「流石と言う所ですね…」
ケンイチと共にデータを収集するパンジーの隣で、サーニャがタブレットの画面にペンを走らせる。恐らくゴードンへの報告書を作成しているのだろう
彼女が思わず口にする程、ユミのテストは満足のいく物であったのだ。ホログラム投影された人影を攻撃目標とした、数々の射撃テストを難なくこなし、ターゲットへの命中箇所も、頭部か胸部のどちらかといった具合である
「ふぅ…」
「テストを終了します。お疲れ様です」
使用した機材をテーブルの上に戻し、緊張感を和らげるように息を整えながら、ユミがステージから降りる。そこへ、コーゼズが興奮した様子で彼女の元へ駆け寄る。
「僕も!僕もやりたい!」
「駄目よ?これは遊びじゃないんだから」
「やーだー!やりたいやりたいやりたい!」
遊び感覚で射撃テストを始めようとするコーゼズを、ユミが制止するも駄々をこねるので困り顔でため息をつく。すると、ケンイチが机の小箱を手に、コーゼズへと近付いて声を掛ける
「君……」
「むーっ!ん?」
目線を合わせるように屈み、持ってきた箱の蓋を開け、個包装された飴玉を取り出して見せる。包みで分かるのか匂いで分かるのか、目の前に差し出された甘味に、コーゼズは目を輝かせる
「どうぞ」
「ありがとー!…ンフフ」
受け取った飴玉を頬張り、嬉しそうに口の中で転がす。無邪気な笑顔を向けるコーゼズの頭を、慣れた手つきで優しく撫でると、ゆっくりと立ち上がりユミにも勧める
「如何ですか?」
「あ…どうも、いただきます」
素直に頂いたユミも口に含む。最初こそついでで貰った程度に舐めていたが、心なしかリラックス出来た気がした
「次は重火器でのテストになります。準備をお願い致します」
タブレットの操作が終わったサーニャが案内し、パンジーの補助をしていたサラがステージへ上がる。先程まで配置されていたテーブルが床下へ格納され、代わりにミニガンやレールガン、バズーカ等が懸架されたラックが現れる
サラが準備する姿を見ていたユミが、またコーゼズがワガママを言い出すのではないかと考えたが、その心配は杞憂に終わる。休憩用の長机の上で、変形した小物達が劇を演じるように様々な動きを見せ、コーゼズとモリアネンの注目を引いていた
「すごいねコレ!」
「そうだな」
2人が仲良く眺めているのを確認し安堵したユミが、ふとパンジーへと目を見やると、正面のモニターに顔を向けたまま横目でコーゼズ達を凝視するケンイチの姿が見えた。ユミに怪訝な表情で見られている事に気付いたケンイチは、目線を正面へ戻す
疑問に思いつつ、作業の邪魔をする訳にもいかないと考え、サラの方を見る。準備を終えたサラがミニガンを引っ提げ、テストが開始される