成り代わり真依は姉のために死にたい 作:トートロジー
前半ヤンデレオリ主視点、後半メカ丸よりの三人称です。
そして曇る予定なのは真希だけではありません。
では三話目。
「確かにメカ丸らしき呪力を感じるね、うっすらとだけと」
険しい山道を登るのは、術師にとってそう難しいことではない。
体を呪力強化すれば良いからだ、呪力で身を覆い身体能力を強化し道を進めば良いだけだからだ。
「でもそれは並以上の呪力量がある術師だけ」
確かに身体強化に必要とする呪力はそこまで多くない、でも少しづつだが消費はするのだ。
乏しい呪力量しか持たない僕は余計なところで呪力を使っている暇などないのだ。
相変わらずブツブツと独り言を喋りながら僕はダムまでの道を歩いていく。
呪力以前に鍛えられた術師としての身体能力があればそこまで苦ではない、たまに転びそうにはなるけど。
「あ、見えてきた。さて、肝心の幸吉の場所は……」
呪力を探す、彼の呪力を。
集中し、神経を研ぎ澄ませると次第にそれは見えてきた。
「管理室の……地下か」
いよいよ幸吉に対面すると思うと、少し緊張してくる。
僕が知っている彼についての情報はあまり多くない、原作からの情報とメカ丸を通して得た情報は彼という人間を形作るピースの欠片でしかない。
細かな性格も、肉体に現れる普段の癖も、声すら知らないんだ。
「そう考えると、緊張というよりワクワクもしてくるね」
我ながら呑気なものだと思う、今日ここで『プランC』が選択出来るかどうかが決まるというのに。
僕が考えたプランは幾つかあるけど、実は何を選択するかはまだ決めていないんだ。
どれも不確定要素がある上に、仕込みの段階まで辿り着いてないプランも多いからだ。
一番確実で危険性のない計画をプランAとすると、プランCは超絶に危険で確実性のない計画。
「だけど、プランCなら幸吉なら生き延びれる可能性が高い。まあ、五条悟の庇護下に上手く入り込めればの話だけど」
そう、プランCとは
正直真人と羂索相手に僕なんかが立ち向かえるわけない、実力的にも精神的にも。
だからこそ正面戦闘を行わずになんとか幸吉を逃がせないかとの考えた結果、僕はとある策に行き着いた。
その策を遂行するために必要な術師への渡りをつけた、金も用意した。
後残る計画への障害はただ一つ、幸吉だけだ。
彼を上手く説得できればプランCを行うことは僕の中で決定される。
「幸吉が助かれば五条悟も封印されないし、死滅回遊も起こらなくなる。姉さんが死ぬ危険性を極限まで減らせる」
ネックなのは僕の悲劇的な死に様を自分で作り出さなければいけないという点だが、それくらいのデメリットは受け入れよう。
死滅回遊が行われないということは一瞬でも長く姉さんと一緒にいれること。
足を引っ張っているという罪悪感と早く死なねばという義務感はあるものの、クズな僕はどうしても喜んでしまうのだ。
姉さんと一緒に居られることが嬉しくて堪らないのだ。
△△△△△△△△△△△
与幸吉には生まれつき右腕と膝から下の肉体が存在せず、更には腰から下の感覚がない。
肌は常人のそれとは比べ物にならないほど脆く、全身の毛穴からは針で刺されたような痛みが神経を走る。
だがその代償として彼は実力より数段上の呪力出力と広大な術式範囲を与えられた。
通常の縛りとは比べ物にならない効果、生まれながらにして強制的に結ばされた縛り、いったい誰がその祝福と呪いを授けたのか。
古今東西の術師はそれを研究し、その真実を解明せんと意気込んだ。
だがそれは誰にも分からず、ありとあらゆる術師が首をかしげた。
あまりに難解で難題な研究課題に、次第に大昔の術師は諦めを感じていた。
『あぁ、もはやこれは人の手に余る。まるで神の所業、天が与えた呪縛ではないか』
誰が言ったかその言葉。
いつしか先天的に結ばれた縛りであるそれは、天与呪縛と呼ばれるようになった。
「呪力反応……!」
天によって悲劇的呪縛を与えられし彼はとあるダムの地下にいた。
高専に登録してある住所は少し前に夏油と真人契約した時に引き払ったのだ。
あの化け物達を倒す力がいると、より大きなメカを作るために引っ越したのだ。
究極メカ丸試作0号はまだ完成していない、多くのメカ丸によって制作しているもののまだまだ完成への道は遠い。
大きすぎるから時間がかかるのは仕方がないと思いつつ、少し焦りも感じ始めている。
そんな中、友人である禪院真依の呪力を上から感じたのだ。
「俺の居場所を見つけ出したのか?いや、そういえば確かダム巡りが趣味だと言っていたような……?」
思案に耽っていると、カンカンと階段を降りる音がしてきた。
念のため作り出したメカ丸達の起動準備をする。
与幸吉の懸念は『禪院真依が内通者である俺を捉えようとしているのではないか?』と『呪力だけ似せた真人じゃないか?』の二つ。
前者は準二級の真依に自分が倒せるわけがないと早々に思考の外へ追い出した。
だが後者の可能性は捨てきれない、肉体を自由に変形させることができる彼ならばそのような身技も可能ではないかと疑っているのだ。
だがもう思考する時間はない。
「やあ、幸吉。逢いに来たよ」
メカ丸越しでしか知らない少女が、そこにいた。
「……本物か?」
仮に真人だとしたら0号が完成していない今では勝てないし逃げれる算段もない、だがそれでも問うてみる。
既に契約の代わりに自分を治すという縛りを結んでいるからそれまで殺される心配はない、と思えるほど彼は楽観的ではなかった。
