関わるな、私はただの、JKだ。   作:愛と勇気の狩人

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ちょっとの普通は好きくない?

 その昔、人と怪異達に恐れられた二人組のハンターが居た。

 

 1人は、その両手に長短2種の剣を握り、身体強化魔法も無しに鬼やオークをねじ伏せる女狩人(ハントレス)

 

 1人は、一丁の黄金銃とトラップで千を超える怪異を鏖殺せしめた男狩人(ハントマン)

 

 見つかれば逃げ場などはなく。ただか弱き獣の様に狩り殺されるのみ。組織に属しない彼らにストッパーは無い。悪事に手を染めた人間すらも獣と見做し狩り尽くした。

 

 誰が言ったか裏世界の暗黒時代。それで裏側の人類と異種族を敵に回しておいて、彼らはある時忽然と姿を消した。復讐に燃える者たちは、必死に探し回ったが、終ぞ見つからずじまいだ。

 

 だが誰一人として、彼らが死んだからだとは言わなかった。

 

 それでいて男と女。二人が子を成すなどと言う悪夢に魘された怪異は枚挙に暇がない。

 

 故に怪異は恐れる。怪異よりも尚人でなしのハンター達を。ある言葉と共に。

 

猟師(ハンター)は、必ず来る。野蛮な獣を狩る為に』

 

 

 


 

 

 

「アリスちゃんに、(みお)ちゃんね、よろよろ〜!」

「宜しくお願い致します」

「猟来ちゃんも宜しくね」

 

 教室に響く三者の声。女が3人集まれば姦しいと言うが、この場合に限っては内一人のみがやたらに五月蝿いらしい。そんな彼女の席はアリスの隣。つまり猟来、アリス、澪が横並びとなっていた。

 

 ガーリーな出立ちの彼女を前に、アリスは当惑し澪は苦笑いを浮かべていた。今時こんな気合いの入ったギャルは居ない。流石にヤマンバ程ではなくとも、それ位は二人にも分かった。

 

「……う〜ん、白鉄って珍しい苗字だよね」

 

 取り敢えず、何か話しておこうかと澪は考えた。

 

(ここ最近、無差別な()()()()()が増えて来てるのに……知らなかっただけなのかなあ)

 

 今この特区はピリピリとした雰囲気に包まれている。知ってか知らずかこの時期に転校してきた彼女の素性を知りたくなったのだろう。

 

「シラガネ、ってすっごくカチカチネームでしょ? あーしもあんまり好きくないから、あーしの事はさっき言ったみたいにリョウコで良いよ、てかマジでそっちでお願い!」

「わ、分かったよリョウコちゃん」

「てかアリスちゃんってもしかしなくても外国人!? お人形さんみたいでメチャかわなんですけど!」

 

 やはり、テンションが高い。澪はマシンガンが如く放たれるワードを傾聴し、彼女の素性についてのヒントがないか探すので精一杯であった。アリスもまた、その光景を静観している。話を振られても──

 

「はい、そうですが。何か?」

 

 ──この通りのつっけんどんである。無愛想が顔に張り付いている様であった。

 

「やっぱり! 澪ちゃんも初め会った時びっくりしたんじゃない?」

「……そうだね〜」

 

 当然ながら、澪はアリスの監視役として派遣された身である為、その出会いにそんな光景はありはしない。どちらかと言えば緊迫した雰囲気が立ち込めていた事だろう。

 

「……あれ、実はそんなに?」

「いやいや! びっくりしたなもー」

 

 察しているのかいないのか、猟来はズバズバと曖昧なリアクションに踏み込んで来る。澪は冷や汗を流しながらそれに答えるので精一杯だ。

 

「私の方が色々と驚きはありましたよ」

「アリスちゃんが?」

「初めて日本に来て──」

「──へぇ、そうなんだ!」

 

 ターゲットがアリスへと移り、澪はふうと息を継ぐ。彼女は内心でアリスに感謝を抱きながら、アリスを質問攻めにする猟来の姿をまじまじと見る。

 

(……今話をして分かった。この子、放っておいたら()()()()だ)

 

 この公立八千ヶ丘(やちがおか)高等学校の位置する特区とは、数多の秘密がひしめく場所である。人と異種族の境界線すら曖昧なこの場所で、余計な詮索と言うのは余計な危険を寄せ付ける悪癖に他ならない。

 

(リョウコちゃんは普通にしているだけなのかもしれないけど、もしも危険な異種族と出会ったりでもしたら──)

 

 あの態度で何か言おうものなら明日の命は無い。多分すぐ死ぬ。死ななくてもロクな目には遭わない。そんな終わりばかりが見えて来て、彼女は遂に頭を抱えてしまった。

 

(──守らないと)

 

 机に落とす自分の影を見つめながら、澪は決意する。破魔師として、彼女は大層な正義感の持ち主であった。

 

 彼女の決意が正しい物だと証明されるには、そう時間は掛からないだろう。

 

 なぜならば──

 

「ふーん、アレが転校生かあ。ギャルって聞いたからてっきりケバくて香水臭い子かと思ったけど。アレなら別に()に問題なんて無いよねー?」

 

 教室の外には、間伸びした声を発し、半眼の中に猟来の姿を映す1人の少女の姿。久しぶりに来た警戒心の薄そうな生娘に、自然と舌舐めずりをした。ピンク色の小さな唇がしっとりと潤う。小柄な身体に見合わぬ妖艶さだ。

 

「私の友達(コレクション)になってくれるかなー?」

 

 その目は、血の様に赤い。更に薄く開いた三日月から逆さの小さな白い三角が二つ飛び出している。

 

「さ、行こーか。皆」

 

 彼女は、数名の()()を連れ立って教室を後にする。

 

 ──日常を侵す危機は、既にそこに迫っていた。

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