「ねーねー外行こーよー!」
「駄目ですよ。ユミさんが来てからです」
ユミが到着した宇宙船の後部デッキには2つの人影があった。外へ降り立つのを今か今かとはしゃぐ、人型の蟻のアンティ族の少女・コーゼズと、それを宥める犬耳と尻尾を備えた人工アンドロイド、パニエルの少女・サラである
「サラ、コーゼズは何もしてない?」
「ユミねーちゃん!…僕いい子にしてたもん」
「ホントかしらね」
悪戯っぽく笑うユミに、コーゼズはほっぺを膨らませる。そんな2人のやり取りに、サラがやんわりと仲裁に入る
「大丈夫ですよ、ちゃんと待っていましたから」
「ほらー!僕いっぱい我慢したんだよ、フフン!」
「10分も経ってないのに得意げになっちゃって…」
3人が他愛ない話を続けていると、背後から音も無く忍び寄る影が勢い良く飛び掛かる
「わっ!話は纏まった?」
「ひゃい!?お、おはようございます!」
「ビックリしたー!」
上半身は魅力的な女体、下半身は蛇の種族ラックルの女性・パンジーが、ユミとサラの間から肩越しに顔を出す。驚くユミとコーゼズをよそに、サラがパンジーへと尋ねる
「パンジーさん、お早う御座います。船体の軌道修正噴射装置の異常は如何でしたか」
「あぁアレ?ちゃんと直ってたでしょ?」
「えっと、みんな!とりあえず外出ましょう。モリアネンさんが待ってるだろうしね」
話が長引くのを察したユミが皆に移動を促す。エアロックを解除し、収納式梯子を降ろしてユミを先頭に次々と降りていく。その間もサラとパンジーの問答は続いていた
「大気圏突入前に実行したシステムチェックでは問題は解消されていましたが、異常正体と発生原因、修理作業の報告がありませんでした」
「書こうとは思ってたんだけど、眠くなっちゃって…」
「しっかりして下さい。この間も仮眠を取ると言って、そのまま半日過ごしていましたね。私とコーゼズさんで皿洗いしましたけど、あの日の当番はパンジーさんだったのですよ」
そこまで言い終えたサラが、自身が口を滑らせた事に気付く。見ればユミが此方へ振り返り、パンジーを笑顔で見つめていた。だが笑っていない目から降り注ぐ視線が、パンジーの顔をみるみる青ざめさせる
「パンジーさん?」
「いや、あの…」
言い訳を考えながら船に逃げ込もうと背を向けるパンジーに、逃すまいとユミが後ろから抱き着いて食い止める
「お皿の汚れが落ちなくなるからちゃんと洗って下さいって言ったのに!罰として1食減らしますからね!」
「ゴメン!ゴメンってばぁ!」
「僕もするー!」
「あっちょっアハハハハ!コーゼズ!ダメ、ダメだってハハハ!」
騒ぎに乗じてコーゼズが、身動きが取れないパンジーの脇をくすぐり遊び始める。そうして3人がへとへとになって喧騒が収まり、呆れたサラが3人を軽く説教した後、最後の1人を迎えに向かった