「勿論、なんなら証拠でも出そうか?幸吉と初めて出会った時の僕の黒歴史とか、チョコの代わりに電池あげた事件とかも詳細に話す?」
「いやいい、その雰囲気の喋り方はオマエしかいない」
「そりゃ良かった」
てっきり『本物とはなんのこと?』みたいな問いがあると思ったのだが不思議とそのまま会話は進行していた。
そこに若干の違和感を抱きつつも、真人では出せないであろう独特な雰囲気を確認して幸吉はホッとしていた。
「それで、何故この場所に?ダム巡りしてたら偶然……とは言わんだろうな」
「そんな言い訳も用意してたんだけどね、
「冥冥?あの守銭奴に依頼できるだけの金……そうかオマエは株で儲けていたな」
真依が何を取り引きしようとしてるかは彼は知らないが、冥冥という術師はとにかく守銭奴で有名。
尚且つその術式や依頼達成率から、取り引きしようとすればそれ相応の金が必要になるのだ。
「そう、まあ色々と株の方が上手くいってさ。それはいい、本題に入ろう。気になってるんでしょ?僕がどうやってここに来たのか、そしてなぜ来たのか」
「前者は冥冥への捜索依頼といったところか、後者は……見当もつかん」
「冥冥の方は半分正解、実際は冥冥経由で他の情報屋を紹介してもらったんだ。かなり高くついたけどね。そして目的、これは単純明快。取り引きをしに来たんだ」
そう言い放つと真依はスタスタと幸吉の方へと歩み寄った。
そしてジャブジャブとした彼が浸かる液体の前までたどり着くと、少し屈んだ。
「何故屈む」
「目線が同じになるでしょ?立ったままだと見下したような感じになっちゃう」
いつものように整った顔でニコリと真依は微笑む、それはまるで聖母のような。
実際に自らの両の目で見てみると、それは思った以上に幸吉のコンプレックスを刺激するものだった。
友人相手にこのような感情を抱くのは醜い、彼はそう思いつつも彼女の整った容姿への嫉妬を抱かざるを得なかった。
「醜いな……」
「え?僕?スキンケアはちゃんとしてるし顔立ちはいい方だと思うけど」
「いや、俺のことだ。あろう事かせっかく会いに来てくれたオマエに対して嫉妬してしまった、その綺麗なツラにな。姿だけでなく心まで醜くなってしまったら終わりだろう」
つい、鬱屈とした本音が彼の口から漏れ出てしまう。
はっきり言って彼の対人コミュニケーション経験は多くない、普段メカ丸越しなのに加えて交友関係があまり広くはないのだ。
だがまあ、今の言葉が失言だったことくらいは幸吉にも理解できた。
「すまん、今のは─────
「ははっ、僕に『そんなことない君は醜くないよ』なんて乙女ゲームモデルのラノベの主人公のような台詞を言わせるつもり?爛れた肌も醜い顔も呪霊で見慣れてるさ」
少し、いつもの口調と違うと感じながらも素直にその言葉を受け止める。
幸吉自身も呪霊ほど自らの容姿は劣っているとは思っていない、人の形を保っているだけマシだと自己肯定感を高めているのだ。
流石に真人を引き合いに出されたら一瞬で敗北宣言を出すが。
「まあ……それはそうだ」
「それに、僕は兄が中学の頃硫酸で顔を焼いてしまってね。それ以来ずっと見てきたから爛れには慣れてるんだ」
「兄?オマエに兄なんていたのか?」
そこで真依は一呼吸置いて、幸吉の目を見て話始める。
「2018年、10月19日。○△ダムにて君は真人に殺される」
「なッ…にを…」
真人、その名を真依が知るはずがない。
夏油に通じていない限り、呪霊の側についていない限り、死ぬはずがないと彼の脳みそは叫ぶ。
まさか、まさか目の前にいる少女は俺の同類なのか?と幸吉は動揺してした。
一年以上の付き合いはある親友、そんな彼女のまさかの発言はメカ丸達を起動させるのが遅れる程に彼を動じさせていた。
真人という単語に気を取られて彼は死ぬというワードにまで気を向けられない。
「しっかり僕の目を見て話を聞いて、僕が呪霊側に通じているように見える?夏油がこんな落ちこぼれと取り引きすると思う?」
その言葉で、彼の思考は現実へと引き戻される。
そうだ、俺は真依の友人なのだ。こんなところで動じてどうする、というのが彼の思考。
ギリギリで冷静になることに成功したのだ、積み重ねてきた日々が彼の理性を保たせる。
気になることは山ほどあるが、まずはとにかく話を聞こうと続きを促す。
「続きを……話してくれ」
「よしきた、不思議に思ったことはなかった?僕が株でなんであれだけ稼げるのか。答えは簡単、急成長する企業を知っていたからだよ」
「知っていた?」
「うん、生まれる前から僕はなんの株を買えば儲かるのか全部知っていた」
「オマエは……何を……」
「幸吉が真人に負けたのも全部全部呪術総監部のデータベースからの情報で知っていた。君の名は呪術史に刻まれているからね、知っているのも当然だ」
また、彼女は一呼吸置く。
思考が追いつかない、知っていたとは何故だ。
未来予知でもしたのか?と一般人なら尋ねるだろうが幸吉は術師。
長期的な未来余予知が不可能だと言うことは呪術的に考えて当然だと知っている。
「なんてったって、僕は未来から来たんだから」
「未来だと?ターミネーターとでも言うつもりか?」
「悪いけど映画はあまり見ないんだ、単刀直入に言うと僕は前世の記憶というものを保持している」
「前世?」
「そう、僕の前世は───
────未来の日本の術師だ」
今日一番の嘘が、炸裂する。
流石に原作カミングアウトは無理
↓
なら未来から転生してきたってことにすれば?とオリ主は思ったそうです。