『いやぁ君達が来てくれて、本当に助かったよ』
宇宙船の通信室で最も大きなモニターに映る初老の男が愛想よく笑う。それと対面するラビ族の少女が話を切り出す
「襲撃の対応は、契約には無かったものよ。この件は当然_」
『勿論。例えそちらが望まなくとも、上乗せさせて頂く…これは感謝の印だ。君達が手を貸してくれなければ、此処は蹂躪されていただろう』
サングラス越しに睨みつける少女に対し、男はあくまで社交的に対応する。そして仕切り直しとばかりに軋む椅子と共に正面へ向き直り、口を静かに開いた
『では、契約内容の修正・再確認と行こう。サーニャ』
『こちらに』
呼び出されたスーツ姿の女性が、書類を数枚挟んだクリップボードと眼鏡ケースを男の手元に運び、ケースから取り出した眼鏡を手渡す
『ありがとう。さて…依頼内容は、我々ポラリス連合の新技術開発に伴う極秘テストへの協力要請。オプションとして、テストから得られたデータの収集・調整・反映を手伝う場合、ボーナスとして新技術の一部を提供する。付け加えて、今回の様な襲撃に対する護衛も行なってもらいたい…といったところか』
眼鏡を掛けてなお、目を凝らしながら読み上げた男が疲れた素振りを見せるも、直ぐに少女へと視線を移す。それに合わせて、少女が疑問を投げかける
「テスト内容は?」
『此方が指定する手段・手順で戦闘を行う…先程拝見した君達の戦闘力ならば、不自由はあっても不可能では無いと判断出来る』
そう答えながら男は手元のディスプレイを操作し、それを終えると同時に通信室のタッチパネルに文字が表示される。《フルネームでご署名を》という案内の下に点滅する入力欄に、少女は黙々と指を動かす
『問題無ければ、明日9時よりテストを行う。状況次第では何度か繰り返す事になるやも知れん。だが安心したまえ。これが終われば君達は多額のシルバーに加え、新たな可能性を目にするのだ』
少女が入力を終え、データが男のディスプレイに届く。それをじっと見つめ口から零れる様に呟いた
『ユミ・ベンソン…』
「何?」
『いや…良い名だな』
まるで取り繕う様に褒める男の態度に、少女・ユミは訝しむ。だがそんなユミの様子も余所に、男はニタリと笑う
『依頼主であり、此処ポラリス連合技術研究開発所責任者である私、ゴードン・ガネルが宣誓する。君達四天王は、この宇宙史に名を残す第一歩を踏み出した。ポラリス連合と共に、素晴らしい未来を見届けてくれたまえ。』
そう言い残し、男・ゴードンが通信を切る。ユミは真っ暗になったモニターから離れ、他の者達に今後の方針を伝えるべく、静かになった通信室を後にした