聞く和装にとても似ていた

 

チッチェは少しその場を離れると、賑わっている港にしっちゃかめっちゃかになっている女の子に話し掛けた

 

「あの、少しよろしいですか?」

「え…私?」

 

自分を指さす女の子に、チッチェは頷きながら問う

 

「ひょっとしてあなた、カムラの里の人でしょうか?」

「え!分かるの!?」

「はい…あの、お一人のようですがどうなさったのですか?御家族とはぐれたのですか?」

「ええっと、ここには1人で来て、その…お兄ちゃんを探しに来たの」

 

寂しそうにそう呟く彼女に、チッチェはシンパシーを感じた

 

「お兄様を?」

「うん…最近この王国に行ったって里長が言うから、無理言って追い掛けてきたんだけど、どこにも見当たらなくて…」

 

その説明を聞いて、チッチェはピンと来た。いるではないか、最近カムラの里からエルガドに来た、兄と呼べる年齢の人物が

 

「大丈夫です!あの人ならばかなり前に“ガランゴルム”のクエストに出発しましたから、もう少し待てばここに帰ってきますよ!」

「本当!?やったぁ!久しぶりにお兄ちゃんに会える!」

「せっかくですから、待っている間に一緒にお話でもしませんか?」

 

そう誘うチッチェに、彼女は喜んでついていく

 

「うん、しよう!ええっと、あなたは…」

「チッチェと呼んでくださいな」

「チッチェね!私、ヨモギ!よろしくね!」

 

 

チッチェは気づかない。彼女の兄が“猛き焔”シキなのだと勘違いしている事実に

 

 

「へぇ〜、チッチェにもお兄ちゃんがいるんだね」

「はい、最近国に帰ってきたばかりなのですがなかなか会えなくて…早くお兄様に会いたいです」

「分かるよ〜!私も寂しくてお兄ちゃんを探しに来ちゃったくらいだもん!」

「うふふ、わたくし達、似た者同士ですね」

「だね!」

 

 

ヨモギは気づかない。目の前の彼女こそが兄貴分であるテッカの実妹、チッチェ姫であるという真実に

 

 

「私、お兄ちゃんにヘビィボウガンの使い方をたくさん教えてもらったんだ。ババババババー!ってね!」

「そうなのですか。わたくしのお兄様もヘビィボウガンは使いますが、1番得意なのは太刀ですね」

「おおー!私のお兄ちゃんも太刀得意だよ〜!」

「不思議なくらいそっくりですね」

「ねー!」

 

 

そして…その時はやってきた

 

 

「あ、戻ってきたみたいですね」

「え、本当!?」

「はい。あちらに…」

 

そう言ってシキとロンディーネがやってきた方向を見て──その隣にいる、フィオレーネを随行させている人物に気づいた

 

(あ……!)

 

切り揃えられた、焼いた鉄のようなオレンジ色が混ざった茶髪。端正でありながらギラついた顔立ちにチッチェと同じトパーズの瞳

 

何より、閉じられた右目に刻まれた深い傷は、6年前のあの時と何も変わっていなかった

 

「お兄──」

「お兄ちゃ───んっ!!」

 

チッチェが言うより先に、ヨモギが飛び出して兄に抱きついた。それは感動の再会であり、会ったばかりのヨモギの事をまるで双子の姉妹のように思っていたチッチェは、感動の場面に涙を浮かべた

 

 

そして、抱きついてる相手が愛しのお兄様だと気づいて即座に涙は引っ込んだ

 

「えっ、ヨモ!?何でここに!?」

「久しぶりお兄ちゃん!!愛しの妹分が会いに来たよ〜!」

 

 

 

「何です!?あなたッ!!」

 

 

チッチェ、キレた!!

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